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臨床工学技士国家試験
解説
本問は血行動態の基礎。正しいのは1・2・3、誤りは4・5である。1は、脈波反射の重畳により末梢動脈ほど収縮期のピーク(収縮期血圧)が高くなり、部位によってピーク値が異なるため正しい。2は、層流を仮定したハーゲン・ポアズイユの法則より血管抵抗は半径の4乗に反比例し、内径が小さくなると抵抗が急増するため正しい($R=\frac{8\mu L}{\pi r^4}$)。3は、Moens–Kortewegの式 $c=\sqrt{\frac{Eh}{\rho D}}$ より、石灰化で血管ヤング率 $E$ が上昇すれば脈波伝搬速度 $c$ は増加するため正しい。4は、動圧 $\rho v^2/2$ は大動脈で数百Pa程度であり、静圧(平均血圧)$\sim$13 kPa(約100 mmHg)に比べ桁違いに小さいため「ほぼ等しい」は誤り。5は、同式から $c\propto 1/\sqrt{D}$ であり、動脈径が大きいほど脈波伝搬速度は低下するため誤り。
選択肢別解説
正しい。脈波は末梢で反射し、入射波と重畳して収縮期ピークが高くなる(末梢増高)。このため大動脈と橈骨動脈などでピーク値(収縮期血圧)は異なる。平均血圧は部位間で大差ないが、ピークは部位依存で変化する。
正しい。ハーゲン・ポアズイユの法則で血管抵抗は $R=\frac{8\mu L}{\pi r^4}$。内径が小さくなり半径 $r$ が減少すると、$R$ は $r^4$ に強く依存して急増する。実血管は分岐や脈動流・非ニュートン性の影響を受けるが、この方向性は保たれる。
正しい。Moens–Kortewegの式 $c=\sqrt{\frac{Eh}{\rho D}}$ より、血管のヤング率 $E$(硬さ)が増すと脈波伝搬速度 $c$ は増加する。血管石灰化は血管壁の硬化($E$上昇)をもたらすため、PWV(脈波伝播速度)は上がる。
誤り。動圧は $\rho v^2/2$ で、大動脈の代表値($\rho\approx1060\,\mathrm{kg/m^3}$、$v\approx1\,\mathrm{m/s}$)では約 $5\times10^2\,\mathrm{Pa}$(0.5 kPa 程度)と推定される。一方、静圧(平均血圧)は約100 mmHg($\approx$13 kPa)であり、動圧は静圧より桁違いに小さいため「ほぼ等しい」ではない。
誤り。Moens–Kortewegの式 $c=\sqrt{\frac{Eh}{\rho D}}$ より、他条件が同じなら $c\propto 1/\sqrt{D}$。したがって動脈径 $D$ が大きいほど脈波伝搬速度は低下する(増加ではない)。
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解説
オシロメトリック法は、カフ圧を徐々に減圧しながらカフ圧に重畳する圧脈波の振幅(包絡線)の変化を解析して血圧を推定する。振幅が最大となるカフ圧を平均血圧(MAP)とみなし、その立ち上がり側・立ち下がり側の所定比率などを用いて収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)を推定する。周波数ではなく振幅を主指標とする。不整脈があると拍毎の振幅・間隔が不規則となり推定誤差が増える。また、カフ圧が収縮期血圧より高い領域でも動脈壁の拍動由来の微小振動はカフに伝わり検出されうる。以上より、平均血圧付近で振幅が最大となるという選択肢5が正しい。
選択肢別解説
誤り。オシロメトリック法では拡張期血圧は直接測定ではなく推定だが、振幅包絡線の立ち下がり側の所定条件から装置は拡張期血圧値を算出・表示できる。「測定できない」との断定は不適切。
誤り。本法は圧振動の周波数ではなく、減圧過程における圧脈波の振幅(包絡線)の変化を用いて収縮期・平均・拡張期血圧を推定する。
誤り。不整脈(例:心房細動)があると拍毎の振幅や拍動間隔が不規則になり包絡線が安定せず、アルゴリズムの推定誤差が増大するため計測誤差の原因となる。
誤り。収縮期血圧より高いカフ圧でも血流は遮断されるが、動脈壁の拍動に伴う微小な容積・圧変動がカフに伝わり、小さな圧振動として検出されうる。振幅は小さいが「検出されない」わけではない。
正しい。オシロメトリック法では圧脈波の振幅が最大となるカフ圧を平均血圧と定義して推定するため、平均血圧付近で振幅が最大となる。
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解説
