臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
酸素療法では、医療用酸素ガスが極めて乾燥しているため加湿を行わないと気道粘膜の水分が奪われ、線毛運動低下や痰の粘稠化を招く「気道乾燥」が典型的な合併症となる。その他の代表的な合併症として、酸素中毒、CO2ナルコーシス(特にCO2貯留のある患者)、吸収性無気肺などが知られる。一方、副鼻腔炎やイレウス、過換気症候群、空気塞栓症は酸素療法そのものの合併症とは言えない。したがって本問の正答は「気道乾燥」である。
選択肢別解説
副鼻腔炎は多くが感染やアレルギー、解剖学的要因に関連する炎症性疾患であり、酸素療法そのものの合併症とは位置付けない。酸素投与により鼻粘膜が乾燥・刺激されうるが、それ自体が副鼻腔炎の直接原因とはならないため不適切。
正しい。医療用酸素は湿度が極めて低く、加温加湿を行わずに投与すると気道粘膜が乾燥し、線毛機能低下や分泌物の粘稠化、痰の貯留による無気肺・感染リスク増大につながる。予防として、低流量ではバブラー加湿、高流量やHFNC・人工呼吸器下では加温加湿器の使用が推奨される。
イレウス(腸閉塞)は腸管内容物の移送障害による消化器疾患であり、酸素療法によって生じる合併症ではない。
過換気症候群は主に不安など心理的要因で呼吸が過度に速深となり呼吸性アルカローシスを来す病態で、酸素療法自体の合併症ではない。むしろ酸素の高濃度投与では一部患者で呼吸抑制やCO2ナルコーシスに注意する。
空気塞栓症は主に静脈内への空気誤入や手技(カテーテル、手術、透析など)で発生する。酸素療法自体が直接起こす合併症ではない。むしろ高濃度酸素投与は塞栓内窒素の洗い出しにより気泡縮小を助ける支持療法として用いられることがある。
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解説
気管吸引は、分泌物貯留による気道閉塞や換気不良が疑われるときに必要に応じて実施する。人工呼吸器装着中は、吸引前後の換気量や気道内圧の変化が効果判定の実用的指標となる。操作は短時間で行い、1回の吸引で長時間の陰圧をかけないことで低酸素血症、粘膜損傷、徐脈などの合併症を予防する。重篤な低酸素血症は禁忌ではなく、分泌物閉塞が疑われる場合は吸引が治療となり得るため、必要性を評価しプレオキシジェネーション等の対策を講じて慎重に実施する。感染対策としては、開放式吸引では滅菌操作(滅菌手袋)が原則だが、閉鎖式吸引では専用カテーテルを用いるため未滅菌の清潔手袋で対応可能である。
選択肢別解説
誤り。気管吸引は時間を決めたルーチン実施ではなく、分泌物貯留や気道閉塞の所見(聴診でのラ音、気道内圧上昇、換気量低下、SpO2低下、咳嗽など)に応じて必要時に行う。定時実施は合併症(低酸素血症、粘膜損傷)のリスクを高め不適切。
正しい。人工呼吸器装着中は吸引により気道抵抗が低下し、従量式換気では最高気道内圧の低下、従圧式換気では換気量(Vt)の増加などがみられる。したがって換気量や気道内圧は効果判定の有用な指標となる。
正しい。1回の吸引操作は短時間(おおむね10〜15秒以内)で行い、長時間連続して陰圧をかけない。長引く吸引は低酸素血症、粘膜損傷、迷走神経反射による徐脈などを招くため、10秒を超える連続吸引は避けるのが原則。
誤り。重篤な低酸素血症は吸引で悪化し得るが、分泌物閉塞が原因であれば吸引が必要であり絶対的禁忌ではない。プレオキシジェネーションや適切な準備のうえで、必要性を評価し迅速に実施する。
誤り。開放式気管吸引では滅菌手袋が推奨されるが、閉鎖式気管吸引ではシステムが閉鎖されており未滅菌の清潔手袋でよい。よって一律に『滅菌手袋を使用しなければならない』とはいえない。
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解説
機械的陽圧換気では、吸気相に人工呼吸器から陽圧でガスを送気するため、肺胞圧・胸腔内圧(胸膜腔圧)は自発呼吸と逆に上昇する。吸気中は呼気弁(エクスパイアリバルブ)が閉じ、流量が患者側に向かう。呼気は基本的に胸郭・肺の弾性収縮による受動的過程であり、陰圧を付加して呼気を促進する操作は通常行わない(むしろPEEPのように呼気終末に陽圧を残す)。圧規定換気(PCV)は圧制限・時間サイクルが基本で、リークがあっても吸気時間が短縮することはない(多くは設定時間どおり、あるいは機種・モードによっては短縮せず)。量規定換気(VCV)では回路・患者側リークにより患者に実際に到達する換気量が減少するため、実換気量が不足しやすい。
選択肢別解説
