臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
ECMOは大別して静脈-動脈(V-A)と静脈-静脈(V-V)があり、V-Aは循環補助(心拍出や血圧の維持)を目的に用い、V-Vは主にガス交換補助(呼吸補助)を目的に用いる。V-A ECMOでは大腿動脈などへ逆行性に送血するため、流量を上げるほど大動脈圧が上がり左心室の後負荷はむしろ増加し得る。V-V ECMOでは送血血が近接する脱血側へ回り込む「再循環(recirculation)」が生じ得るため、カニュラ位置や流量設定に注意する。PCPS(経皮的心肺補助)は遠心ポンプ+膜型人工肺を用いたV-A ECMOと同様の回路構成で迅速導入を目的とした用法であり、回路構成の観点では同一とみなされる。
選択肢別解説
誤り。現在の臨床で主流なのは動脈-静脈(A-V)方式ではなく、静脈-動脈(V-A)と静脈-静脈(V-V)の2方式で、適応により使い分ける。A-V ECMO(動脈から静脈への拍動を利用した補助)は一般的ではない。
誤り。高度な心機能低下では循環補助が必要であり、静脈-動脈(V-A)ECMOを選択する。V-V ECMOはガス交換(呼吸)補助で、血行動態の補助はできない。
誤り。V-A ECMOは逆行性送血により大動脈圧が上昇し、流量が増えるほど自己左室の駆出に対する抵抗が増して左心室後負荷は増加し得る。左室拡張や肺うっ血のリスクにも注意が必要。
正しい。V-V ECMOでは送血・脱血が静脈系内で近接すると、送血血が十分に体循環へ行く前に再度脱血される再循環が生じ得る。カニュラ位置や回路流量・患者血流状態の最適化で低減する。
正しい。PCPS(経皮的心肺補助)は遠心ポンプと膜型人工肺で構成され、大腿静脈脱血・大腿動脈送血などのV-A ECMOと同一の回路構成である(運用目的や導入形態の違いはあるが、回路構成は同じ)。
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解説
PSVは患者の自発吸気努力をトリガとして、設定した圧サポートで吸気を補助し、吸気流量が一定割合まで低下すると呼気へ移行する流量サイクルのモードである。分時換気量はおおむね $\dot{V}_E=V_T\times f$ に依存し、PSVでは患者の呼吸ドライブと気道力学(抵抗・コンプライアンス)に大きく左右される。過鎮静は中枢呼吸ドライブを低下させて自発努力・呼吸回数が減少し、トリガ不能や低換気を招いて分時換気量を低下させる。気管チューブ閉塞は気道抵抗を上げてトリガ不全や1回換気量低下を生じ、結果として分時換気量が低下する。一方、代謝性アシドーシスは呼吸性代償で換気亢進を来し、胸郭肺コンプライアンス増大は同じ圧補助でより大きい1回換気量となるため、いずれも分時換気量は低下しにくい。カフ圧上昇はリーク抑制や気道粘膜障害のリスクに関与するが、通常は分時換気量低下の直接原因とはならない。
選択肢別解説
過鎮静は中枢性の呼吸ドライブを抑制し、自発努力が減少または消失する。PSVでは患者努力が小さいとトリガ回数が減り、1回換気量も小さくなりやすいため分時換気量は低下する。正答。
カフ圧上昇は気管内チューブ周囲のシールを強めてエアリークを抑える方向に働く。通常は分時換気量低下の直接原因にはならず、むしろリークが減れば測定上の換気量は保たれる。過度なカフ圧は気道粘膜障害の懸念はあるが、本設問の原因としては不適。
代謝性アシドーシスでは呼吸性代償として換気亢進(呼吸回数増加と努力増大)が起こる。PSVでは患者の努力増大によりトリガ回数や1回換気量が増え、分時換気量はむしろ増加方向となるため、低下の原因にはなりにくい。
胸郭肺コンプライアンスが増大すると同じ圧サポートでも肺が膨らみやすく、1回換気量が増加しやすい。したがって分時換気量は低下ではなく維持・増加が見込まれるため、原因とはいえない。
気管チューブ閉塞は気道抵抗を著明に増加させ、トリガ不全や早期の吸気停止、1回換気量低下を招く。結果として分時換気量が低下する典型的原因である。正答。
