臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
人工心肺中の空気塞栓は、回路内に空気が混入して動脈側へ送られることで発生する。代表的な機序は、(1)静脈側の還流低下や陰圧化に伴う空気吸入(リザーバ液面低下、接続部からの吸気、心腔ベントからの吸気)と、(2)回路・ポンプチューブ破損による大気の直接混入である。脱血回路の折れ曲がりは脱血不良を介してリザーバ液面低下や静脈側陰圧化を起こし空気吸引の原因となる。ベントポンプの逆回転は心腔内や挿入部周囲から空気を引き込み得る。ローラポンプチューブの破損は破損部から外気が直接混入する。一方、送血回路の閉鎖や血液フィルタの目詰まりは回路抵抗や圧上昇を招くが、単独では空気を吸い込む機序をもたないため直接的な原因とは言い難い。以上より、原因となるのは1、2、5である。
選択肢別解説
正しい(原因となる)。脱血回路の折れ曲がりは静脈還流を低下させ、リザーバ液面の低下や静脈側の陰圧化を招く。これにより接続部や開口部から空気が吸い込まれ、リザーバ内で空気混入が生じ、送血側へ移送されれば空気塞栓の原因となる。
正しい(原因となる)。ベントポンプが逆回転すると心腔内・肺静脈系から回路側へ空気を引き込む、または過大な陰圧によりベント挿入部周囲から空気を吸入することがあり、空気塞栓の直接的な原因となる。
誤り(直接原因ではない)。送血回路の閉鎖は動脈側圧の上昇や流量低下・ポンプ停止を招くが、陽圧側であり空気を吸い込む機序はない。付随する別トラブル(破断・誤開放など)がなければ空気混入の直接原因とはならない。
誤り(直接原因ではない)。血液フィルタの目詰まりは回路抵抗増大と圧上昇をもたらすが、フィルタ自体は微小気泡除去に寄与する装置であり、単独では空気を回路へ導入する機序はない。
正しい(原因となる)。ローラポンプチューブが破損すると破損部から外気が回路内へ吸入され、大量の空気混入を来して空気塞栓の原因となる。
解説
適切でない組合せは「マイクロ波加溫(加温)装置—キャビテーション」。マイクロ波加温装置は2.45GHzなどの電磁波による誘電加熱で組織を加温するハイパーサーミア機器であり、主なリスクは熱傷・過加温などである。キャビテーション(空洞現象)は超音波の負圧で微小気泡が生成・崩壊して生じる現象で、超音波治療・診断で問題となるため、この組合せは不適切。一方、熱希釈式心拍出量計ではカテーテル刺激による不整脈、経皮的酸素分圧モニタではセンサ加温による水疱(熱傷)、電気メスでは高周波電流による熱傷、レーザメスでは波長に応じた眼障害(網膜・角膜)が典型的な有害事象であり、いずれも妥当な組合せである。
選択肢別解説
不適切な組合せ。キャビテーションは超音波による負圧場で気泡が生成・崩壊する現象で、超音波機器に関連する。マイクロ波加温装置は電磁波による誘電加熱で温度上昇を生じさせるため、キャビテーションとは機序が異なる。想定される有害事象は主に熱傷や過加温である。
適切な組合せ。熱希釈式心拍出量計(スワン・ガンツカテーテル)は右心系を通過・留置する過程で心筋を機械的に刺激し、期外収縮や心室性不整脈などを誘発し得る。挿入時の心電図監視や適切な操作でリスク低減が重要である。
適切な組合せ。経皮的酸素分圧モニタは測定部位の皮膚を約43℃前後に加温して血流を増やし動脈化して測定するため、長時間の連続装着で紅斑・水疱などの熱傷が生じ得る。部位のローテーションや設定温度・装着時間の管理が必要。
