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臨床工学技士国家試験
解説
$混合静脈血酸素飽和度(SvO2)は肺動脈内の混合静脈血における酸素飽和度で、全身の酸素供給量(DO2)と酸素消費量(VO2)のバランスを反映する指標である。フィック原理より、VO2 = CO \times (CaO2 - CvO2) で表され、DO2が低下(心拍出量CO低下、ヘモグロビンHb低下、SaO2低下)するか、VO2が増加(発熱 \cdot 加温 \cdot 震えなど)するとSvO2は低下する。体外循環(人工心肺)管理ではおおむね70%以上の維持を目標とし、60%未満は酸素供給不足の警告、50%程度まで低下すれば嫌気性代謝の進行が疑われる。これらを踏まえると、血液希釈はHb低下を介してSvO2を下げ、人工心肺での加温は代謝亢進によりSvO2を下げ、SvO2が50%では嫌気性代謝が進行する。一方、パルスオキシメータは動脈血のSpO2を測定する装置でありSvO2は測れない。SvO2が80%という高値は一般に低心拍出量状態を意味しない(低心拍出量ではむしろ低下する)。$
選択肢別解説
誤り。パルスオキシメータは末梢動脈血の酸素飽和度(SpO2)を光電容積脈波で推定する装置であり、混合静脈血酸素飽和度(SvO2)は測定できない。SvO2は肺動脈カテーテルでのサンプリング(混合静脈血)や、連続測定用のファイバオプティックセンサ(肺動脈/体外循環回路の脱血側)で評価する。
$正しい。過度の血液希釈はヘモグロビン濃度(Hb)を低下させ、動脈血酸素含量 CaO2 = 1.34\times Hb \times SaO2 + 0.003\times PaO2 を低下させる。結果として酸素供給量 DO2 = CO \times CaO2 が減少し、VO2が一定ならSvO2は低下する。$
正しい。人工心肺中に血液を加温すると体温上昇に伴い代謝が活性化し、酸素消費量(VO2)が増加する。送血量やFiO2が不変で相対的にDO2が追いつかなければ、SvO2は低下する。臨床的にも復温期にSvO2が下がりやすい。
正しい。SvO2の正常域はおおむね60~80%で、70%未満は酸素供給不足の兆候となる。50%程度まで低下すると酸素供給が臨界を下回り、乳酸上昇を伴う嫌気性代謝が進行している可能性が高い。
誤り。低心拍出量では酸素供給量(DO2)が低下するため、通常SvO2は低下する。SvO2が80%と高値の場合は、DO2が十分(あるいは過剰)である、もしくはVO2低下(鎮静・低体温など)や高心拍出・シャントなどが考えられ、低心拍出量状態を示すとはいえない。
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解説
乳児は循環血液量の絶対量が小さい一方で、人工心肺回路の充填量は成人と比べ相対的に大きくなるため、無血充填(晶質液のみ)を行うと著しい血液希釈が生じやすい。そのため初期Htの低下により酸素運搬能が不十分となるリスクが高く、しばしば赤血球充填が必要となる。また乳児は体表面積当たりの代謝・酸素需要が高く、体外循環中の体表面積当たりの至適灌流量(ポンプ流量)は成人より高めに設定されるのが一般的である。乳児の生理的血圧は成人より低く、体外循環中に目標とする灌流圧も成人より高く設定する必要はなく、むしろ低めで管理されることが多い。さらに、体液コンパートメントが小さく腎機能や血管透過性の未熟性も相まって、体外循環中の水分(体液)バランス管理は成人より難しい。したがって、1と2は正しく、3~5は不正解である。
選択肢別解説
正しい。乳児は循環血液量が少ないため、同じ回路充填量でも無血充填では希釈の影響が大きく、初期Htが過度に低下しやすい。結果として酸素運搬能低下を招くため、成人より希釈率は高くなりやすい。
正しい。乳児は基礎代謝率・酸素消費量が体表面積当たりで成人より高い。このため体外循環中の体表面積当たりの至適灌流量(インデックス流量)は成人より高め(一般に成人より大きい設定)を必要とする。
誤り。乳児の生理的血圧は成人より低く、体外循環中の至適灌流圧も成人より高くする必要はない。病態による調整はあるが、一般に成人より低めで管理されることが多い。
誤り。乳児では回路充填量が相対的に大きく、無血充填では著明な希釈となるため、無輸血体外循環は成人に比べ困難であり、赤血球充填が必要となる場面が多い。
誤り。乳児は体液量の予備能が小さく、腎機能や血管透過性も未熟で体液移動が起こりやすい。体外循環中は希釈や浸透圧変化の影響を受けやすく、水分バランスの管理は成人より困難である。
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解説