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解説
体外式除細動器では、皮膚と電極パドルの接触抵抗を下げて通電時の電流密度を均一化することが安全の基本であり、導電性ジェル(パッドの場合は粘着ゲル)が不十分だと局所的に電流が集中しジュール熱が増大して熱傷の原因となる。機器の性能確認(通電テスト・エネルギー測定)には、人体の実効インピーダンスを模擬する標準負荷である50 Ωを用いるデファブリレータアナライザを使用する。心室細動(VF)への除細動は同期をかけない非同期ショックで行い、R波同期はQRSが識別できる頻拍性不整脈のカルディオバージョンで使用する。通電時は感電防止のため、介助者を含む全員が患者・ベッド柵・配線から離れる。電極パドルでの通電は左右のボタンを同時押しする構造で、片側のみでは作動しないよう安全設計されている。
選択肢別解説
正しい。導電性ジェルの塗布不良や電極と皮膚の密着不良は接触抵抗を上げ、電流が一点に集中してジュール熱が増大し、熱傷のリスクとなる。電極面全体を密着させ、十分なジェルまたは適正な粘着パッドを用いることが重要である。
正しい。除細動器の通電テスト(エネルギー出力確認)は、標準的に50 Ωの負荷抵抗を用いるアナライザで行う。50 Ωは人体を模擬した代表負荷で、設定エネルギーと実測エネルギーの一致を評価する。
誤り。心室細動(VF)はR波が識別できない無秩序なリズムであり、R波同期スイッチは使用しない(非同期ショック)。R波同期は、心房細動や脈のある心室頻拍などQRSが検出できる頻拍性不整脈に対するカルディオバージョンで用いる。
誤り。通電時に介助者が患者を保持すると介助者に電流が流れる危険がある。通電直前には必ず周囲に『離れて』を確認し、患者・ベッド柵・配線から手を離す。体動防止は通電前に適切な固定や説明で対応し、通電中に触れてはならない。
誤り。安全確保のため、電極パドルの通電ボタンは左右を同時に押さないと作動しない構造である。片側のみの押下では通電しないようインターロックされている。
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解説
単一故障状態(Single Fault Condition, IEC 60601-1)とは、医用電気機器の保護手段が1つだけ故障した、または予見可能な単一の不具合が生じた状態をいう。単一故障が起きても患者・操作者に対する感電や火傷などの危害(基本安全)が生じないことが求められる。代表例は、保護接地の断線、基本絶縁の一部の破壊、F形装着部(浮遊化されたBF/CF患者回路)に外部電圧が現れる等である。脳波計の電極はF形装着部に相当し、他機器からの出力電圧が電極リード線に重畳する状態は、まさに単一故障状態として想定される試験条件に該当する。したがって選択肢5が適切で、他の選択肢は安全上の保護手段が1つだけ破綻した状態を直接表していない、あるいは二重故障である。
選択肢別解説
電源表示ランプの断は表示機能の不具合であり、保護接地や絶縁といった安全の保護手段の喪失を直接意味しない。直ちに感電等の危害に結びつく単一故障状態とはいえない。
筐体塗装の剥離は外観上の劣化であり、塗装は通常、安全上の基本絶縁として位置付けられていない。筐体の露出金属部は本来保護接地で安全が確保されるため、塗装剥離単独は単一故障状態とはみなされない(他の故障と複合すれば危険性は高まる)。
電極リード1本の断線は測定機能の喪失・低下であり、安全保護手段(絶縁や接地)の破綻を直接示さない。感電リスクの増大を伴う単一故障状態とは扱われない。
二重絶縁が二つとも短絡しているのは二重故障(2つの独立した保護手段の喪失)であり、単一故障状態の想定を超える。単一故障状態は一方の絶縁の破綻など1件のみである。
電極リードはF形装着部(浮遊化された患者回路)であり、外部機器からの出力電圧が重畳して患者側に現れる事象は、IEC 60601-1で想定する単一故障状態の典型例である。感電等の危険を生じ得るため、単一故障状態に該当する。
