臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
フールプルーフは、構造・形状・操作系の工夫により、操作者が誤ってもそもそも誤動作や危険が起こらないように「間違いをさせない」設計思想である。代表例は、異種接続を物理的に不可能にするキーイングや、意図しない操作(不意のスイッチ操作など)を防ぐ二重動作・ガード付きスイッチなど。一方、フェイルセーフは故障や危険が発生した後に影響を最小化(安全側に移行、出力停止、警報発報等)する設計であり、冗長化電源の搭載などは機能継続・安全性のための多重系設計に分類される。本問では、1と2がフールプルーフ、3〜5はフェイルセーフ(または多重系)に該当する。
選択肢別解説
正しい。医療ガス小型容器のヨーク形バルブ(ピンインデックス方式)は、ガス種ごとにピン位置が異なり、物理的に誤接続できないキーイング機構である。操作者が取り違えようとしても接続自体が成立しないため、「間違いをさせない」フールプルーフの典型例である。
正しい。体外式ペースメーカでは、意図しない電源オフを防ぐためにガード付きスイッチ、長押しや二重操作を要求する設計などが用いられる。これは不意の接触や単純誤操作では電源が切れないようにする構造的工夫であり、フールプルーフに該当する。
誤り。IABP装置のガスリークアラームは、リークという異常発生後に警報で気づかせ、必要に応じて安全側に移行させる仕組みで、影響を最小化するフェイルセーフの考え方に属する。誤操作を防ぐ構造的工夫(フールプルーフ)ではない。
誤り。体外式除細動器にバッテリを搭載するのは、停電やAC断時でも使用継続できるようにする電源の冗長化(多重系)であり、故障・電源喪失時でも安全や機能を確保するフェイルセーフ/フェイルオペレーショナルの考え方である。誤操作を未然に防ぐフールプルーフではない。
誤り。電気メスの対極板接触不良検知機構は、接触不良という危険状態の発生後に検知し、出力停止や警報で被害を最小化する機構で、フェイルセーフに分類される。フールプルーフ(誤操作をさせない構造)ではない。
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解説
電気メス(高周波電気手術装置)は300 kHz〜数MHzの高周波電流で組織を加熱し、連続波(純切開波形)で切開、断続的なバースト波(凝固波形)で凝固を行う。モノポーラ方式ではアクティブ電極と対極板間に電流が流れるため、対極板は広い面積で密着し血流の良い平坦な部位に装着してジュール熱の蓄積を避けることが重要である。負荷抵抗は標準的に500 Ωで規定されており、20 kΩではない。高周波ノイズは心臓ペースメーカのデマンド機能に対し過検知(抑制)などの誤作動を誘発しうるため、適切な予防策が必要である。高酸素環境下では電気メス自体が点火源となり得るため、酸素管理とエネルギー機器の使用最小化が中心で、バイポーラ方式を『使用するべき』と一般化するのは不適切である。
選択肢別解説
正しい。電気メスの高周波電流や電磁ノイズが心電信号として誤検知され、デマンド機能(抑制機構)が不適切に作動してペーシングが一時停止するなどの誤作動を誘発しうる。特にモノポーラ使用時はリスクが高く、必要に応じて磁石併用や非同期モード化、帰還電流経路の配慮などの対策が推奨される。
正しい。切開には連続波(純切開モード、ほぼ100%デューティ比)を用いる。連続波は電圧が比較的低く、組織の水分を迅速に沸騰・蒸散させて滑らかな切開が得られる。一方、凝固には間欠的なバースト波(高電圧・低デューティ比)を用いる。
誤り。高酸素環境下では電気メスはモノポーラでもバイポーラでも点火源となり得て手術火災の危険がある。酸素濃度の低減やガス吹送の管理、エネルギー機器の出力・使用時間最小化が重要であり、『高酸素環境下ではバイポーラ方式を使用する』と一般則のように述べるのは不適切である。バイポーラは微細手術や周囲組織への電流拡散を抑えたい場面で選択される方式である。
誤り。対極板は凹凸が少なく、筋肉量があり血流の良い平坦部(例:大腿部、臀部)に広い面積で密着装着する。血流が少ない部位や骨突出部、瘢痕部、体毛の多い部位は接触不良やジュール熱蓄積により熱傷リスクが高まるため避ける。
誤り。電気メスの設計・試験に用いる標準負荷は500 Ωが一般的であり、20 kΩではない。500 Ω負荷での出力特性を基準として各モードの性能評価が行われる。
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解説
