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臨床工学技士国家試験
解説
膜型人工肺では、炭酸ガス除去(PaCO2の調節)は主として吹送(スイープ)ガス流量に依存し、酸素化(PaO2の調節)は主として吹送酸素濃度(FDO2)に依存するのが基本原則である。吹送ガス流量を増やすとガス側のCO2分圧が低く保たれ拡散勾配が大きくなるためCO2除去が促進し、動脈血二酸化炭素分圧 $\text{PaCO}_2$ は低下する。一方、吹送酸素濃度を下げるとガス側の酸素分圧が低下して酸素拡散勾配が小さくなり、動脈血酸素分圧 $\text{PaO}_2$ は低下する。吹送ガス流量を減らすことは一般にガス交換全体(CO2除去・酸素化)の効率を下げる方向に働くため、$\text{PaO}_2$ を上昇させる操作にはならない。吹送酸素濃度の変更はCO2除去に本質的影響を与えない。酸素化が改善すれば、組織酸素需要が一定であれば混合静脈血酸素分圧 $\text{P}\overline{\text{v}}\text{O}_2$ はむしろ上昇しやすい。
選択肢別解説
誤り。吹送ガス流量を減らすとガス側での交換が停滞し、CO2除去能だけでなく酸素化能も低下する方向に働くため、$\text{PaO}_2$ が上昇するとはいえない(血液流量・膜性能一定の前提)。実臨床では不十分なスイープでは酸素拡散勾配も低下しうるため、$\text{PaO}_2$ は維持もしくは低下しやすい。
正しい。吹送(スイープ)ガス流量を増やすとガス側CO2分圧がゼロ近傍に速やかに保たれ、血液-ガス間のCO2拡散勾配が増大するためCO2除去が促進し、$\text{PaCO}_2$ は低下する。
正しい。吹送酸素濃度(FDO2)を下げるとガス側の酸素分圧が低下し、酸素の拡散駆動力が小さくなるため酸素化が低下し、$\text{PaO}_2$ は低下する。
誤り。$\text{PaCO}_2$ は主に吹送ガス流量に依存する。吹送酸素濃度を上げてもガス側CO2分圧はもともとゼロ近傍であり、CO2の拡散駆動力はほぼ変わらないため、$\text{PaCO}_2$ が上昇することはない(実質的変化はほぼ無し)。
誤り。吹送酸素濃度を上げて酸素化が改善すると、酸素供給が相対的に増え組織酸素需要が一定であれば静脈血側に戻る酸素分圧は上昇し、混合静脈血酸素分圧 $\text{P}\overline{\text{v}}\text{O}_2$ は低下ではなく上昇しやすい。
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解説
高気圧酸素治療(HBOT)は加圧環境下で高濃度酸素を吸入させ、溶解型酸素を増やして虚血組織の酸素供給を補う治療である。圧力変化で体内ガスの体積が変動するため、空気閉塞や肺嚢胞・気胸などガスが閉じ込められやすい病態では肺胞破裂や気胸悪化などのバロトラウマを起こしやすく、禁忌(原則禁忌を含む)とされる。具体的には未治療の気胸(特に緊張性気胸)は絶対禁忌であり、気道閉塞を伴う気管支喘息発作や肺気腫(肺嚢胞・ブレブ合併)も圧変化でエアトラッピングから肺損傷を招くため禁忌群に入る。一方、一酸化炭素中毒はHBOTの代表的適応であり、コンパートメント症候群も浮腫軽減と微小循環改善を期待して併用される適応である。
選択肢別解説
禁忌。肺気腫(特に肺嚢胞・ブレブ合併)では圧力変化により閉じ込められたガスが膨張・収縮し、肺胞破裂や気胸・縦隔気腫などのバロトラウマを起こしやすい。HBOTは減圧過程でガス膨張が顕在化しやすく、重大合併症を招くため避ける。
禁忌(絶対禁忌)。未治療の緊張性気胸では胸腔内ガスにより循環・呼吸が破綻しており、加圧・減圧に伴うガス体積変化で病態がさらに悪化し生命危機となる。HBOT前に胸腔ドレナージなどで気胸を解除することが前提で、未治療のままHBOTは行わない。
