臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
観血式血圧計の測定系は、カテーテル・延長チューブ・フラッシュ装置・トランスデューサからなる力学系であり、固有振動数と減衰(ダンピング)の影響を強く受ける。誤差を増やす要因は、圧力伝達を阻害したり静水圧差やゼロ点ドリフトを生じさせるもの(凝固、気泡、トランスデューサ高さずれ、ウォームアップ不足など)である。一方、カテーテルを短く硬くすることは系のコンプライアンスを下げ固有振動数を高め、波形歪みやオーバー/アンダーシュートを抑えるため、測定誤差を減少させる。したがって「短くて硬い材質のカテーテルの使用」は“誤差を増加させない要因”に該当する。
選択肢別解説
カテーテル内で血液が凝固すると内腔が狭窄・閉塞し、圧力伝達が遅延・減衰(過減衰)して収縮期血圧は低め、拡張期は高めに出るなどの系統誤差が増える。臨床では持続フラッシュやヘパリン化生食で凝固を防ぐ。よって誤差は増加する要因である。
電源投入直後はストレインゲージ式トランスデューサの温度・ゼロ点・感度が安定せず、ゼロ点ドリフトや感度変化が起こりやすい。ゼロ補正も不十分になり得るため、直後の測定開始は誤差増大につながる。
トランスデューサの高さが基準(右心房レベル)からずれると静水圧差がそのままオフセット誤差となる。高さ差hに対し圧力差は $\Delta P=\rho g h$ で、10 cmの高さ差は約7.4~7.5 mmHgの誤差(1 cmH2O$\approx$0.74 mmHg)を生む。よって誤差増大要因である。
短くて硬いカテーテルはコンプライアンスを下げ固有振動数を高め、適正な減衰比の下で波形の歪みや共振・オーバーシュートを抑えられるため、測定誤差を減少させる要因である。設問は「誤差を増加させない要因」を問うため本肢が該当する。
カテーテル内への気泡混入は系のコンプライアンスを増大させ、固有振動数を低下させるとともに減衰特性を変化させ、波形の振幅低下や位相遅れなどの歪みを招く。結果として収縮期低め・拡張期高めなどの誤差が増加する。
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解説
浸透(浸透圧による移動)は、半透膜を隔てて溶質濃度(有効浸透圧)の差があるとき、低張側から高張側へ溶媒(水)が移動する現象である。毛細血管内皮は水や小分子は通すが血漿タンパク質は通しにくい半透膜として働き、血漿タンパク質に由来する膠質浸透圧が間質側から血管内へ水を引き戻す。微小循環では動脈端で主に静水圧により濾過、静脈端で主に膠質浸透圧により再吸収が起こる(スターリングの法則:$J_v = K_f[(P_c - P_i) - \\sigma(\\pi_c - \\pi_i)]$)。したがって「組織から静脈毛細血管への間質液の移動」が浸透圧による移動に相当する。二酸化炭素や酸素の移動は分圧勾配に従う拡散であり、ナトリウムイオンや尿細管でのグルコース再吸収は能動輸送(あるいは促進拡散)であって浸透ではない。
選択肢別解説
血液から肺胞への二酸化炭素移動は、肺胞-毛細血管膜を介した分圧勾配に基づく単純拡散で説明される。浸透は水の移動現象であり、気体のCO2移動は浸透圧では規定されないため、該当しない。
毛細血管から細胞間質への酸素移動は、酸素分圧勾配に従う拡散で起こる。半透膜を介した水の移動(浸透)ではないため不適切。
毛細血管内皮は血漿タンパク質をほとんど通さない半透膜として働き、血漿タンパク質に由来する膠質浸透圧差により間質側の水が静脈毛細血管内へ吸引される。これは浸透圧(膠質浸透圧)による溶媒(水)の移動であり、設問の趣旨に合致する。
細胞外へのNa+の排出は主としてNa+/K+ ATPアーゼによる能動輸送(一次能動輸送)で維持される。浸透は水の受動移動であり、Na+の能動輸送とは機序が異なるため該当しない。
尿細管でのグルコース再吸収は、刷子縁側のSGLTによるNa+濃度勾配を利用した二次性能動輸送と、基底膜側のGLUTによる促進拡散で行われる。いずれも浸透(浸透圧による水の移動)ではない。
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解説
体外循環(人工心肺)中は、全身灌流が機械的に管理され非拍動流となることが多く、限られた灌流量は脳や心臓などの重要臓器を優先して配分される傾向がある。したがって骨格筋や腹部臓器(腎・肝・消化管など)の血流は相対的に低下しやすい。一方、脳血流は通常、平均動脈圧がおおむね $50\sim 150\,\mathrm{mmHg}$ の範囲で自動調節(autoregulation)により一定に維持される(体温、麻酔薬、PaCO2 などの影響で範囲は変動し得る)。腎循環の自動調節の下限は一般に $50\sim 60\,\mathrm{mmHg}$ 程度とされ、これを下回ると自己調節は破綻し腎虚血の危険が増す。急性腎障害(AKI)の発症リスクは体外循環時間が長いほど高まることが知られており、「体外循環時間に依存しない」という記載は不正確である。以上より、正しい選択肢は脳血流の自動調節に関する記述である。
