臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
胸郭の動きに左右差が出るのは、一側肺への換気が障害されているサインである。代表的には、気管チューブの挿入が深く一方の主気管支(多くは右)に入る片肺挿管、一側肺が虚脱して膨張できない気胸、あるいは一方の主気管支が喀痰で閉塞している場合が挙げられる。これらでは患側の呼吸音低下・消失や胸郭挙上の減弱が見られる。一方、呼吸回路の接続外れや食道挿管は、両肺への換気自体が失われるため、胸郭は両側で上がらないか極端に浅くなり、左右差というより両側性の換気不良として表れる。ベッドサイドでは、チューブ固定位置の確認、両側聴診、ETCO2の連続モニタ、気道内圧・コンプライアンスの変化、必要に応じて超音波や胸部X線での評価が有用である。
選択肢別解説
正しい。気管チューブが深く挿入され一方の主気管支(典型的には右)に入ると、片側肺のみ換気され、胸郭の挙上は換気される側で優位となる。患側の呼吸音は低下・消失し、SpO2低下や気道内圧上昇を伴うことがある。
正しい。気胸では患側肺が虚脱し、膨張できないため患側の胸郭挙上が減弱・消失する。陽圧換気中のバロトラウマでも起こりうる。患側の呼吸音低下・過共鳴、重症例では循環動態変化を伴う。
誤り。呼吸回路の接続外れは両肺への送気が失われるため、胸郭の動きは左右ともに低下・消失しやすく、左右差の主因とはなりにくい。回路全体やYピース近位の外れであれば左右差ではなく両側性の換気不良として現れる。
誤り。食道挿管では送気が消化管に流入し、肺換気が得られないため胸郭は両側で上がらないか極めて不十分になる。腹部膨満やETCO2波形の消失などを伴い、左右差の原因とはならない。
正しい。主気管支レベルの喀痰閉塞は閉塞側肺への送気を妨げ、肺コンプライアンスの左右差と胸郭挙上の左右差を生じる。吸引で改善すれば所見が是正される。
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解説
人工呼吸(気管挿管や機械換気)開始の目安として、換気量・呼吸筋力・換気効率の著明低下を示す以下の基準が広く用いられる。VTは体重当たり $5 \text{ mL/kg}$ 以下、VCは $10 \text{ mL/kg}$ 以下、FEV1.0は $10 \text{ mL/kg}$ 以下、PaCO2は $55 \text{ mmHg}$ 以上、呼吸数はおおむね $40 \text{/min}$ 以上など。体重50 kgでは、VTは250 mL以下、VCとFEV1.0は各500 mL以下が目安となる。したがって、VT 100 mL、FEV1.0 400 mL、PaCO2 60 mmHg、呼吸数42/分はいずれも開始基準を満たす。一方、選択肢2は原文に「Vc 8mL」とあるが、これでは基準の文脈と合致せず、試験の正誤指定(本問の誤り)とも整合しない。通常この設問意図は「VC 850 mL」であり、500 mL(=10 mL/kg)を上回るため開始基準としては不適切(誤り)となる。
選択肢別解説
VT 100 mLは体重50 kgに対し $100/50=2 \text{ mL/kg}$ で、開始目安の $\le 5 \text{ mL/kg}$ を大きく下回る。自発換気量の著減を示し、人工呼吸開始の適応を支持する数値である。
原文は「Vc 8mL」だが、これでは総量8 mLとなり臨床的に不自然で、また本問で「誤り」とされる選択肢にもならない。意図されたのは「VC 850 mL」と考えられる。体重50 kgのVC開始目安は $\le 10 \text{ mL/kg}=\le 500 \text{ mL}$ であり、850 mLはこれを超えるため人工呼吸開始基準としては不適切(誤り)である。
FEV1.0 400 mLは体重50 kgに対し $400/50=8 \text{ mL/kg}$ で、開始目安の $\le 10 \text{ mL/kg}$ を満たす。気流制限の著明化を示し、人工呼吸開始を支持する。
PaCO2 60 mmHg(室内気)は、一般に換気不全の指標(目安 $\ge 55 \text{ mmHg}$)を満たす。COPD増悪では高二酸化炭素血症が増悪指標となり得るため、人工呼吸開始の適応を支持する。
呼吸数42回/分は、過換気・呼吸筋疲労の進行を示し、一般的な開始基準の目安( $\ge 40 \text{/min}$)を満たす。したがって人工呼吸開始を支持する。
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解説
呼吸補助(血液の酸素化と二酸化炭素除去)を行うには、体外循環回路に膜型人工肺(人工肺)を組み込む必要がある。V-Aバイパス、PCPS、ECMOはいずれも膜型人工肺を併用するため呼吸補助が可能である。一方、IABPは大動脈内での対拍出による循環補助(後負荷低減・冠灌流改善)が主目的で人工肺を用いず、補助人工心臓(VAD)は心機能(流量)補助が目的でやはり人工肺を有さないため、単独では呼吸補助はできない。