在宅人工呼吸(HMV)を実施する保険医療機関(または緊急時入院施設)については、厚生労働省通知(平成16年2月27日 保医発0227001)で具備すべき機器が定められている。具体的には、酸素吸入設備、気管内挿管または気管切開の器具、人工呼吸器(レスピレーター)、気道内分泌物吸引装置、動脈血ガス分析装置、胸部エックス線撮影装置が挙げられる。本問の選択肢では、胸部エックス線撮影装置・気道内分泌物吸引装置・血液(動脈)ガス分析装置が該当し正しい。二酸化炭素吸収装置は麻酔器の構成要素でHMVの必須機器ではなく、膜型人工肺はECMOや人工心肺で用いるデバイスでHMVの範疇外である。
選択肢別解説
胸部エックス線撮影装置は、HMV患者の肺炎・無気肺・カテーテル位置などの評価に必須で、通知(保医発0227001)において具備機器として明記されているため正しい。
気道内分泌物吸引装置は、分泌物貯留による閉塞や換気障害の是正に不可欠で、通知において具備機器として規定されているため正しい。
血液ガス(動脈血ガス)分析装置は、換気管理の適否(PaCO2、PaO2、pHなど)の評価に必要で、通知において具備機器として示されているため正しい。
二酸化炭素吸収装置は主として麻酔器のサークルシステムで用いられる装置であり、HMVの実施要件で求められる機器ではないため誤り。
膜型人工肺はECMOや人工心肺で血液を直接酸素化する目的で用いるデバイスで、在宅人工呼吸(気道内換気)とは目的・適用が異なり、HMVの具備機器ではないため誤り。
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解説
血液浄化法は、血液や血漿を体外循環(あるいは腹腔内)に導いて病因物質や過剰な水分・溶質を除去する治療の総称で、主な原理は拡散(透析)、対流(濾過)、吸着、そして細胞除去(アフェレシス)で構成される。具体例として、血漿吸着法はアフェレシスによる吸着療法、血液濾過法は対流主体の腎代替療法、腹膜透析法は腹膜を半透膜として用いる透析療法、リンパ球除去療法は細胞成分を選択的に除去する細胞アフェレシスに該当する。一方、電気分解法は溶液中の物質を電極反応で分解する工学的手法であり、臨床で実施される血液浄化治療としては確立していないため、血液浄化法には含まれない。
選択肢別解説
血漿吸着法は、血漿分離後に吸着カラムへ通液して自己抗体やLDLなど標的物質を吸着除去するアフェレシス療法であり、血液浄化法に含まれる。
電気分解法は電極反応で物質を分解する技術の総称で、臨床における血液浄化治療としては用いられない。血液や血漿を電気分解して治療する標準的手技は存在しないため、血液浄化法ではない。
血液濾過法(HF)は半透膜を介した限外濾過により水分と溶質を対流で除去し、置換液で補う腎代替療法の一つであり、血液浄化法に含まれる。
腹膜透析法は腹膜を半透膜として利用し、拡散・対流によって老廃物や水分を除去する腎代替療法であり、血液浄化法に含まれる。
リンパ球除去療法は、白血球(リンパ球など)を体外で選択的に除去する細胞アフェレシスに分類され、アフェレシスの一形態として血液浄化法に含まれる。
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解説
補充液が必要かどうかは、治療で除去した体液・血漿成分を同量(もしくは適量)補う必要があるかで決まる。血液濾過(HF)と血液透析濾過(HDF)は対流(限外濾過)で濾液を除去するため、循環血液量を保つ目的で置換液(補充液)が必須である。単純血漿交換(PE)および二重濾過血漿分離交換(DFPP)は血漿を分離・除去するため、除去分に見合うFFPやアルブミン製剤などの補充が必要となる。体外限外濾過法(ECUM)は除水のみを目的として体外回路で限外濾過を行い、体液の過剰を減らす治療であり、原則として置換のための補充液は用いない(抗凝固薬や回路プライミング液は補充液に含めない)。したがって補充液を必要としないのはECUMである。
選択肢別解説
血液濾過(HF)は対流(限外濾過)で濾液を大量に除去する治療であり、循環血液量を維持するために置換液(補充液)が必要となる。したがって『補充を必要としない』には該当しない。
単純血漿交換(PE, PEx)は血漿を分離・除去し、その体積・成分を補うために新鮮凍結血漿(FFP)やアルブミン製剤などの補充液を輸注する。補充を要する治療である。
血液透析濾過(HDF)は拡散と対流を併用し、対流で生じる体液量の減少を補うために置換液(しばしばオンラインで調製した清浄透析液由来)を使用する。よって補充液が必要。
体外限外濾過法(ECUM)は除水のみを目的に限外濾過を行い、体液過剰の是正を図るための治療で、置換のための補充液は使用しない。よって設問の正解。
二重濾過血漿分離交換法(DFPP)は一次膜で血漿分離後、二次膜で選択的に病的高分子を除去するが、必要に応じてアルブミン製剤やFFPで体積・蛋白を補うため補充液が必要となる。
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