臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
自然気胸は臓側胸膜の破綻により胸腔内へ空気が漏れ、肺が虚脱する状態で、若年・長身・やせ型の男性に多く、喫煙が危険因子となる。原因の多くは肺尖部を中心とするブレブ(小嚢胞)やブラ(大きめの嚢胞)の破裂であり、胸部CTでこれらの異常気腔を高率に同定できる。聴診では患側の呼吸音が減弱し、鼓音の亢進や胸郭運動の低下を伴う。陽圧換気中は肺胞内圧上昇により気胸(多くは医原性・圧外傷性)が生じうるため「発生しない」は誤り。緊張性気胸は胸腔内圧が著明に上昇して静脈還流が阻害され致死的となるため、自然軽快は期待できず、直ちに減圧(第2肋間鎖骨中線などでの穿刺)と胸腔ドレナージが必要である。
選択肢別解説
誤り。自然気胸は一般に若年・長身・やせ型の男性に多い。女性に多いわけではない(女性ではLAMなど特異な基礎疾患例を除けば頻度は低い)。
誤り。呼吸音が減弱するのは患側(気胸側)である。肺が虚脱して換気が低下するためで、健側の呼吸音は相対的に保たれる。
正しい。自然気胸の多くはブレブやブラの破裂が原因で、胸部CTでこれらの異常気腔が確認される。単純X線で同定困難でもCTで描出されることが多い。
誤り。陽圧換気中でも気胸は発生しうる(圧外傷・医原性気胸)。したがって「発生しない」は不適切。
誤り。緊張性気胸は胸腔内圧上昇により呼吸循環不全を来す緊急事態であり、自然軽快は期待できない。直ちに減圧処置と胸腔ドレナージが必要である。
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解説
加温加湿器は、人工呼吸器から供給される乾燥ガスを患者に適した温度・湿度に調整する装置で、臨床ではチャンバー出口や患者口元付近の温度をセンサで検出し、ヒータをサーボ制御する「温度制御」が標準的である。湿度そのものをリアルタイムに測定・フィードバックして制御する方式は一般的ではないため、「患者吸気の湿度によって制御される」という記述は不適切で誤りとなる。適切な運用では患者口元でおおむね32〜35℃、絶対湿度30〜35 mg/L程度を目標に管理し、回路内の温度低下による結露(レインアウト)を防ぐ目的でヒータワイヤ付き回路を用いる。ヒータワイヤがない場合は回路途中にウォータトラップを設け、結露水の貯留・排出により患者側への流入を防止する。さらに、加湿器内の水は温かく細菌が増えやすいため、滅菌水の使用や清潔操作・交換スケジュールの順守が重要である。不十分な加湿は気道線毛機能低下、痰の粘稠化、栓塞、無気肺などの肺合併症を招く。
選択肢別解説
誤り。一般的な加温加湿器は温度センサからの情報を用いたサーボ制御で作動し、患者口元付近の温度設定を達成することで結果的に所要の湿度を得る。湿度値を直接測定してフィードバック制御する方式は通常ではない。
正しい。加湿器内は温かく微生物が増殖しやすい環境であり、滅菌水の使用、清潔な取り扱い、定期的な交換などによる汚染防止が不可欠である。汚染は呼吸器感染のリスクとなる。
正しい。ヒータワイヤは回路内ガスの温度低下を抑え、水蒸気の凝結(レインアウト)を防止することで結露を減らす機能を持つ。
正しい。ヒータワイヤがない回路では温度低下により結露が生じやすく、貯留した水が患者側へ流入する危険があるため、途中にウォータトラップを設けて回収・排水する必要がある。
正しい。不十分な加湿は気道乾燥、線毛機能障害、喀痰粘稠化による排出不良を生じ、無気肺や下気道感染などの肺合併症の原因となる。
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解説
人工心肺中に人工肺を交換すべき状況は、人工肺そのものの機能低下や安全性低下が不可逆的・重大で、運転条件の調整や一時的対処で回復が見込めない場合である。代表例は膜の親水化や劣化による血漿漏出、気相側の結露や膜面の濡れ進行によるいわゆるwet lung、リザーバ/除泡部の機能低下による微小気泡混入リスクの増大などで、いずれもガス交換能や安全性の顕著な低下を招くため交換対象となる。一方、溶血は多くがポンプ操作・陰圧・カニュラ条件など回路運用由来であり人工肺交換の直接適応ではない。回路内空気混入も通常は再循環・エアパージ・動脈フィルタ等で除去可能で、人工肺交換は原則不要である。
選択肢別解説
溶血はポンプ圧閉度不良、過度の陰圧吸引、カニュラ不適合、吸引血の扱いなど回路運用要因が主因で、人工肺交換の一次適応ではない。原因是正(ポンプ条件是正、吸引調整、カニュラ見直し)と支持療法で対処し、人工肺自体の故障所見がない限り交換は不要と判断する。
血漿漏出は膜型人工肺の膜が親水化・劣化し、細孔から血漿成分がガス側へ滲出する現象で、泡立ちやガス交換能低下、圧力損失増大を招く。運転条件の調整で回復しにくく、安全性・性能低下が持続するため人工肺の交換適応となる。
