臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
人工心肺下では、体温管理や血液希釈などによって血液の物性や酸素運搬能が変化する。低体温では気体(酸素)の溶解度は増えるため、血漿中に物理的に溶け込む酸素量は温度低下で増加する。一方、ヘモグロビンの酸素解離曲線は左方移動し(P50低下)、ヘモグロビンの酸素結合力が高まる。また低体温は血液粘稠度を上昇させる。血液希釈は粘稠度を下げ、末梢血管抵抗を低下させる方向に働く。小児は体重あたりの代謝量・酸素消費量が成人より高いため、体重(あるいは体表面積)あたりの適正灌流量を多めに設定する。以上より、低体温で血中酸素溶解度が低下するという記述(選択肢3)は誤りである。
選択肢別解説
正しい。小児は基礎代謝量と酸素消費量(VO2)が体重あたりで成人より高いため、体重(または体表面積)あたりの適正灌流量は成人より多めに設定するのが原則である。臓器灌流・酸素供給を十分に確保する目的による。
正しい。血液希釈でヘマトクリットが下がると血液粘稠度が低下し、末梢血管抵抗(SVR)は低下する方向に働く。体外循環中の充填液による希釈は灌流圧の低下や組織血流の維持に寄与する。
誤り。低体温では気体の溶解度が増す(ヘンリーの法則に基づく)ため、血中の酸素溶解度は低下ではなく増加する。したがって記述は不正確であり、この選択肢が誤り。
正しい。低体温は酸素解離曲線を左方移動させ、ヘモグロビンの酸素親和性を高める(P50低下)。その結果、同一の酸素分圧でもヘモグロビンに結合する酸素が増えやすくなる。
正しい。温度低下に伴い血液粘稠度は上昇し、微小循環での流動性が低下しやすい。体外循環中の低体温管理では、この粘稠度上昇による臓器血流低下に留意する必要がある。
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解説
本問は誤っている記述を選ぶ問題。血清は血液を凝固させて血餅を除いた上清であり、血漿からフィブリノーゲンを含む凝固因子が除去されたものなので、血清がフィブリノーゲンを含むという記述は誤り。その他の選択肢は生理学の基本事項として正しい。細胞外液ではNa+が主要陽イオン、細胞内液ではK+が主要陽イオンである。ABO式ではA型の血清に抗B抗体が存在する。好酸球は顆粒白血球の一種。血小板は一次止血と凝固因子活性化を通じて血液凝固に関与する。
選択肢別解説
正しい。細胞外液(血漿・間質液など)の主要陽イオンはNa+で、主要陰イオンはCl−。一方、細胞内液の主要陽イオンはK+である。これは体液区画間の電解質分布の基本で、浸透圧や膜電位の維持に重要。
誤り。血清は血液を凝固させて血餅(フィブリン網と血球)を除去した上清であり、血漿からフィブリノーゲンを含む凝固因子が除かれている。フィブリノーゲンを含むのは血漿であって血清ではない。
正しい。ABO式でA型は赤血球表面にA抗原を持ち、血清中にはB抗原に対する抗体(抗B抗体、主に自然抗体として存在)がみられる。
正しい。白血球は顆粒白血球(好中球・好酸球・好塩基球)と無顆粒白血球(リンパ球・単球)に分類され、好酸球は顆粒白血球に属する。
正しい。血小板は血管損傷部で粘着・活性化・凝集して一次止血栓を形成し、またリン脂質表面を提供して凝固因子系を活性化しフィブリン形成(二次止血)を促進する。
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解説
膜型人工肺では、酸素化(PaO2)は主に吹送ガスの酸素濃度(FiO2)と血液側因子(血流量、Hb量、血液の酸素飽和度)で規定され、二酸化炭素除去(PaCO2)は主に吹送ガス流量(スイープガス流量)で調整するのが基本である。膜素材では、多孔質膜は微小孔を介してガス交換するため長時間使用で濡れ(親水化)や血漿漏出が起こりやすく、その結果ガスと血液が直接接触し得る。一方、均質膜(シリコーンなど)は非多孔質で血漿漏出を生じにくく長期使用に適する。流路構造では、外部灌流型(血液が中空糸の外側=シェル側を流れる)は流路が複雑で流れの乱れ(乱流・二次流)が生じやすく、内部灌流型(血液が中空糸内腔を流れる)よりも血流の乱れが起こりやすい。よって本問の正答は「外部灌流型は内部灌流型よりも血流に乱流が生じやすい」である。
選択肢別解説