適切な組合せ。電気メス(高周波電気手術装置)は高周波電流によって組織を切開・凝固するが、対極板の装着不良、接触面積の不足、分流・接触不良などにより熱傷が発生し得る。機器点検と適切な対極板管理が必須。
適切な組合せ。レーザメスは直接光・反射光によって眼障害を起こし得る。波長により障害部位は異なり、可視〜近赤外では主に網膜、CO2レーザ(10.6μm)では角膜が主な障害部位となる。適切な波長対応の保護眼鏡などの対策が必要である。
解説
人工心肺装置の各回路・機器の主目的に基づく整合性を問う問題。冠灌流回路は心筋保護液(カリウム高濃度の心停止液など)を大動脈基部や冠動脈口、冠静脈洞経由で注入するための回路であり、心腔の減圧は目的としない。一方、ベント回路は左室や心腔内の血液・気泡を吸引して心腔内圧を減少させ、左室過伸展の防止や手術野の安定化を図るもので、心筋保護液の注入は行わない。血液濃縮器は限外濾過により希釈による余剰水分を除去し、動脈フィルタは微小気泡や凝血片などの異物を除去する。血液吸引回路は術野・心腔内の出血を回収して体外循環リザーバに戻す。以上より、誤った組合せは「1: 冠灌流回路—心内圧の減少」と「5: ベント回路—心筋保護液の注入」である。
選択肢別解説
誤りの組合せ。冠灌流回路は心筋保護液(カーディオプレジア)を冠循環へ注入する回路であり、心内圧の減少は目的ではない。心腔の減圧や左室過伸展防止はベント回路が担う。
正しい組合せ。血液濃縮器(ヘモコンセントレーター)は限外濾過により余剰水分や一部溶質を除去し、希釈是正や水分バランス調整を行う(ECUM/UF)。
正しい組合せ。動脈フィルタは送血ラインに設置され、微小気泡や微小凝血塊などの異物を捕捉・除去し、塞栓リスクを低減する。
正しい組合せ。血液吸引回路(サクション/カーディオトミーサクション)は術野や心腔内に出た血液を吸引・回収し、貯血槽へ戻す目的で用いられる。
誤りの組合せ。ベント回路は心腔内(とくに左室や左房など)を吸引して減圧・脱気し、左室過伸展を防止するのが主目的。心筋保護液の注入は冠灌流回路(大動脈基部・冠動脈口・冠静脈洞経由)で行う。
解説
透析監視装置は血液回路圧、ダイアライザの漏血、空気誤入、透析液の温度・電気伝導度(濃度指標)などを監視する。漏血はダイアライザの膜破損や継手不良により血液が透析液側へ漏れる事象で、排液側の光学式センサで検出される。一方、透析装置ヒータの故障は透析液温度異常(高温・低温)の原因であり、漏血の原因ではない。よって「漏血—透析装置ヒータの故障」の組合せは誤り。空気誤入は補液ラインのクランプ閉鎖忘れ等で陰圧側から空気を引き込みうる。血液側回路内圧異常は、凝固や回路閉塞で上昇し、脱血不良で低下(動脈圧がより強い陰圧化、あるいはポンプ流量維持不能)する。透析液濃度異常の監視は電気伝導度計に依存しており、その故障や電極汚染でも異常表示が発生しうる。
選択肢別解説
誤りの組合せ。漏血はダイアライザ膜破損やヘッダ部Oリング不良などで血液が透析液側へ混入する事象で、排液の光学式漏血センサで検出する。透析装置ヒータの故障は透析液温度異常(高温や低温)アラームの原因であり、漏血の原因とはならない。
妥当な組合せ。補液ラインの閉鎖(クランプ)忘れや接続不良により、陰圧がかかる回路側から空気を吸引し、空気誤入警報が作動しうる。補液バッグが空または脱落している場合は特に危険で、静脈側での気泡検出・遮断動作が求められる。
妥当な組合せ。血液凝固は回路抵抗を増大させ、特に静脈圧(ポンプ後圧)の上昇を招く。ほかにも回路の折れ曲がりや返血針閉塞でも上昇するが、血液凝固は代表的原因である。
