臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
人工心肺による体外循環(CPB)では、手術侵襲・体外循環そのもののストレス、低体温、血液の回路接触による炎症反応、希釈(プライミング)などが重なり、生体反応が大きく変化する。代表的には交感神経・副腎髄質が亢進してカテコールアミン(アドレナリン)が上昇し、RAASも賦活化して血中レニン活性が上昇する。低体温やストレスホルモン(カテコールアミン、コルチゾール)によりインスリン分泌・感受性が低下するため血糖は上昇傾向となる。電解質は希釈や低体温・アルカローシスの影響で一般に低下傾向(とくにK+は細胞内移行しやすい)が基本だが、溶血・アシドーシス・腎機能低下・心筋保護液の影響などで上昇する場面もある。さらに回路接触により白血球が活性化し、IL-6 を含むサイトカインが増加する。したがって本問では「血中アドレナリン値は上昇する」が正しい。
選択肢別解説
誤り。CPBでは低体温や手術・循環のストレスでインスリン分泌・感受性が低下し、コルチゾールやカテコールアミンの上昇も相まって血糖は上昇しやすい。プライミング液や術中投与薬の影響が加わることもあるが、低下が一般的という説明は不適切。
誤り。一般にはプライミングによる希釈と低体温・アルカローシスに伴う細胞内移行で血中K+は低下傾向。ただし溶血、アシドーシス、腎機能低下、心筋保護液の漏出などで上昇する場面もあるため例外はあるが、「上昇する」との断定は不正確。
誤り。CPBは循環動態変動や非拍動流などのストレスによりRAASが賦活化し、血中レニン活性は増加する。したがって低下とする記載は不適切。
正しい。体外循環および手術侵襲は強いストレスとなり、交感神経系が亢進してアドレナリン(エピネフリン)などのカテコールアミンは上昇する。
誤り。血液の異物接触により白血球が活性化され、補体・サイトカインが放出される。IL-6は代表的に上昇し、全身炎症反応(SIRS)に関与するため、低下とはならない。
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解説
提示波形は吸気相で気道内圧がなだらかに上昇し、ピーク付近に短い平坦部(プラトー)を示した後、呼気へ移行して基線の0 cmH2O付近まで戻る。これは量規定換気(VCV)で吸気終末休止(EIP)を付加したときにみられる典型像で、EIPによりピーク圧(Ppeak)からプラトー圧(Pplat)へと圧がやや低下して平坦になる。呼気終末圧が0付近であるためPEEPは設定されていない。波形は規則的で歪みや急峻なノッチがなく、ファイティング所見もない。I:Eは視認上Ti<Teであり2:1ではない。正答は「吸気終末休止をおいている」。
選択肢別解説
誤り。圧規定換気(PCV)なら吸気開始直後に設定圧まで急峻に立ち上がり、その圧が吸気中ほぼ一定の“台形(矩形)”波形となる。提示波形は吸気中に圧が漸増するため量規定換気(VCV)の特徴である。
正しい。吸気終末に送気を一時停止すると、気道内圧はピークからやや低下して平坦なプラトー(Pplat)が形成される。図ではピーク付近に短い平坦部が明瞭で、吸気終末休止(EIP)を置いている所見である。
誤り。ファイティング(患者—人工呼吸器不同調)があると、圧波形に不規則な鋭いノッチや急峻な変動が混入する。提示波形は滑らかで周期も一定であり、ファイティング所見はない。
誤り。PEEPが設定されていれば呼気終末圧は0 cmH2Oより上で安定する。図では各呼気終末で基線(約0 cmH2O)に戻っており、PEEPはかかっていない。
誤り。図の時間スケール(1 s)と波形からは吸気時間Tiは呼気時間Teより短く、I:Eはおおむね1:1以下(Ti<Te)である。2:1(Ti>Te)には該当しない。
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解説
人工心肺(CPB)の各構成要素と機能の正誤判定。ベント回路は左心系に貯留する還流血や気泡を吸引し、左室拡張を防いで心内圧を下げ、無血視野を確保するために用いられるため正しい。冠灌流回路は大動脈遮断後に心筋保護液(心停止液)を冠動脈内へ注入するための回路であり正しい。遠心ポンプは主として脱血・送血などの主循環ポンプに用いられ、心腔内出血の吸引・回収(カーディオトミ吸引)は通常ローラポンプで行うため、遠心ポンプ——心腔内出血回収は誤り。血液濃縮器(ヘモコンセントレータ)は半透膜による限外濾過で血漿水分や小分子溶質を除去しヘマトクリットを上げる装置であり、赤血球を取り除く装置ではないため、血液濃縮器——余剰赤血球除去は誤り。動脈フィルタは人工肺後で送血直前に配置され、微小気泡や血栓などの栓子を除去するため正しい。したがって誤りは3と4。
