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臨床工学技士国家試験
解説
人工心肺回路では、体外循環中の回路内血液量(貯血槽レベル)を安定させるために、送血流量は脱血(静脈還流)に術野吸引血の戻りを加えた総流入量に整合させるのが基本である。落差脱血の落差は一般に50〜60cm程度が目安で、過大な落差は陰圧過大や血管・カニューレの虚脱、溶血を招く。脱血不良時はカニューレ位置・屈曲・陰圧条件・充満(ボリューム)など原因評価と是正が優先で、利尿剤投与は低容量を悪化させるため不適切。大動脈解離が疑われた場合は送血圧・流量をむしろ抑制し、送血中止や送血部位変更の検討が必要である。したがって、吸引戻りが多い場合に送血流量を(脱血量よりも)増やして総流入に合わせるという選択肢が正しい。
選択肢別解説
誤り。落差脱血で必要な落差は通常50〜60cm程度が目安であり、「少なくとも1m以上」は過大で、過度の陰圧により静脈・カニューレの虚脱や溶血、脱血不安定化のリスクが高まる。
正しい。術野吸引(サクション)からの戻りが増えると、貯血槽への流入は「脱血量+吸引戻り量」となる。貯血槽レベルを維持するには送血流量をこの総流入量に合わせて増やす(短時間の調整)。必要に応じて吸引の適正化や無駄な吸引の削減も併せて行う。
誤り。「できるだけ深くする」と一律に深く挿入するのは不適切。深くし過ぎると心房壁やSVC/IVC壁への吸着、開口部の閉塞を招き脱血不良を悪化させる。適切なのは原因に応じた再位置決め(浅く/深く/角度調整)、屈曲の是正、落差・陰圧条件の調整、カニューレ径の再検討などである。
誤り。脱血不良の背景に循環血液量不足がある場合、利尿剤はさらにボリュームを減らし脱血を悪化させる。まずは輸液による充満改善、カニューレ位置・屈曲の確認、落差やVAVDの最適化、送血流量の調整(還流に合わせて低減)などを行う。
誤り。大動脈解離を認めた場合に送血流量を上げると、送血圧上昇により解離の進展や偽腔灌流の増悪を招く。適切なのは送血を一時的に停止または流量を低下させて血圧をコントロールし、真腔送血の確認や送血部位(腋窩・大腿など)の変更を検討することである。
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解説
PETCO2(呼気終末二酸化炭酸ガス分圧)はPaCO2と強く相関し、波形形態(カプノグラム)が正常でも、全身のCO2負荷増大や肺胞換気低下があれば数値は上昇する。概念的には $P_{aCO_2} \propto \frac{\dot V_{CO_2}}{\dot V_A}$(CO2産生 $\dot V_{CO_2}$ が増える、あるいは肺胞換気 $\dot V_A$ が減るとPaCO2が上がり、PETCO2も上昇)。低換気は肺胞換気が減少するためPETCO2が上昇する。二酸化炭素気腹ではCO2が体内に吸収されCO2負荷が増えるためPaCO2/PETCO2が上昇する。一方で、死腔減少は換気効率の改善によりPaCO2が低下しやすく、PETCO2は上昇を示さない。肺梗塞は肺血流低下により生理学的死腔が増え、ET–aCO2較差が拡大してPETCO2は低下する。食道挿管では肺胞換気が成立せず、カプノグラムは正常形態を示さずPETCO2はほぼゼロとなる。
選択肢別解説
低換気では肺胞換気($\dot V_A$)が低下し、$P_{aCO_2} \propto \frac{\dot V_{CO_2}}{\dot V_A}$ の関係からPaCO2が上昇する。PETCO2はPaCO2に追随して上昇し、波形形態は保たれたまま数値が高くなるため、該当する。
二酸化炭素気腹(腹腔鏡手術など)では吸収されたCO2により全身CO2負荷($\dot V_{CO_2}$)が増加し、PaCO2が上昇する。これに伴ってPETCO2も上昇する。気道や呼吸回路に異常がなければ波形形態は正常のまま値のみ上がるため、該当する。
死腔減少は換気効率の改善を意味し、同じ分時換気で肺胞換気が増えるためPaCO2は低下傾向となる。一般にPETCO2も低下または不変で、上昇の原因とはならない。
肺梗塞では肺血流が低下し生理学的死腔が増加、ET–aCO2較差が拡大してPETCO2は低下するのが典型である。波形形態が大きく崩れないこともあるが、上昇ではないため該当しない。
食道挿管では肺胞換気が成立しないためCO2排出が起こらず、数呼吸後にPETCO2はほぼゼロとなる。カプノグラム波形も正常形態を示さないため、上昇とは逆であり該当しない。
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解説
