臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
治療機器と、その作用に用いる物理エネルギー(電気・機械・音波・放射線など)の対応を問う問題。電気メスは高周波電流(おおむね300 kHz〜5 MHz)のジュール熱で切開・凝固を行うため「低周波」は不適。除細動器はコンデンサに蓄えた直流エネルギーを短時間に放電(単相あるいは二相のパルス)する機器であり、「高周波電流」ではない。高気圧治療装置は静圧(周囲圧の上昇)により酸素分圧・溶解量を高める。ネブライザは方式により異なるが、超音波ネブライザは超音波で霧化する。サイクロトロンは荷電粒子の加速装置で、粒子線(陽子線等)を主用途とするが、選択肢の意図としては荷電粒子ビームの生成(電子線を含む概念)に整合すると解釈できる。したがって誤りの組合せは1と2。
選択肢別解説
誤り。電気メスは高周波電流(約300 kHz〜5 MHz)を用い、メス先端の高い電流密度で生じるジュール熱により組織の切開・凝固を行う。低周波では神経・筋の興奮や感電を起こしやすく、電気メスの原理に適さない。
誤り。除細動器は直流電源(コンデンサ放電)を患者に短時間印加し、心筋を一斉脱分極させてリエントリーを途絶させる。波形は単相のダンピング波形や二相性パルスであり、高周波交流を用いるものではない。
正しい組合せ。高気圧治療装置は静圧(周囲圧力の上昇)を利用して酸素分圧および血漿中の溶解酸素量を増加させ、CO中毒や減圧症などの治療に寄与する。物理量としては機械力(静圧)に分類される。
正しい組合せ(方式を特定すれば妥当)。超音波ネブライザはピエゾ素子などで発生させた超音波により薬液を霧化する。一方でジェットネブライザは圧縮気体を用いるため、一般名の「ネブライザ」は方式により原理が異なる点に留意する。
正しい組合せとして扱われる。サイクロトロンは荷電粒子を加速してビームを得る装置であり、医療では主に陽子線・重粒子線やPET核種製造に用いられる。臨床の電子線治療は一般にリニアック由来だが、本設問の対応は「加速装置と荷電粒子ビーム(電子線を含む)」の概念対応として妥当と判断する。
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解説
PCPS(percutaneous cardiopulmonary support:一般的にはVA-ECMO)は、薬剤抵抗性の重症循環不全に対する機械的循環補助であり、心原性ショック、心停止に対する体外式心肺蘇生(ECPR)、急性心筋梗塞に伴う重度循環不全、ハイリスクPCI(旧称PTCA)時の待機的・救命的補助などで適応となる。一方で高度の大動脈弁閉鎖不全(重度AR)では、末梢送血VA-ECMOが大動脈圧と左室後負荷を上げ、逆流量を増大させ左室拡大・肺うっ血を悪化させうるため、原則禁忌または慎重適応とされる。したがって選択肢中で“適応”として誤りは高度の大動脈弁閉鎖不全である。
選択肢別解説
適切。劇症型心筋炎(問題文では「劇症型心筋症」と表記)などに伴う急性かつ重篤な心機能低下で薬剤抵抗性の心原性ショックに至る場合、循環維持と臓器灌流の確保を目的にPCPSが適応となりうる。心機能回復や原因治療までのブリッジとして用いられる。
不適切(設問の問いに対する該当)。高度の大動脈弁閉鎖不全ではVA-ECMOの逆行性大動脈送血により大動脈圧・左室後負荷が上昇し、AR逆流量が増加して左室拡大・肺うっ血を助長する。左心系の減圧(LVベンティング)など特別な対策がない限り、原則禁忌または慎重適応であり、“PCPSの適応”とは言えない。
適切。心停止例での体外式心肺蘇生(ECPR)の手段としてPCPSは広く用いられ、自己循環再開までの臓器灌流維持や原因精査・治療(冠動脈インターベンションなど)へ橋渡しする目的で適応となる。
適切。急性心筋梗塞に伴う重度心原性ショックや機械的合併症で循環維持が困難な場合、PCPSにより全身灌流を確保しつつ原因治療(PCIや外科治療)までの橋渡しを行う適応がある。
適切。高リスクPCI(旧来PTCAと表記)における計画的な循環補助や、手技合併症で循環が破綻した際の救命的補助手段としてPCPSが用いられることがある。
