臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
人工心肺による体外循環では、血液が非生体表面(回路・酸素atorなど)に接触することで補体系(主に副経路)が活性化し、C3a・C5a などのアナフィラトキシンが産生され炎症反応が惹起される。接触系の賦活(XII因子→プレカリクレイン→カリクレイン)によりキニン系が動員され、ブラジキニンは増加する。血液成分では、希釈、回路表面への付着・活性化、消費、機械的損傷などにより血小板が減少し、白血球ではリンパ球が著明に減少して好中球優位となる。内分泌反応としては、手術侵襲・ストレス、非拍動流、体液変動などの影響で抗利尿ホルモン(バソプレシン)はむしろ上昇傾向を示す。以上より、1・2・3は正しく、4・5は記載が逆で誤りである。
選択肢別解説
正しい。血液が人工物に接触すると補体系が主に副経路で活性化し、C3a・C5a などのアナフィラトキシン生成、好中球活性化、炎症反応の増強が起こる。体外循環に特有の非生体表面接触が誘因である。
正しい。体外循環では血液希釈、回路・人工肺表面への付着、活性化に伴う消費、機械的破壊や剪断応力などにより血小板数は低下する(一般に30〜50%程度の減少がみられることが多い)。機能低下(活性化・脱顆粒)も併発する。
正しい。体外循環中はリンパ球が相対的・絶対的に減少し、白血球分画は好中球優位となる。原因としては希釈、再分布(margination)、アポトーシスやサイトカイン環境の変化などが挙げられる。
誤り。抗利尿ホルモン(バソプレシン)は手術侵襲やストレス、非拍動流、相対的低灌流・体液変動などの影響でむしろ上昇傾向を示すため、「減少する」は不適切である。
誤り。接触系(カリクレイン-キニン系)が賦活化され、キニノーゲンからブラジキニンが産生・遊離されるため、血中ブラジキニンは増加する。「減少する」は逆である。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。
解説
ARDSは肺胞−毛細血管膜の障害と肺血管透過性亢進により非心原性肺水腫を生じ、肺胞虚脱やサーファクタント機能低下を伴う。その結果、肺は硬くなり(伸展性低下)、肺コンプライアンスは低下するのが典型である。さらに、虚脱・浸潤病変の散在により換気血流比($\dot{V}_{A}/\dot{Q}$)の不均等とシャントが増加し、拡散距離の延長による拡散障害、気道内の浮腫や分泌物増加による気道抵抗上昇もみられる。よって「肺コンプライアンス増加」はARDSの病態として誤りである。
選択肢別解説
正しい。ARDSでは肺胞隔壁の傷害と間質・肺胞内への水腫液貯留によりガス交換膜が肥厚し、拡散距離が延長して拡散障害が生じうる。
正しい。肺胞虚脱や浸潤が散在することで換気可能部位と血流分布が不均一となり、換気血流比($\dot{V}_{A}/\dot{Q}$)の不均等が顕著となる。
正しい。気道粘膜の浮腫や分泌物増加、小気道の狭小化などにより気道抵抗が上昇し、呼吸仕事量が増大する。
正しい。虚脱・浸潤で換気不能となった肺胞にも血流が流入するため、右左シャントが増加し低酸素血症の主因となる。
誤り。ARDSでは肺は硬くなり、サーファクタント機能低下と肺胞虚脱・間質浮腫により伸展性が落ちるため、肺コンプライアンスは低下する。増加はARDSの病態と合致しない。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。
解説
ARDSは肺胞—毛細血管膜のびまん性障害により血管透過性が亢進し、非心原性肺水腫(透過性亢進型肺水腫)を来す。結果として肺胞虚脱・水腫により肺内シャントが増加し、難治性低酸素血症を呈し、肺は硬くなってコンプライアンスが低下する。診断では低酸素血症の指標として PaO2/FiO2 比が用いられ(旧AECC定義では ARDS は $\mathrm{PaO_2}/\mathrm{FiO_2} \le 200\,\mathrm{mmHg}$)、心原性肺水腫の除外として肺動脈楔入圧(PCWP)が 18 mmHg 以下であることが要件とされる。よって「肺動脈楔入圧 > 18 mmHg」を示唆する記載はARDSの定義に反し誤りである。