体外循環(人工心肺)では回路充填液による希釈、低体温、血液の異物表面接触による炎症反応やストレス反応が同時に起こる。これによりカテコールアミンやレニン−アンジオテンシン−アルドステロン系は亢進し、炎症性サイトカインも上昇しやすい。一方、回路充填液による急速な血液希釈、輸血・回収血に含まれるクエン酸によるキレート、アルカローシスやアルブミン結合の変化などにより、特にイオン化カルシウムは低下しやすく、カルシウム補正を要することが多い。従って血中濃度が低下する代表はカルシウムである。
選択肢別解説
血糖は体外循環中のストレス反応(カテコールアミン・コルチゾール上昇、インスリン抵抗性)により上昇しやすい。したがって「低下」は誤り。
体外循環では腎血流の変動や交感神経亢進によりレニン−アンジオテンシン−アルドステロン系が活性化し、レニンは上昇傾向となる。低下ではないため不適。
低体温・手術侵襲・人工心肺そのもののストレスでアドレナリン(カテコールアミン)は上昇する。低下ではないので不適。
人工心肺回路との接触や補体系活性化で炎症反応が惹起され、IL-6やTNF-αなど炎症性サイトカインは一般に上昇する。したがって低下という記載は不適。
回路充填液による血液希釈、輸血・回収血中のクエン酸によるCa2+キレート化、アルカローシスや蛋白結合変化の影響でイオン化カルシウムが低下しやすい。よって体外循環中に血中濃度が低下するのはカルシウムである。
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解説
不均等換気は肺内でコンプライアンスや気道抵抗が異なる部位が混在し、時間定数 $\tau=R\times C$ の違いによって吸気が偏在する状態である。是正には、虚脱・低コンプライアンス部位を再膨張させ、時間定数の長いユニットにも十分な吸気時間を与えて平均気道内圧を高める戦略が有効である。EIP(吸気終末ポーズ)を設定すると吸気終末でプラトーを保持し、吸気保持時間と平均気道内圧が増えて遅 filling ユニットにもガスが分布しやすくなる。PCVは吸気相で設定圧を維持し減衰流となるため、時間をかけて硬い・抵抗の高い領域にも換気を行き渡らせ、リクルートメントと分布の均等化を促す。一方、換気回数増加や機械的死腔の付加は分布の偏りを正しにくく、吸入気酸素濃度の上昇は低酸素血症の対症であって不均等『換気』そのものの是正策ではない。
選択肢別解説
不適。換気回数を増やすだけでは虚脱・低コンプライアンス部位の再膨張や分布改善は得にくい。むしろ1回換気量や吸気時間が短くなりやすく平均気道内圧も上がらないため、時間定数の長いユニットの充満が不十分となる。状況次第では空気トラッピングを助長し得る。
不適。FiO2を上げることは低酸素血症の対症療法であり、換気分布の不均一(不均等換気)という機序自体を是正するものではない。虚脱肺胞のリクルートメントや時間定数差の解消につながらない。
適切。EIP(吸気終末ポーズ)を設定すると吸気終末でプラトーを保持でき、吸気保持時間と平均気道内圧が増加する。これにより時間定数の長いユニットにもガスが行き渡り、虚脱肺胞の再開放と換気分布の均等化に寄与する。
適切。PCVは吸気相全体で設定圧を維持し減衰流となるため、硬い・抵抗の高い領域にも時間をかけて流入させられる。平均気道内圧が高まりリクルートメントが進み、不均等換気の改善に有利である。
不適。機械的死腔の付加はガス交換に寄与しない換気量を増やすだけで、換気分布の均等化やリクルートメント効果はない。PaCO2上昇のリスクがあり、不均等換気の是正策としては不適切。
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解説
ICUで用いられる人工呼吸器は、陽圧換気を安全かつ安定に実施するために、(1)吸気・呼気を切り替え、呼気を外部へ排出しつつPEEPを付与する呼気弁系、(2)換気の安全監視と制御のための気道内圧モニタ(圧センサ・アラーム系)、(3)医療用空気と酸素を所定の比で混合して設定FiO2を供給する酸素濃度調節装置(ブレンダ)などを備える。ICUの人工呼吸器は開放(半開放)回路で再呼吸を前提としないため、麻酔器の循環回路で用いる二酸化炭素吸収装置(ソーダライム等)は構成要素に含まれない。またピンインデックスシステムは小型ガスボンベの誤接続防止規格であり、人工呼吸器本体の構成要素とはいえない。
選択肢別解説
正しい。呼気弁は呼気相に患者回路を大気(排気系)へ開放し、さらにPEEPを精密に制御する中核部品で、現代のICU用人工呼吸器に必須である。
正しい。気道内圧モニタはPIPやプラトー圧、PEEPなどを監視し、過圧や回路異常をアラームで検出する。圧規定・量規定いずれの換気でも安全確保に不可欠である。