観血式血圧測定で「最高血圧が低く、最低血圧が高く」表示されるのは、導管系(カテーテル-チューブ-トランスデューサ)の動特性が劣化し、過減衰(オーバーダンピング)になった場合に典型的に起こる。過減衰では高周波成分が減衰して波形が丸まり、振幅が小さくなるため、収縮期頂点は押し下げられ、拡張期谷は持ち上がる方向に歪む。原因としては、血栓付着や血液凝固によるカテーテル内腔の狭窄、気泡混入、過度に長い・柔らかい(コンプライアンスの高い)チューブ、コネクタの緩み等が挙げられる。これに対し、ゼロ点やトランスデューサ位置誤差は測定値全体を一定量シフトさせるだけで、収縮期と拡張期が逆方向に変化する現象は生じない。導管系の共振(アンダーダンピング)は逆にオーバーシュート/アンダーシュートを生み、最高血圧が高く、最低血圧が低く出る。
選択肢別解説
トランスデューサが右心房より高い位置にあると静水圧差により全体が低めに表示される(収縮期・拡張期とも同程度に低下)。収縮期のみ低く拡張期が高くなるような逆方向の変化は起こらないため、本設問の現象の原因ではない。
加圧バッグは通常約300 mmHgで維持しフラッシュ流量を確保する目的であり、適正範囲内で高めでも測定波形自体(収縮期・拡張期)に系統的な影響は与えない。したがって本現象の直接原因とはいえない。
血液凝固によりカテーテル内腔が狭窄すると導管系の動特性が劣化し過減衰となる。高周波成分が減衰して波形が鈍り、最高血圧は実際より低く、最低血圧は実際より高く表示されるため、本設問の正答である。
ゼロ点調整不良は基線の誤りであり、全測定値(最高・最低・平均)が同方向に等しくシフトする。収縮期が低く拡張期が高くなるような逆方向の変化は説明できない。
導管系の共振(アンダーダンピング)はリンギングやオーバーシュートを生じ、最高血圧は高く、最低血圧は低く表示される。設問の現象(最高低く・最低高く)とは逆であり原因ではない。
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解説
耳式赤外線体温計は、外耳道から鼓膜の赤外放射を非接触で検出し、放射エネルギーから鼓膜温を推定する。鼓膜は内頸動脈系の血流の影響を強く受け、視床下部近傍の血流温と整合しやすいため、直腸温や食道温などの核心温に近い値が得られる。検出素子はサーモパイルや焦電型などの熱型赤外線センサが用いられ、量子型(光導電・光起電力型)のような冷却を要する高速高感度素子は一般的な耳式体温計では用いられない。測定は瞬時だが、プローブを耳に保持し続ける必要や装着性・衛生上の制約から連続測定には不向きである。外耳道炎、耳垢、外耳道の形状やプローブの向きの不適合は鼓膜からの放射検出を妨げ、測定値に誤差を生じうる。
選択肢別解説
正しい。耳式体温計は鼓膜(およびその近傍)から放射される赤外線を受光し、放射強度と温度の関係に基づき温度を推定する。適切な指向性で鼓膜を狙うことが精度確保に重要である。
正しい。鼓膜は内頸動脈系の血流の影響を強く受け、視床下部近傍の血液温を反映しやすいため、直腸温・食道温などの核心温に近い体温が得られるとされる。適切な位置合わせができれば外気温の影響も受けにくい。
誤り。一般的な耳式体温計はサーモパイルや焦電素子などの熱型赤外線検出器を用いる。量子型(光導電型・光起電力型)検出器は高感度だが、冷却や複雑な回路を要するため家庭用・医療用の耳式体温計では通常採用されない。
誤り。測定は瞬時に可能だが、プローブを耳内に安定保持する必要や装着性・衛生面の制約があり、体温の連続監視には適さない。連続監視には食道温・膀胱温・肺動脈温など他手法が用いられる。
正しい。外耳道炎や耳垢の付着、外耳道の腫脹は鼓膜からの赤外放射の到達・検出を妨げ、過大・過小いずれの誤差も生じうる。正確な測定には外耳道の状態確認と適切なプローブ方向合わせが必要である。
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解説
観血式血圧測定系(カテーテル−フラッシュ液−チューブ−トランスデューサ)は力学的に「自然周波数」と「減衰比」で応答が決まる系である。波形ダンピング(過減衰・減衰過大)は、圧力伝達経路のコンプライアンス増大や流路抵抗増大により高周波成分(立ち上がり、切痕など)が失われることで起こり、典型的には収縮期が低め、拡張期が高めに出て脈圧が小さく見える。具体的原因には、回路内の気泡混入(コンプライアンス増大)、カテーテル先端での血栓形成や先当り(流路抵抗増大・部分閉塞)がある。一方、ゼロ点調整不良やトランスデューサの設置高さの変更は静水圧基準のズレを生み測定値全体がオフセットするだけで、波形の減衰(ダンピング)そのものの原因ではない。
選択肢別解説