妥当な組合せ。脱血不良(穿刺位置不良、陰圧過大、血管虚脱など)では動脈圧が低下(より強い陰圧化)して設定流量を維持できなくなり、血液側回路内圧低下の異常として検出される。
妥当な組合せ。透析液の濃度(電解質混合比)は電気伝導度で監視され、電気伝導度計の故障や電極汚染・キャリブレーション不良でも「透析液濃度異常」の警報が発生しうる(実際の濃度異常の一次原因としては原液枯渇や比例装置故障などもある)。
解説
人工心肺中の脱血回路に流れる血液は患者から戻る混合静脈血であり,その酸素飽和度(SvO2)は全身の酸素供給(DO2)と酸素消費(VO2)のバランスで決まる。$\text{DO2}=\text{CO}\times C_{a\mathrm{O}_2}$,$\text{VO2}=\text{CO}\times\bigl(C_{a\mathrm{O}_2}-C_{v\mathrm{O}_2}\bigr)$ で表され,送血流量(CO相当),ヘモグロビン濃度,動脈酸素化(生体肺または人工肺の機能),および組織酸素消費が主要因である。送血流量不足,過度の希釈(低Hb),酸素化能低下(生体肺あるいは人工肺での酸素化低下)はいずれもDO2を低下させ,組織での酸素抽出が増えてSvO2は低下する。一方,体温低下は代謝を抑制しVO2を減少させるため,SvO2は低下せずむしろ上昇方向に働く。したがって「原因として考えられない」のは体温の低下である。
選択肢別解説
送血流量(CO相当)の不足はDO2を低下させ,組織での酸素抽出が増えるため混合静脈血酸素飽和度(SvO2)は低下する。よって脱血回路の酸素飽和度低下の原因として考えられる。
過度の血液希釈はヘモグロビン濃度を低下させ動脈酸素含有量(CaO2)を下げるためDO2が低下し,結果としてSvO2は低下する。原因として考えられる。
体温の低下は代謝抑制によりVO2を減少させ,DO2/VO2のバランスは改善方向に働くためSvO2は低下しない(むしろ上昇傾向)。したがって原因として考えられない。
生体肺の機能不全は動脈酸素化を障害しCaO2を低下させるためDO2が不足し,SvO2は低下する。よって原因として考えられる。
吹送ガス酸素濃度の低下は人工肺での酸素化能を低下させ動脈酸素化が不十分となるためDO2が低下し,SvO2は低下する。原因として考えられる。
解説
誤っているのは「代謝性アルカローシス時には重炭酸ナトリウムを追加する。」である。重炭酸ナトリウム(NaHCO3)はアルカリ剤であり、代謝性アルカローシスをさらに増悪させる。人工心肺中の代謝性アルカローシスでは、アルカリ投与を中止し、Cl−欠乏の是正、限外濾過でのHCO3−過剰の是正、必要に応じて灌流条件を調整(循環・代謝の適正化)するなどが妥当である。その他の選択肢は、体外循環中の一般的なトラブルシューティングとして妥当である(溶血時のローラポンプ圧閉度調整、希釈性貧血時の水分バランス確認、ACT不十分時のヘパリン追加、脱血不良時のカニューレ位置確認など)。
選択肢別解説
正しい。ローラポンプの圧閉度が過大だとチューブの過度な圧迫により溶血が増える。過小でも滑りや逆流が生じ流体力学的ストレスが増え溶血の一因となる。溶血が顕著な場合は適正圧閉度に再調整し、吸引・VAVDの陰圧過多や回路屈曲など他因子も併せて点検する。