正しい。酸素濃度調節装置(酸素・空気ブレンダ)はO2とAirを混合し、設定FiO2の吸入ガスを供給するための基本構成要素である。
誤り。二酸化炭素吸収装置は麻酔器の循環(閉鎖)回路で再呼吸時にCO2を除去するためのもので、ICUの人工呼吸器(開放・半開放回路)には通常用いられない。
誤り。ピンインデックスシステムは小型ガスボンベ用の誤接続防止規格(ヨーク式接続)であり、人工呼吸器本体の構成要素ではない。ICUでは中央配管からガス供給されるのが一般的である。
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解説
NPPV(非侵襲的陽圧換気)は、自発呼吸が保たれ、気道防御反射が十分に機能している患者に対して、マスクを介して陽圧を付与し換気・酸素化を補助する治療である。代表的な適応は、COPD急性増悪に伴う高二酸化炭素血症(Ⅱ型呼吸不全)や、心原性肺水腫(うっ血性心不全)で、挿管回避・呼吸仕事量軽減・ガス交換改善の有効性が確立している。一方、全身麻酔のように自発呼吸や気道反射が失われる状況、誤嚥性肺炎のように誤嚥リスクが高い状況、進行したARDSのように高いPEEPや厳密な肺保護換気が必要な重症低酸素血症では、NPPVは不適切または失敗率が高く、侵襲的人工呼吸管理が原則となる。
選択肢別解説
全身麻酔下では自発呼吸や気道防御反射が低下・消失していることが多く、確実な気道確保と機械換気が必要となる。NPPVは自発呼吸の存在と気道保護が前提であり適応外。
うっ血性心不全(心原性肺水腫)ではCPAPまたは二相式NPPVによりEPAP/PEEPで肺胞虚脱を防ぎ酸素化を改善し、前負荷・後負荷の低減で循環動態も改善する。挿管率・死亡率の低下が示され、適応である。
COPD急性増悪では気道閉塞により換気不全とPaCO2上昇、呼吸性アシドーシスを来す。NPPVは換気補助(IPAP)と呼気陽圧(EPAP)で呼吸仕事量を軽減し、ガス交換を改善して挿管回避に有効であり、適応。
誤嚥性肺炎は誤嚥リスクや分泌物量が多いことが多く、NPPVでは気道を確実に保護できないため再誤嚥や増悪の危険がある。意識障害や喀痰多量例では特に禁忌寄りであり、一般に適応とならない。
進行したARDSは重度の低酸素血症と低コンプライアンスを伴い、高PEEP・厳密な肺保護換気が必要となる。NPPVは失敗率が高く挿管遅れのリスクもあるため、進行例では適応とならない。
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解説
高気圧酸素治療(HBO)では、加圧下で高濃度酸素を吸入するため動脈酸素分圧が大幅に上昇し、ヘンリーの法則により血漿中の溶解型酸素が著しく増加する。溶解型酸素量はおおむね $\mathrm{[mL/dL]}=0.0031\times \mathrm{PaO_2\ [mmHg]}$ に比例し、常圧空気呼吸時($\mathrm{PaO_2}\approx 100\ \mathrm{mmHg}$)の約0.3 mL/dLから、HBO下では数mL/dL規模へ増加する。一方、結合型酸素はヘモグロビン濃度と酸素飽和度(SaO2)に依存し、SaO2は通常時でも高値でHBO下でもほぼ100%であるため、結合型酸素は実質的に増えない。このため「結合型酸素の増加」は誤りとなる。その他の作用として、高分圧酸素による酸素毒性(中枢神経系・肺)のリスク、COHbからの一酸化炭素の解離促進による排出促進、加圧と高酸素により窒素など不活性ガスの除去が促進されることが知られている。
選択肢別解説
高分圧酸素の暴露により中枢神経系(けいれんなど: Paul Bert効果)や肺(炎症・線維化傾向: Lorrain Smith効果)の酸素毒性が発現し得る。生体への作用として正しい記述であり、誤りではない。
ヘンリーの法則により、加圧下で動脈酸素分圧($\mathrm{PaO_2}$)が上昇すると血漿への酸素溶解量が比例して増える。常圧空気呼吸の約0.3 mL/dLに比べ、HBOでは数mL/dLまで増加するため正しい。
結合型酸素量はヘモグロビン濃度と酸素飽和度(SaO2)に依存する。HBO下でもSaO2はほぼ100%であり、常圧時と比べて結合型酸素は実質的に増加しない。したがって「結合型酸素の増加」は本設問における誤りの記述である。
高分圧酸素によりCOHbからのCO解離が促進され、酸素化ヘモグロビンへの置換が進むことでCOの体外排出が加速する。CO中毒治療にHBOが用いられる根拠であり、正しい。
再圧と高酸素により、ボイルの法則に基づく気泡体積の減少と、窒素など不活性ガスの分圧勾配増大による洗い出しが促進される。減圧症治療の原理であり、正しい。
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