臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
人工心肺(体外循環)では、血液が人工材料(回路・人工肺)に接触することにより補体・白血球・血小板などが活性化され、炎症反応と血液学的変化が起こる。具体的には、機械的せん断やポンプ・人工肺での損傷により溶血が生じ血漿遊離ヘモグロビンは上昇、血小板は回路表面への吸着や消費で低下、白血球は補体活性化に伴い初期に末梢で減少(とくにリンパ球減少)する。一方、人工材料接触は補体の活性化を引き起こし、また低体温や手術侵襲・カテコラミン分泌、インスリン分泌低下などにより血糖値は上昇しやすい。したがって、起こる変化として正しいのは「補体の活性化」と「血糖値の増加」である。
選択肢別解説
誤り。体外循環では機械的せん断や回路・人工肺での血球損傷により溶血が生じ、血漿遊離ヘモグロビンは上昇する。プライミング液による希釈でヘマトクリットは低下し得るが、遊離ヘモグロビン濃度自体は溶血で上がる。
誤り。血小板は回路や人工肺への吸着・消費、活性化による消費、さらには希釈の影響で低下する。ヘパリン使用中であっても血小板数は一般に増加せず低下傾向となる。
誤り。体外循環開始直後は補体活性化に伴い白血球が肺などに一時的に滞留し、末梢血中では減少する傾向がある。リンパ球は白血球の一種であり、増加ではなく減少が一般的である。
正しい。血液が人工材料表面に接触することで異物接触反応が起こり、補体カスケードが活性化される。これが炎症反応や白血球動態変化の一因となる。ヘパリンコーティング回路などで程度は軽減しうるが、基本的機序として補体活性化は生じる。
正しい。手術侵襲・カテコラミン分泌・ステロイド反応、低体温下でのインスリン分泌低下やインスリン作用低下、グリコーゲン分解促進などにより高血糖になりやすい。適切な輸液やインスリン管理が行われない限り、血糖は増加傾向となる。
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解説
透析用患者監視装置では、血液回路の圧力(動脈側圧=ポンプ出口〜ダイアライザ入口圧、静脈側圧=ダイアライザ出口〜返血側圧)、透析液圧、気泡検知、漏血検知などを監視する。ダイアライザ内で血液が凝固すれば膜抵抗が増し、ダイアライザ入口(動脈側)圧は上昇する。また、ダイアライザ膜が破損すれば血液が透析液側へ漏れ、漏血検知器が警報する。一方、静脈側圧の上昇は返血側回路の屈曲・閉塞・回路内凝固などで生じ、脱血不良はむしろ流量低下と静脈側圧の低下を招く。透析液圧の上昇は透析液回路の閉塞などで生じ、給水圧低下は通常、透析液圧や流量の低下方向の事象・供給装置側の警報につながる。気泡混入は主に動脈側回路の接続緩みや陰圧側からの空気吸入などが原因で、返血針(静脈針)脱落は静脈側圧の急低下や体外への血液漏出を引き起こすが、気泡検知の直接原因とはならない。以上より、正しい組合せは1(動脈側圧上昇—ダイアライザ内血液凝固)と5(漏血—膜破損)である。
選択肢別解説
正しい。ダイアライザ内の血液凝固により膜抵抗が増加し、一定流量で送るローラポンプ下ではダイアライザ入口(動脈側)圧が上昇する。患者監視装置の動脈側圧監視はこの上昇を検知する。
誤り。脱血不良はポンプへ流入する血液が不足する事象で、回路流量が低下し、静脈側圧はむしろ低下するのが一般的である。静脈側圧の上昇は返血側回路の屈曲・閉塞や静脈側回路内凝固、返血針位置不良などが原因となる。
誤り。透析液圧の上昇は透析液回路の閉塞やフィルタ詰まり、バルブ異常などで生じる。給水圧低下は通常、透析液供給不足を招き、透析液圧や流量は低下方向となり、別の低圧・供給異常警報が対象となる。
誤り。気泡混入は動脈側接続の緩みや陰圧側からの空気吸入、透析液側の脱気不良などが主因である。返血針(静脈針)脱落は静脈側圧の急低下や体外への血液漏出を起こすが、気泡検知の直接原因とはなりにくい(気泡検知器は患者返血前の静脈側回路に設置されるため、針脱落はその下流で発生する)。
正しい。ダイアライザの膜破損により血液が透析液側へ漏れると、監視装置の漏血検知器(光学式など)が感知して警報する。
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解説
呼吸補助とは、血液の酸素化と二酸化炭素除去(ガス交換)を体外で代行できることを指し、膜型人工肺をシステムに含むことが必須である。PCPS(経皮的心肺補助)は膜型人工肺を備えた体外循環(多くはVA-ECMO相当)でありガス交換が可能、ECMO(体外式膜型人工肺)も膜型人工肺で血液ガスを調整できるため呼吸補助が可能である。一方、IABP、左心バイパス、補助人工心臓(VAD)はいずれも循環補助を目的とし、通常は人工肺を組み込まないため呼吸補助は行えない。したがって該当するのはPCPSとECMOである。
選択肢別解説
IABP(大動脈内バルーンパンピング)は拡張期圧上昇と収縮期後負荷軽減により冠灌流改善・心仕事量低減を図る循環補助であり、人工肺を用いないためガス交換を行えず、呼吸補助はできない。
左心バイパスは左房(または肺静脈)から脱血し末梢動脈へ送血する部分体外循環で、通常は膜型人工肺を含まず血液の酸素化・CO2除去は行わない。したがって呼吸補助はできない。
PCPS(経皮的心肺補助)は遠心ポンプと膜型人工肺を含む体外循環で、血液の酸素化・二酸化炭素除去が可能である。よって呼吸補助ができる。
