臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
死腔には、ガス交換を行わない気道容積である解剖学的死腔(鼻腔〜終末細気管支)と、換気はあるが灌流が乏しい/ないためにガス交換が起こらない肺胞領域(肺胞死腔)があり、その和が生理学的死腔である。人工鼻(HME)や回路延長はガス交換に関与しないため機械的死腔として死腔容積を増やす。肺血栓塞栓症では肺血流が途絶した肺胞が増え、肺胞死腔が増加し生理学的死腔が増える。健常成人の生理学的死腔率(VD/VT)はおおむね約0.3であり、浅速呼吸のように1回換気量が小さい呼吸パターンでは死腔換気の割合が相対的に増えて肺胞換気効率が低下する。参考としてBohrの式は $VD/VT = (PaCO2 - PECO2)/PaCO2$。
選択肢別解説
誤り。解剖学的死腔は鼻腔から終末細気管支までの伝導気道を指す。呼吸細気管支はガス交換が始まる呼吸部に属し、解剖学的死腔には含まれない。
誤り。人工鼻(HME)は加温加湿を担うデバイスでガス交換には関与せず、機械的死腔として死腔容積を増加させる。特に低体重児・低VT設定では影響が大きい。
正しい。肺血栓塞栓症では肺動脈が閉塞して換気はあるが血流がない肺胞(肺胞死腔)が増えるため、生理学的死腔が増加する。
正しい。健常成人の生理学的死腔率(VD/VT)は概ね0.2〜0.35程度で、約0.3が目安の基準値として用いられる。
誤り。呼吸パターン(特に1回換気量VT)が小さい浅速呼吸では、死腔換気の占める割合VD/VTが相対的に上昇し、肺胞換気が低下する。したがって呼吸パターンは死腔に影響する。
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解説
呼気終末二酸化炭素分圧 $P_{\text{ET}CO_2}$ は主に(1)二酸化炭素産生量(代謝)、(2)肺胞換気、(3)肺血流の3因子で決まる。循環血液量が減ると心拍出量と肺血流が低下し、肺胞へ運ばれるCO2が減少するため呼出されるCO2が少なくなり、$P_{\text{ET}CO_2}$ は低下する。一方、高体温やシバリングは代謝亢進によりCO2産生が増え、閉塞性換気障害は換気不全・CO2排出低下、ソーダライム劣化は再呼吸により回路内CO2が増えるため、いずれも $P_{\text{ET}CO_2}$ は上昇する傾向となる。
選択肢別解説
誤り。高体温は代謝亢進によりCO2産生が増加し、$P_{aCO_2}$ および $P_{\text{ET}CO_2}$ は上昇する(換気条件が一定と仮定)。
誤り。シバリング(術後振戦)は骨格筋活動で代謝が亢進しCO2産生が増加するため、$P_{\text{ET}CO_2}$ は上昇する。
誤り。閉塞性換気障害では呼気の排出遅延・換気不全によりCO2が蓄積し、$P_{aCO_2}$ とともに $P_{\text{ET}CO_2}$ は上昇しやすい(相IIIの傾斜増大・アルファ角増大が特徴)。なお重症では $P_{aCO_2}-P_{\text{ET}CO_2}$ 較差が拡大するが、選択肢の趣旨は上昇要因である。
正しい。循環血液量減少(出血・ショックなど)では肺血流が低下し、肺胞へ運搬されるCO2が減少するため呼出CO2が低下し、$P_{\text{ET}CO_2}$ は低下する。心拍出量低下時やCPR中の循環指標としても低下が知られる。
誤り。麻酔器のソーダライム劣化はCO2吸収不全により再呼吸が生じ、吸気側ベースラインCO2の上昇とともに $P_{\text{ET}CO_2}$ を上昇させる。
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解説
人工呼吸中の気管吸引は、必要時のみ適切な方法・設定で短時間に行うのが原則である。定時実施は避け、分泌物の聴診所見、気道内圧上昇、カフ上分泌物量、SpO2低下などの所見から必要性を評価する。挿入深さは気管分岐部(カリナ)や末梢気管支に当たらない範囲にとどめ、粘膜損傷や迷走神経反射(徐脈)を防ぐ。吸引時間は吸引中に無呼吸となるため成人で10〜15秒以内を目安にする。吸引圧は成人でおおむね120〜150mmHg(約16〜20kPa)が適切で、過大圧は粘膜損傷・出血・低酸素血症を招く。操作時は穏やかに回転させながら抜去し、ピストン運動(出し入れの反復)は粘膜損傷の原因となるため行わない。単回吸引で除去不十分なら十分な再酸素化後に間欠的に繰り返す。単回の手順と設定の妥当性が安全性と有効性を左右する。
選択肢別解説