"wet lung"(ウェットラング)は人工肺の気相側での結露や膜面の濡れ進行によりガス拡散が阻害され酸素化・二酸化炭素除去が低下する状態を指す。酸素フラッシュや加温等で改善することもあるが、顕著で回復しない場合はガス交換能の確保のため人工肺交換を要する。
除泡能の低下(リザーバ/デフォーマ部や統合除泡機能の劣化・飽和など)は送血側への微小気泡移行リスクを高め、脳塞栓等の重大合併症につながる。対処で回復しない場合は安全性確保の観点から人工肺(または該当ユニット)の交換が必要となる。
回路内空気混入は、再循環ラインでの脱気、動脈フィルタやベント操作、エアパージ等で除去可能であり、人工肺自体の機能不全がない限り交換は不要。まずは原因部位の同定・除去と回路管理で対処するのが適切である。
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解説
高気圧酸素治療(HBOT)は、加圧環境で高濃度酸素を吸入させることで、溶存酸素を増やし組織酸素化を改善するとともに、気体の体積を圧縮して気泡関連障害を軽減する治療である。代表的適応は、減圧症・動脈空気塞栓・一酸化炭素中毒・ガス壊疽・突発性難聴(発症早期)・難治性骨髄炎・放射線障害・一部の虚血性病態などである。設問の中では、減圧症(気泡縮小と再溶解促進)、突発性難聴(蝸牛の酸素化と微小循環改善)、腸閉塞の一部(機能的[麻痺性]腸閉塞などで腸管内ガスの縮小と粘膜酸素化改善を狙う)が適応となる。一方、中耳炎は中耳圧平衡が困難で鼓膜・中耳のバロトラウマを招きやすく適応外、自然気胸は未治療の気胸がHBOTの絶対禁忌であり適応とならない。よって正答は1・2・5である。
選択肢別解説
正答。減圧症は体内の不活性ガス気泡が血管・組織に障害を及ぼす。HBOTにより加圧で気泡体積を縮小し、酸素置換とガスの再溶解・排出を促進して症状改善を図るため、標準的適応である。
正答。突発性難聴では蝸牛の虚血や浮腫が関与する。HBOTは溶存酸素を増やして内耳の酸素化を高め、微小循環の改善と浮腫軽減を期待でき、発症早期の併用療法として適応に含まれる。
誤。中耳炎は中耳の換気・耳管機能が障害されており、HBOT中の圧平衡が困難で中耳バロトラウマを起こしやすい。治療適応ではなく、むしろ施行上の注意・相対禁忌に該当する。
誤。自然気胸(未治療)はHBOTの絶対禁忌とされる。加圧・減圧過程で気胸が増悪し緊張性気胸など重篤化の危険があるため、適応とはならない。
正答。腸閉塞のうち機能的(麻痺性など)で非絞扼性の場合は適応に含まれる。HBOTは加圧により腸管内ガス容積を縮小させて窮迫を軽減し、組織酸素化を改善して腸管虚血・浮腫の改善を促す。一方、絞扼性など外科的緊急が疑われる機械的閉塞はHBOTの適応外である。
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解説
NPPV(非侵襲的陽圧換気)の適応は、気道が自力で確保でき、分泌物の喀出が可能で、循環動態が安定し、患者が指示に従えることが前提となる。急性期ではCOPD急性増悪や心原性肺水腫が代表適応だが、重度の喀痰排出困難やショック、呼吸停止といった状況は禁忌(あるいは少なくとも強い不適応)で、速やかな気管挿管と侵襲的換気が優先される。一方、免疫不全患者では挿管に伴うVAPなどの合併症リスクが高く、軽度のARDSであればNPPVを試みる価値があるとされるため、これが適応となる。
選択肢別解説
喀痰排出困難を伴うCOPD急性増悪は、分泌物うっ滞による誤嚥・窒息リスクが高く、NPPVの重要な前提(自力で分泌物を喀出し気道を保てること)を満たさない。したがってNPPVは不適で、必要なら吸引や気管挿管を含む侵襲的管理を検討する。
心原性肺水腫はNPPVの代表適応だが、ショックを呈して循環動態が不安定な場合はNPPV禁忌(少なくとも不適応)で、気管挿管・循環管理を優先する。NPPVは前負荷・後負荷の低減に有効だが、ショック下では遅れが有害となる。
呼吸停止はNPPVの禁忌で、直ちに気管挿管と侵襲的陽圧換気を要する。喘息重積でも、呼吸停止や意識障害、分泌物排出困難がある場合はNPPVではなく挿管管理が適切。
免疫不全を伴う軽度のARDSでは、挿管に伴うVAPなどの合併症を避ける目的でNPPVが有用とされる。適応条件(協力可能・循環安定・気道防御反射と喀出が保たれる)を満たす軽症例であれば、NPPV導入を検討できる。
ALSは慢性呼吸不全の在宅NIV適応疾患だが、「呼吸筋麻痺」を来し気道防御や分泌物喀出が十分でない急性重症状態はNPPV不適で、挿管を含む侵襲的換気を要する。球麻痺合併や高度筋力低下では特にNPPVは適さない。
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