選択肢別解説
正しい。ARDSでは肺胞—毛細血管バリアの損傷により透過性が亢進し、蛋白成分を含む滲出液が肺胞内・間質に漏出する非心原性肺水腫を呈する。
正しい。肺胞内の水腫・虚脱により換気されない領域が増え、灌流は保たれるため肺内シャントが増加し、吸入酸素濃度上昇に反応しにくい低酸素血症を来す。PEEP付加で改善が期待されるのもシャント軽減が理由である。
正しい。肺胞の水腫・虚脱と間質硬化により肺が硬くなり、肺コンプライアンスは低下する。人工呼吸管理では低コンプライアンスゆえに高い気道内圧が必要になりやすい。
正しい。旧AECC定義では ARDS の低酸素血症の基準として $\mathrm{PaO_2}/\mathrm{FiO_2} \le 200\,\mathrm{mmHg}$ が用いられる。よってこの記載は適切である(注: その後のBerlin定義では重症度区分が導入されたが、本設問の文脈では旧基準の表現で整合する)。
誤り。ARDSは非心原性肺水腫であり、心原性肺水腫を除外する所見として肺動脈楔入圧(PCWP)は 18 mmHg 以下であることが要件とされる。従って「PCWPが18 mmHgを超える」趣旨の記載はARDSの定義に反する。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。
解説
人工心肺(完全体外循環)中の安全管理では、空気誤送、動脈解離、脱血不良、人工肺血栓などの重大事象に対し、原因に即した初期対応が求められる。空気は貯血槽の液面低下だけでなく、脱血側の陰圧(VAVD)による吸気、回路接続部の緩み、ベントや心筋保護系からの逆流・逆転、人工肺内の脱ガスなど多経路で発生し得るため、貯血槽が空でなくても誤送は起こり得る。動脈解離が疑われる場合は解離腔の拡大を避けるため送血流量を直ちに低下または停止し、送血部位の変更準備や低体温化、圧モニタ・TEE等での確認を行う。脱血不良では原因(カニューレ先端の壁貼り付き、屈曲・閉塞、陰圧過大、循環血液量不足など)を同定し、カニューレの前後位置調整(しばしば浅く引き戻す)、回路確認、陰圧・ポンプ流量の整合、容量補充等で対処する。人工肺内血栓は圧力差上昇やガス交換不全を伴い致命的になり得るため、抗凝固状態の確認(ACT 等)を行いつつも基本対応は人工肺の速やかな交換であり、ヘパリン追加のみでは既存血栓は解決しない。脱血回路に持続的な微小気泡が見られる場合は陰圧過大や接続部吸気が疑われるため、陰圧やポンプ流量の調整、接続部の増し締め、容量補充、カニューレ位置調整など脱血側の是正を優先する。動脈側に空気が到達した場合に初めて送血停止が適応となる。
選択肢別解説
正しい。空気誤送は貯血槽の液面低下以外にも、脱血側の陰圧(VAVD)による吸気、回路接続部の微小リーク、ベント・心筋保護回路からの逆流やポンプ逆転、人工肺での脱ガスなど多経路で発生し得る。したがって貯血槽が完全に空でなくても空気が動脈側へ移行する危険はある。常にエアトラップ・フィルタ・監視を併用し、流量と陰圧の整合、接続部の点検を行う。
誤り。動脈解離が発生・疑われる場面で送血流量を増やせば解離腔へ灌流が集中し解離が進展する危険が高い。適切な対応は送血流量を低下または停止し、動脈圧を下げた上で送血部位変更(例:腋窩・大腿)、低体温化や循環停止の準備、TEEや圧ラインでの評価を行うことである。
誤り。脱血不良に対してカニューレをむやみに深く挿入すると、血管壁への貼り付きや狭小部への迷入でさらに流入が悪化することがある。まずはカニューレの前後位置を微調整(多くはやや引き戻す)、屈曲や陰圧過大の是正、循環血液量の補充、VAVD設定やポンプ流量の整合、必要に応じ二本目カニューレの追加などで対処する。
誤り。人工肺内血栓形成が疑われる場合、最優先は人工肺(必要により回路)の速やかな交換である。ACT低下など抗凝固不足があれば是正(ヘパリン追加)するが、追加投与のみでは既に形成された血栓は解消せず、塞栓やガス交換・圧損悪化の危険が続く。
