臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
Compression volume(CV;回路圧縮容積)は、回路内圧が上昇したときに人工呼吸器回路や付属機器(蛇管・加温加湿器チャンバなど)が弾性伸展することで、その分だけ回路内に蓄えられて患者肺へ届かないガス量を指す。定量的にはおおむね $CV = C_{circ} \times \Delta P$(回路コンプライアンスと圧変化の積)で表される。量規定換気(VCV)では、設定換気量の一部がCVとして消費されるため肺胞換気量は減少する。CVは回路が柔らかい(高コンプライアンス)、長い、付属容積(加温加湿器チャンバ等)があるほど大きくなる。CVが大きいと患者の吸気努力がまず回路の伸展に使われやすく、トリガ到達が遅れて吸気トリガ感度は実質的に鈍化(低下)する。
選択肢別解説
正しい。量規定換気では設定一回換気量の一部が回路の伸展に使われる($CV = C_{circ} \times \Delta P$)。この分だけ肺に届く量が減り、肺胞換気量は減少する。肺コンプライアンスが低い・気道内圧が高いほど減少量は大きくなる。
正しい。加温加湿器チャンバは回路の一部で弾性変形(コンプライアンス)を有するため、圧上昇時に容積変化を生じCVに寄与する。チャンバを含む全系の回路コンプライアンスがCVを規定する。
誤り。柔らかい回路ほど回路コンプライアンスが大きく、圧上昇時の膨らみが増えるためCVは大きくなる。『小さい』は不適。
誤り。回路が長いほど膨張しうる部分が増え全体の回路コンプライアンスが大きくなるため、CVは大きくなる。『小さい』は不適。
誤り。CVが大きいと患者の初期吸気努力が回路の伸展に取られ、圧・流量変化が検出閾値に達しにくくなるため、実質的に吸気トリガ感度は低下(鈍化)する。『上昇する(より敏感になる)』は不適。
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解説
IABPは大動脈内でバルーンを拡張期に膨張させて拡張期圧を上げ(ダイアストリック・オーグメンテーション)、冠灌流を増加させる。一方、収縮期開始直前に急速排気して大動脈圧を低下させ、左室後負荷を軽減するため、心筋酸素需要を減らし、心拍出をわずかに改善する(一般に心拍出量の増加は10〜15%程度)。体外循環の定常流送血に対しても、IABPの膨張・排気で圧・流に拍動性を付加できる。合併症としては、挿入血管(多くは大腿動脈)やその主要分枝の血行障害が重要である。
選択肢別解説
誤り。IABPは収縮期直前にバルーンを急速に排気して大動脈圧を低下させ、左室の後負荷を軽減する補助法である。後負荷を増大させる効果はない。
誤り。IABP単独で得られる拍出増加は限定的で、一般に心拍出量で10〜15%程度の改善にとどまり、正常な心臓と同程度の心拍出量は得られない。
正しい。体外循環(定常流送血)中でもIABPの拡張期膨張・収縮期排気を同期させることで、大動脈圧波形に拍動性を付加し、拍動流様の灌流を得ることができる。
正しい。拡張期にバルーンを膨張させることで大動脈拡張期圧が上昇し、冠動脈灌流圧が高まって冠血流量が増加する。
正しい。IABPカテーテルの挿入・留置により大腿動脈やその分枝の閉塞、塞栓、解離などが起こりうり、下肢を中心とした主要分枝の血行障害が合併症として知られている。
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解説
静脈圧は返血側(静脈側)ドリップチャンバ付近で測定され、返血経路の抵抗と血液流量に影響される。概念的には $P\_v \approx R\_v\,Q\_b + P\_{vascular}$ で、返血側の閉塞・狭窄(抵抗増大)は静脈圧上限警報の主因となる。一方で、動脈側の問題やダイアライザ内部抵抗の増大は血流量低下や下流圧の低下として現れやすく、静脈圧の上昇を直接は起こしにくい。よって、原因として考えにくいのは「脱血不良」と「ダイアライザ内の血液凝固」であり、静脈側(返血側)ドリップチャンバ内の凝固、返血回路の屈曲、静脈側穿刺不良は返血抵抗を増し静脈圧上限警報の原因となる。
選択肢別解説
脱血不良は動脈側(患者→回路への吸引側)の問題で、ポンプへの流入が不足して血液流量が低下しやすい。返血側の圧はむしろ低下しやすく、静脈圧上限警報の直接原因とは考えにくい。したがって本設問の趣旨(原因として考えられない)に合致する。
ダイアライザ内の血液凝固はダイアライザ抵抗を増大させ、ポンプ下流(ダイアライザ出口側)である静脈側の圧は低下または上昇しにくい。多くの場合、血流量低下やダイアライザ前後差圧上昇として現れ、静脈圧上限警報の直接原因とはなりにくい。よって本設問の『原因として考えられない』に該当する。
静脈側ドリップチャンバ内の血液凝固は返血経路の閉塞を生じ、返血側抵抗が増大するため静脈圧が上昇し、上限警報の原因となる。
