臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
人工心肺(CPB)の充填液は、基本となる晶質液(例: 乳酸加リンゲル)に、目的に応じて浸透圧調整薬(マニトール)、膠質浸透圧維持のための代用血漿、酸塩基補正のための重炭酸ナトリウムなどを適宜添加して構成する。一方、プロタミンはヘパリンの抗凝固作用を中和する薬剤であり、体外循環終了時に投与するもので、充填液に混入すると抗凝固が失われ回路内凝血の危険があるため使用しない。したがって、充填液に使用しないのはプロタミンである。
選択肢別解説
乳酸加リンゲルは電解質組成が細胞外液に近い晶質液で、人工心肺充填のベース液として一般的に用いられる。したがって「使用しない」には該当しない。
マニトールは浸透圧利尿により腎保護を図り、組織浮腫の抑制や浸透圧維持に役立つため、充填液に添加されることがある。よって「使用しない」には該当しない。
代用血漿(例: ヒドロキシエチルデンプンやゼラチン製剤など)は膠質浸透圧を維持し、循環血液量の確保や浮腫軽減に資するため、充填液の構成要素として使用される。ゆえに「使用しない」には当たらない。
重炭酸ナトリウムは体外循環中の代謝性アシドーシス補正など酸塩基平衡調整の目的で、充填液に添加して用いられる。したがって「使用しない」には該当しない。
プロタミンはヘパリンの抗凝固作用を中和する薬剤で、体外循環終了時に投与する。充填液に混入すると抗凝固効果が失われ回路凝固の危険があるため、充填液には使用しない。よって本問の該当はプロタミンである。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。
解説
成人の人工心肺(体外循環)の基本的操作目標は、全身酸素供給と臓器灌流を十分に保つことにある。代表的な指標として、灌流量は体重あたりおおむね60〜80 mL/分/kg、平均大動脈圧(MAP)は60〜80 mmHg、混合静脈血酸素飽和度(SvO2)は70%以上、ヘマトクリット(Ht)は少なくとも20%以上が広く用いられる。中心静脈圧(CVP)は心腔の減圧・良好な脱血を反映し、体外循環中は0〜5 mmHg程度の低値が目安である。よってCVP 20 mmHgは明らかに高すぎ、脱血不良や容量過多、カニュラ位置不良などを疑うべき不適切な条件である。他の選択肢は一般的な至適範囲内で適切と判断できる。
選択肢別解説
SvO2 75%は全身の酸素需給バランスが保たれている目安であり、体外循環中は概ね70%以上を目標とする。したがって適切である。
灌流量70 mL/分/kgは成人CPBの一般的目標(約60〜80 mL/分/kg)の範囲内で、体表面積換算でも通常の目安に相当するため適切である。
平均大動脈圧60 mmHgは目標範囲(おおむね60〜80 mmHg)の下限であり、臓器灌流を維持するうえで妥当な設定といえるため適切である。
中心静脈圧20 mmHgは体外循環中として高すぎる。CPBでは心腔減圧・良好な静脈還流を得るためCVPは0〜5 mmHg程度が目安であり、20 mmHgは脱血不良、容量過多、カニュラ位置不良などを示唆する不適切な条件である。
ヘマトクリット20%は成人CPBにおける希釈の下限目標として一般的に用いられる(おおむね20%以上、Hbで7 g/dL以上を目安)。したがって適切である。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。
解説
ECMO(体外式膜型人工肺)は重症呼吸不全や循環不全に対して用いられ、V-V ECMO(主にガス交換補助)とV-A ECMO(循環補助+ガス交換)の方式がある。抗凝固管理は未分画ヘパリン投与下でACTをおおむね150〜180秒程度(施設によりやや幅あり)に維持するのが一般的で、400秒以上は心臓手術時の人工心肺(CPB)での目標域に相当し、ECMOでは過凝固抑制が強すぎて出血リスクが高い。カニュレーションは多くがベッドサイドでの経皮的穿刺により局所麻酔+鎮静で実施可能であり、全身麻酔は必須ではない。ポンプは現在、成人を中心に遠心ポンプが主流で、ECMO全体として「ローラポンプを用いることが多い」とは言えない。ECMOは新生児の重症呼吸不全(例:胎便吸引症候群、遷延性肺高血圧症など)にも適用される。
選択肢別解説
誤り。ECMOの抗凝固管理で目標とするACTは一般に150〜180秒程度(施設差あり)。400秒以上は開心術の人工心肺(CPB)での目標域であり、ECMOでそこまで延長させると出血合併症のリスクが高まる。
誤り。ECMOにはV-V ECMO(呼吸補助主体)とV-A ECMO(循環補助を含む)がある。「V-Vのみ」ではない。病態により使い分ける。
正しい。ECMOは新生児の重症呼吸不全にも適用され、胎便吸引症候群や遷延性肺高血圧症などで実施例がある。適応・禁忌や出血・脳合併症リスクに配慮して運用される。
正しい。多くの症例でカニュレーションは経皮的穿刺でベッドサイドにて局所麻酔と鎮静下に施行可能で、全身麻酔は必須ではない(年齢・病態・手技難易度によっては全麻を選ぶこともある)。
誤り。現在のECMOでは遠心ポンプが主流である。歴史的に新生児・小児でローラポンプを用いた運用もあったが、ECMO全体として「ローラポンプを用いることが多い」とは言えない。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。
解説