選択肢別解説
IABPは下行大動脈内のバルーンを拡張期に膨張・収縮期に虚脱させて冠血流改善と後負荷低減を図る循環補助であり、人工肺を用いないため血液の酸素化・CO2除去は行えない。よって呼吸補助はできない。
V-Aバイパスは静脈脱血・動脈送血の補助循環で、回路に膜型人工肺を組み込むのが一般的である。人工肺により酸素化・二酸化炭素除去が可能で、呼吸補助を行える。
PCPS(経皮的心肺補助)は遠心ポンプと膜型人工肺を用いた閉鎖回路で、大腿動静脈からの経皮的カニュレーションでV-A補助を行う。人工肺により酸素化・CO2除去が可能で、呼吸補助を行える。
ECMO(体外膜型酸素化)は膜型人工肺を用いてガス交換を提供する治療で、V-A型・V-V型のいずれも酸素化とCO2除去が可能である。よって呼吸補助ができる。
補助人工心臓(VAD: LVAD/RVAD/BVAD)は機械ポンプで心拍出・流量を補助する装置であり、通常は人工肺を組み込まないためガス交換は行えず、呼吸補助はできない(人工肺を併設すれば概念的にはECMOとなる)。
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解説
体外循環(人工心肺, CPB)では、低血圧・非拍動流・血液希釈・低体温・手術侵襲などのストレスが加わり、交感神経—副腎髄質系と体液調節ホルモン系が活性化される。具体的には、腎血流やNa負荷の低下などからレニン−アンジオテンシン−アルドステロン(RAA)系が賦活し、アルドステロン分泌が増える。一過性低血圧や非拍動流はバソプレシン分泌を促進し、ストレス反応でカテコラミン(アドレナリン等)も上昇する。一方、低体温やカテコラミン増加、膵血流低下はインスリン分泌を抑え、インスリン抵抗性も増大して高血糖に傾く。さらに、血液が人工材料(回路・貯血槽・人工肺)に接触することで補体系・白血球が活性化し、IL-6やTNF-αなど炎症性サイトカイン濃度が上昇する。以上より、1と5が正しく、2・3・4は誤りである。
選択肢別解説
正しい。体外循環中は腎血流の低下や血液希釈に伴う有効循環血漿量・Na負荷の低下が刺激となり、レニン放出→アンジオテンシンII生成→アルドステロン分泌が促進され、RAA系が活性化する。
誤り。体外循環は手術侵襲や低血圧・非拍動流などのストレスとなり、交感神経—副腎髄質系が亢進するため、アドレナリン(およびノルアドレナリン)分泌は増加するのが一般的である。
誤り。バソプレシン(抗利尿ホルモン, ADH)は低血圧や左房圧低下、非拍動流などで分泌が促進され上昇する。したがって「低下する」は不正確。
誤り。低体温、膵血流低下、カテコラミン増加などによりインスリン分泌は抑制され、同時にインスリン抵抗性が増大するため、高血糖をきたしやすい。「亢進する」は不適切。
正しい。血液が人工材料と接触することで補体活性化や好中球・マクロファージ活性化が起こり、IL-6、IL-8、TNF-αなど炎症性サイトカインの血中濃度が上昇する。虚血再灌流もこれを助長する。
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解説
加温加湿器のトラブルは、電気系の不具合による感電、温度制御不良による高温ガス送達での気道熱傷、加湿不足で分泌物が乾燥・粘稠化して生じる気道閉塞、温度設定不良や回路温度勾配による回路内の異常結露(いわゆる“レインアウト”)などが典型である。これらはいずれも気道抵抗の増大や回路内抵抗の上昇、水溜まりによる流路狭窄などを介して呼吸仕事量を増やしうる。したがって「呼吸仕事量の減少」は、トラブルとしては考えにくい選択肢となる。
選択肢別解説
感電は、ヒータプレートや加温ホース(ヒータワイヤ)など電気部品の絶縁劣化・漏電で起こりうる代表的トラブルである。患者・スタッフ双方にリスクがあるため、定期点検やアース・漏電遮断器の確認が重要。よってトラブルとして成立する。
温度センサの不良、設置位置の誤り、設定ミスなどで過加温となると、高温の吸入ガスが気道に到達し気道熱傷を生じうる。特に新生児・小児や侵襲的人工呼吸中はリスクが高い。したがってトラブルとして成立する。
加湿不足は分泌物の乾燥・粘稠化を招き、気管チューブ内腔や気道内で痰栓形成を起こし、狭窄・閉塞につながる。これにより気道抵抗が増大し換気障害を来すため、トラブルとして成立する。
加温加湿器のトラブルは一般に気道抵抗や回路抵抗を増やし、呼吸仕事量を増加させうる(例:水貯留による流路狭窄、痰栓、温度制御不良)。一方「呼吸仕事量の減少」はトラブル像として整合しないため、考えにくい。
患者側回路が十分に加温されない、ヒータワイヤの制御不良、環境温度の影響などで露点を下回る部分が生じると、回路内に過剰な結露(レインアウト)が発生する。水溜まりは換気性能に悪影響を与えるため、典型的なトラブルである。
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