選択肢別解説
ベント回路は左心室・左心房・肺静脈等からの還流血や気泡を吸引し、左心系の減圧・減容(心内圧減圧)と無血視野の確保、左室拡張防止に寄与する。よって組合せは正しい。
冠灌流回路は大動脈遮断後に心筋保護液(心停止液)を冠動脈へ注入して心筋代謝を抑制・保護する目的で使用される。組合せは正しい。
遠心ポンプはCPBの主ポンプ(送血・脱血補助)として用いられるのが一般的で、心腔内出血回収(カーディオトミ吸引)は定流量で吸引しやすいローラポンプが適している。遠心ポンプは吸引用途では安定した陰圧制御が難しく空気混入時の挙動にも注意を要するため、組合せは誤り。
血液濃縮器(ヘモコンセントレータ)は半透膜の限外濾過で血漿水分や小分子を除去し、ヘマトクリットを上昇させる装置である。赤血球を除去する目的ではないため、「余剰赤血球除去」との組合せは誤り。赤血球そのものの除去・洗浄は自己血回収装置(セルセーバ)等の領域である。
動脈フィルタは人工肺の後段に設置し、送血前に血液中の微小気泡や微小栓子(血栓・組織片など)を捕捉・除去する。よって組合せは正しい。
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解説
高気圧酸素治療(HBO)は加圧環境下で高濃度酸素を吸入させ、ヘンリーの法則により血漿中の溶存酸素を著明に増やすことが主たる効果である。これにより組織低酸素の是正や不活性ガス(窒素など)の洗い出しが得られる。一方、ヘモグロビンに結合する酸素(結合型酸素)は、純酸素吸入では常圧でも飽和度がほぼ100%に達しているため、加圧してもほとんど増加しない。また、二酸化炭素(CO2)の体内での取り扱いはHBOの主作用ではなく、加圧によりCO2の溶解を積極的に促進させるという臨床的意義はない(むしろ高酸素化に伴うHaldane効果で血液からのCO2放出が促され得る)。このため、「結合酸素の増加」と「二酸化炭素の溶解促進」は誤りであり、酸素毒性の発現、溶存酸素の増加、不活性ガスの排出はHBOで起こり得る(または治療上利用する)事象で正しい。
選択肢別解説
正しい記述(誤りではない)。高分圧酸素への曝露により中枢神経型や肺型の酸素毒性が生じ得るのはHBOの周知の副作用である。安全管理上、曝露圧力・時間の制限や休息(エアブレイク)が設けられる。
正しい記述(誤りではない)。HBOでは吸入酸素分圧が上昇し、ヘンリーの法則により血漿中の溶存酸素量が圧力に応じて増加する。これが低酸素組織への酸素供給改善の主作用である。
誤り。ヘモグロビンに結合する酸素は、純酸素吸入下では常圧でも飽和度がほぼ100%に達するため、加圧しても結合型酸素は実質的に増えない。HBOで増えるのは主に血漿中の溶存酸素である。
誤り。HBOの臨床的効果としてCO2の溶解促進を期待することはない。加圧しても肺胞のCO2分圧を上げるわけではなく、体内でCO2がより多く溶ける方向に働くという治療意義は乏しい。むしろ高酸素化によりHaldane効果で血液からのCO2放出(排出)が促され得る。
正しい記述(誤りではない)。高酸素・高圧環境により組織と血中の不活性ガス(主に窒素)との分圧勾配が有利になり、洗い出しが進む。減圧症や動脈ガス塞栓の治療でこの効果を利用する。
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解説
高気圧酸素治療(HBOT)は、環境圧上昇により気体の体積を縮小させる(ボイルの法則)とともに、溶解型酸素を著明に増加させ(ヘンリーの法則)、低酸素組織の酸素化改善、気泡の再溶解・洗い出し、炎症・浮腫の軽減、嫌気性菌に対する抑制などをもたらす。減圧症、動脈ガス塞栓、ガス壊疽、コンパートメント症候群(挫滅傷を含む急性外傷性虚血)はいずれも適応として広く認められる。一方、酸素中毒はHBOTの代表的副作用(中枢神経型・肺型)であり、治療適応ではないため、本設問の『適応でない』に該当する。
選択肢別解説
減圧症はHBOTの代表的適応。加圧により気泡体積を縮小させ、溶解型酸素を増加させて窒素の再溶解と洗い出しを促進し、組織酸素化を改善する。神経症状の回復や後遺症軽減が期待できる。
ガス塞栓(特に動脈ガス塞栓)はHBOT適応。加圧で気泡を縮小し、ガス分圧勾配を有利にして吸収を促進、かつ高酸素血で虚血組織を保護する。神経学的転帰改善のため迅速な再圧治療が推奨される。
酸素中毒はHBOTの副作用であり適応疾患ではない。高い酸素分圧で中枢神経型(痙攣など)や肺型(咳嗽・胸部不快・肺機能低下)を来すことがある。対策は分圧低減やエアブレイク等であり、HBOTの適応からは除外される。