吸着型酸素濃縮器は圧力変動吸着(PSA)方式で作動し、ゼオライトが加圧時に空気中の窒素を選択的に吸着して酸素を相対的に濃縮する。コンプレッサで加圧した空気を吸着筒へ交互に送り込み、もう一方の筒は減圧して再生する。生成された酸素濃縮ガスはリザーバ(貯蔵タンク)に一旦蓄えて脈動を平滑化してから供給される。ゼオライトは水分も吸着するため、供給ガスは乾燥しており臨床では加湿器を併用することが多い。医療用酸素濃縮器が得られる酸素濃度は概ね90〜93%程度であり、100%酸素は供給できない。したがって誤りは「100%の酸素を供給できる」である。
選択肢別解説
正しい。吸着剤としてゼオライトを用い、加圧時に窒素を選択的に吸着させて酸素を相対的に濃縮するのがPSA方式の基本原理である。
正しい。PSAではコンプレッサで加圧した空気を吸着筒に導入し、加圧条件下で窒素を吸着させることで分離効率を得る。
正しい。ゼオライトは水分も吸着するため、生成された酸素濃縮ガスは乾燥しており、患者供給時には加湿器の併用が推奨される。
正しい。吸着筒の切替に伴う流量変動を平滑化し連続供給するため、生成ガスはいったん貯蔵タンク(リザーバ)に蓄えられてから供給される。
誤り。PSA式酸素濃縮器で得られる酸素濃度は一般に約90〜93%程度であり、100%酸素の供給はできない。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。
解説
保守点検は、日常点検・定期点検・清掃・機能や安全性の確認、校正、消耗部品の交換、記録管理など、機器を良好な状態で使用し続けるための予防的・維持的な活動を指す。一方で、劣化や故障により失われた機能・性能・安全性を回復させるための部品交換や調整は修理(オーバーホール等を含む)に該当し、保守点検には含まれない。よって、劣化した電源プラグの交換のように安全性・絶縁性能の回復を目的とする行為は修理領域であり、保守点検に含まれない。清掃、消耗品(例:バクテリアフィルタ)の交換、精度の測定や校正は保守点検に含まれる。
選択肢別解説
体外式除細動器の外装の清掃は、日常的な清掃・外観点検に該当し、保守点検に含まれる。汚染の除去や外装の損傷確認は安全性確保に直結する。
人工呼吸器のバクテリアフィルタ(呼気側・吸気側等のフィルタ)は消耗部品であり、所定の交換周期や差圧上昇時に交換する。消耗品交換は保守点検に含まれる(取扱説明書に従う予防的交換)。
人工透析装置の劣化した医用プラグ(電源プラグ等)の交換は、安全性(絶縁・接地・漏電防止)や機能の回復を伴う劣化部品交換であり、修理に該当する。修理(性能・安全の回復や調整を行う行為)は保守点検には含まれない。したがって本設問で『保守点検に含まれない』ものに該当する。
輸液ポンプの送液流量精度の測定は、定期点検や校正業務の一部として行う性能確認であり、保守点検に含まれる。なお、測定の結果ずれが大きく、内部調整・部品交換で性能回復を図る行為は修理に該当するが、測定そのものは保守点検である。
心電計の記録器の校正は、計測精度を確認・補正する保守点検の代表的作業である。基準信号に対する感度・記録幅・時間軸などの確認・校正は保守点検に含まれる。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。
解説
臨床工学技士は、医師の具体的な指示の下で生命維持管理装置(人工心肺を含む)の操作に付随する行為を行える。具体的には、回路への薬剤注入や、患者に接続された回路・留置されたカニューレからの採血は許容される(臨床工学技士法施行規則第32条に規定される「身体への注入」「身体からの採血」に該当)。一方、患者の血管に新たに穿刺して採血する行為は臨床工学技士の業務範囲外である。また、術野(無菌野)でのカニューレと回路の直接接続は手術手技に密接に属し、原則として医師や術野スタッフが行うべきで、臨床工学技士の単独業務とはされない。したがって誤っているのは「術野でカニューレを回路に接続する」(4)と「開始前に患者の静脈から採血を行う」(5)である。
選択肢別解説
回路からの薬剤注入は、医師の具体的な指示の下で生命維持管理装置の操作として実施可能である。人工心肺の充填液や回路内へ薬剤(ヘパリン等)を注入する実務は広く行われており、施行規則第32条の「身体への注入」に準じて認められる。よって誤りではない。
留置カニューレ(医師が挿入・固定した血管内カニューレ)からの採血は、新たな穿刺を伴わず、患者に接続されたライン・回路からの採血として、医師の具体的指示の下で許容される(施行規則第32条「身体からの採血」)。したがって臨床工学技士の業務として妥当であり、誤りではない。
人工心肺回路の充填(プライミング)は臨床工学技士の中核業務であり、適切な溶液や薬剤を用いて気泡除去、回路機能確認を行う。医師の指示の下で実施する通常業務であるため、誤りではない。
術野(無菌野)でカニューレを回路に直接接続する行為は、手術操作に密接に関連する。臨床工学技士は非滅菌側で回路準備・作動管理を担うのが原則であり、術野での直接接続は医師(または術野スタッフ)が行うべき範疇で、臨床工学技士の単独業務としては不適切。よって誤りである。
「患者の静脈から採血を行う」は新たな静脈穿刺を伴う行為であり、臨床工学技士の業務範囲外。臨床工学技士に許容される採血は、医師の具体的指示の下で生命維持管理装置に接続された回路や留置ラインからの採血に限られる。したがって誤りである。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。