臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
観血式動脈圧測定では、フラッシュ液(ヘパリン加生理食塩液)を加圧バッグでおよそ300 mmHgに保持し、動脈圧より高い圧を常時付与することで血液の逆流を防ぐ。逆流が起きる典型的な機序は、(1) ライン内圧が動脈圧を下回る(加圧不足・フラッシュ流の低下)、(2) ラインが大気と交通して圧が失われる(開放・漏れ)である。よって、加圧バッグの圧不足、三方活栓の誤操作(大気開放や意図しない交通)、接続部の緩み(漏れ・大気交通)はいずれも逆流の原因になり得る。一方、カテーテル先当たりや血栓形成は波形減衰や閉塞を引き起こして測定不良の原因にはなるが、逆流を直接生じさせる機序ではない。
選択肢別解説
誤り。カテーテル先端が血管壁に当たると波形の減衰やフラッシュ不良、場合によっては閉塞が生じ測定不能となるが、ライン内圧が大気に開放されるわけではないため逆流の直接原因とはならない。
誤り。血栓形成はラインの閉塞・狭窄を生じ、波形の減衰や測定困難を招く。むしろ流路抵抗が増えるため、血液が測定ライン側へ逆流しやすくなる機序ではない。
正しい。接続部の緩みは微小漏れや大気交通を生じ、ライン内圧が保持できず低下する。結果として患者側の動脈圧に押されて血液がライン内へ流入(逆流)し得る。血液漏出や空気混入の危険もあるため即時是正が必要。
正しい。三方活栓の誤操作で患者側が大気に開放されたり、意図せず他ポートと交通すると、ライン内圧が失われて逆流が生じる。特に採血・ゼロ点合わせ時のバルブ位置誤りに注意する。
正しい。加圧バッグの圧が動脈圧を下回るとフラッシュ圧で逆流を押し返せず、患者側からライン内へ血液が入り込む。観血式血圧では通常約300 mmHgに加圧し逆流防止とライン開存を維持する。
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解説
動圧は流体の運動エネルギーに由来する圧で、ベルヌーイの定理より $P_d=\tfrac{1}{2}\rho v^2$ で与えられる。血液の密度はおよそ $\rho=1{,}060\ \text{kg/m}^3$(近似として水の $1{,}000\ \text{kg/m}^3$ でも可)とし、流速 $v=1\ \text{m/s}$ を代入すると、$P_d\approx\tfrac{1}{2}\times1{,}000\times1^2=500\ \text{Pa}$(血液密度を用いると約 $530\ \text{Pa}$)。圧力換算は $1\ \text{mmHg}\approx133.3\ \text{Pa}$ を用いるため、$500/133.3\approx3.8\ \text{mmHg}$(血液密度なら $\approx4.0\ \text{mmHg}$)。したがっておよその値は 4 mmHg が妥当である。
選択肢別解説
0.4 mmHg は過小。$P_d=\tfrac{1}{2}\rho v^2$ に $\rho\approx1{,}000\ \text{kg/m}^3$, $v=1\ \text{m/s}$ を代入すると $\approx3.8\ \text{mmHg}$ となり、0.4 mmHg は約 1/10 と小さすぎる。
1 mmHg も過小。計算値は $\approx3.8\text{--}4.0\ \text{mmHg}$ であり、1 mmHg は約 1/4 と小さい。
4 mmHg は $P_d=\tfrac{1}{2}\rho v^2$ と $1\ \text{mmHg}\approx133.3\ \text{Pa}$ の換算から得られるおよその値(約 3.8~4.0 mmHg)と一致し、妥当。
10 mmHg は過大。$P_d=10\ \text{mmHg}$ になる速度は $v=\sqrt{2\,\Delta P/\rho}\approx\sqrt{2\times(10\times133.3)/1000}\approx1.63\ \text{m/s}$ で、$v=1\ \text{m/s}$ の条件には合致しない。
40 mmHg は著しく過大。$P_d=40\ \text{mmHg}$ 相当は $v\approx\sqrt{2\times(40\times133.3)/1000}\approx3.27\ \text{m/s}$ を要し、$v=1\ \text{m/s}$ の条件とは一致しない。
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解説
パルスドプラ血流計は送受信を時間分割で行い、エコー到達時間から深さを選択(ゲーティング)できるため距離分解能を有する。血流速度推定はドプラ周波数シフト $f_D=\frac{2 f_0 v \cos\theta}{c}$ を用いる。パルス方式では非エイリアシングで観測できる最大ドプラ周波数がナイキスト限界 $f_N=\frac{PRF}{2}$ に制限されるため、最大計測速度は $v_{\max}=\frac{c\,PRF}{4 f_0 \cos\theta}$ となり PRF に依存する。一方、超音波周波数を高くすると組織内減衰が増え、到達深度(最大計測深度)は浅くなる。通常、送受信は同一振動子で行う(時分割)。
選択肢別解説
誤り。血流方向とビームが同方向($\theta=0^\circ$)では $\cos\theta=1$ となりドプラシフトは最大で、測定は可能である。測定不能となるのは $\theta=90^\circ$($\cos\theta=0$)に近いときである。