ガス壊疽(クロストリジウム性筋壊死)はHBOT適応。高酸素環境は偏性嫌気性菌の増殖・毒素産生を抑制し、白血球機能や抗菌薬効果を補助する。外科的デブリドマンと抗菌薬治療の補助として有効。
コンパートメント症候群はHBOT適応(挫滅傷などの急性外傷性虚血を含む)。高酸素血により虚血組織の酸素化を補い、浮腫軽減や再灌流障害の抑制が期待できる。根治は減張切開だが、HBOTは補助療法として用いられる。
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解説
死腔はガス交換に関与しない換気容積で、解剖学的死腔(外鼻孔〜終末細気管支までの伝導気道)と、換気はあるが血流が乏しい/ない肺胞に由来する肺胞死腔の和=生理学的死腔で表される。成人安静時の代表値として解剖学的死腔はおよそ150 mL、1回換気量は約500 mLで、生理学的死腔率 $\mathrm{V_D}/\mathrm{V_T}$ は概ね0.3となる。人工鼻(HME)は回路に付加される容積(器械・回路死腔)を増やす。肺血栓塞栓症では肺血流が途絶する領域が生じ、換気はあるが灌流のない肺胞が増えるため肺胞死腔が増加し、生理学的死腔が増える。呼吸パターンは死腔率に大きく影響し、浅速呼吸では $V_T$ が小さくなる一方で解剖学的(+器械)死腔はほぼ一定のため $\mathrm{V_D}/\mathrm{V_T}$ が上昇する。参考として Bohr(Enghoff)式 $\mathrm{V_D}/\mathrm{V_T}=\frac{P_{a\mathrm{CO_2}}-\bar{P}_{E\mathrm{CO_2}}}{P_{a\mathrm{CO_2}}}$ や肺胞換気式 $V_A=(V_T-V_D)\times f$ が用いられる。
選択肢別解説
誤り。解剖学的死腔は外鼻孔から終末細気管支までの伝導気道を指す。呼吸細気管支には肺胞上皮が散在しガス交換が開始するため、解剖学的死腔には含まれない。
誤り。人工鼻(HME)はYピースと気管チューブ間などに装着するため器械(回路)死腔を付加し、生理学的死腔に加算される。特に小児・低体重では影響が大きい。
正しい。肺血栓塞栓症では塞栓により肺血流が遮断され、換気はあるが灌流のない肺胞(肺胞死腔)が増加するため、生理学的死腔が増える。
正しい。成人安静時の代表値として1回換気量約500 mL、解剖学的死腔約150 mLより、死腔率 $\mathrm{V_D}/\mathrm{V_T}\approx150/500=0.3$ と見なせる(個体差・条件で変動)。
誤り。呼吸パターンは死腔率に影響する。浅く速い呼吸では $V_T$ が小さく、死腔量(解剖学的+器械)はほぼ一定のため $\mathrm{V_D}/\mathrm{V_T}$ は上昇し、深くゆっくりでは低下する。機械換気設定でも同様に影響する。
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解説
医療安全で用いられるインシデント影響度分類では、レベル0〜2をヒヤリハット(レベル2以下)とし、患者に実害がない(0,1)か、あっても一過性・軽微で観察や最小限の対応で済む程度(2)を指す。選択肢3は誤投与が患者に到達したが影響なしでレベル1相当、選択肢4は期限切れ資材の使用が判明したが患者の不利益は記載されずレベル0〜1相当で、いずれもヒヤリハットに該当する。一方、選択肢1・2・5はいずれも傷害(感染発症・気道閉塞・骨折)という実害が生じており、通常レベル3以上に分類され、ヒヤリハットには該当しない。
選択肢別解説
医療従事者が針刺し後に感染症を発症しており実害が発生。観察のみでは済まず処置・治療を要するためレベル3a以上に相当し、ヒヤリハット(レベル2以下)には該当しない。
加温加湿器の電源入れ忘れにより患者が気道閉塞という有害事象を起こしている。重篤化の可能性が高く、濃厚な処置を要するためレベル3b以上に相当し、ヒヤリハットには該当しない。
輸液ポンプの設定誤りで過剰投与はあったが患者への影響はなかった。患者に実害なしの事例はレベル1(または施設基準で0~1)に分類され、ヒヤリハット(レベル2以下)に該当する。
AED使用後にパッドの使用期限切れが判明。使用はされたが患者の不利益は記載されておらず有害事象なし。機器管理上の不適合で、影響度はレベル0~1相当と判断でき、ヒヤリハット(レベル2以下)に該当する。
透析直後に転倒し骨折という傷害が発生。手術や入院期間延長の可能性があり、レベル3a以上に分類されるため、ヒヤリハットには該当しない。
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