誤り。吹送ガス流量(スイープガス流量)を増やすと主にCO2除去が促進されPaCO2が低下する方向に働く。PaO2は主としてFiO2と血液側因子に依存し、スイープガス流量の増加はPaO2に与える影響が小さい。
誤り。FiO2を上げるとPaO2が上昇するのが基本で、PaCO2の低下は主に吹送ガス流量の増加で得られる。FiO2の変更自体はCO2除去に本質的な効果を持たない。
誤り。多孔質膜は微小孔を介してガス交換するため、長時間使用で孔の濡れや血漿漏出が生じると、ガスと血液が直接接触し得る。したがって「直接接触しない」との断定は不適切。
誤り。均質膜(シリコーン等)は非多孔質であり、微小孔が存在しないため血漿漏出は起こりにくい。長期使用に適するのはこの特性による。
正しい。外部灌流型は血液が中空糸束の外側(シェル側)を流れるため流路が複雑で、流れの剥離や二次流が生じやすく乱れやすい。内部灌流型(中空糸内腔を直線的に流れる)に比べ、血流の乱れが生じやすい。
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解説
生体組織の電気伝導率 $\sigma$ は主に水分量と溶質(電解質イオン)濃度に依存する。水分・イオンが最も豊富な血液は導電率が最大で、脂肪組織は水分が少なく細胞外液も乏しいため最小になる。骨格筋は水分・電解質を比較的多く含み中程度で、異方性はあるものの一般に血液よりは低く、脂肪よりは高い。よって大小関係は 脂肪 < 骨格筋 < 血液 となり、選択肢1が正しい。肝臓は骨格筋と同程度ないしやや低めの中等度であり、脂肪よりは高く、血液よりは低いのが一般的である。
選択肢別解説
正しい。水分・電解質に富む血液が最大、脂肪が最小、骨格筋はその中間であるため、脂肪 < 骨格筋 < 血液の順となる。
誤り。血液は骨格筋より導電率が高い。したがって『脂肪 < 血液 < 骨格筋』の並びは成り立たない。
誤り。血液は生体組織中で最も高く、脂肪は最も低い。提示の『血液 < 骨格筋 < 脂肪』は大小関係が全て逆である。
誤り。肝臓は中等度で脂肪より高いのが一般的であるため、『肝臓 < 脂肪 < 血液』の前半が不正確。血液が最大である点は合致するが、肝臓と脂肪の関係が逆。
誤り。脂肪は最も低く、骨格筋や肝臓よりも小さい。提示の『骨格筋 < 肝臓 < 脂肪』は大小関係が逆である。
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解説
中空糸型膜型人工肺では、酸素化(PaO2)は主にガス側酸素濃度(FiO2)で、脱炭酸(PaCO2)は掃気(スイープ)ガス流量で調節できるため、両者は実用上ほぼ独立に制御できる。多孔質(微小孔)膜では、孔内にガスが存在し、血液とガスが孔口で直接界面を形成するため「血液と酸素は直接接触しない」は誤りである。シリコーンなどの均質膜は溶解拡散機構でガスが透過し、CO2の透過性はO2より高い。外部灌流型は中空糸外側を血液が横切るクロスフローとなり乱流・混合が生じやすく、内部灌流型は中空糸内腔を流れるため層流化しやすい。また多孔質膜は本来疎水性だが、血漿蛋白が吸着すると表面が親水化して孔が濡れ、血漿漏出(プラズマリーク)を招く。
選択肢別解説
正しい。中空糸型膜型人工肺では、酸素化は主にFiO2(約21~100%)の設定で、CO2除去は掃気(スイープ)ガス流量(L/min)で制御するのが基本であり、PaO2とPaCO2は相互にほぼ独立して調節できる(CO2はO2より膜・血液中での拡散性が高く、スイープ流量に敏感)。実臨床では血流量やHb濃度、膜性能も影響するが、制御則として独立調整が可能とされる。
誤り。多孔質膜(微小孔膜)では、孔に満たされたガスと血液が孔口で直接ガス–血液界面を形成してガス交換が行われる。したがって「血液と酸素は直接接触しない」は不正確で、むしろ直接接触(界面形成)がある。
誤り。シリコーン膜は均質膜で溶解拡散機構によりガスが透過する。CO2はO2より溶解度・拡散係数が高く、透過性はCO2の方が大きい(一般にCO2/O2透過性比はおおよそ4~5)。
誤り。外部灌流型は中空糸外側を血液がクロスフローで流れ、繊維束内の障害物効果により乱流・混合が生じやすい。内部灌流型は中空糸内腔を血液が流れるため層流になりやすい。よって記述は逆。
誤り。多孔質膜は本来疎水性で孔の濡れを抑えているが、血漿蛋白の吸着により表面が親水化し、孔が濡れて血漿漏出(プラズマリーク)が生じやすくなる。疎水化ではない。