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解説
気道内圧下限アラームは、吸気中に気道内圧が設定した下限値まで上がらない、あるいは呼気終末期の圧(PEEP)を維持できないときに作動する。最も典型的な原因は回路や気管チューブ周りのリークや離断であり、カフ圧不足によるカフリークでは吸気ガスが咽頭側へ逃げるため、肺内に十分な圧が伝わらず気道内圧が上がらない。一方、低肺コンプライアンス、気道抵抗増加、人工鼻の目詰まり、ファイティングはいずれも圧を上昇させやすく、通常は気道内圧上限アラームの原因となる。従って原因として適切なのはカフリークである。
選択肢別解説
正しい。カフ圧不足やカフ損傷によるカフリークがあると、吸気ガスが上気道へ漏れ、肺に伝わる圧が上がらないため気道内圧下限アラームが作動しやすい。リーク修復(カフ圧調整・交換)や回路確認が必要。
誤り。低肺コンプライアンス(硬い肺)では同じ換気量を送るのにより高い圧が必要となり、気道内圧は上昇傾向となる。容量制御換気ではピーク圧上昇、圧力制御換気でも設定圧に達しやすく、下限アラームの原因にはなりにくい(むしろ上限アラームのリスク)。
誤り。気道抵抗の増加(分泌物・チューブ屈曲・回路狭窄など)は吸気の駆動圧を高め、ピーク気道内圧を上昇させるため、上限アラームの原因となる。下限アラームの原因ではない。
誤り。人工鼻の目詰まりは吸気・呼気の抵抗を増し、気道内圧を上昇させる方向に働くため、通常は気道内圧上限アラームの原因となる。
誤り。ファイティング(患者—人工呼吸器不同期)では患者の筋活動で瞬間的に気道内圧が上がりやすく、上限アラームが作動しやすい。下限アラームの直接原因とはならない。
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解説
人工心肺ではプライミング液(多くは晶質液)で循環血液が希釈され、ヘマトクリットとヘモグロビンが低下する。これにより血液粘性は下がり、膠質浸透圧も血漿タンパクの希釈で低下する。赤血球濃度と粘性が下がることは機械的ストレスを相対的に減らし、溶血のリスクを抑える方向に働く。一方、酸素運搬能はヘモグロビン濃度に依存するため、同一灌流量であれば希釈により低下する。人工心肺ではしばしば低体温・アルカローシスが併用され、酸素解離曲線は左方へ移動しやすい(ヘモグロビンの酸素親和性が増す)が、これは血液希釈そのものの直接効果ではない。したがって「酸素運搬能が増加する」は誤り。
選択肢別解説
正しい。血液希釈によりヘマトクリットが下がると、全血粘性は低下する。粘性低下は末梢循環抵抗の低下や灌流性の改善に寄与するが、極端な希釈では酸素運搬が不足し得る。
正しい。血漿タンパク(主にアルブミン)が希釈されるため膠質浸透圧は低下し、組織浮腫のリスクが上がる。必要に応じてアルブミンや人工膠質で補正することがある。
誤り。酸素運搬能は主にヘモグロビン量に依存し、血液希釈でヘモグロビンが低下するため減少する。動脈酸素含量は概ね CaO2 $= 1.34\times Hb\times SaO2 + 0.003\times PaO2$ で表され、Hb低下はCaO2低下を招く。一定灌流量(血流)なら酸素供給量 DO2 $= CaO2\times Q$ も低下する。
正しい。希釈により赤血球濃度と血液粘性が下がり、回路・ポンプで受ける機械的せん断や赤血球同士の衝突が相対的に減少するため、溶血は抑制されやすい。ただし過度の陰圧吸引や高回転など他要因があれば溶血は起こり得る。
正しい(人工心肺臨床で一般にみられる現象)。人工心肺では低体温や相対的アルカローシスが併用されやすく、これらは酸素解離曲線を左方移動させてヘモグロビンの酸素親和性を高める。なお、左方移動は血液希釈そのものの直接効果ではない点に留意する。
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