臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
気道内圧下限アラームは、吸気中に気道内圧が設定した下限値まで上がらない、あるいは呼気終末期の圧(PEEP)を維持できないときに作動する。最も典型的な原因は回路や気管チューブ周りのリークや離断であり、カフ圧不足によるカフリークでは吸気ガスが咽頭側へ逃げるため、肺内に十分な圧が伝わらず気道内圧が上がらない。一方、低肺コンプライアンス、気道抵抗増加、人工鼻の目詰まり、ファイティングはいずれも圧を上昇させやすく、通常は気道内圧上限アラームの原因となる。従って原因として適切なのはカフリークである。
選択肢別解説
正しい。カフ圧不足やカフ損傷によるカフリークがあると、吸気ガスが上気道へ漏れ、肺に伝わる圧が上がらないため気道内圧下限アラームが作動しやすい。リーク修復(カフ圧調整・交換)や回路確認が必要。
誤り。低肺コンプライアンス(硬い肺)では同じ換気量を送るのにより高い圧が必要となり、気道内圧は上昇傾向となる。容量制御換気ではピーク圧上昇、圧力制御換気でも設定圧に達しやすく、下限アラームの原因にはなりにくい(むしろ上限アラームのリスク)。
誤り。気道抵抗の増加(分泌物・チューブ屈曲・回路狭窄など)は吸気の駆動圧を高め、ピーク気道内圧を上昇させるため、上限アラームの原因となる。下限アラームの原因ではない。
誤り。人工鼻の目詰まりは吸気・呼気の抵抗を増し、気道内圧を上昇させる方向に働くため、通常は気道内圧上限アラームの原因となる。
誤り。ファイティング(患者—人工呼吸器不同期)では患者の筋活動で瞬間的に気道内圧が上がりやすく、上限アラームが作動しやすい。下限アラームの直接原因とはならない。
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解説
PEEP(呼気終末陽圧)を上げると、呼気終末でも気道内圧が高く保たれ、肺胞虚脱が防がれて肺胞リクルートが進む。その結果、平均気道内圧は基線圧が上がる分だけ確実に上昇し、機能的残気量(FRC)も増加する。一方、胸腔内圧の上昇は静脈還流を減らし前負荷を低下させるため、一般に心拍出量は低下傾向となる。また胸腔内圧上昇は脳静脈還流を妨げうるため、頭蓋内圧は上昇しうる。PEEPは酸素化を改善しうるが、吸入気酸素濃度(FiO2)自体は別設定であり、PEEPを上げてもFiO2は増加しない。
選択肢別解説
吸入気酸素濃度(FiO2)は人工呼吸器の独立した設定であり、PEEPを上げてもFiO2そのものは上昇しない。PEEPは酸素化を改善しうるがFiO2の増加とは別概念である。
PEEPの増加は呼気終末圧を押し上げ、呼吸サイクル全体の基線圧が高くなるため平均気道内圧(Paw)は上昇する。
PEEPにより肺胞虚脱が防がれリクルートが進むため、呼気終末でも肺容量が保たれ機能的残気量(FRC)は増加する。
PEEP増加は胸腔内圧を上げ、脳静脈還流を妨げうるため頭蓋内圧(ICP)は上昇しうる。臨床では循環条件により影響度は変わるが、一般には上昇傾向として扱われる。
胸腔内圧上昇により静脈還流が低下し前負荷が減るため、心拍出量は一般に低下傾向であり、増加はしない。
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解説
人工心肺中の脱血回路に流れる血液は患者から戻る混合静脈血であり,その酸素飽和度(SvO2)は全身の酸素供給(DO2)と酸素消費(VO2)のバランスで決まる。$\text{DO2}=\text{CO}\times C_{a\mathrm{O}_2}$,$\text{VO2}=\text{CO}\times\bigl(C_{a\mathrm{O}_2}-C_{v\mathrm{O}_2}\bigr)$ で表され,送血流量(CO相当),ヘモグロビン濃度,動脈酸素化(生体肺または人工肺の機能),および組織酸素消費が主要因である。送血流量不足,過度の希釈(低Hb),酸素化能低下(生体肺あるいは人工肺での酸素化低下)はいずれもDO2を低下させ,組織での酸素抽出が増えてSvO2は低下する。一方,体温低下は代謝を抑制しVO2を減少させるため,SvO2は低下せずむしろ上昇方向に働く。したがって「原因として考えられない」のは体温の低下である。
選択肢別解説
送血流量(CO相当)の不足はDO2を低下させ,組織での酸素抽出が増えるため混合静脈血酸素飽和度(SvO2)は低下する。よって脱血回路の酸素飽和度低下の原因として考えられる。
過度の血液希釈はヘモグロビン濃度を低下させ動脈酸素含有量(CaO2)を下げるためDO2が低下し,結果としてSvO2は低下する。原因として考えられる。
体温の低下は代謝抑制によりVO2を減少させ,DO2/VO2のバランスは改善方向に働くためSvO2は低下しない(むしろ上昇傾向)。したがって原因として考えられない。
生体肺の機能不全は動脈酸素化を障害しCaO2を低下させるためDO2が不足し,SvO2は低下する。よって原因として考えられる。
吹送ガス酸素濃度の低下は人工肺での酸素化能を低下させ動脈酸素化が不十分となるためDO2が低下し,SvO2は低下する。原因として考えられる。
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解説
動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)は肺胞換気量に反比例する。近似的に $P_{a\mathrm{CO}_2} \propto \frac{\dot V_{CO_2}}{\dot V_A}$、肺胞換気は $\dot V_A=(V_T - V_D)\times f$(V_T: 一回換気量、V_D: 死腔量、f: 呼吸数)で表せる。したがってPaCO2を低下させるには、(1) 一回換気量を増やすか、(2) 死腔を減らすか、(3) 呼吸数を上げる(本設問には該当選択肢なし)などで肺胞換気を増やすのが有効である。PEEPやFiO2は主に酸素化(PaO2)に関わり、PaCO2低下には直接的な効果は乏しい。I/E比の変更は、V_Tと呼吸数が一定であれば分時肺胞換気を変えないため、PaCO2低下策としては一般に選ばれない。臨床的にはV_T増加には肺障害リスク(過伸展)への配慮が必要で、機械的死腔の削減(不要なアダプタの除去など)は安全に肺胞換気を増やせる手段である。
選択肢別解説
PEEPを増やすと肺胞の虚脱防止と機能的残気量の増加により酸素化(PaO2)が改善しやすい。一方で分時肺胞換気そのものを増やす設定ではなく、PaCO2低下には直結しないため本問では不適切。
吸入気酸素濃度(FiO2)を上げるとPaO2の改善が期待できるが、二酸化炭素の排出(換気)には直接影響しない。従ってPaCO2低下の目的には不適切。
一回換気量(V_T)を増やすと $\dot V_A=(V_T - V_D)\times f$ が増加し、肺胞換気量の増加によりPaCO2は低下する。臨床では肺保護(過伸展回避)に配慮が必要だが、機序としては有効。
$呼吸回路の機械的死腔(コネクタ、延長回路、側流式サンプリングアダプタ等)を減らすとV_Dが小さくなり、同じV_Tでも肺胞換気量が増えるためPaCO2は低下する。有効。$
$I/E比(吸気相:呼気相比)を減らすと呼気時間は延長するが、V_Tと呼吸数が一定なら分時肺胞換気は変わらず、PaCO2低下には直接的ではない。本問では不適切(特殊状況での気流閉塞改善などは一般論から外れる)。$
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