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解説
$生体組織の電気特性は周波数依存性(周波数分散)を示す。一般に周波数が上がると遅い分極応答が追随できなくなるため誘電率は低下し、イオン移動などにより導電率は増加する。分散は概ね、α分散(低周波域:イオンの集散 \cdot 拡散や膜透過率変化など)、β分散(数kHz〜数十MHz:細胞膜による界面分極=Maxwell–Wagner 効果や細胞構造に起因)、γ分散(10GHz以上:水分子の分極緩和、室温で十数〜数十GHz)に整理される。よって「β分散は約20GHzで生じる」はγ分散の帯域と混同しており誤り。他の選択肢は標準的知見と整合する(筋組織の強い異方性、細胞膜比容量はおよそ1 μF/cm^2 など)。$
選択肢別解説
正しい。極性分子の配向分極などの遅い分極機構は高周波になるほど追随できず寄与が減るため、見かけの誘電率は周波数上昇とともに低下する。一方でイオン移動などに由来する導電率は一般に増加する。
正しい。骨格筋は筋線維方向に沿って導電率・誘電特性が異なる強い異方性を示す(線維方向で導電率が高いなど)。脂肪組織は構造が比較的等方的で、異方性は小さい。
$正しい。生体膜の比容量(単位面積あたりの静電容量)は一般に約 1 μF/cm^2 とされる。細胞膜は脂質二重層が誘電体として働き、このオーダーの容量を示す。$
正しい。α分散は低周波域で観察され、イオンの集散・拡散や膜透過率の緩慢な変化、電極・界面の分極などイオン動態に起因する現象が主因とされる。
誤り。β分散は細胞膜の界面分極(Maxwell–Wagner 効果)などに起因し、数kHz〜数十MHzの帯域で生じる。約20GHz付近で顕著なのはγ分散で、水分子の分極緩和に対応する。
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解説
完全流体は粘性がゼロ($\mu=0$)と仮定する理想化流体であり、粘性に起因する現象や式は成立しない。レイノルズ数による流れの相似性は粘度を含む無次元数で整理されるため、完全流体では意味をなさない。一方、ハーゲン・ポアズイユの法則はニュートン粘性流体の層流における粘性抵抗に基づく関係式であり、粘度をゼロにはできないので完全流体には適用できない。これに対し、パスカルの原理と連続の式は粘性の有無に依存せず成立し、ベルヌーイの定理は粘性損失を無視した完全流体(非粘性・非圧縮・定常)の理想化で成立する。したがって、「完全流体では成立せず、粘性流体のみで成立」するのは、1(レイノルズ数による相似性)と5(ハーゲン・ポアズイユの法則)である。
選択肢別解説
レイノルズ数は $Re = \frac{\rho v d}{\mu}$ で定義され、相似性(力学的相似)はこの無次元数で整理される。分母に粘度 $\mu$ を含むため、完全流体($\mu=0$)では定義できず、レイノルズ数に基づく相似性は粘性流体でのみ意味を持つ。よって設問の条件を満たす。
パスカルの原理は密閉流体中で加えた圧力が等しく伝播するという静力学の原理で、粘性の有無に依存しない。完全流体でも成立するため、「完全流体では成立せず」という条件には当てはまらない。
連続の式は質量保存則に基づく基本関係で、流体が非圧縮なら $A v=\text{一定}$ が成り立つ。これは粘性の有無によらず成立するため、完全流体でも成り立ち、設問条件には該当しない。
ベルヌーイの定理 $p+\tfrac{1}{2}\rho v^2+\rho g h=\text{一定}$ は粘性損失を無視した理想化(非粘性・非圧縮・定常・外力が保存力)で成立する。粘性流体では損失項の付加が必要でそのままは成立しないが、「粘性流体のみで成立」するわけではなく、むしろ完全流体での理想式であるため不適。
ハーゲン・ポアズイユの法則 $Q=\frac{\pi \Delta p R^4}{8\mu L}$ はニュートン粘性流体の円管内層流における粘性抵抗に基づく。粘度 $\mu$ に反比例し、$\mu=0$ では成立しないため完全流体には適用できない。よって粘性流体のみで成立し、設問条件に合致する。
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