臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
$各種エネルギーの人体安全限界についての設問で、正答は3と4である。ミクロショックの最小誘発電流は心腔内経路で約0.1 mA(100 µA)程度とされ、1 mAはマクロショックの最小感知電流の代表値であるため1は不正確。高周波暴露による睾丸(生殖腺)障害の限界は代表的記載で約0.01 W/cm^2とされ、0.1 W/cm^2は過大であるため2は誤り。超音波の生殖細胞への安全限界0.1 W/cm^2は教科書的記載と整合し3は正しい。感電閾値はダルジールの実験で1 kHz超では周波数に概ね比例して上昇するため4は正しい。患者に対する短時間の接触限界温度は医用電気機器の規格(JIS T 0601-1/IEC 60601-1)で50 ℃程度が用いられ、41 ℃は低すぎるため5は誤り。$
選択肢別解説
誤り。ミクロショック(心腔内経路)の心室細動最小誘発電流は代表値で約0.1 mA(100 µA)であり、1 mAはマクロショックの最小感知電流の目安である。したがって「1 mA」は過大。
$誤り。高周波暴露による睾丸障害の限界は文献的に約0.01 W/cm^2とされる。設問は0.1 W/cm^2であり、1桁大きく過大評価。また単位W/cm^2はエネルギーではなく出力密度(パワー密度)である。$
$正しい。超音波の生殖細胞への安全限界は0.1 W/cm^2が標準的な教科書記載と整合する。これより高い強度では熱作用 \cdot 機械作用(キャビテーション)による影響が問題となりうる。$
正しい。ダルジールの実験に基づき、1 kHzを超えると人体の感電閾値は周波数に概ね比例して増加する(例として10 kHzで約10 mA程度へ上昇)。
誤り。患者への短時間接触に関する限界温度は規格(JIS T 0601-1/IEC 60601-1)でおおむね50 ℃程度が用いられる。41 ℃は長時間暴露での生体影響の目安であり、短時間接触の規格値としては低すぎる。
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解説
人工心肺中の送血流量は、患者の代謝需要(体温、酸素消費、血圧、血液ガス、乳酸動態など)に合わせて調整する。復温が進むほど代謝と酸素需要が増加するため、十分な酸素供給(DO2)を確保する目的で送血流量を上げるのが基本である。これに対して、脱血不良時は静脈還流が不足してリザーバ残量が低下するため、送血を上げると空気混入や回路空転の危険が高まるので送血は下げて還流に合わせる。大動脈遮断(クロスクランプ)や解除の場面では大動脈や心筋への負担、脱気・還流再開のコントロールのため、送血は一時的に抑えて調整する。大動脈解離の発生時は解離進展や偽腔灌流を避けるため、送血は直ちに減量または停止して対処する。従って、送血流量を積極的に上げるべき場面は復温時である。
選択肢別解説
誤り。脱血不良時は静脈還流不足でリザーバ残量が低下するため、送血を上げると回路空転・空気混入の危険が増す。送血流量は還流量に合わせて減量し、脱血カニュラ位置調整、陰圧補助、体位調整、静脈容量確保などで還流を改善する。
誤り。大動脈遮断時は大動脈への機械的負担や大動脈圧の急上昇を避けるため、遮断の瞬間は送血を一時的に抑えて調整することが多い(必要に応じて段階的に目標流量へ)。送血を上げる場面ではない。
誤り。大動脈遮断解除時は再灌流・脱気・血圧変動への対応が必要で、一般に一時的に送血を下げてコントロールし、その後段階的に調整する。急に送血を上げると大動脈や心筋への負担、脱気不十分のリスクが高まる。
正しい。復温時は体温上昇に伴い代謝・酸素需要が増大するため、十分なDO2を確保する目的で送血流量を上げて適正灌流を維持する。通常は体表面積当たりの目標流量を指標に、血圧・血液ガス・乳酸などを見ながら増量する。
誤り。大動脈解離が発生した場合は解離の進展や偽腔灌流を避けるため、送血を直ちに減量または停止し、カニュラ位置確認・再カニュレーション等の対処を行う。送血を上げることは危険である。
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解説
体外循環中に貯血槽レベルが急激に低下した場合、最優先は貯血槽の空化と空気誤送(空気塞栓)を防ぐことと、脱血不良の原因を直ちに特定・是正することである。代表的原因は、脱血回路の屈曲・クランプの閉め忘れ・接続緩み、静脈カニューレの位置異常や先当たり、体位変化や胸腔内圧変化による静脈還流低下、生体循環血液量の不足(出血・蒸発・第三腔移行など)である。対応は、(1) 脱血回路と静脈カニューレ周辺の物理的トラブルを即時に点検・是正する、(2) 循環血液量不足が疑われる場合はバランス型晶質液(例:乳酸加リンゲル液)で急速補液して貯血槽レベルと脱血量を回復させる、(3) 貯血槽の空化を避けるため一時的に送血流量を下げ、必要に応じて部分体外循環へ移行する、が基本である。左房ベント挿入は左心系うっ血・過伸展対策であり本事象の初期対応ではない。血管収縮薬は血圧調整の手段で、脱血不良や低レベルの直接原因を解決しないため適切な初期対応とはいえない。