ICUで用いられる人工呼吸器は、陽圧換気を安全かつ安定に実施するために、(1)吸気・呼気を切り替え、呼気を外部へ排出しつつPEEPを付与する呼気弁系、(2)換気の安全監視と制御のための気道内圧モニタ(圧センサ・アラーム系)、(3)医療用空気と酸素を所定の比で混合して設定FiO2を供給する酸素濃度調節装置(ブレンダ)などを備える。ICUの人工呼吸器は開放(半開放)回路で再呼吸を前提としないため、麻酔器の循環回路で用いる二酸化炭素吸収装置(ソーダライム等)は構成要素に含まれない。またピンインデックスシステムは小型ガスボンベの誤接続防止規格であり、人工呼吸器本体の構成要素とはいえない。
選択肢別解説
正しい。呼気弁は呼気相に患者回路を大気(排気系)へ開放し、さらにPEEPを精密に制御する中核部品で、現代のICU用人工呼吸器に必須である。
正しい。気道内圧モニタはPIPやプラトー圧、PEEPなどを監視し、過圧や回路異常をアラームで検出する。圧規定・量規定いずれの換気でも安全確保に不可欠である。
正しい。酸素濃度調節装置(酸素・空気ブレンダ)はO2とAirを混合し、設定FiO2の吸入ガスを供給するための基本構成要素である。
誤り。二酸化炭素吸収装置は麻酔器の循環(閉鎖)回路で再呼吸時にCO2を除去するためのもので、ICUの人工呼吸器(開放・半開放回路)には通常用いられない。
誤り。ピンインデックスシステムは小型ガスボンベ用の誤接続防止規格(ヨーク式接続)であり、人工呼吸器本体の構成要素ではない。ICUでは中央配管からガス供給されるのが一般的である。
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解説
植込み型心臓ペースメーカは外部電磁環境の影響(EMI)を受けると、自己心電位と誤検出して抑制される(オーバーセンシングによる一時的な非ペーシング)・不適切なモード遷移・リセットなどの不具合が起こり得る。医療機器の中では高周波電流を用いる電気メス、強力な静磁場・時間変化磁場・RFを用いるMRI、X線CT装置の高電圧スイッチングや散乱電磁ノイズ・高線量照射などが影響源となり得るため注意が必要である。一方、一般的な出力・距離条件で用いられる無線LANや医用テレメータは、機器側のEMC対策や低出力運用により影響は通常軽微で、適切な距離・運用を守れば臨床的影響はほぼ生じないと考えられる。
選択肢別解説
無線LANは低出力で運用され、機器・インプラント双方にEMC対策が施されている。適切な距離を保つ一般環境では、ペースメーカの動作に臨床的な影響を与える可能性は極めて低い。したがって本設問の趣旨(影響する可能性があるもの)には該当しない。
医用テレメータは医療施設内での使用を前提に設計され、周波数・出力管理や機器側のEMC対策が講じられている。患者近傍で使用されるが、通常の運用ではペースメーカへの影響は小さいため、影響する可能性が高い機器とはいえない。
電気メスは数百kHz〜数MHzの高周波電流を用い、大電流が流れるため強い電磁ノイズや漏れ電流が発生する。これをペースメーカが心電信号と誤認してオーバーセンシング・抑制やノイズ抑制モード移行を起こすことがある。電気メスは影響する可能性があるため該当する。
X線CTは回転ガントリ内のX線管高電圧スイッチングやモータ駆動に伴う電磁ノイズ、さらには高線量照射による一過性のデバイス反応などにより、稀にオーバーセンシングや動作不整を来すことが報告されている。よって影響する可能性がある。
MRIは強力な静磁場、時間変化磁場(傾斜磁場)、RFパルスによる電磁環境を伴い、リードへの誘導加熱、オーバー/アンダーセンシング、リセット・モード変更等の重大な影響を及ぼし得る。MR対応機種で適切に条件管理しない限り、影響する可能性が高い。
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解説
各医用機器が取り扱う物理エネルギーの組合せを吟味する問題。超短波治療器は高周波電磁波(短波:おおむね30〜300 MHz、代表周波数27.12 MHzなど)を用いて深部加温するため「高周波」で適合。筋刺激装置は電気刺激(電流パルス)で神経・筋を興奮させる機器であり「光」は不適合。X線装置が出力するX線は電磁波であって粒子線ではないため「粒子線」は不適合。ネブライザは方式により圧縮空気(ジェット)または超音波を利用し、超音波ネブライザという分類が確立しているので「超音波」は適合。除細動器は単相性または二相性の高電圧パルス(短時間の電流パルス波形)を出力するため「パルス波」で適合。したがって誤っている組合せは2と3である。
選択肢別解説
適切。超短波治療器(短波・極超短波治療器)は高周波の電磁波を用いて生体組織を加温する。代表周波数として27.12 MHzなどが用いられ、高周波電磁エネルギーに分類される。
不適切。筋刺激装置(TENS、NMESなど)は電気刺激(電流パルス)で神経・筋を興奮させる機器であり、用いるエネルギーは電気である。光エネルギーは光線療法やレーザ治療器に該当し、筋刺激装置の原理とは一致しない。