誤り(本問の解答)。重炭酸ナトリウムはアルカリ剤であり、代謝性アルカローシスに追加するとアルカリ血症を悪化させる。人工心肺中の代謝性アルカローシスでは、アルカリ投与の中止、Cl−補充(生理食塩液など)や限外濾過でのHCO3−過剰是正、原因薬剤(利尿薬など)の見直し、灌流条件の適正化を行う。
正しい。体外循環ではプライミングや補液により希釈性にヘマトクリットが低下しやすい。まず水分バランス(入出量・回路貯血量)を確認し、必要に応じて限外濾過で濃縮したり、酸素運搬能を考慮して赤血球濃厚液の追加を検討する。
正しい。ACT(活性化凝固時間)が延長せず目標(一般に400~480秒以上など施設基準)に達しない場合は抗凝固が不十分であり、ヘパリンを追加する。追加後の再測定を行い、必要に応じてATIII低下の関与(ATIII製剤やFFP)や投与ライン不具合も評価する。
正しい。脱血不良ではまず機械的要因の確認が基本で、脱血カニューレの挿入部位・深さ・向き、回路の屈曲・閉塞、静脈側陰圧のかけ過ぎ、静脈リザーバの液面などを点検する。カニューレ先端の壁吸着や位置不良は頻度が高く、位置確認・再固定が有効である。
解説
不適切な組合せは「マイクロ波加温装置 — キャビテーション」。キャビテーション(空洞現象)は主として超音波により液中で微小気泡が発生・振動・崩壊する現象で、超音波治療・洗浄・体外衝撃波などで問題となる。一方、マイクロ波加温装置は2.45GHzなどの電磁波で誘電加熱を起こして生体組織を加温する機器であり、作用機序が異なるためキャビテーションは典型的な問題ではない。その他の組合せは、機器の特性から生じうる既知の問題点と整合する(熱希釈式心拍出量計—不整脈、経皮的酸素分圧モニタ—加温に伴う皮膚障害[水疱など]、電気メス—熱傷、レーザメス—眼傷害)。
選択肢別解説
不適切。マイクロ波加温装置は電磁波による誘電加熱で組織を温める機器であり、液中の気泡生成・崩壊といったキャビテーションは超音波機器で問題となる現象である。従ってこの組合せは成り立たない。
適切。熱希釈式心拍出量計では右心系に留置したカテーテルで冷指示液を急速注入し温度変化から心拍出量を算出する。不整脈(期外収縮など)があると心拍出量曲線が乱れ測定誤差が増大し、またカテーテル刺激で不整脈を誘発することもあるため、問題点として妥当である。
適切。経皮的酸素分圧モニタ(tcpO2)は電極周囲の皮膚を約42–44℃に加温して計測するため、長時間装着や皮膚の脆弱性により発赤・水疱などの熱傷様の皮膚障害が生じうる。したがって皮膚の水疱は代表的な問題点である。
適切。電気メスは高周波電流によるジュール熱で切開・凝固を行うため、出力過大・通電時間延長・対極板不良接触・金属接触などで熱傷が発生しうる。熱傷は同機器の典型的リスクである。
適切。レーザメスはレーザ光の波長に応じて眼組織に障害を及ぼす(可視〜近赤外は網膜、CO2レーザは角膜など)。防護眼鏡の未装着・散乱光管理不十分などで眼傷害の危険があるため、問題点として妥当である。
解説
送血回路への気泡送り込みは、主に回路の陰圧部での大気吸い込み(採血ポートの開放など)、貯血槽の液面低下による巻き込み、動脈フィルタの気泡除去不良、あるいは人工肺ガス側の過圧によるガス侵入リスクなどで生じる。一方、膜型人工肺へのガス供給停止は酸素化・脱炭酸の低下を招くが、ガス側から血液側へ気泡を押し込む駆動力とはならないため、送血回路からの気泡送り込みの直接原因にはならない。したがって「原因でない」は4となる。
選択肢別解説