誤り。脱血回路の持続的微小気泡は陰圧過大や接続部の吸気を示唆するため、まず脱血側の原因是正(陰圧や送血流量の調整、接続部の締結確認、容量補充、カニューレ位置調整等)を行う。動脈側への空気到達が確認・疑われる場合に送血停止を行うのであって、微小気泡が脱血側に限局する段階で直ちに送血を停止するのは一般的対応ではない。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。
解説
高気圧酸素治療では、加圧時は環境圧が上昇して体内ガスの体積が減少する(ボイルの法則: $P_1V_1=P_2V_2$)。このとき耳管や副鼻腔の開口が狭窄・閉塞していると、腔内圧が環境圧に追随できず圧差が生じ、組織が内方へ圧迫されるスクイーズ(気圧外傷)が起こる。代表が中耳(鼓膜)障害と副鼻腔スクイーズで、いずれも加圧時に生じうる。一方、減圧時は体内ガスが膨張するため、肺胞破裂を契機とする肺の過膨張症候群や皮下気腫、まれに腸管破裂などが問題となる。したがって本問の加圧時の合併症は、鼓膜障害と副鼻腔スクイーズである。
選択肢別解説
正しい。加圧時に耳管が閉塞・狭窄していると中耳腔が環境圧に追随できず圧差が生じ、中耳気圧外傷(鼓膜充血・出血・穿孔など)を起こしうる。嚥下やバルサルバでの耳抜きができない状況で起きやすい。
誤り。加圧時は腸管内ガス体積は減少するため、腸管破裂は通常生じにくい。ガス膨張を伴う減圧時に主として懸念される。
誤り。皮下気腫は肺胞破裂などから漏出した気体が組織間に広がる所見で、ガス膨張をきっかけとする減圧時の気圧外傷に関連する。加圧時には典型的ではない。
誤り。肺の過膨張症候群(POIS)は減圧時に肺内ガスが膨張し、肺胞破裂や縦隔気腫・気胸・動脈ガス塞栓などを来す気圧外傷である。加圧時には生じにくい。
正しい。副鼻腔の開口(洞口)が狭窄・閉塞していると、加圧時に副鼻腔内圧が環境圧に追随できず陰圧側の圧差が生じ、粘膜出血や疼痛などのスクイーズ(副鼻腔障害)を起こす。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。
解説
PCV(従圧式換気)では、吸気相で一定の圧(P_insp)を一定時間(Ti)かけるため、一回換気量 V_T は主に肺・回路の力学特性(コンプライアンスC、気道抵抗R)とリークの有無に左右される。概念的には V_T $\approx C \times (P_{insp}-PEEP) \times (1- e^{-T_i/(RC)})$ と表せ、Rが増える($\tau=RC$が大きい)と同じTiでも十分に膨張しきれず V_T が低下しうる。さらにカフ漏れなどのリークは実際に肺に入る有効換気量と呼気側で計測される分時換気量を低下させる。片肺挿管は実質的に有効な肺容量・コンプライアンスを低下させ、同じ圧設定でも V_T が減る。逆にコンプライアンスが上昇すれば V_T は増え、また自発呼吸数の増加は通常、総呼気分時換気量(機械+自発)を増加させる。したがって低下の原因は「気道抵抗増加」「カフ漏れ」「片肺挿管」である。
選択肢別解説
正しい。気道抵抗が増加すると時間定数 $\tau=RC$ が大きくなり、一定の吸気時間内に十分な容量が流入しにくくなるため、一回換気量が低下し、呼気分時換気量($\dot V_E=V_T\times f$)も低下しうる。気道狭窄、分泌物増加、回路屈曲などで起こる。
誤り。PCVでは圧一定のため、肺コンプライアンスが上昇(肺が膨らみやすくなる)すると同じ圧・時間でより多くのガスが流入し、一回換気量は増加する。従って呼気分時換気量は低下しない。
誤り。自発呼吸数が増加すると、通常は自発呼吸由来の換気が加わって総呼気分時換気量は増加する(機種表示は総呼気側分時換気量が一般的)。特段の換気抑制が無ければ低下の原因にはならない。
正しい。カフ漏れがあると吸気中にガスがリークし、肺に到達する有効換気量が減るうえ、呼気側で回収・計測される量も減少するため、呼気分時換気量は低下する。
正しい。片肺挿管では換気される肺が実質的に減少し有効コンプライアンスが低下するため、同じ圧設定でも得られる一回換気量が減り、呼気分時換気量が低下する。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。