不適切。X線装置が患者に照射するのはX線(電磁波)であり粒子線ではない。X線は管内で加速した電子(粒子)をターゲットに衝突させて二次的に発生させるが、患者に与えるエネルギーは電磁波である。粒子線治療は陽子線・炭素イオン線など別種の装置に該当する。
適切。ネブライザは薬液を微粒化して吸入させる機器で、方式としてジェット(圧縮空気)と超音波があり、超音波ネブライザは実在する分類であるため「超音波」の組合せは妥当。
適切。除細動器は致死性不整脈に対し、単相性または二相性の短時間高電圧パルス(パルス波形)を出力して心筋を同時再分極させる機器であり、「パルス波」の組合せは妥当である。
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解説
ショックは急性循環不全により組織灌流が破綻した状態で、主な機序には循環血液量減少性(出血・脱水など)、血液分布異常性(敗血症、アナフィラキシー、神経原性など)、心原性(急性心筋梗塞など)、閉塞性がある。脱水は体液喪失により前負荷が低下し心拍出量が減少してショックの原因となる。敗血症はサイトカイン作用で全身性血管拡張と毛細血管透過性亢進を生じ、分布異常性ショックを来す。急性心筋梗塞は左室収縮不全により心拍出量が低下し心原性ショックの原因となる。迷走神経反射は徐脈と末梢血管拡張による急激な血圧低下を介し神経原性ショックの機序をとりうる。一方、IV型アレルギー反応(遅延型・細胞性免疫)は主に接触皮膚炎やツベルクリン反応などの遅発性炎症で、即時型の全身性血管拡張や血管透過性亢進を介したショックは起こさない。ショックの原因として不適切なのはIV型アレルギー反応である。
選択肢別解説
脱水は体液喪失による前負荷低下と心拍出量低下を介して循環血液量減少性ショックの原因となる。よってショックの原因として妥当(誤りではない)。
敗血症では炎症性サイトカインにより全身の血管拡張と毛細血管透過性亢進が起こり、相対的循環血液量の不足・分布異常を来してショックに陥る。したがって原因として正しい。
急性心筋梗塞は重篤な左室機能低下により心拍出量が著減し、心原性ショックの典型的原因となる。従って原因として正しい。
IV型アレルギー反応(遅延型・T細胞仲介)は発現まで時間を要し、主に接触皮膚炎やツベルクリン反応などを呈する。アナフィラキシーのような即時型の全身性血管拡張・血管透過性亢進を介するショックはI型アレルギーであり、IV型はショックの原因にならない。よって本設問で誤っている選択肢である。
迷走神経反射(血管迷走神経反射)は迷走神経優位により徐脈と末梢血管拡張を来し、血圧が急低下して失神やショック様の循環不全を引き起こしうる。試験上は神経原性(分布異常性)ショックの原因として扱われるため、原因として正しい。
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解説
$電気メス(高周波外科用装置)は高周波電流で切開 \cdot 凝固を行い、対極板は電流を広い面積で回収して電流密度を下げ、熱傷を防ぐ役割を担う。対極板は血行がよく筋量の多い部位に密着させて装着し、面積は成人で概ね110〜200 cm^2程度が用いられる。対極板回路の抵抗が増える(接触不良 \cdot コードの異常など)と、電流が一部に集中したり高周波分流が増えて熱傷リスクが上がる。規格では高周波漏れ電流の上限が150 mA以下に定められている。また、メス先でのアーク放電時には整流作用により低周波 \cdot 直流成分が発生し、条件が重なると電撃(不整脈 \cdot VF等)の危険がある。以上より、3 \cdot 4 \cdot 5が正しい。$
選択肢別解説
$誤り。対極板の面積は成人でおおむね110〜200 cm^2程度が用いられ、電流密度を下げるため広い面積が必要である。5 cm^2では面積が小さすぎ、電流密度 j = I/A が大きくなって熱傷の危険が高い。$
誤り。対極板は血行のよい筋肉部位など電流が流れやすく熱が分散されやすい部位に装着するのが適切である。避けるべきは骨突出部、瘢痕、金属インプラント直上、体毛の多い部位、湿潤や汚染部位などである。
正しい。対極板回路の抵抗増加(接触不良、コードの断線・巻き付けによるインピーダンス上昇など)は、電流が局所に集中して温度が上がる、あるいは高周波分流が増えることで熱傷の原因となる。
正しい。電気メスの高周波漏れ電流は規格(IEC 60601-2-2/JIS T 0601-2-2 由来)で150 mA以下に制限されている。したがって記述は妥当である。
正しい。メス先のアーク放電時に電極・組織の整流作用で直流・低周波成分が生じることがあり、これが神経・心筋刺激となって電撃(感電)・不整脈の危険につながる。
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