貯血槽の液面が低下すると、渦の形成や出口の露出で空気が巻き込まれ、ポンプに吸い込まれて送血回路へ気泡が送り込まれる原因となる。レベル監視や低下時の流量制限で予防する必要がある。よって気泡送り込みの原因である。
膜型人工肺のガス側圧が上昇(過大なスイープガス流量や排気閉塞など)し血液側圧を上回ると、膜孔や微小漏れを介してガスが血液側へ押し出されるリスクが高まる。これは送血回路への気泡送り込みの原因になりうる。よって原因である。
動脈フィルタは気泡除去の最終関門であり、初期のデアリング不足や運転中の気泡抜き不良があると、残存気泡が患者側へ送られる。よって気泡送り込みの原因である。
膜型人工肺へのガス供給停止は、酸素化不良・高二酸化炭素血症を招くが、ガス側圧は低下し血液側へ気泡を押し込む駆動力にはならない。通常は気泡送り込みの直接原因にはならないため、「原因でない」に該当する。
送血ポンプ流入部(陰圧領域)の採血ポートが開放されると大気が吸引され、回路内に気泡が入り送血回路へ送り込まれる。よって気泡送り込みの原因である。
解説
人工心肺装置の付属回路とその主機能の組合せを問う問題。冠灌流回路は心筋保護液(カルジオプレジア)を冠動脈(順行)または冠静脈洞(逆行)から注入する回路であり、心内圧の低減はベント回路の役割である。ベント回路は左室や左房、肺静脈などから血液や空気を吸引し、心内圧を下げて心室の過伸展や術中のエア混入を防ぐ。血液濃縮器は限外濾過により余剰水分や低分子溶質を除去して体液バランス・ヘマトクリットを調整する。動脈フィルターは微小気泡や微小異物を捕捉して動脈系への塞栓を予防する。血液吸引回路(サクション回路)は術野の貯留血を回収し、貯血槽に戻す。よって誤りの組合せは1(冠灌流回路—心内圧の低減)と5(ベント回路—心筋保護液の注入)である。
選択肢別解説
誤り。冠灌流回路は心筋保護液を冠循環へ注入するための回路であり、心内圧の低減は目的ではない。心内圧の低減はベント回路が果たす機能で、心腔から血液や空気を吸引して減圧・減容する。
正しい組合せ。血液濃縮器(ヘモコン)は限外濾過により余剰水分を排出し、体外循環中の体液バランスやヘマトクリットを調整する。
正しい組合せ。動脈フィルターは回路内で発生した微小気泡や微粒子を捕捉し、体循環への塞栓を防止する。
正しい組合せ。血液吸引回路(サクション回路)は術野に貯留した血液を吸引・回収し、貯血槽を経て回路に戻す。
誤り。ベント回路は左室・左房・肺静脈などから血液や空気を吸引して心内圧を低減し、心室過伸展や空気塞栓を防ぐために用いる。心筋保護液の注入は冠灌流回路の機能である。
解説
人工心肺(CPB)中の溶血は、主に機械的ストレス(高いずり応力、過度の陰圧、キャビテーション、強い乱流、強い吸引)によって赤血球膜が損傷することで生じる。カニューレ径が細いほど同一流量を得るために流速が上がり、先端・側孔付近で高ずり応力や圧力低下(キャビテーション)を招きやすく溶血リスクが上がる。特に脱血側は十分な還流を得るために陰圧(重力脱血でも過度の吸引、あるいはVAVDでの陰圧付加)がかかりやすく、細径カニューレでは溶血が増える。一方、低体温は血液粘度や凝固に影響するが、通常のCPB操作範囲では溶血の直接原因とはされない。ベント回路は過度の回転・吸引で溶血を助長しうるが、「回転不足」は溶血の要因ではない。無血充填(等張電解質溶液でのプライミング)は赤血球を浸透圧的に破壊せず、溶血の原因とはならない。
選択肢別解説