正しい。パルス方式ではナイキスト限界 $f_N=PRF/2$ を超えるとエイリアシングが生じるため、最大計測可能速度は $v_{\max}=\frac{c\,PRF}{4 f_0 \cos\theta}$ に従い PRF に依存する。PRFを上げれば $v_{\max}$ も上がる。
誤り。パルスドプラは送受信を時間分割で行い、同一振動子(単一素子)で送受信できる。別素子を必須とするわけではない。
誤り。超音波周波数が高いほど生体内減衰が大きくなるため、最大計測深度は浅くなる(ただし空間分解能は向上)。
誤り。パルスドプラはパルスの往復時間から深さを選択できるため距離分解能を持つ。距離分解能はパルス幅(空間パルス長)が短いほど良くなる。距離分解能を持たないのは連続波ドプラである。
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解説
生体組織は一般に、方向依存性(異方性)、非線形性、粘弾性といった特徴的な力学的性質を示す。筋は線維配向により力学応答が方向で変わる異方性を示す。血管は低応力域では柔らかく高応力域では急速に硬くなる応力-ひずみ関係の非線形性を示す。皮膚・筋膜などの軟部組織は粘弾性体として扱われ、基本的表現としてダッシュポットとバネの並列(フォークト)モデルが用いられる。また、筋の等張性収縮では荷重Fと収縮速度vの関係がHillの式 $v=\frac{b(F_0-F)}{F+a}$ に従う。一方、骨のヤング率はおよそ $10^{10}\,\mathrm{N/m^2}$ 程度で、鉄材(およそ $2\times10^{11}\,\mathrm{N/m^2}$)より1桁以上小さい。したがって「骨のヤング率は鉄材の値とほぼ同じ」という記述は誤りである。
選択肢別解説
正しい。筋は筋線維が一定方向に配向した構造を持つため、線維方向とそれに直交する方向で剛性や伸びやすさが異なる異方性を示す。機械的負荷に対する応答(応力-ひずみ関係やせん断特性)も方向依存である。
正しい。血管壁はエラスチン優位の低応力域では伸びやすいが、応力上昇に伴いコラーゲン繊維が順次動員され剛性が増すため、応力-ひずみ関係は非線形となる。したがってコンプライアンスも圧に依存する。
正しい。軟部組織は代表的に粘弾性体として扱われ、弾性要素(バネ)と粘性要素(ダッシュポット)を並列に接続したフォークト(Kelvin–Voigt)モデルで基本的性質(クリープなど)を表現できる。実組織の挙動を精密に表すには拡張モデルが用いられるが、教科書的記述としては妥当である。
誤り。骨のヤング率はおよそ $\sim10^{10}\,\mathrm{N/m^2}$ 程度で、鉄材(鋼など)のヤング率 $\sim2\times10^{11}\,\mathrm{N/m^2}$ と比べて1桁以上小さい。よって「ほぼ同じ」は成り立たない。
正しい。筋の等張性収縮では、荷重Fと収縮速度vの関係がHillの式 $v=\frac{b(F_0-F)}{F+a}$(等価に $(F+a)(v+b)=(F_0+a)b$)で表される。負荷が増えると収縮速度が低下するという経験則を定式化した関係である。
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解説
誤りは「残気量はスパイロメータで測定できる。」である。スパイロメータは口腔から出入りする換気による“変化分”のみを捉えるため、最大呼出後にも肺内に残る残気量(RV)は直接測れない。RVを含む機能的残気量(FRC)や全肺気量(TLC)の測定にはヘリウム希釈法、窒素洗い出し法、体プレチスモグラフなどの方法を用いる。一方、胸腔内圧は生理的には大気圧に対して陰圧(安静時でおおむね−5 cmH2O前後、呼吸相で変動)であり、成人の解剖学的死腔は約150 mL(目安として体重1 kgあたり約2 mL)で妥当。肺の栄養血管は気管支動脈で、ガス交換を担う機能血管である肺動脈とは役割が異なる。ヘモグロビンの酸素解離曲線はpH低下(酸性化)で右方偏位し、組織での酸素放出が促進される(Bohr効果)。
選択肢別解説
正しい。胸腔(胸膜腔)内圧は通常、大気圧に対して陰圧で維持され、肺の虚脱を防ぎ胸壁と肺の弾性のバランスを保つ。安静呼吸では概ね−2〜−8 cmH2O程度で呼吸相により変動する。強い努力呼出など一部状況で一過性に陽圧となり得るが、生理的記述としては「陰圧」で妥当。
正しい。解剖学的死腔は導管気道(鼻腔〜終末細気管支など)でガス交換に寄与しない容積を指し、成人で約150 mLが一般的な目安(体重換算で約2〜2.2 mL/kg)。
誤り。スパイロメータは呼吸に伴う肺気量の変化のみを測定するため、最大呼出後も肺に残る残気量(RV)は直接測定できない。RVやそれを含むFRC・TLCの評価にはヘリウム希釈法、窒素洗い出し法、体プレチスモグラフなどの方法を用いる。
正しい。肺には二重の血管系があり、ガス交換を担う機能血管は肺動脈、肺実質や気道壁へ酸素と栄養を供給する栄養血管は気管支動脈である。
正しい。pH低下(またはPCO₂上昇、温度上昇、2,3-BPG増加)はヘモグロビンの酸素解離曲線を右方へ偏位させ(Bohr効果)、同一PO₂での飽和度が低下し、組織での酸素放出が促進される。
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