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解説
IABP(大動脈内バルーンパンピング)の主な合併症には、カテーテル挿入に伴う下肢虚血、挿入部の出血・血腫、感染、バルーン破裂、溶血、血小板減少、大動脈解離・穿孔・壁損傷、塞栓症などが知られている。特にバルーン表面との接触や機械的せん断により血小板の粘着・凝集・消費が起こり、血小板数は一般に減少(血小板減少)するため、「血小板数の増加」は誤りである。よって誤っている選択肢は4である。
選択肢別解説
感染はIABPの代表的な合併症の一つであり、長期留置や挿入部位(大腿動脈穿刺部)を中心にリスクが上がる。血流感染へ進展する可能性もあるため、挿入部の清潔管理と観察が重要である。
下肢虚血は大腿動脈からの挿入により遠位灌流が阻害されることで起こりうる合併症である。末梢動脈疾患や小柄な患者ではリスクが高く、足背動脈触知や皮膚温などの末梢循環評価が必要となる。
大動脈壁の損傷(解離、穿孔、プラーク損傷など)はIABPの重篤だが稀ならざる合併症である。不適切な位置や留置操作、既存の動脈硬化・動脈瘤がある場合にリスクが高まる。
誤り。IABPではバルーンと血液の接触や機械的せん断により血小板の粘着・凝集・消費が生じ、血小板数は一般に減少する(血小板減少)。抗凝固療法の併用も出血傾向を助長しうるため、「増加」は合併症として不適切である。
挿入部からの出血は穿刺・留置操作に伴う典型的な合併症であり、全身的な抗凝固療法の影響も加わって血腫形成や持続出血が起こりうる。圧迫止血や観察が重要となる。
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解説
電気メスでは、切開は連続波(連続的に出力)で組織を素早く蒸散させ、凝固は断続波(デューティ比を下げた変調波)で組織を乾燥・止血させる。点検で用いるダミー負荷は高周波でのインダクタンス影響を避けるため無誘導抵抗器を用いる。対極板の安全は電流密度(単位面積あたりの電流)で決まり、出力電流が大きいほど必要面積も大きくなる($J=I/A$)。静電結合型対極板は表面が絶縁されており、体表と電極の間に容量を形成して電流を回収する設計で、接触不良や局所高密度電流を抑える意図がある。スプレー凝固は高電圧・火花放電を伴うため高周波ノイズが発生しやすく、モニタ等に雑音障害を起こしうる。
選択肢別解説
誤り。切開出力が連続波で、凝固出力は断続波(低デューティ比の変調波)である。凝固は加熱時間を間欠的にして炭化・止血を得る方式であり、連続波ではない。
正しい。電気メスの点検では高周波電流を負荷に流すため、インダクタンスを持つ巻線抵抗は誤差や発振の原因となる。したがってコイル成分を極小化した無誘導抵抗器を負荷抵抗として用いる。
正しい。対極板での熱傷は高い電流密度が原因となるため、出力電流が増えるほど対極板面積を広くして$J=I/A$を安全域に保つ必要がある。一般に安全電流密度は概ね数十 mA/cm^2 以下が目安とされ、出力に依存して必要面積が変わる。
正しい。静電結合型対極板は表面が絶縁され、患者皮膚との間にコンデンサを形成して容量結合で電流を回収する。これにより直流や低周波成分の直接流入を避け、局所的な高電流密度の発生を抑える設計である。
誤り。スプレー凝固は高電圧で非接触の火花放電を用いるため、高周波ノイズ(EMI)が発生しやすく、ECGなどのモニタに雑音障害を生じやすい。
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解説
カプノメータは呼気終末二酸化炭素分圧($\text{P}_{\text{ET}}\text{CO}_2$)を主に赤外線吸光法で連続測定し、カプノグラム(波形)と数値で換気状態・気道の通気性・回路の連結状態を即時に把握できる。麻酔中では、食道誤挿管や回路外れは$\text{P}_{\text{ET}}\text{CO}_2$の急激な低下や波形消失として直ちに検出でき、気管支喘息発作などの気道閉塞は「シャークフィン状」の閉塞性波形(第2相~第3相の立ち上がり遅延・傾斜増大)や$\text{P}_{\text{ET}}\text{CO}_2$上昇として現れる。一方、不整脈の診断は心電図で行い、吸入麻酔薬の過剰濃度は麻酔ガスモニタで監視するため、カプノメータの適用外である。