誤り。気管吸引は定時ではなく、分泌物貯留やSpO2低下、気道内圧上昇などの所見に基づいて必要時のみ実施する。不要な定時吸引は低酸素血症・粘膜損傷のリスクを上げる。
正しい。カテーテル先端が気管分岐部や末梢気管支に当たらない深さで止める。深く進めると気管粘膜損傷、出血、迷走神経反射による徐脈・血圧低下を招くため避ける。
誤り。吸引時間が長いほど低酸素血症・無気肺のリスクが増すため、成人では1回10〜15秒以内を上限とする。30秒以上は過長で有害である。
誤り。成人の吸引圧はおおむね120〜150mmHg(約16〜20kPa)が目安であり、300mmHg(約39.9kPa)は過大で粘膜損傷の危険が高い。換算の目安は $1\ \mathrm{mmHg}\approx0.133\ \mathrm{kPa}$。
誤り。ピストン運動(挿入と抜去の反復)は粘膜を擦過し損傷・出血を招くため行わない。陰圧は抜去時にかけ、穏やかに回転させながら一方向(抜去方向)で実施する。
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解説
人工肺のガス交換不良(酸素化不良・脱炭酸不良)の初期点検では、まずガス供給系(酸素源・ブレンダ・配管)の断続や設定不良、スウィープガス流量不足を確認し、次に人工肺本体の異常(破損、血漿漏出、目詰まり)を評価するのが基本である。これらはガス側拡散や膜面機能に直接影響し、ガス交換効率低下の主要因となる。一方、貯血槽の液面レベルは回路の血液側管理(脱血の安定、送血ポンプの空気混入防止)に関わる項目で、ガス交換機能そのもののトラブルシュートの直接項目とはいえないため、本設問における点検項目としては不適切である(誤り)。
選択肢別解説
適切。酸素供給ラインの抜け・閉塞・誤接続はスウィープガスが人工肺へ届かず、酸素化低下やCO2排出低下を招く。ガス交換不良時は最初に接続状況と供給源の圧・開閉状態を点検する。
適切。供給酸素流量(スウィープガス流量)が不足するとCO2除去が低下し、場合によっては酸素化も制限される。ガス交換トラブル時の基本点検項目であり、流量計の指示値と実流量を確認する。
適切。人工肺の破損(筐体クラック、接続部の破綻、膜不良)は血液・ガスのリークやガス交換性能低下の原因となる。外観、結露・泡の異常、圧力差の変化などで評価し、疑わしければ交換を検討する。
適切。ガス側への血漿漏出(プラズマリーク)は膜面が濡れて拡散抵抗が増大し、酸素化・脱炭酸の双方が低下する重要な異常である。ガス出口側の湿潤・泡立ちや圧力上昇で示唆されるため、点検必須である。
不適切(設問の誤り)。貯血槽の液面レベルは脱血の安定化や送血ポンプの空打ち・空気混入防止のために監視すべき血液側管理項目であり、人工肺のガス交換機能の直接的トラブルシュート項目ではない。極端な低液面が回路血流を低下させて二次的に酸素化不良を招く可能性はあるが、ガス交換不良時にまず点検すべきはガス供給系と人工肺自体であるため、本問の文脈では誤りに該当する。
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解説
人工鼻(HME: Heat and Moisture Exchanger)は、呼気の熱と水分を吸着し、次回吸気時に放出することで受動的に加湿・加温するデバイスである。短所としては、回路(Yピース)と気管チューブの間に装着する構造上、機械的死腔が数十mL〜(機種により)増え、二酸化炭素貯留や換気効率低下のリスクがあること、さらに本体フィルタや分泌物付着により呼吸抵抗が増加し、吸気圧上昇・呼吸仕事量増大・分泌物貯留の危険があることが挙げられる。一方、HMEは能動的に加熱・加湿しないため『うつ熱』や『過剰加湿』は通常の短所ではない。また、回路内の結露や汚染が生じにくいことから人工呼吸器関連肺炎(VAP)を増加させる根拠は乏しく、少なくとも短所とはいえない。以上より本設問の短所は『死腔の増加』『呼吸抵抗の増加』である。
選択肢別解説
誤り。HMEは受動的な熱・水分交換体であり、自ら発熱・加温する機構を持たない。加温加湿器のような制御異常で体温上昇(うつ熱)を招くリスクは通常想定されず、HMEの短所とはいえない。
誤り。HMEは呼気由来の水分を再利用する受動加湿であり、加温加湿器のように設定次第で過剰加湿になる性質ではない。臨床的にはむしろ高分時換気や低体温時などで加湿不足が問題になりやすい。したがって『過剰加湿』はHMEの短所ではない。
正しい。HMEはYピースと気管チューブの間に挿入されるため、その容積分の機械的死腔が追加される。死腔増加は二酸化炭素排出効率を低下させ、特に小児やCOPD患者などではPaCO2上昇のリスクとなる。