禁忌(原則禁忌)。急性の気管支喘息発作では気道閉塞によりエアトラッピングが起き、圧変化で肺胞破裂や気胸を起こす危険が高い。まず発作の鎮静・換気の安定化を優先し、発作中のHBOTは避ける。
禁忌ではない(適応)。一酸化炭素中毒はHBOTの代表的適応で、溶解型酸素を増やして組織酸素化を補い、ヘモグロビンからのCO解離を促進する。神経障害の予防や遷延性脳症リスク低減が期待される。
禁忌ではない(適応)。コンパートメント症候群では浮腫軽減や微小循環改善、組織酸素化の補助を目的にHBOTが併用されることがある(ただし根治治療は減圧切開など外科的処置)。
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解説
Compression volume(CV;回路圧縮容積)は、回路内圧が上昇したときに人工呼吸器回路や付属機器(蛇管・加温加湿器チャンバなど)が弾性伸展することで、その分だけ回路内に蓄えられて患者肺へ届かないガス量を指す。定量的にはおおむね $CV = C_{circ} \times \Delta P$(回路コンプライアンスと圧変化の積)で表される。量規定換気(VCV)では、設定換気量の一部がCVとして消費されるため肺胞換気量は減少する。CVは回路が柔らかい(高コンプライアンス)、長い、付属容積(加温加湿器チャンバ等)があるほど大きくなる。CVが大きいと患者の吸気努力がまず回路の伸展に使われやすく、トリガ到達が遅れて吸気トリガ感度は実質的に鈍化(低下)する。
選択肢別解説
正しい。量規定換気では設定一回換気量の一部が回路の伸展に使われる($CV = C_{circ} \times \Delta P$)。この分だけ肺に届く量が減り、肺胞換気量は減少する。肺コンプライアンスが低い・気道内圧が高いほど減少量は大きくなる。
正しい。加温加湿器チャンバは回路の一部で弾性変形(コンプライアンス)を有するため、圧上昇時に容積変化を生じCVに寄与する。チャンバを含む全系の回路コンプライアンスがCVを規定する。
誤り。柔らかい回路ほど回路コンプライアンスが大きく、圧上昇時の膨らみが増えるためCVは大きくなる。『小さい』は不適。
誤り。回路が長いほど膨張しうる部分が増え全体の回路コンプライアンスが大きくなるため、CVは大きくなる。『小さい』は不適。
誤り。CVが大きいと患者の初期吸気努力が回路の伸展に取られ、圧・流量変化が検出閾値に達しにくくなるため、実質的に吸気トリガ感度は低下(鈍化)する。『上昇する(より敏感になる)』は不適。
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解説
インピーダンス式呼吸モニタ(インピーダンス・ニューモグラフィ)は、胸部に貼付した電極間に高周波の微小交流電流を流して得られる胸郭インピーダンスの周期変動から呼吸を検出する方式である。空気は体液・組織より電気的に通しにくいため、吸気で肺に空気が増えると胸郭全体の見かけのインピーダンスは増加し、呼気で減少する。よって「吸気時にはインピーダンスが減少する」は誤り。患者監視装置ではこの波形から呼吸数などをモニタする。測定には電極分極等の影響を避ける目的で数十kHz帯の交流が一般に用いられ、心電図モニタ用電極を兼用して測定できる設計の機器が広く普及している。
選択肢別解説
正しい。電極分極の影響を小さくし安定にトランスサラシック・インピーダンスを検出するため、一般に数十kHz帯の微小交流信号が用いられる。
正しい。インピーダンス呼吸波形から呼吸イベントを抽出し、患者監視装置で呼吸数(RR)などを連続モニタするのが目的である。
正しい。胸部体表に貼付した電極間に微小交流電流を印加し、その電気インピーダンスの変化(吸呼気に伴う胸郭・肺含気量の変化)を計測する。