正しい。陽圧換気では吸気相に陽圧が加わり、肺胞圧とともに胸腔内圧も上昇する(自発呼吸の陰圧吸気とは逆)。これにより静脈還流の低下など循環への影響が生じうる。
誤り。吸気時は人工呼吸器の呼気弁は閉じ、供給ガスが回路から患者気道へ流れる。呼気時に呼気弁が開放され、ガスが大気側へ排出される。
誤り。呼気は胸郭・肺の弾性収縮による受動的過程で、通常は陰圧付加で能動的に促進しない。むしろPEEPにより呼気終末圧を陽圧に維持することが一般的である。
誤り。圧規定換気(PCV)は圧制限・時間サイクルが基本で、リークがあっても吸気時間が短縮することはない(通常は設定した吸気時間で終了)。リークが大きいと目標圧に達しにくく流量が増えるが、吸気時間自体が短くなることは想定しにくい。
正しい。量規定換気(VCV)では設定一回換気量を送気するが、回路やカフ漏れなどのリークがあると患者側に到達する実換気量は減少する(特に送気量計測位置が機械側の場合、表示上は設定量でも患者到達量は減る)。
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解説
人工呼吸器関連肺炎(VAP)は、人工呼吸器装着後48時間以降に発症する肺炎で、主因は口腔・咽頭や胃内容物の微小誤嚥、回路開放時の汚染である。主なリスク因子には、気管挿管(人工気道の存在)、鎮静薬による意識低下や咳反射抑制、経鼻胃管による胃食道逆流・誤嚥の助長、そして呼吸回路の不必要な開放・頻回交換(接続離断や凝縮水の扱いに伴う汚染リスク増大)が挙げられる。一方、半坐位(頭部挙上30〜45度)は胃食道逆流と誤嚥を減らしVAPを有意に低減する標準的予防策であり、リスク因子ではない。したがって本問の正答は半坐位である。
選択肢別解説
呼吸回路の毎日交換は、接続の離断回数や回路への手指接触を増やし、交差感染や回路内凝縮水の再汚染・誤嚥リスクを高めうるため、VAPのリスク因子となる。ガイドラインでも回路は汚染・不具合時のみ交換が推奨され、頻回交換は推奨されない。よって『リスク因子でないのはどれか』という問いに対して不適。
経鼻胃管は下部食道括約筋機能を妨げ、胃食道逆流や口咽頭への逆流上昇を通じて微小誤嚥を増やすため、VAPのリスク因子である。よって本問の条件(リスク因子でない)には当てはまらない。
気管挿管(人工気道の存在)は、上気道の防御機構破綻とカフ周囲からの微小誤嚥経路をつくり、VAPの最も重要なリスク因子の一つである。よって本問の条件には当てはまらない。
鎮静薬の使用は意識レベル低下や咳反射・嚥下反射の抑制、さらには人工呼吸期間の延長を介してVAPリスクを高める。したがってリスク因子に該当し、本問の条件には当てはまらない。
半坐位(頭部挙上30〜45度)は胃内容物逆流と誤嚥を抑制し、VAP発生を減らす基本的予防策であり、リスク因子ではない。よって本問の正答である。
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解説
成人の気管吸引は、必要時のみ実施し、無吸引でカテーテルを挿入して吸引は抜去時に行う、1回の吸引は短時間(おおむね10〜15秒以内)、適切な陰圧(成人で概ね −120〜−150 mmHg 程度)に設定する、という原則が重要である。人工呼吸器装着中は閉鎖式吸引により回路を開放せずにPEEP・気道内圧を保ちやすい。自発呼吸下でのカテーテル挿入タイミングは吸気相に合わせるのが基本であり、「呼気に合わせて挿入する」という記述は誤りである。したがって不適切なのは選択肢4。
選択肢別解説
正しい。カテーテルの頻回な出し入れは気道粘膜損傷や出血、細菌の侵入増加を介して感染(VAP 等)リスクを高める。必要時に限り、無菌操作と適切な手技で実施する。
正しい。吸引時間が長いと低酸素血症、徐脈(迷走神経反射)、無気肺・再膨張不全のリスクが増すため、成人では1回10〜15秒以内を目安とする。実臨床では10秒以内を推奨することも多い。
正しい。成人の吸引圧は多くの指針で −120〜−150 mmHg 程度が推奨されており、本記載(−150〜−120 mmHg)はその範囲内で適切である。過大陰圧は粘膜損傷や低酸素血症を招くため避ける。
誤り。自発呼吸下では吸気相に合わせてカテーテルを挿入するのが基本である(声門が開大し挿入しやすく、刺激による咳反射や誤挿入のリスクを減らせる)。なお、挿入時は陰圧をかけず、吸引は抜去時に行う。
正しい。閉鎖式吸引は人工呼吸器回路を開放せずに行えるため、PEEPおよび気道内圧の急激な低下を避けやすく、酸素化の破綻を起こしにくい。
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