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臨床工学技士国家試験
解説
体外循環中の空気塞栓は、陰圧がかかる部位(脱血側・ベント吸引部)や貯血槽液面の低下、ポンプ操作ミスなどにより回路内へ空気が混入し、それが送血側へ誤送されることで起こる。具体的には、左心ベント挿入部のシール不良や過度の吸引で心内へ空気が吸い込まれる、脱血回路の接続不良・陰圧過大で気泡が流入する、貯血槽の液面低下で送血ポンプが空気を吸い込み動脈側へ送ってしまう、ベントポンプの逆回転で大気側や回路内の空気を心腔内へ押し込む、などが代表例である。一方、膜型人工肺の血漿漏出(プラズマリーク)は、膜の疎水性低下により血漿成分がガス側へにじむ現象で、酸素化不良や圧損増大の原因にはなるが、血液側に空気を混入させて動脈側へ送る機序ではない。したがって、空気塞栓の原因でないのは「膜型人工肺(設問表記:膜壁肺)における血漿漏出」である。
選択肢別解説
左心ベント挿入部(左房や肺静脈への挿入部)のシール不良や過度の陰圧により、挿入部から空気が吸い込まれると心内に空気が流入し、体外循環回路や心腔内に気泡が混入する。除泡が不十分な場合、動脈側へ誤送され空気塞栓の原因となる。したがって原因となりうる。
脱血回路は陰圧となることが多く、接続部の緩みや陰圧過大で空気が吸い込まれる。貯血槽での除泡が追いつかず、液面低下などが重なると送血側へ気泡が移行し空気塞栓を起こしうる。したがって原因となりうる。
膜型人工肺の血漿漏出(プラズマリーク)は、膜の疎水性喪失で血漿がガス側へにじむ現象であり、ガス交換能低下や圧損増大の原因にはなるが、血液側に空気を発生・混入させて動脈側へ送る機序ではない。したがって空気塞栓の原因ではない(本設問の該当肢)。なお、空気混入のリスクとなるのは膜破断やガス側の管理不良といった別の異常であり、プラズマリーク自体とは区別される。
貯血槽内の液面(血液レベル)が低下すると、送血ポンプが空気を吸い込みやすくなり、除泡・検知が不十分だと動脈側へ空気が送られ空気塞栓となる。したがって原因となりうる。
左心ベントポンプ(一般にローラポンプ)の回転方向誤りにより、回路内や大気側から空気を心腔内へ押し込む可能性がある。心内空気は体外循環下で動脈側へ移行しうるため、空気塞栓の原因となる。したがって原因となりうる。
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解説
高気圧酸素治療(HBOT)は、環境圧を上げて100%酸素を吸入させることで、(1) Henryの法則により溶解型酸素を増加させて低酸素組織の酸素化を改善し、(2) Boyleの法則により体内ガスの体積を縮小させ、ガスによる圧迫や塞栓の影響を軽減し、(3) 体内に溶けている窒素の洗い出しを促進し、(4) 一酸化炭素ヘモグロビン(カルボキシヘモグロビン)からCOを速やかに解離させるなどの効果がある。一方、未治療の自然気胸はHBOTの絶対禁忌であり、減圧時に気体が膨張して緊張性気胸などを誘発しうるため、「自然気胸を改善する」という記述は誤りである(胸腔ドレナージなどで減圧管理を行わない限りHBOTは行わない)。
選択肢別解説
誤り。未治療の自然気胸はHBOTの絶対禁忌であり、治療過程の減圧時に胸腔内ガスが膨張して緊張性気胸や嚢胞破裂を招く危険がある。HBOT自体が自然気胸を治す治療ではなく、まず胸腔ドレナージなどの減圧管理が必要である。
正しい。環境圧を上げるとBoyleの法則により体内ガスの体積が縮小し、ガスによって生じている周囲組織への圧迫(例:ガス塞栓、気腫性変化に伴う圧迫)を軽減できる。
正しい。高分圧酸素により動脈血の溶解型酸素が著しく増加し、末梢の低酸素組織にも酸素が拡散しやすくなる。HBOTでは2〜3ATAでPaO2が大幅に上昇し、組織酸素化の改善が得られる。
正しい。100%酸素吸入下では肺胞内窒素分圧が低下し、さらに環境圧上昇の効果と相まって体内に溶解した窒素の拡散駆動力が高まり、窒素の洗い出し(washout)が促進される。減圧症治療の要点である。
正しい。高分圧酸素は一酸化炭素ヘモグロビン(COHb)からCOを速やかに解離させ、COHbの半減期を大きく短縮する(常圧100%O2よりも短く、2〜3ATAで概ね20〜30分程度に短縮)。CO中毒の治療に有効である。
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解説
