臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
人工心肺ではプライミング液(多くは晶質液)で循環血液が希釈され、ヘマトクリットとヘモグロビンが低下する。これにより血液粘性は下がり、膠質浸透圧も血漿タンパクの希釈で低下する。赤血球濃度と粘性が下がることは機械的ストレスを相対的に減らし、溶血のリスクを抑える方向に働く。一方、酸素運搬能はヘモグロビン濃度に依存するため、同一灌流量であれば希釈により低下する。人工心肺ではしばしば低体温・アルカローシスが併用され、酸素解離曲線は左方へ移動しやすい(ヘモグロビンの酸素親和性が増す)が、これは血液希釈そのものの直接効果ではない。したがって「酸素運搬能が増加する」は誤り。
選択肢別解説
正しい。血液希釈によりヘマトクリットが下がると、全血粘性は低下する。粘性低下は末梢循環抵抗の低下や灌流性の改善に寄与するが、極端な希釈では酸素運搬が不足し得る。
正しい。血漿タンパク(主にアルブミン)が希釈されるため膠質浸透圧は低下し、組織浮腫のリスクが上がる。必要に応じてアルブミンや人工膠質で補正することがある。
誤り。酸素運搬能は主にヘモグロビン量に依存し、血液希釈でヘモグロビンが低下するため減少する。動脈酸素含量は概ね CaO2 $= 1.34\times Hb\times SaO2 + 0.003\times PaO2$ で表され、Hb低下はCaO2低下を招く。一定灌流量(血流)なら酸素供給量 DO2 $= CaO2\times Q$ も低下する。
正しい。希釈により赤血球濃度と血液粘性が下がり、回路・ポンプで受ける機械的せん断や赤血球同士の衝突が相対的に減少するため、溶血は抑制されやすい。ただし過度の陰圧吸引や高回転など他要因があれば溶血は起こり得る。
正しい(人工心肺臨床で一般にみられる現象)。人工心肺では低体温や相対的アルカローシスが併用されやすく、これらは酸素解離曲線を左方移動させてヘモグロビンの酸素親和性を高める。なお、左方移動は血液希釈そのものの直接効果ではない点に留意する。
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解説
人工心肺装置の付属回路とその主機能の組合せを問う問題。冠灌流回路は心筋保護液(カルジオプレジア)を冠動脈(順行)または冠静脈洞(逆行)から注入する回路であり、心内圧の低減はベント回路の役割である。ベント回路は左室や左房、肺静脈などから血液や空気を吸引し、心内圧を下げて心室の過伸展や術中のエア混入を防ぐ。血液濃縮器は限外濾過により余剰水分や低分子溶質を除去して体液バランス・ヘマトクリットを調整する。動脈フィルターは微小気泡や微小異物を捕捉して動脈系への塞栓を予防する。血液吸引回路(サクション回路)は術野の貯留血を回収し、貯血槽に戻す。よって誤りの組合せは1(冠灌流回路—心内圧の低減)と5(ベント回路—心筋保護液の注入)である。
選択肢別解説
誤り。冠灌流回路は心筋保護液を冠循環へ注入するための回路であり、心内圧の低減は目的ではない。心内圧の低減はベント回路が果たす機能で、心腔から血液や空気を吸引して減圧・減容する。
正しい組合せ。血液濃縮器(ヘモコン)は限外濾過により余剰水分を排出し、体外循環中の体液バランスやヘマトクリットを調整する。
正しい組合せ。動脈フィルターは回路内で発生した微小気泡や微粒子を捕捉し、体循環への塞栓を防止する。
正しい組合せ。血液吸引回路(サクション回路)は術野に貯留した血液を吸引・回収し、貯血槽を経て回路に戻す。
誤り。ベント回路は左室・左房・肺静脈などから血液や空気を吸引して心内圧を低減し、心室過伸展や空気塞栓を防ぐために用いる。心筋保護液の注入は冠灌流回路の機能である。
