臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
終末呼気二酸化炭素分圧($P_{ET}CO_2$)は、(1)体内でのCO2産生、(2)産生されたCO2を肺へ運ぶ血流(肺灌流)、(3)肺胞換気による排出、のバランスで決まる。低下させる主因は、CO2産生の低下(例: 低体温)か、肺血流低下や死腔増加により呼気に反映されるCO2が減る場合(例: 肺塞栓)である。一方、CO2産生増加(振戦)、肺へのCO2搬送増加(心拍出量増加)、回路での再呼吸増加(ソーダライム消耗)は、いずれも$P_{ET}CO_2$を上昇させる方向に働く。
選択肢別解説
振戦は筋活動により代謝が亢進してCO2産生が増えるため、換気条件が一定なら$P_{ET}CO_2$は上昇しやすい。よって低下要因ではない。
肺塞栓では肺血流が遮断・低下し、ガス交換されない肺胞が増えて肺胞死腔が増大する。呼気へ反映されるCO2が減るため$P_{ET}CO_2$は低下する(動脈−呼気終末CO2較差は拡大しうる)。
低体温では全身代謝が低下してCO2産生が減少するため、換気条件が一定なら$P_{ET}CO_2$は低下する。
心拍出量が増加すると末梢から肺へのCO2搬送が増え、換気が一定であれば肺胞CO2分圧と$P_{ET}CO_2$は上昇しやすい。低下要因ではない。
ソーダライムの吸収能が低下・消耗するとCO2が回路内で十分に吸収されず再呼吸が増えるため、呼気・吸気側のCO2が上昇し$P_{ET}CO_2$も上がる。低下要因ではない。
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解説
高気圧酸素治療(HBOT)の代表的な有害事象は、(1)酸素中毒と(2)気圧外傷(バロトラウマ)に大別される。酸素中毒は中枢神経系(CNS)酸素中毒としてめまい、悪心、視覚異常、けいれんなどを生じうるほか、肺酸素中毒では咳や胸痛などがみられる。気圧外傷は加圧・減圧に伴う圧差に起因し、中耳の圧外傷(鼓膜穿孔)、副鼻腔の圧外傷、肺の圧外傷(肺胞破裂に伴う気胸・縦隔気腫・動脈ガス塞栓など)を生じうる。一方、過敏性肺臓炎は有機抗原などの吸入による免疫学的機序(Ⅲ/Ⅳ型アレルギー)で起こる疾患であり、HBOTの機序(高圧・高酸素)とは無関係で副作用には含まれない。以上より「過敏性肺臓炎」が副作用でない。
選択肢別解説
めまいはCNS酸素中毒の前駆症状として知られ、ppO2上昇下で出現しうる。HBOTの有害事象に含まれるため、副作用でないには該当しない。
けいれんはCNS酸素中毒の典型症状で、特に高い酸素分圧で誘発されうる。HBOTの既知の有害事象であり、副作用でないには該当しない。
鼓膜穿孔は中耳の気圧外傷(バロトラウマ)により生じうる。耳管機能不全等で外耳道と中耳腔の圧差が大きくなると鼓膜損傷が起こりうるため、HBOTの有害事象に含まれる。
自然気胸(気胸)は肺の気圧外傷により肺胞破裂が起こって発生しうる。有意な肺の閉塞やブレブを有する症例でリスクが高い。用語としては治療起因性の気胸であり厳密には「自然」ではないが、試験文脈ではHBOTの有害事象(気胸)として扱われる。
過敏性肺臓炎は有機粉塵や真菌抗原などの吸入による免疫学的機序によって発症するアレルギー性肺疾患で、HBOTの高圧・高酸素曝露とは因果機序が異なる。従ってHBOTの副作用ではない。
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解説
人工心肺(体外循環)管理における基本操作の是非を問う問題。PaCO2は主として人工肺の吹送ガス流量(スイープガス)で調整し、ACTは血液凝固を防ぐため概ね400秒以上を維持する。復温時は温度較差を大きくしない(一般に10℃以内)ことで溶血・気泡形成・不均一加温のリスクを抑える。大動脈遮断解除時は一時的に送血量を減少させて大動脈内圧や鉗子部のストレス、塞栓リスクを低減するのが原則であり、送血量を増加させるという記載は誤り。離脱開始時は脱血量を先に減らし、生体側へ血液を戻して心臓の前負荷を回復させつつ自発拍出へ移行する。以上より、誤っている操作は選択肢4。
選択肢別解説
正しい。人工肺では二酸化炭素の除去量は吹送ガス流量に強く依存する。スイープガス流量を増やせばCO2除去が進みPaCO2は低下し、減らせば上昇する。PaO2は主に吹送ガス酸素濃度(FiO2)で調整する。