誤り。吸気では肺の含気量が増え、空気は組織・体液より電気を通しにくいため、胸郭全体としての見かけの電気インピーダンスは増加する。したがって「減少する」は逆である。
正しい。多くの患者監視装置では心電図用の胸部電極を流用してインピーダンス呼吸を同時に測定できる(ECG電極兼用)。専用電極を要さない構成が一般的である。
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解説
PSV(圧支持換気)は患者の自発呼吸努力をトリガとして、吸気相に設定したサポート圧を加える圧規定・流量サイクルの自発モードである。設定圧到達は吸気相の継続条件であり、呼気への移行は通常、吸気流量がピークの一定割合まで低下した時点で行われる(流量サイクル)。そのため一回換気量は患者の呼吸努力や肺コンプライアンス・気道抵抗に依存して変動する。サポート圧をかけることで吸気仕事量は軽減され、人工呼吸器離脱(ウィーニング)にも広く用いられる。一方で自発呼吸が前提のため、中枢性低換気などで自発呼吸ドライブが乏しい状況では単独では安全でなく、バックアップ換気等の代替が必要となる。
選択肢別解説
正しい。PSVは吸気相に一定の圧支持を付加し、患者の吸気努力を補助するため、呼吸筋の負担(吸気仕事量)を軽減できる。
誤り。PSVは圧規定モードであり、一回換気量は患者の努力や肺コンプライアンス・気道抵抗の変化により可変で、一定には維持されない。
誤り。PSVは自発呼吸トリガが前提であり、中枢性低換気のように呼吸ドライブが低下・消失し得る状況では無呼吸となる危険があるため単独では安全に使用できない(バックアップ換気が必要)。
誤り。PSVの呼気移行(サイクルオフ)は通常、吸気流量がピークの一定割合まで低下した時に行われる流量サイクルであり、「設定圧に達したこと」を条件に切り替わる圧サイクルではない。
正しい。PSVはサポート圧を段階的に低減していくことで、呼吸筋の負担を徐々に患者側へ移行させるウィーニング手段として広く用いられる。
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解説
医療ガス配管から人工呼吸器へ供給される酸素の端末圧は、国内規格(例:JIS等)でおおむね $400 \pm 40$ kPa(約0.4 MPa)に設定されており、多くの人工呼吸器はこの圧力を前提に設計されている。したがって「およその圧力」としては400 kPaが適切である。参考として、非治療用空気(器具駆動・工学用途の空気)は約 $300 \pm 30$ kPa、手術機器駆動用ガス(窒素・空気)は約 $990 \pm 135$ kPaと規定される。酸素の供給圧が低すぎると内部レギュレータや流量制御が適正に機能せず換気性能低下や警報の原因となり、高すぎると許容範囲外で安全弁作動や機器損傷リスクがある。
選択肢別解説
不適切。100 kPaは人工呼吸器の酸素供給としては低すぎ、配管端末の標準(約400 kPa)を満たさない。低圧では内部レギュレータや流量制御が安定せず、換気性能低下や警報の原因となる。
不適切。200 kPaは規定の供給圧(約 $400 \pm 40$ kPa)の約半分であり、人工呼吸器の設計前提を満たさない。
不適切。300 kPaは酸素ではなく非治療用空気に用いられる代表的な圧力帯(約 $300 \pm 30$ kPa)であり、酸素供給圧としては不足である。
適切。医療ガス配管からの酸素・治療用空気・亜酸化窒素・二酸化炭素の送気圧はおおむね $400 \pm 40$ kPaで規定され、人工呼吸器の酸素供給圧として標準的である。
不適切。500 kPaは酸素の許容範囲(約 $400 \pm 40$ kPa)を超える高圧であり、過圧による安全弁作動や機器への負荷増大を招く。
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解説