正しい。HME本体のフィルタ構造により通気抵抗が加わるうえ、分泌物付着や水分の保持で目詰まりすると抵抗がさらに増す。結果として気道内圧・吸気圧の上昇や呼吸仕事量の増大を招くため、定期交換・分泌物管理が必要である。
誤り。HMEの使用がVAPを増加させるとはいえない。HMEは回路内の結露(ウォータートラップ)を相対的に抑え、回路汚染の機会を減らしうるため、少なくとも『VAPの増加』はHMEの短所として不適切である。
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解説
成人患者の人工呼吸器の一般的な初期設定では、I/E比は1:2程度として呼気時間を十分に確保するのが標準的である。PEEPは肺胞の虚脱防止とFRC維持のため3〜5 cmH2Oから開始するのが一般的。フロー・トリガ感度は患者の吸気努力を適切に検知しつつ自発呼吸の同期を損なわないよう2〜3 L/min程度が目安で妥当である。一方、一回換気量20 ml/kgは過大で肺障害(過伸展・圧外傷)の危険が高く不適切であり、初期は予測体重あたりおおむね6〜8 ml/kg(正常肺で旧来は8〜10 ml/kg)を目安とする。回路内上限圧(高圧アラーム)20 cmH2Oは低すぎて頻回作動や換気不足を招きうるため不適切で、一般に30〜40 cmH2O程度以上に設定して過度の圧上昇を防ぎつつ十分な換気を確保する。以上より、正しいのは1、4、5である。
選択肢別解説
I/E比1:2は初期設定として妥当。吸気より呼気を長く設定することで呼気時間を確保し、空気トラッピングや自己PEEPを抑制しやすい。病態に応じて微調整は必要だが、初期値としては正しい。
一回換気量20 ml/kgは過大で、肺胞過伸展や圧外傷・容量外傷のリスクが高い。初期は予測体重あたり6〜8 ml/kg(正常肺で旧来は8〜10 ml/kg程度)が目安であり、本選択肢は不適切。
回路内上限圧(高圧アラーム)20 cmH2Oは低すぎ、アラーム頻発や換気不足を招く恐れがある。一般に30〜40 cmH2O程度以上に設定し、過度の圧上昇を防ぎつつ換気を確保するのが妥当であるため不適切。
PEEP 3〜5 cmH2Oは生理的PEEPを補いFRCを維持する目的の初期設定として一般的で妥当。病態により増減するが初期値として正しい。
フロー・トリガ感度2〜3 L/minは、自発呼吸の検知と自動トリガ回避のバランスが取りやすい初期設定として妥当。過敏だと自動トリガ、鈍すぎると患者の呼吸努力増大を招く。
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解説
人工心肺(CPB)では、低体温管理と希釈灌流が生体に特有の影響を与える。低体温では代謝率と酸素消費量が低下するため、必要な灌流量(至適灌流量)はむしろ減らせる方向となる。CPB中はストレスホルモンの上昇や低体温の影響で膵β細胞からのインスリン分泌が抑制されやすく、高血糖傾向を来す。希釈および低体温は酸素解離曲線を左方移動させ(酸素親和性増大)、一方で回路内のせん断応力や陰圧吸引・異物接触により溶血が生じ、血中遊離ヘモグロビンが増加する。さらに液体一般と同様に、体温低下は血液粘ちょう度を上昇させる。以上より、正しい選択肢は4と5である。
選択肢別解説
誤り。低体温では組織代謝と酸素消費量が低下するため、必要灌流量(至適灌流量)は増加ではなく低下方向に調整できる。体温を下げるほど多く流す必要はなく、むしろ過灌流を避ける。
誤り。CPBと低体温はストレスホルモン優位や膵分泌低下を介してインスリン分泌を抑制しやすく、血糖は上昇傾向となる。よって血中インスリン濃度が上昇するとは言えない。
誤り。体外循環に伴う血液希釈(プライミングによる急性希釈など)や低体温は、酸素解離曲線を左方へ移動させ酸素親和性を増大させる方向に働く(2,3-DPG低下や温度低下の影響など)。右方偏位とは逆。
正しい。人工心肺回路内でのポンプやチューブによるせん断、陰圧吸引、人工材料への接触などで溶血が生じ、血中遊離ヘモグロビンが増加する。溶血は腎機能障害や黄疸のリスクとなるため監視が重要。
正しい。液体の粘度は温度低下で上昇する性質があり、血液も同様に体温の低下で粘ちょう度が上昇する。CPBでは希釈により粘ちょう度を下げて血流維持を図ることがあるが、本設問の記述自体は正しい。
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