選択肢別解説
不整脈の診断・監視は心電図モニタが基本であり、カプノメータは直接の不整脈検出器ではない。重篤な循環低下で$\text{P}_{\text{ET}}\text{CO}_2$が低下することはあるが、不整脈の同定には用いないため、麻酔中モニタとしての主目的には当たらない。
食道誤挿管では肺からの二酸化炭素排出がないため、持続的な呼気$\text{CO}_2$が検出されず、カプノグラムはフラットまたは極めて低い波形となる。持続的な$\text{CO}_2$検出の有無は気管挿管確認の有効な指標であり、誤挿管の早期発見に役立つ。
呼吸回路の外れ(ディスコネクション)では、患者からサンプルされる呼気$\text{CO}_2$が途絶え、$\text{P}_{\text{ET}}\text{CO}_2$が急減しカプノグラムが消失する。麻酔中の重大インシデントを即時に検知できるため、カプノメータは有用である。
気管支喘息発作などの気道閉塞では、呼気流出が遅延し、第2相~第3相の立ち上がりがなだらかになる「シャークフィン状」の閉塞性パターンを示し、しばしば$\text{P}_{\text{ET}}\text{CO}_2$が上昇する。よって気道抵抗増大の把握に有用。
カプノメータは$\text{CO}_2$の測定機器であり、吸入麻酔薬濃度や麻酔深度は直接評価できない。麻酔ガスの過剰濃度の監視は揮発性麻酔薬モニタ等で行うため、本設問の範囲では役立たない。
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解説
臨床工学技士は、医師の具体的な指示の下で生命維持管理装置(人工心肺を含む)の操作に付随する行為を行える。具体的には、回路への薬剤注入や、患者に接続された回路・留置されたカニューレからの採血は許容される(臨床工学技士法施行規則第32条に規定される「身体への注入」「身体からの採血」に該当)。一方、患者の血管に新たに穿刺して採血する行為は臨床工学技士の業務範囲外である。また、術野(無菌野)でのカニューレと回路の直接接続は手術手技に密接に属し、原則として医師や術野スタッフが行うべきで、臨床工学技士の単独業務とはされない。したがって誤っているのは「術野でカニューレを回路に接続する」(4)と「開始前に患者の静脈から採血を行う」(5)である。
選択肢別解説
回路からの薬剤注入は、医師の具体的な指示の下で生命維持管理装置の操作として実施可能である。人工心肺の充填液や回路内へ薬剤(ヘパリン等)を注入する実務は広く行われており、施行規則第32条の「身体への注入」に準じて認められる。よって誤りではない。
留置カニューレ(医師が挿入・固定した血管内カニューレ)からの採血は、新たな穿刺を伴わず、患者に接続されたライン・回路からの採血として、医師の具体的指示の下で許容される(施行規則第32条「身体からの採血」)。したがって臨床工学技士の業務として妥当であり、誤りではない。
人工心肺回路の充填(プライミング)は臨床工学技士の中核業務であり、適切な溶液や薬剤を用いて気泡除去、回路機能確認を行う。医師の指示の下で実施する通常業務であるため、誤りではない。
術野(無菌野)でカニューレを回路に直接接続する行為は、手術操作に密接に関連する。臨床工学技士は非滅菌側で回路準備・作動管理を担うのが原則であり、術野での直接接続は医師(または術野スタッフ)が行うべき範疇で、臨床工学技士の単独業務としては不適切。よって誤りである。
「患者の静脈から採血を行う」は新たな静脈穿刺を伴う行為であり、臨床工学技士の業務範囲外。臨床工学技士に許容される採血は、医師の具体的指示の下で生命維持管理装置に接続された回路や留置ラインからの採血に限られる。したがって誤りである。
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