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解説
人工心肺中の空気塞栓は、回路内に空気が混入して動脈側へ送られることで発生する。代表的な機序は、(1)静脈側の還流低下や陰圧化に伴う空気吸入(リザーバ液面低下、接続部からの吸気、心腔ベントからの吸気)と、(2)回路・ポンプチューブ破損による大気の直接混入である。脱血回路の折れ曲がりは脱血不良を介してリザーバ液面低下や静脈側陰圧化を起こし空気吸引の原因となる。ベントポンプの逆回転は心腔内や挿入部周囲から空気を引き込み得る。ローラポンプチューブの破損は破損部から外気が直接混入する。一方、送血回路の閉鎖や血液フィルタの目詰まりは回路抵抗や圧上昇を招くが、単独では空気を吸い込む機序をもたないため直接的な原因とは言い難い。以上より、原因となるのは1、2、5である。
選択肢別解説
正しい(原因となる)。脱血回路の折れ曲がりは静脈還流を低下させ、リザーバ液面の低下や静脈側の陰圧化を招く。これにより接続部や開口部から空気が吸い込まれ、リザーバ内で空気混入が生じ、送血側へ移送されれば空気塞栓の原因となる。
正しい(原因となる)。ベントポンプが逆回転すると心腔内・肺静脈系から回路側へ空気を引き込む、または過大な陰圧によりベント挿入部周囲から空気を吸入することがあり、空気塞栓の直接的な原因となる。
誤り(直接原因ではない)。送血回路の閉鎖は動脈側圧の上昇や流量低下・ポンプ停止を招くが、陽圧側であり空気を吸い込む機序はない。付随する別トラブル(破断・誤開放など)がなければ空気混入の直接原因とはならない。
誤り(直接原因ではない)。血液フィルタの目詰まりは回路抵抗増大と圧上昇をもたらすが、フィルタ自体は微小気泡除去に寄与する装置であり、単独では空気を回路へ導入する機序はない。
正しい(原因となる)。ローラポンプチューブが破損すると破損部から外気が回路内へ吸入され、大量の空気混入を来して空気塞栓の原因となる。
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解説
送血回路への気泡送り込みは、主に回路の陰圧部での大気吸い込み(採血ポートの開放など)、貯血槽の液面低下による巻き込み、動脈フィルタの気泡除去不良、あるいは人工肺ガス側の過圧によるガス侵入リスクなどで生じる。一方、膜型人工肺へのガス供給停止は酸素化・脱炭酸の低下を招くが、ガス側から血液側へ気泡を押し込む駆動力とはならないため、送血回路からの気泡送り込みの直接原因にはならない。したがって「原因でない」は4となる。
選択肢別解説
貯血槽の液面が低下すると、渦の形成や出口の露出で空気が巻き込まれ、ポンプに吸い込まれて送血回路へ気泡が送り込まれる原因となる。レベル監視や低下時の流量制限で予防する必要がある。よって気泡送り込みの原因である。
膜型人工肺のガス側圧が上昇(過大なスイープガス流量や排気閉塞など)し血液側圧を上回ると、膜孔や微小漏れを介してガスが血液側へ押し出されるリスクが高まる。これは送血回路への気泡送り込みの原因になりうる。よって原因である。
動脈フィルタは気泡除去の最終関門であり、初期のデアリング不足や運転中の気泡抜き不良があると、残存気泡が患者側へ送られる。よって気泡送り込みの原因である。
膜型人工肺へのガス供給停止は、酸素化不良・高二酸化炭素血症を招くが、ガス側圧は低下し血液側へ気泡を押し込む駆動力にはならない。通常は気泡送り込みの直接原因にはならないため、「原因でない」に該当する。
送血ポンプ流入部(陰圧領域)の採血ポートが開放されると大気が吸引され、回路内に気泡が入り送血回路へ送り込まれる。よって気泡送り込みの原因である。
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