正しい。細い送血カニューレでは同一灌流量でも流速が上がり、先端・側孔で高ずり応力や圧力低下が生じ、局所の乱流やキャビテーションを介して赤血球膜が機械的に損傷し溶血につながる。過大流量を細径で通す設定は特に危険であり、適切な内径選択が重要である。
正しい。細い脱血カニューレは所要の静脈還流を得るために高い陰圧を必要とし、過度の陰圧や乱流により赤血球損傷が増える。重力脱血でも狭窄・屈曲や細径で陰圧が大きくなり、VAVD(陰圧補助脱血)ではさらに溶血リスクが上がるため、十分な内径と適切な陰圧管理が必要である。
誤り。低体温は血液粘度や凝固系に影響を与えるものの、CPBの一般的な温度管理範囲では低体温そのものが溶血の直接原因とはならない。溶血は主として機械的因子(過度の陰圧、ずり応力、キャビテーション、強い吸引)によって生じる。
誤り。ベント用ポンプの回転不足は吸引が不十分となり心腔の減圧不良や心臓過伸展の原因にはなりうるが、溶血を助長する要因はむしろ過度の回転(強い吸引)である。よって「回転不足」自体は溶血とは関連しない。
誤り。無血充填(等張電解質溶液でのプライミング)は赤血球を浸透圧的に破壊せず、溶血の原因とはならない。血液混入後も等張であれば溶血は起こらない。溶血は主として機械的外力による赤血球損傷で生じる。
解説
透析用患者監視装置では、血液回路の圧力(動脈側圧=ポンプ出口〜ダイアライザ入口圧、静脈側圧=ダイアライザ出口〜返血側圧)、透析液圧、気泡検知、漏血検知などを監視する。ダイアライザ内で血液が凝固すれば膜抵抗が増し、ダイアライザ入口(動脈側)圧は上昇する。また、ダイアライザ膜が破損すれば血液が透析液側へ漏れ、漏血検知器が警報する。一方、静脈側圧の上昇は返血側回路の屈曲・閉塞・回路内凝固などで生じ、脱血不良はむしろ流量低下と静脈側圧の低下を招く。透析液圧の上昇は透析液回路の閉塞などで生じ、給水圧低下は通常、透析液圧や流量の低下方向の事象・供給装置側の警報につながる。気泡混入は主に動脈側回路の接続緩みや陰圧側からの空気吸入などが原因で、返血針(静脈針)脱落は静脈側圧の急低下や体外への血液漏出を引き起こすが、気泡検知の直接原因とはならない。以上より、正しい組合せは1(動脈側圧上昇—ダイアライザ内血液凝固)と5(漏血—膜破損)である。
選択肢別解説
正しい。ダイアライザ内の血液凝固により膜抵抗が増加し、一定流量で送るローラポンプ下ではダイアライザ入口(動脈側)圧が上昇する。患者監視装置の動脈側圧監視はこの上昇を検知する。
誤り。脱血不良はポンプへ流入する血液が不足する事象で、回路流量が低下し、静脈側圧はむしろ低下するのが一般的である。静脈側圧の上昇は返血側回路の屈曲・閉塞や静脈側回路内凝固、返血針位置不良などが原因となる。
誤り。透析液圧の上昇は透析液回路の閉塞やフィルタ詰まり、バルブ異常などで生じる。給水圧低下は通常、透析液供給不足を招き、透析液圧や流量は低下方向となり、別の低圧・供給異常警報が対象となる。
誤り。気泡混入は動脈側接続の緩みや陰圧側からの空気吸入、透析液側の脱気不良などが主因である。返血針(静脈針)脱落は静脈側圧の急低下や体外への血液漏出を起こすが、気泡検知の直接原因とはなりにくい(気泡検知器は患者返血前の静脈側回路に設置されるため、針脱落はその下流で発生する)。
正しい。ダイアライザの膜破損により血液が透析液側へ漏れると、監視装置の漏血検知器(光学式など)が感知して警報する。
解説