静脈側回路の折れ曲がり(キンク)は返血経路の機械的狭窄であり、返血抵抗の増大により静脈圧が上昇して上限警報が発報しやすい。
静脈側穿刺針の穿刺不良(血管外漏出や壁当たりなど)は返血側の実質的な流出抵抗を増大させ、静脈圧上昇をきたして上限警報の原因となる。
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解説
臨床工学技士法における生命維持管理装置は、「人の呼吸、循環または代謝の機能の一部を代替・補助する目的で使用される装置」を指す。人工呼吸器や血液浄化装置(血液吸着装置を含む)、高気圧酸素治療装置、除細動器などはこの定義に合致する。一方、結石破砕装置は結石を破砕して排出を促す治療機器であり、生命維持機能(呼吸・循環・代謝)の代替や補助を直接の目的としないため、生命維持管理装置には含まれない。
選択肢別解説
血液吸着装置は血液中の毒素・サイトカイン・薬物などを選択的に除去する血液浄化療法の装置で、腎・肝などの代謝(解毒・排泄)機能の補助・代替に位置づけられるため、生命維持管理装置に含まれる。
結石破砕装置(ESWL等)は尿路や胆道などの結石を破砕するための治療機器であり、呼吸・循環・代謝機能の代替または補助を目的としない。したがって生命維持管理装置には含まれない(本設問の正答)。
高気圧酸素治療装置は加圧環境下で高濃度酸素を投与し、組織酸素分圧を上げることで低酸素状態の改善を図る。これは広義に呼吸機能(酸素化)の補助に該当し、生命維持管理装置に含まれると整理される。
人工呼吸器は自発呼吸が不十分な患者に対し換気を提供・補助して呼吸機能を代替・補助する装置であり、生命維持管理装置の代表例である。
除細動器は致死性不整脈(心室細動・無脈性心室頻拍)に対し電気ショックで洞調律回復を図り、循環の維持・回復を目的とするため、生命維持管理装置に含まれる。
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解説
PCPS(経皮的心肺補助、一般的にはVA-ECMO)は、大腿静脈—大腿動脈などを経皮的にカニュレーションし、遠心ポンプと膜型人工肺で循環・ガス交換を補助する装置である。送血は大腿動脈からの逆行性大動脈送血となるため左室の駆出抵抗(後負荷)を高め、左室拡張や肺うっ血を助長することがある。このためIABP併用や左室減圧(ベント)が検討される。回路の駆動には溶血や回路破綻リスクが比較的低く流量制御に優れる遠心ポンプが標準的に用いられる。開胸は不要で、ベッドサイドで迅速な導入が可能であり、心原性ショックや心停止症例でのECPR(体外式心肺蘇生)としての適応も確立している。
選択肢別解説
正しい。大腿動脈からの逆行性送血により大動脈圧が上がり、左室が駆出すべき圧負荷(後負荷)が増加する。結果として左室拡張・肺うっ血のリスクがあり、IABP併用などで軽減を図る。
誤り。PCPSでは一般に遠心ポンプを用いる。遠心ポンプは血液損傷が少なく、回路破裂リスクが低く、長時間の補助循環に適する。ローラポンプはPCPSでは通常用いない。
誤り。PCPSは経皮的に(主としてセルジンガ法で)カニューレを挿入するため開胸手術を必要としない。救急外来やICUのベッドサイドで導入可能である。
正しい。専用の滅菌キットと経皮的カニュレーションにより、術野の大きな準備を要さず迅速に体外循環を開始できる。心原性ショックや心停止の現場でのタイムクリティカルな導入に適する。
正しい。PCPSはECPR(体外式心肺蘇生)として心停止例に適用され、冠循環・脳循環を一時的に確保しながら原因治療(PCIなど)に橋渡しする。
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解説
人工鼻(HME: Heat and Moisture Exchanger)は、患者の呼気に含まれる熱と水分を吸着し、次回吸気時にそれを戻す受動式加湿器である。加熱加湿器のように装置側で温度・湿度を能動的に設定・制御する機構はなく、基本的に調節操作は不要である。回路(Yピースと気管チューブの間)に挿入するため機械的死腔が増加し、フィルタ/交換体を通過させるための流路抵抗も増す。したがって「死腔が増加する」が正しい。過剰加湿は生じにくく、むしろ条件によっては加湿不足が問題となりうる。
選択肢別解説
正しい。人工鼻は回路内に追加される部品であり、Yピースと気管チューブの間に挿入されるため機械的死腔が増加する。特に一回換気量の小さい小児ではCO2貯留のリスクに留意する。
誤り。人工鼻は受動式であり、装置側で湿度を能動的に調節する機能はない。臨床では患者条件に適したHMEを選択するが、「湿度調節が必要(操作が要る)」という表現は不適切である。
誤り。人工鼻は加熱機構を持たず、温度を能動的に設定・調節するものではない。呼気の熱を回収して吸気に戻す受動機構であるため、温度調節は不要である。
