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臨床工学技士国家試験
解説
在宅人工呼吸療法(HMV)は、慢性的な肺胞低換気により高二酸化炭素血症を来すII型呼吸不全(例:COPDの進行例、神経筋疾患、胸郭変形、肥満低換気症候群など)を主な対象とする。実施形態は非侵襲換気(NPPV)だけでなく、気管切開下の侵襲的換気(TPPV)も含まれる。安全な在宅運用のためには、患者本人に加えて家族・介護者が機器操作、回路管理、吸引、警報対応、停電・緊急時対応などの体系的な教育・訓練を受けることが必須である。家庭用人工呼吸器は電動タービン/ブロワ等で駆動し、家庭に医療用ガス配管はないためガス駆動を前提としない。モニタリングとしてパルスオキシメータ(SpO2・脈拍)は重要で、日常の観察や異常早期発見に用いられる。
選択肢別解説
誤り。HMVの主たる適応は慢性の低換気によるII型呼吸不全であり、I型(低酸素血症主体で二酸化炭素貯留を伴わない病態)は原則として在宅酸素療法(HOT)が中心となる。I型のみを根拠にHMV適応とするのは不適切。
誤り。気管切開下での侵襲的陽圧換気(TPPV)は在宅実施され得るHMVの一形態であり、気管切開患者がHMVの適応から除外されるわけではない。
正しい。HMVの安全運用には、家族・介護者が人工呼吸器の基本操作、回路交換・加湿管理、吸引、警報対応、トラブルシューティング、停電や機器故障時の対応、連絡体制などについて事前に系統だった教育・訓練を受けておくことが必須である。
誤り。家庭用人工呼吸器は主として電源で駆動する(電動タービン/ブロワ方式)。一般家庭には医療用ガス配管がないため、装置自体の駆動源としてガスを前提としない。必要に応じ酸素は濃縮器等から付加するが、これは駆動ではなく加酸素である。
誤り。パルスオキシメータは在宅でのSpO2・脈拍の常用モニタとして推奨され、呼吸状態の把握や増悪の早期発見、設定調整の評価などに用いられる。『用いられない』は不適切。
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解説
高気圧酸素治療(HBOT)は、加圧環境下で高濃度酸素を吸入させ、ヘンリーの法則により溶解型酸素を著明に増やすことで低酸素組織の酸素化を改善し、炎症・浮腫の軽減、好中球機能の増強・嫌気性菌の抑制、創傷治癒促進(血管新生)をもたらす。またボイルの法則により閉鎖腔内ガスの体積を縮小させる物理効果も利用する。網膜動脈閉塞症や突発性難聴、慢性難治性骨髄炎、イレウス(腸管内ガス圧縮の物理効果を期待)などは適応に含まれる。一方、慢性呼吸不全は換気障害が主体であり、標準治療は在宅酸素療法(LTOT)や人工呼吸管理であってHBOTの適応ではない。したがって誤っているのは「慢性呼吸不全」である。
選択肢別解説
突発性難聴はHBOTの適応に含まれる。内耳の虚血・低酸素を溶解型酸素の増加で補い、浮腫軽減や微小循環改善を図る目的で用いられる。よって適応として妥当。
網膜動脈閉塞症はHBOTの代表的適応。脈絡膜循環からの拡散で網膜への酸素供給を一時的に補い、虚血時間を短縮する目的で早期施行が推奨される。したがって適応として正しい。
慢性呼吸不全はHBOTの適応ではない。病態の主因は換気障害であり、必要なのはLTOTや非侵襲的陽圧換気などの換気・酸素療法である。高圧環境での酸素投与は換気不全そのものを是正せず、重度高二酸化炭素血症の症例ではCO2貯留悪化の懸念もあるため不適切。
イレウス(腸閉塞)は、ボイルの法則による腸管内ガス体積の縮小効果と、腸管壁の酸素化改善を期待して適応に挙げられることがある。絞扼徴候が強い場合は外科的治療が優先されるが、適応疾患としては妥当。
慢性難治性骨髄炎はHBOTの確立した適応の一つ。組織酸素分圧上昇により好中球殺菌能が改善し、嫌気性菌の増殖が抑制され、血管新生や抗菌薬の効果増強も期待できる。よって適応として正しい。