誤りは1。ペースメーカの出力パルス振幅(電圧)は、500 $\Omega$ 程度の負荷抵抗を介してオシロスコープまたはペースメーカアナライザで測定するのが基本で、周波数カウンタはパルスの周期・周波数(レート)測定用であり振幅測定には不適切である。除細動器の出力波形は瞬時現象のため、50 $\Omega$ 程度のダミー負荷に接続しメモリ型オシロスコープで単発波形を捕捉するのが適切。電気メスの出力電力は高周波で誘導の影響を避ける必要があるため無誘導抵抗器を負荷として用い、流れる電流から $P=I^2R$ で算出する。輸液ポンプの精度(送液量)はメスシリンダで回収量を測って設定値と比較する。人工心肺(に限らず医用機器)の絶縁抵抗は絶縁抵抗計(メガー)で測定する。
選択肢別解説
誤り。周波数カウンタはパルスの周波数(レート)や周期の測定器であり、振幅(電圧)を測定できない。ペースメーカの出力パルス振幅は、500 $\Omega$ 程度の負荷抵抗を介してオシロスコープまたはペースメーカアナライザで電圧波形を観測して求めるのが適切。
正しい。除細動器の出力は瞬時に発生する単発波形であるため、50 $\Omega$ 程度のダミー負荷(模擬胸部インピーダンス)に接続し、メモリ型オシロスコープで波形を保持・確認する。エネルギーチェッカの波形出力端子を用いる方法もある。
正しい。電気メス(ESU)の出力電力測定では、高周波での誤差を避けるため無誘導抵抗器を負荷として用い、負荷に流れる電流から $P=I^2R$ で電力を算出する。実務上は無誘導抵抗器に加えて高周波対応の電流計等も併用するが、必要な機材として無誘導抵抗器の選定は妥当。
正しい。輸液ポンプの精度(送液量・流量)は、メスシリンダで一定時間に送られた液量を回収・計量し、設定値と比較して評価する。専用の輸液ポンプチェッカを用いる方法もある。
正しい。人工心肺装置の絶縁抵抗測定には、絶縁抵抗計(メガー)を用いて、電源回路と筐体(外装)間など所定箇所の絶縁を測るのが標準的手順である。
解説
回路内圧(気道内圧)の急激な上昇は、主として気道抵抗の急増または呼気の出口障害で生じる。具体例としては、気管チューブの内腔狭窄・屈曲・分泌物貯留などによる閉塞、気管支喘息発作による気道攣縮、呼気弁(エクスパイアリバルブ)の開放不全による呼出障害(エアトラッピング、内因性PEEP上昇)が挙げられる。これらは送気・呼気の流れが妨げられて圧が蓄積し、ハイプレッシャーアラームとして検出されやすい。一方、気管チューブのカフ破れや回路の脱離はガス漏れを生じ、回路内圧は上がりにくく低下傾向(ロー・プレッシャー)を示すため、急激な内圧上昇の原因とはならない。したがって、本設問では1・4・5が妥当な原因である。
選択肢別解説
正しい。気管チューブの閉塞(分泌物栓塞、屈曲、患者の咬み込みなど)は送気ガスの流れを妨げ、回路内に圧が蓄積して急激な圧上昇(ハイプレッシャー)を来す。吸気ピーク圧の上昇として顕在化する。
誤り。カフの破れは気管内のシールが失われてガス漏れが増え、十分な圧がかからず回路内圧は低下しやすい。通常はロー・プレッシャーや低一回換気量の警報に結びつく。
誤り。呼吸回路の脱離は送気ガスが外部へ漏れるため、回路内圧は上昇せず低下する。多くの場合、ロー・プレッシャーや回路断のアラームが作動する。
正しい。呼気弁の開放不全では呼気時に十分にガスが排出できず、回路内にガスがトラップされ圧が蓄積する。結果として内因性PEEPやピーク圧の上昇を来し、急激な圧上昇の原因となる。
正しい。気管支喘息発作は気道攣縮により気道抵抗が急増し、吸気ピーク圧が上昇する。重症例では呼気遅延から動的肺過膨張(エアトラッピング)を伴い、さらなる圧上昇を来しうる。