誤り。人工鼻を介することで流路にフィルタ/交換体が追加されるため気流抵抗は増加し、呼吸仕事量は増える傾向にある。
誤り。人工鼻は呼気由来の水分を再利用する受動加湿であり、加熱加湿器のような過剰加湿は起こりにくい。臨床上はむしろ加湿不足(分泌物粘稠化、痰づまり)に注意する。
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解説
人工心肺(CPB)を用いた体外循環では、プライミング液による希釈と、血液が人工材料表面に接触すること、非拍動流・低体温・麻酔・手術侵襲といった生理学的負荷が同時に起こる。代表的な変化として、電解質は希釈により一般に低下傾向を示し(特にイオン化カルシウムは希釈に加えて保存血中クエン酸によるキレート化やアルカローシスで低下しやすい)、免疫・炎症系は補体活性化や好中球活性化を介してIL-6, IL-8, TNF-αなど炎症性サイトカインが放出される。内分泌系では、膵血流の低下や低体温・ストレスホルモンの影響でインスリン分泌は低下し高血糖傾向、バソプレシン(ADH)は低血圧や非拍動流・ストレス刺激により上昇しやすい。これらを踏まえると、本問の正誤は、Ca低下・炎症性サイトカイン放出・バソプレシン上昇が正しく、Na上昇とインスリン分泌増加は不正解である。
選択肢別解説
正しい。プライミング液による希釈で総カルシウム濃度は低下し、さらに保存血由来のクエン酸によるキレート化やアルカローシス(体外循環中の換気管理や低体温に伴うpH変動)でイオン化Ca2+が下がりやすい。臨床的にも体外循環導入後にイオン化カルシウムの低下が観察され、補正が必要となることがある。
誤り。体外循環の導入で血液はプライミング液により希釈されるため、血清Na+は一般に低下または大きく変化しない方向であり、上昇とは言い難い。臨床ではプライミング液の組成に依存するが、少なくとも『上昇』を一般的変化として選ぶのは不適切である。
誤り。体外循環中は膵血流低下や低体温、カテコラミン・コルチゾールなどストレス関連ホルモンの影響によりインスリン分泌は抑制され、組織側のインスリン抵抗性も相まって高血糖傾向となる。したがってインスリン分泌の『増加』は不正確。
正しい。血液が人工心肺回路という非生体面に接触することで補体・白血球が活性化され、IL-6, IL-8, TNF-αなどの炎症性サイトカインが放出され、体外循環関連の全身炎症反応(SIRS)が惹起される。
正しい。体外循環では非拍動流や麻酔・手術侵襲、導入時の血圧低下などが視床下部—下垂体系を刺激し、バソプレシン(ADH)の分泌が方進して血中濃度は上昇しやすい。臨床的にも導入早期にAVP高値が観察されることがある。
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解説
誤りは1。ペースメーカの出力パルス振幅(電圧)は、500 $\Omega$ 程度の負荷抵抗を介してオシロスコープまたはペースメーカアナライザで測定するのが基本で、周波数カウンタはパルスの周期・周波数(レート)測定用であり振幅測定には不適切である。除細動器の出力波形は瞬時現象のため、50 $\Omega$ 程度のダミー負荷に接続しメモリ型オシロスコープで単発波形を捕捉するのが適切。電気メスの出力電力は高周波で誘導の影響を避ける必要があるため無誘導抵抗器を負荷として用い、流れる電流から $P=I^2R$ で算出する。輸液ポンプの精度(送液量)はメスシリンダで回収量を測って設定値と比較する。人工心肺(に限らず医用機器)の絶縁抵抗は絶縁抵抗計(メガー)で測定する。
選択肢別解説
誤り。周波数カウンタはパルスの周波数(レート)や周期の測定器であり、振幅(電圧)を測定できない。ペースメーカの出力パルス振幅は、500 $\Omega$ 程度の負荷抵抗を介してオシロスコープまたはペースメーカアナライザで電圧波形を観測して求めるのが適切。
正しい。除細動器の出力は瞬時に発生する単発波形であるため、50 $\Omega$ 程度のダミー負荷(模擬胸部インピーダンス)に接続し、メモリ型オシロスコープで波形を保持・確認する。エネルギーチェッカの波形出力端子を用いる方法もある。
正しい。電気メス(ESU)の出力電力測定では、高周波での誤差を避けるため無誘導抵抗器を負荷として用い、負荷に流れる電流から $P=I^2R$ で電力を算出する。実務上は無誘導抵抗器に加えて高周波対応の電流計等も併用するが、必要な機材として無誘導抵抗器の選定は妥当。
正しい。輸液ポンプの精度(送液量・流量)は、メスシリンダで一定時間に送られた液量を回収・計量し、設定値と比較して評価する。専用の輸液ポンプチェッカを用いる方法もある。
正しい。人工心肺装置の絶縁抵抗測定には、絶縁抵抗計(メガー)を用いて、電源回路と筐体(外装)間など所定箇所の絶縁を測るのが標準的手順である。
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