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解説
人工呼吸器関連肺炎(VAP)は、気管挿管下での人工呼吸開始後48時間以降に発症する肺炎と定義される。主な起点はカフ上に貯留した口腔内細菌や胃内容物の微小誤嚥(マイクロアスピレーション)および気管チューブ内のバイオフィルムであり、カフ付き気管チューブを用いてもこれらの漏れ自体を単独では完全に防げない。予防はバンドル(上体挙上、鎮静の適正化・毎日の覚醒と抜管評価、口腔ケア、カフ圧管理、必要に応じたカフ上部吸引付きチューブの活用など)の複合対策が基本で、呼吸回路の頻回交換はかえってリスクとなりうる。吸気ガス起因は稀で、閉鎖式吸引は飛散抑制や換気中断の回避などの利点はあるがVAP発生率の低下に明確な一貫した効果は示されていない。以上より、設問で正しいのは「カフ付気管チューブでは予防できない」である。
選択肢別解説
正しい。カフ付き気管チューブのみではカフ上の分泌物が外側をすり抜けるマイクロアスピレーションを完全には防げず、VAPの発生を単独で予防することはできない。実際の予防は上体挙上、口腔ケア、適切なカフ圧管理、鎮静の最適化、必要に応じたカフ上部吸引などを組み合わせたバンドルで行う。
誤り。呼吸回路を毎日交換することは推奨されない。頻回交換は回路の開放機会を増やして汚染リスクを高めうるため、明らかな汚染や機能不全時に限った交換、または長い交換間隔が一般的に推奨される。
誤り。VAPの主経路は口腔内・咽頭内細菌や胃内容物の微小誤嚥、ならびに気管チューブ内バイオフィルム由来であり、吸気ガスそのものを主因とする感染は稀である(フィルタや加温加湿器の使用も背景にある)。
誤り。閉鎖式吸引は飛散防止や換気中断の回避といった利点はあるが、VAP発生率を有意に低下させるという一貫したエビデンスは確立していないため、「予防に有効」と断定できない。
誤り。VAPは人工呼吸(挿管)開始48時間以降の発症が定義であり、24時間以内の肺炎はVAPに該当しない。早期VAPはおおむね4日以内、晩期VAPは5日以降と分類されることが多い。
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解説
内視鏡下手術では、腹腔鏡手術の場合は二酸化炭素(CO2)で気腹して作業空間を確保する。気腹圧が上がると下大静脈が圧迫され静脈還流が低下し、結果として心拍出量は低下する(一般に気腹圧は8〜12 mmHg程度で管理)。胸腔鏡手術では術野確保のため片肺換気(分離肺換気)が必要となる。腹腔鏡手術では深部静脈血栓症(DVT)予防として間欠的下肢空気圧迫(IPC)などが推奨される。気腹ガスに酸素は用いず、不燃性で体内吸収が速いCO2が標準である。トロッカーを介して超音波吸引手術装置など各種器具の使用も可能である。したがって正しい記述は「気腹圧上昇で心拍出量は減少」である。なお、選択肢1の文面は医学的には正しい内容だが、本設問の正答設定と不整合があり、誤記の可能性が高い。
選択肢別解説
誤りとして扱われる。腹腔鏡下手術では胸腔鏡と異なり分離肺換気は通常不要であり、文面自体は一般的に正しい。しかし本設問の正答設定(2のみ正しい)と整合せず、出題意図は「胸腔鏡下手術に分離肺換気は不要である」という誤った記述を問うものだった可能性が高い。
正しい。CO2気腹で腹腔内圧が上昇すると下大静脈が圧迫され静脈還流が低下し、心拍出量は低下する。加えて全身血管抵抗の上昇など循環動態への影響も生じうるため、気腹圧は適切に管理する。
誤り。腹腔鏡下手術では体位変換や気腹による静脈還流低下、手術時間延長などによりDVTリスクが上がるため、間欠的下肢空気圧迫(IPC)や弾性ストッキングなどの血栓予防が推奨される。「不要である」は不適切。
誤り。気腹ガスはCO2が標準である。CO2は不燃性で体内吸収が速く、血液ガスへの影響も管理可能である。酸素は可燃性リスクがあり、気腹ガスとしては使用しない。