選択肢別解説
誤り。体外循環では限られた灌流量が脳・心臓へ優先配分され、交感神経緊張や血管収縮も相まって骨格筋への血流はむしろ低下しやすい。したがって「増加する」は不適切。
誤り。体外循環中は腎・肝・消化管などの腹部臓器の血流は相対的に減少しやすく、腸管虚血や肝機能障害のリスクが問題となる。よって「増加する」は不正確。
誤り。急性腎障害(AKI)の発症リスクは体外循環時間の延長で上昇することが多数報告されており、溶血・炎症・低灌流・血行動態変動などの累積影響を受ける。「体外循環時間に依存しない」は不正確。
正しい。脳血流は自動調節(autoregulation)により、通常は平均動脈圧がおおむね $50\sim 150\,\mathrm{mmHg}$ の範囲で比較的一定に保たれる。体外循環中でも、低体温や麻酔深度、PaCO2 変化などの影響を受けうるが、一般論としては維持されると考えられる。
誤り。腎循環の自動調節が保たれる灌流圧の下限は一般に $50\sim 60\,\mathrm{mmHg}$ 程度であり、$30\,\mathrm{mmHg}$ は明らかに低すぎて腎の自動調節は期待できない。
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解説
血液が材料表面に触れると瞬時に血漿タンパク質が吸着し、どのタンパク質がどれだけ吸着するかは材料側(親水性・疎水性、表面エネルギー、電荷、粗さ、水和層の有無など)とタンパク質側(分子サイズ、電荷・等電点、濃度、柔軟性=変性しやすさなど)の双方の性質に依存する。吸着により材料表面はタンパク質被覆層で覆われ、表面の見かけの構造・性状(濡れ性、電位、選択性など)が変化する。同時に、吸着したタンパク質自体も高次構造がしばしば変化(部分的変性・配向変化)する。さらにタンパク質吸着は動的で、初期に多量で小型のアルブミン等が優先的に吸着し、その後より親和性の高いフィブリノーゲンやIgGなどに置き換わる(Vroman効果)。したがって1,2,3が正しく、4,5は不正解である。
選択肢別解説
正しい。材料の親水・疎水性、表面エネルギー、表面電荷や粗さ、水和層(結合水)の有無などにより、吸着しやすさと吸着するタンパク質の組成が変わる。疎水性表面ほど総吸着量が増えやすく、水和性表面(例:PEG化)は吸着を抑制する傾向がある。
正しい。タンパク質の分子サイズ、等電点・電荷、立体柔軟性や濃度により吸着の量と選択性が異なる。例えば柔軟で表面に適応しやすいフィブリノーゲンは強く・遅れて吸着しやすく、アルブミンは初期に多量に吸着するが置換されやすい。
正しい。吸着によって材料表面はタンパク質の薄膜で覆われ、見かけの表面構造・性質(接触角、ゼータ電位、表面自由エネルギー、粗さの実効値など)が変化する。結果として分離特性や血液適合性など材料機能にも影響する。
誤り。多くの血漿タンパク質は表面との相互作用で部分的に展開・配向変化し、高次構造が変化(変性)する。フィブリノーゲンの展開やアルブミンの部分変性などが代表例であり、「変化しない」は一般に成り立たない。
誤り。タンパク質吸着は動的平衡であり、初期吸着種が後から親和性の高い種に置換される(Vroman効果)。したがって「一旦吸着すると置き換わらない」は誤り。
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解説
音波は空気や水などの流体中では媒質の疎密(圧縮・膨張)が伝わる縦波であり、横波ではない。音速は媒質固有の物性(弾性と密度)により決まり、気体では $V=\sqrt{\gamma P/\rho}$(等温近似でなく断熱過程を仮定)などで表され、気体の種類に依存する。ドプラ効果は音源と観測者の相対運動によって観測周波数が変化する現象である。水中および生体軟部組織中の音速はおよそ 1500 m/s(実務上は軟部組織で約 1540 m/s を採用)で妥当である。音の強さ(音響インテンシティ)は振幅(音圧)の二乗に比例し、$I=p_{\mathrm{rms}}^2/(\rho c)$ などで表される。従って正しいのは3と4である。
選択肢別解説
誤り。空気や水などの流体中の音波は縦波(粒子の振動方向と進行方向が同じ)である。流体にはせん断復元力がないため、横波は通常伝わらない。
誤り。音速は媒質に依存し、気体では $V=\sqrt{\gamma P/\rho}$ などで表される。比熱比 $\gamma$ や密度 $\rho$ は気体の種類で異なるため、音速も異なる。
正しい。音源と観測者の相対運動により観測される周波数が変化する現象がドプラ効果である(近づくと高く、遠ざかると低くなる)。
正しい。水中の音速は約 1480~1530 m/s、生体軟部組織は実務上約 1540 m/s とされ、概ね「約 1500 m/s」で妥当である。
誤り。音の強さは振幅(音圧)の二乗に比例する。例えば $I=p_{\mathrm{rms}}^2/(\rho c)$ で表され、振幅が大きいほど強さは増大する。
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