誤りは「残気量はスパイロメータで測定できる。」である。スパイロメータは口腔から出入りする換気による“変化分”のみを捉えるため、最大呼出後にも肺内に残る残気量(RV)は直接測れない。RVを含む機能的残気量(FRC)や全肺気量(TLC)の測定にはヘリウム希釈法、窒素洗い出し法、体プレチスモグラフなどの方法を用いる。一方、胸腔内圧は生理的には大気圧に対して陰圧(安静時でおおむね−5 cmH2O前後、呼吸相で変動)であり、成人の解剖学的死腔は約150 mL(目安として体重1 kgあたり約2 mL)で妥当。肺の栄養血管は気管支動脈で、ガス交換を担う機能血管である肺動脈とは役割が異なる。ヘモグロビンの酸素解離曲線はpH低下(酸性化)で右方偏位し、組織での酸素放出が促進される(Bohr効果)。
選択肢別解説
正しい。胸腔(胸膜腔)内圧は通常、大気圧に対して陰圧で維持され、肺の虚脱を防ぎ胸壁と肺の弾性のバランスを保つ。安静呼吸では概ね−2〜−8 cmH2O程度で呼吸相により変動する。強い努力呼出など一部状況で一過性に陽圧となり得るが、生理的記述としては「陰圧」で妥当。
正しい。解剖学的死腔は導管気道(鼻腔〜終末細気管支など)でガス交換に寄与しない容積を指し、成人で約150 mLが一般的な目安(体重換算で約2〜2.2 mL/kg)。
誤り。スパイロメータは呼吸に伴う肺気量の変化のみを測定するため、最大呼出後も肺に残る残気量(RV)は直接測定できない。RVやそれを含むFRC・TLCの評価にはヘリウム希釈法、窒素洗い出し法、体プレチスモグラフなどの方法を用いる。
正しい。肺には二重の血管系があり、ガス交換を担う機能血管は肺動脈、肺実質や気道壁へ酸素と栄養を供給する栄養血管は気管支動脈である。
正しい。pH低下(またはPCO₂上昇、温度上昇、2,3-BPG増加)はヘモグロビンの酸素解離曲線を右方へ偏位させ(Bohr効果)、同一PO₂での飽和度が低下し、組織での酸素放出が促進される。
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解説
人工心肺(体外循環)中の代表的トラブルと初期対応の組合せを問う問題。脱血カニューレの脱落時は静脈リターンが急減しリザーバ血液量が低下、空気吸引による動脈側への空気誤送リスクが高い。直ちに送血ポンプを停止(または即時減速・停止)し、送血ライン遮断・心筋保護とともに原因除去を行うのが原則であり適切。膜型人工肺のwet lung(ガス側の結露・水侵入などによるガス交換低下)では、一時的にスイープガス流量増加や乾燥化で改善を試みるが、改善しなければ人工肺交換が適切。人工肺内の血栓形成に対しては、ヘパリン追加では既存血栓は溶解できず、圧較差増大やガス交換低下を伴えば酸素ator交換が原則であるため、提示の対応は不適切。熱交換器の水漏れは汚染・溶血や回路内への水混入の危険があり、原因部位である熱交換器(多くは人工肺一体型)自体の交換が必要で、冷温水槽の交換では解決しない。大動脈内への気泡誤送時は直ちにポンプ停止・動脈ライン遮断・Trendelenburg体位・大動脈基部ベント等での吸引などで対応し、必要に応じ回路再循環等を用いる。送血ポンプの逆回転は推奨されず不適切。したがって正しい組合せは1と2である。
選択肢別解説
正しい。脱血カニューレの脱落では静脈回路からの空気吸引によりリザーバが空になり、動脈側への空気誤送(空気塞栓)の危険が高い。直ちに送血ポンプを停止(または即時減速し停止)し、送血ラインの遮断・原因部位の確認と復旧を行うのが標準的対応である。
正しい。膜型人工肺のwet lung(ガス側結露・水侵入によるガス交換低下)は、一時的にスイープガス流量増加や乾燥化で改善を試みるが、改善しない場合は人工肺の交換が適切である。
誤り。人工肺内で形成済みの血栓はヘパリン追加投与では溶解できない。人工肺前後圧較差の上昇やガス交換能低下を伴う場合は回路停止手順を踏んだ上で人工肺の交換を検討するのが妥当である。
誤り。熱交換器の水漏れは血液汚染・溶血・回路内水混入の危険があるため、原因部位である熱交換器(多くは人工肺一体型)の交換が必要である。冷温水槽(ヒータークーラー)の交換では漏れ源を解決できない。
誤り。大動脈内への気泡誤送時は、即時の送血ポンプ停止・動脈ライン遮断・頭低位、可能なら大動脈基部ベント等での吸引、回路の再循環などで気泡除去を図る。送血ポンプの逆回転は推奨されず不適切である。