誤り。腹腔鏡下手術ではトロッカーを介して超音波吸引手術装置(CUSA等)を含む各種エネルギーデバイス・器具が広く用いられており、「使用できない」は不正確である。
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解説
人工心肺装置の各回路・機器の主目的に基づく整合性を問う問題。冠灌流回路は心筋保護液(カリウム高濃度の心停止液など)を大動脈基部や冠動脈口、冠静脈洞経由で注入するための回路であり、心腔の減圧は目的としない。一方、ベント回路は左室や心腔内の血液・気泡を吸引して心腔内圧を減少させ、左室過伸展の防止や手術野の安定化を図るもので、心筋保護液の注入は行わない。血液濃縮器は限外濾過により希釈による余剰水分を除去し、動脈フィルタは微小気泡や凝血片などの異物を除去する。血液吸引回路は術野・心腔内の出血を回収して体外循環リザーバに戻す。以上より、誤った組合せは「1: 冠灌流回路—心内圧の減少」と「5: ベント回路—心筋保護液の注入」である。
選択肢別解説
誤りの組合せ。冠灌流回路は心筋保護液(カーディオプレジア)を冠循環へ注入する回路であり、心内圧の減少は目的ではない。心腔の減圧や左室過伸展防止はベント回路が担う。
正しい組合せ。血液濃縮器(ヘモコンセントレーター)は限外濾過により余剰水分や一部溶質を除去し、希釈是正や水分バランス調整を行う(ECUM/UF)。
正しい組合せ。動脈フィルタは送血ラインに設置され、微小気泡や微小凝血塊などの異物を捕捉・除去し、塞栓リスクを低減する。
正しい組合せ。血液吸引回路(サクション/カーディオトミーサクション)は術野や心腔内に出た血液を吸引・回収し、貯血槽へ戻す目的で用いられる。
誤りの組合せ。ベント回路は心腔内(とくに左室や左房など)を吸引して減圧・脱気し、左室過伸展を防止するのが主目的。心筋保護液の注入は冠灌流回路(大動脈基部・冠動脈口・冠静脈洞経由)で行う。
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解説
量規定換気では設定一回換気量を送るため、回路や気道に抵抗増大(閉塞)やコンプライアンス低下があると、必要駆動圧が上がり回路内圧(特にピーク圧)が上昇する。具体例としては呼気回路の閉塞や、人工鼻(HME/フィルタ)の閉塞、患者−人工呼吸器不同期(咳き込み・ファイティング等)が挙げられる。一方、気管チューブのカフ圧低下はリーク増大を招き、圧は上がりにくい(むしろ低下傾向)。またホースアセンブリ(機器のガス供給側ホース等)の閉塞は本体側の供給圧低下・換気不能を来しやすいが、患者回路内圧を異常上昇させる機序には直結しない。したがって「原因でない」はホースアセンブリの閉塞と気管チューブカフ圧の低下である。
選択肢別解説
原因でない。ホースアセンブリは人工呼吸器のガス供給系(本体側)を指し、これが閉塞すると供給圧低下や換気不足となりやすい。患者回路の抵抗増大を介して回路内圧が異常上昇する機序にはならない。多くの場合は供給圧低下アラームや換気量低下として現れる。
原因でない。カフ圧低下により気道リークが増えると、送気した量の一部が漏れるため回路内圧(ピーク圧)は上がりにくく、むしろ低下傾向となる。高圧アラームよりもリーク・低換気が問題となる。
原因である。呼気回路の閉塞は呼気抵抗増大とガスの出口喪失により、呼気困難・空気トラッピング(自動PEEP)を生じ、次呼吸以降の基線圧・吸気時ピーク圧が上昇する。量規定換気では設定量を送ろうとするため圧上昇が顕著となる。
原因である。自発呼吸の出現により不同期(ファイティング)や咳込み・呼気努力が吸気相に重なると、回路・気道内の見かけ上の抵抗が増し、ピーク圧が上昇しやすい。噛み込みや体動も同様に高圧を招く要因となる。
原因である。人工鼻(HME/フィルタ)の閉塞はYピース直近の抵抗増大(実質的な回路閉塞)を生み、設定量を送ろうとする量規定換気下ではピーク圧が上昇する。
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