選択肢別解説
正しい。脱血回路の屈曲・狭窄、クランプ閉鎖、接続部の陰圧リーク、静脈カニューレの位置異常や先当たりなどは急激な貯血槽レベル低下の主要因であり、最初に機械的・物理的要因を確認して是正する。VAVD使用時は陰圧の過大設定も見直す。
正しい。循環血液量不足(出血・希釈・第三腔移行など)による脱血不良が疑われる場合、乳酸加リンゲル液などの晶質液を貯血槽へ急速補液し、貯血槽レベルと脱血量を回復させる。過度の希釈には留意しつつ、空化防止のための即効的手段として有効。
正しい。貯血槽が空に近づくと空気誤送の危険が高まるため、一時的に送血流量を低減して貯血槽からの引き出し量を抑え、レベル回復までの安全余裕を確保する。部分体外循環への移行や一時停止を含め、術野と連携して空化を回避する。
誤り。左房ベントは左室の過伸展・うっ血対策や大動脈閉鎖不全時の左心系減圧に用いる。貯血槽レベル低下(脱血不良)の直接的・初期的対応ではなく、原因是正(脱血回路確認・補液・送血流量調整)が優先となる。
誤り。血管収縮剤は主に灌流圧(血圧)の調整目的であり、脱血回路トラブルや循環血液量不足といった貯血槽レベル低下の直接原因を解決しない。初期対応としては不適切で、まず機械的確認・補液・送血流量調整を行うべきである。
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解説
単一故障状態(SFC: single fault condition)は、医用電気機器の安全規格(JIS T 0601-1=IEC 60601-1)で、リスク低減のための手段(保護手段)が1つだけ故障した状態を指す。したがって、絶縁の一部短絡、沿面距離・空間距離の一部短絡、保護接地線の開路、電源導線1本の断線などは、いずれも「1つの保護手段の喪失」に相当するためSFCに該当する。一方、強化絶縁は基礎絶縁と補強絶縁に相当する保護を一体で提供する手段であり、これが短絡すると二重の保護喪失(実質的に二重故障)に相当するため、単一故障状態とは見なされない。よって『強化絶縁の短絡』がSFCではない。
選択肢別解説
絶縁のいずれか1つの短絡は、保護手段1つの喪失に相当するため単一故障状態(SFC)に該当する。規格ではこの想定下で漏れ電流や筐体の安全性が許容限度内にあることが求められる。
沿面距離または空間距離のいずれか1つを短絡で架橋することは、1つの絶縁障壁の喪失(保護手段の喪失)に相当するためSFCに該当する。
保護接地線の断線は、接地による保護手段の喪失に相当し、SFCとして評価される代表例である。
電源導線のいずれか1本の断線(開路)は、電源系の単一故障として取り扱われるためSFCに該当する。
強化絶縁は基礎絶縁と補強絶縁に相当する保護を一体で提供する手段であり、その短絡は二重の保護喪失に相当する。これは単一故障状態(SFC)の範囲を超えるため、『単一故障状態でない』が正しい。
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解説
周術期低体温は、薬物代謝・排泄の低下により麻酔薬などの作用が遷延し、覚醒遅延を招く。また、体温調節反応としてシバリング(ふるえ)が生じやすく、酸素消費増大や循環負荷の原因となる。さらに白血球機能低下や組織灌流低下を介して免疫機能が低下し、感染リスクが増す。一方、生体は低温刺激に対し視床下部の体温調節中枢を介して交感神経系が賦活化され、カテコラミン放出、末梢血管収縮、血圧上昇などが起こるため、「交感神経系の抑制」は低体温の反応として不適切であり、誤りである。
選択肢別解説
正しい。低体温では肝血流量の低下や薬物代謝酵素活性の低下により、麻酔薬・鎮痛薬・筋弛緩薬などの代謝が遅延し、薬効が長引きやすい。
正しい。低体温による薬物代謝・排泄の遅延や分布容積の変化により、麻酔薬の効果が残存し、麻酔からの覚醒が遅れる。高齢・臓器機能低下の併存で遷延しやすい。
誤り。低体温刺激に対しては体温調節反応で交感神経系が亢進し、カテコラミン分泌増加、末梢血管収縮、血圧上昇、心拍数増加などが生じる。したがって「交感神経系の抑制」は低体温の生理反応と矛盾する。
正しい。低体温はシバリング(ふるえ)を誘発し、筋収縮による熱産生を増やして体温低下に対抗する。周術期では回復期に顕在化しやすく、酸素消費と循環負荷を増大させる。
正しい。低体温は好中球・リンパ球などの機能低下や末梢循環の低下を招き、創傷治癒遅延や術後感染リスクの上昇につながる。
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