正しい。体外循環中は血液凝固を防ぐためヘパリンで抗凝固を行い、ACTを概ね400秒以上(施設によっては480秒以上など)に維持するのが一般的である。
正しい。復温時の温度管理では送血側と脱血側の血液温の較差を大きくしない(一般に10℃以内)ようにする。過大な較差は溶血、気泡形成、組織の不均一加温などのリスクを高めるため避ける。
誤り。大動脈遮断解除時は一時的に送血量を低下させて大動脈内圧や鉗子部へのストレスを軽減し、塞栓リスクを抑えるのが基本である。送血量を増加させる操作は不適切。
正しい。体外循環からの離脱開始時は、まず脱血量を減少させて生体側へ血液を戻し(心腔の充満を回復)、動脈圧・CVP・心機能を確認しながら段階的に送血を減らしていく。
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解説
血液透析中の空気誤入(空気塞栓)は、血液ポンプより手前の動脈側回路が陰圧であるため、穿刺針−回路の接続不良やフラッシングラインの閉鎖不良などから侵入しやすい。重症化すると血圧低下や意識障害などショックに至る。対応はまず追加侵入を止めるため静脈側回路のクランプとポンプ停止、100%酸素投与を行い、体位は右心室流出路への流入を抑える目的で左側臥位・頭低位(Durant体位:トレンデレンブルグ体位)とする。右側臥位は誤りである。必要に応じて高気圧酸素療法の適応を検討する。
選択肢別解説
正しい。空気は陰圧がかかる血液ポンプ手前(動脈側)で侵入しやすく、典型的には穿刺針と回路の接続不良や生理食塩液注入ラインの閉鎖不良が原因となる。透析中はこれら接続部を重点的に点検する。
正しい。空気塞栓で肺動脈血流が障害されると、呼吸困難、胸痛、咳嗽、血圧低下、意識障害などを呈し、重篤例ではショックに陥る。迅速な介入が必要である。
誤り。空気塞栓が疑われる場合は左側臥位・頭低位(Durant体位)とし、右心室内気泡を上方の心尖部側へ浮上させて肺動脈流出路から遠ざける。右側臥位は気泡が肺動脈へ流れやすくなる可能性があり不適切。
正しい。追加の空気侵入を防ぐため、直ちに静脈側回路をクランプし、血液ポンプを停止する。その後、酸素投与やバイタル監視、必要に応じて中枢静脈からの気泡吸引などを行う。
正しい。高気圧酸素療法は気泡径の縮小と組織酸素化改善を目的に治療選択肢となる。臨床的には可能なら早期から検討されるが、本肢の『検討する』との記載は治療選択として妥当である。
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解説
ARDSは非心原性の肺水腫を主体とする急性のガス交換障害で、びまん性肺胞障害により肺毛細血管内皮・肺胞上皮が傷害され、血管透過性が亢進し蛋白成分に富む肺水腫を来す。この結果、肺胞虚脱やサーファクタント機能不全が生じ、肺の伸展性(肺コンプライアンス)は著明に低下する。低酸素血症は主としてシャント増加に起因するため、酸素濃度を上げるだけでは改善に乏しく、PEEPを用いた人工呼吸(肺保護戦略)や腹臥位療法などが必要になる。初期には低酸素血症に対する過換気でPaCO2はむしろ低下〜正常のことが多く、筋疲労や死腔増大が進むと遅れて上昇し得る。診断に用いられる酸素化指標はAECC基準ではPaO2/FiO2≦200 mmHg(PEEP要件なし)で、重度の低酸素血症を特徴づける。
選択肢別解説
誤り。ARDSの初期は低酸素血症に対する換気亢進(過換気)が生じやすく、PaCO2は低下または正常域のことが多い。筋疲労や死腔換気の増大が進行すると遅れて高二酸化炭素血症となり得るが、「初期から上昇」は不適切。
誤り。ARDSの低酸素血症は主に肺内シャント増加によるため、酸素濃度を上げるだけの単純な酸素吸入では十分に改善しにくい(難治性低酸素血症)。治療の要はPEEPを用いた人工呼吸管理や腹臥位療法であり、「酸素吸入療法が有効」と断ずるのは不適切。
正しい。ARDSでは血管透過性亢進による肺水腫、サーファクタント機能不全、無気肺のため肺が硬くなり、肺コンプライアンスは減少する。
正しい。ARDSの病態は血管内皮細胞・肺胞上皮の障害により血管壁透過性が亢進し、蛋白に富む滲出液が肺胞内へ漏出することで説明される。
正しい。AECCの従来基準ではARDSの酸素化障害はPaO2/FiO2≦200 mmHgと定義される(PEEPの有無を問わない)。
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