正しい。回路内に気泡が混入すると液柱のコンプライアンスが増加し、系の自然周波数低下と減衰増大が生じる。結果として高周波成分が削られ、立ち上がりが鈍く脈圧が小さく見える(ダンピング)。
正しい。カテーテル先端で血栓が形成されると内腔が狭窄・部分閉塞して流路抵抗が増大する。圧力波の伝達が妨げられ、特に高周波成分が減衰し、脈圧が小さくなる(ダンピング)。
正しい。カテーテル先端が血管壁に当たる(先当り)と先端開口がふさがれ、実質的に部分閉塞となって流路抵抗が増大する。これにより圧力波が減衰し、波形が鈍り脈圧が小さくなる(ダンピング)。
誤り。ゼロ点調整不良は静水圧基準の設定ミスによるオフセット誤差を生じさせる要因で、波形の減衰(ダンピング)を引き起こすものではない。波形形状は保たれるが全体が上下にずれる。
誤り。血圧トランスデューサの設置高さの変更は静水圧差による基線(オフセット)のズレを生じる。右房基準より高ければ低く、低ければ高く測定されるが、波形自体の減衰(ダンピング)の原因ではない。
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解説
音波は媒質中を伝わる縦波(疎密波)で、圧縮される「密」の部分では圧力が上昇し、膨張する「疎」の部分では圧力が低下する。ヒトの可聴域は約20 Hz〜20 kHzで、これより高い周波数の音波が超音波である。周波数が高いほど波長は短く($\lambda=c/f$)、同一開口では回折が起こりにくく直進性が高い。また、音源が観測者に近づくとドプラ効果により受信周波数が上昇し、音は高く聞こえる。医用の超音波診断装置では概ね0.5〜20 MHz程度の周波数が用いられる。以上から、密部で圧力が低下するとする記述は物理的に逆で誤りである。
選択肢別解説
正しい。超音波はヒトの可聴域(約20 Hz〜20 kHz)の上限を超える周波数を持つ音波を指すため、「20 kHzより高い音波」は妥当である。
正しい。周波数が高いほど波長は短くなり($\lambda=c/f$)、同じ開口径では回折が抑えられてビームの広がりが小さくなるため、超音波は可聴音(周波数が低く波長が長い)より直進性が高い。
正しい。ドプラ効果により、音源が観測者に近づくと観測される周波数が増加し、音は高く聞こえる。逆に遠ざかると周波数は低下する。
誤り。音波の疎密波では、密(圧縮)部で圧力は上昇し、疎(膨張)部で圧力が低下する。設問はこの関係を逆に述べているため誤りである。
正しい。一般的な医用超音波診断装置ではおおむね0.5〜20 MHz程度の周波数帯が利用される。原文の「0.5~MHz」は表記不備だが、意図する内容は適切である。周波数選択は目的(深部は低め、浅部・高解像は高め)に依存する。
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解説
観血式動脈圧測定では、フラッシュ液(ヘパリン加生理食塩液)を加圧バッグでおよそ300 mmHgに保持し、動脈圧より高い圧を常時付与することで血液の逆流を防ぐ。逆流が起きる典型的な機序は、(1) ライン内圧が動脈圧を下回る(加圧不足・フラッシュ流の低下)、(2) ラインが大気と交通して圧が失われる(開放・漏れ)である。よって、加圧バッグの圧不足、三方活栓の誤操作(大気開放や意図しない交通)、接続部の緩み(漏れ・大気交通)はいずれも逆流の原因になり得る。一方、カテーテル先当たりや血栓形成は波形減衰や閉塞を引き起こして測定不良の原因にはなるが、逆流を直接生じさせる機序ではない。
選択肢別解説
誤り。カテーテル先端が血管壁に当たると波形の減衰やフラッシュ不良、場合によっては閉塞が生じ測定不能となるが、ライン内圧が大気に開放されるわけではないため逆流の直接原因とはならない。
誤り。血栓形成はラインの閉塞・狭窄を生じ、波形の減衰や測定困難を招く。むしろ流路抵抗が増えるため、血液が測定ライン側へ逆流しやすくなる機序ではない。
正しい。接続部の緩みは微小漏れや大気交通を生じ、ライン内圧が保持できず低下する。結果として患者側の動脈圧に押されて血液がライン内へ流入(逆流)し得る。血液漏出や空気混入の危険もあるため即時是正が必要。
正しい。三方活栓の誤操作で患者側が大気に開放されたり、意図せず他ポートと交通すると、ライン内圧が失われて逆流が生じる。特に採血・ゼロ点合わせ時のバルブ位置誤りに注意する。
正しい。加圧バッグの圧が動脈圧を下回るとフラッシュ圧で逆流を押し返せず、患者側からライン内へ血液が入り込む。観血式血圧では通常約300 mmHgに加圧し逆流防止とライン開存を維持する。
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