パルスオキシメータは、動脈血の拍動に伴う光吸収の変化を赤色光(約660 nm)と赤外光(約940 nm)の2波長でとらえ、吸光度比からSpO₂を算出する。測定誤差はおもに(1)拍動成分の検出が乱れる状況(体動、低灌流・末梢循環不全、寒冷など)と、(2)吸光特性が想定と異なる状況(異常ヘモグロビン、診断用色素、マニキュア・外光など)で生じる。一方、大気圧の低下は血液の酸素分圧や実際の飽和度(真値)を低下させ得るが、装置の算出原理(吸光度比)自体には直接影響しないため“誤差要因”ではない。したがって、標高が高い環境ではSpO₂値は低く測定され得るが、それは装置誤差ではなく生体側の真の低下を適切に反映している。
選択肢別解説
患者の体動はフォトプレチスモグラムに動き由来の変動を混入させ、動脈の拍動成分と静脈・外光・ノイズの分離を困難にする。結果としてSpO₂の算出比が不安定となり、測定誤差や測定不能の頻度が増すため、誤差要因である。
大気圧の低下(高地など)は肺胞・動脈血の酸素分圧を下げ、実際の飽和度(真値)を低下させ得るが、パルスオキシメータは吸光度比から飽和度を算出する原理であり、大気圧そのものは算出ロジックに直接影響しない。よって“誤差の要因とならない”が正しい。
末梢循環不全や低灌流では、測定部位の拍動成分が小さくS/N比が低下するため、波形検出や比演算が不安定となり誤差が増える。体温低下や血管収縮薬投与時などでも同様の問題が生じる。
一酸化炭素ヘモグロビン(COHb)やメトヘモグロビン(MetHb)は、660/940 nm付近の吸光特性がオキシ/デオキシHbと異なるため、2波長法では正確な分離ができずSpO₂が過大・過小評価される(例:MetHbでは約85%付近に収束しやすい)。誤差要因である。
インドシアニングリーンやメチレンブルー、インジゴカルミンなどの診断用色素は測定波長域で光吸収し、受光比を変化させるためSpO₂を低下方向に誤って表示させやすい。よって誤差要因である。
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解説
人工心肺下では、体温管理や血液希釈などによって血液の物性や酸素運搬能が変化する。低体温では気体(酸素)の溶解度は増えるため、血漿中に物理的に溶け込む酸素量は温度低下で増加する。一方、ヘモグロビンの酸素解離曲線は左方移動し(P50低下)、ヘモグロビンの酸素結合力が高まる。また低体温は血液粘稠度を上昇させる。血液希釈は粘稠度を下げ、末梢血管抵抗を低下させる方向に働く。小児は体重あたりの代謝量・酸素消費量が成人より高いため、体重(あるいは体表面積)あたりの適正灌流量を多めに設定する。以上より、低体温で血中酸素溶解度が低下するという記述(選択肢3)は誤りである。
選択肢別解説
正しい。小児は基礎代謝量と酸素消費量(VO2)が体重あたりで成人より高いため、体重(または体表面積)あたりの適正灌流量は成人より多めに設定するのが原則である。臓器灌流・酸素供給を十分に確保する目的による。
正しい。血液希釈でヘマトクリットが下がると血液粘稠度が低下し、末梢血管抵抗(SVR)は低下する方向に働く。体外循環中の充填液による希釈は灌流圧の低下や組織血流の維持に寄与する。
誤り。低体温では気体の溶解度が増す(ヘンリーの法則に基づく)ため、血中の酸素溶解度は低下ではなく増加する。したがって記述は不正確であり、この選択肢が誤り。
正しい。低体温は酸素解離曲線を左方移動させ、ヘモグロビンの酸素親和性を高める(P50低下)。その結果、同一の酸素分圧でもヘモグロビンに結合する酸素が増えやすくなる。
正しい。温度低下に伴い血液粘稠度は上昇し、微小循環での流動性が低下しやすい。体外循環中の低体温管理では、この粘稠度上昇による臓器血流低下に留意する必要がある。
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