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a. 虚脱肺胞の再膨張
b. 呼吸仕事量の軽減
c. 静脈還流の促進
d. 機能的残気量の減少
e. 肺胞換気量の維持
解説
人工呼吸の主な目的は、虚脱した肺胞の再開放(リクルート)による酸素化の改善、適切な換気を機械が肩代わりして呼吸筋の仕事量を減らすこと、そして有効な肺胞換気量を維持してPaCO2や酸素化を正常化・安定化させることである。陽圧換気は胸腔内圧を上昇させるため静脈還流は一般に低下しうる点、またPEEP付加により機能的残気量(FRC)は維持・増加方向となる点が重要である。したがって正しいのは「虚脱肺胞の再膨張」「呼吸仕事量の軽減」「肺胞換気量の維持」である。
選択肢別解説
正しい。人工呼吸(特にPEEP付加)は虚脱した肺胞を再開放(リクルート)し、換気血流比を是正して酸素化を改善する。呼気終末の肺胞虚脱を防ぎ、再膨張を維持することが主要な目的の一つである。
正しい。自発呼吸で増大した呼吸仕事量を人工呼吸が代替・補助することで、呼吸筋の負荷と酸素消費を軽減し、疲労や呼吸不全の進行を防ぐ。
誤り。人工呼吸は陽圧換気であり、吸気時に胸腔内圧が上昇するため静脈還流圧勾配が減少し、中心循環への静脈還流はむしろ低下しうる。結果として心拍出量や血圧低下を招くことがある。
誤り。PEEPなどにより肺胞虚脱を防ぎ肺の開存性を保つことで、機能的残気量(FRC)は一般に増加・維持される。FRCの減少は人工呼吸の目的ではない。
正しい。適切な一回換気量と呼吸回数の設定により、死腔の影響を考慮しつつ有効な肺胞換気量を維持し、PaCO2の是正や酸素化の改善を図ることが人工呼吸の中心的目的である。
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解説
動脈血二酸化炭素分圧 $\text{PaCO}_2$ は肺胞換気量 $\dot V_A$ に反比例し($\text{PaCO}_2 \propto \tfrac{1}{\dot V_A}$)、肺胞換気量は $\dot V_A=(\text{VT}-\text{VD})\times\text{RR}$(VT:1回換気量、VD:死腔換気量、RR:換気回数)で表される。したがって人工呼吸器の設定のうち、RRとVTは分時(肺胞)換気量を直接変化させ、$\text{PaCO}_2$ を直接調節できる。一方、EIP(吸気終末休止)は分布均等化やプラトー圧測定、平均気道内圧の上昇による酸素化補助が主目的で換気量そのものは直接変えない。PEEPは肺胞リクルートメントやFRC増加によって主に酸素化($\text{PaO}_2$)を改善する設定であり、FiO2も酸素化の調整が目的である。従って本問で$\text{PaCO}_2$に直接影響するのはRRとVTである。
選択肢別解説
換気回数(RR)は分時換気量および肺胞換気量 $\dot V_A=(\text{VT}-\text{VD})\times\text{RR}$ を直接増減させる。RRを上げれば肺胞換気が増え、$\text{PaCO}_2$ は低下方向に変化する(過換気で低下、低換気で上昇)。従って$\text{PaCO}_2$ に直接影響する。
1回換気量(VT)は肺胞換気量 $\dot V_A=(\text{VT}-\text{VD})\times\text{RR}$ の構成要素であり、VTを増やすと(死腔を差し引いた)肺胞換気が増え、$\text{PaCO}_2$ は低下方向に変化する。よって直接影響する。
吸気終末休止(EIP)は送気後に短時間の休止を設けてガス分布を均等化し、平均気道内圧や酸素化の改善、プラトー圧評価に寄与する設定である。分時(肺胞)換気量を直接は変化させないため、$\text{PaCO}_2$ を直接調整する設定とはいえない。
呼気終末陽圧(PEEP)は肺胞虚脱の防止とFRC増加により主に酸素化($\text{PaO}_2$)を改善する。高すぎるPEEPで過膨張や循環低下により二次的に$\text{PaCO}_2$ が変動することはあり得るが、直接調節する設定ではない。
吸入酸素濃度(FiO2)は吸入気の酸素割合を調整し、主に酸素化($\text{PaO}_2$)を改善する目的の設定である。$\text{PaCO}_2$ には直接影響しない。
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