ECMO(体外式膜型人工肺)は膜型人工肺で体外ガス交換を行うシステムであり、VV-ECMO・VA-ECMOのいずれでも酸素化・CO2除去が可能である。したがって呼吸補助ができる。
補助人工心臓(VAD)は心室から脱血し動脈へ送血するポンプで循環補助を目的とし、通常は膜型人工肺を含まないためガス交換を行えず、呼吸補助はできない。
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解説
血液透析は半透膜を介した拡散と、陰圧や膜間圧差を用いた限外濾過により、体液の量と組成を腎臓の代謝・排泄機能に近づける治療である。具体的には、過剰水分は限外濾過で除去し、尿素などの低分子尿毒素やカリウムは透析液との濃度勾配による拡散で除去する。また、重炭酸を含む透析液により体内にHCO3−が補給され、代謝性アシドーシスが是正される。一方、免疫グロブリンは高分子タンパク(例:IgG約150 kDa)であり、通常の血液透析膜の孔径では透過せず、目的にも含まれない。免疫グロブリンの除去には血漿交換や免疫吸着などの血漿療法が適応となる。したがって、本問で誤り(目的ではない)は「免疫グロブリンの除去」である。
選択肢別解説
適切。体液過剰(浮腫や高血圧、心不全増悪の一因)に対して、透析器膜に生じさせた透膜圧(TMP)で限外濾過を行い水分を除去するのが血液透析の重要な目的である。
適切。腎不全では酸の排泄や重炭酸再吸収が障害され代謝性アシドーシスとなる。重炭酸を含む透析液を用いることでHCO3−が血中に補給され、酸塩基平衡が是正される。
適切。高カリウム血症の是正は血液透析の主要目的の一つで、血液と低カリウム濃度の透析液との濃度勾配を利用した拡散により血清カリウムを低下させる。
適切。尿素(約60 Da)をはじめとするクレアチニン、尿酸などの低分子尿毒素は拡散で効率よく除去され、尿毒症症状の改善に寄与する。
不適切(本問の正答)。免疫グロブリンは高分子タンパク質で通常の血液透析膜では透過しないため、血液透析の目的には含まれない。これらを除去する必要がある病態では、血漿交換(PE)、二重濾過血漿交換(DFPP)や免疫吸着などの血漿療法を用いる。
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解説
透析装置(コンソール)には、患者安全に直結する監視・制御系が標準で組み込まれる。透析液系では電導度(濃度)・温度・圧力・流量、血液系では気泡検出などを連続監視し、除水量は装置内の除水制御機構で精密に管理される。一方、透析液の浸透圧は理論上重要だが、装置内で連続的に浸透圧を直接測定する「透析液浸透圧計」は一般に組み込まれない。透析液濃度管理は主として電導度計で代替でき、浸透圧の確認は必要に応じてオフライン(検査室のオスモメータ)で行うのが通常だからである。
選択肢別解説
電導度計は透析液の電解質濃度(A液・B液と水の混合比)を連続監視するためにコンソールへ組み込まれている。異常時には警報や供給停止で患者の高Na/低Naなどの電解質異常や溶血リスクを防ぐため、必須の安全監視項目である。したがって『組み込まれていない』には該当しない。
気泡検出器(超音波式など)は血液回路内の空気混入を検知し、検知時には血液ポンプ停止や静脈側クランプ作動で空気塞栓を防止する。透析コンソールに標準搭載される安全機構であり、組み込まれている。
透析液温計はヒータ制御と連動して透析液温度を監視・制御するために組み込まれている。通常36~38℃程度に維持し、過昇時は警報や供給停止(例:41℃以上で停止)などが作動する。ゆえに『組み込まれていない』には当たらない。
除水制御装置は設定した除水量・除水速度を実現するためにコンソール内に搭載される。国内装置ではバランシングチャンバを用いた閉鎖式容量制御法(容量平衡方式)が主流で、限外濾過量を高精度に制御する。したがってこれは組み込み機構である。
透析液浸透圧計は通常の透析コンソールには組み込まれない。浸透圧は全溶質(電解質・ブドウ糖など)に依存するが、臨床では透析液濃度管理を電導度計で連続監視するのが一般的であり、浸透圧の連続直測は行わないためである。よって設問で問う『組み込まれていない』に該当する。
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解説
$人工心肺(CPB)中の高カリウム血症は、保存血(赤血球液)由来のカリウム負荷や溶血、腎血流低下に伴う排泄低下、代謝性アシドーシスによる細胞外移動などで起こりやすい。保存赤血球は貯蔵障害(storage lesion)によりバッグ内K濃度が上昇し、赤血球液で回路を充填すると初期にカリウムが一括負荷となる。また代謝性アシドーシスでは細胞内から細胞外へK\^+が移動し血中濃度が上がる。対照的に、インスリンはK\^+を細胞内へ取り込ませ(しばしばブドウ糖併用)、フロセミドは腎からのK排泄を増やし、いずれも血中Kを低下させる。カルシウムは高K血症時の膜安定化に用いられるが血中K濃度そのものは上げない。よって「赤血球液充填」と「代謝性アシドーシス」が上昇要因に該当する。$
選択肢別解説
$正しい。保存赤血球(赤血球液)には貯蔵中にバッグ内へ漏出したK\^+が蓄積しており、人工心肺回路の充填に用いると初期に血中Kが上昇し得る。加えて保存期間が長いほどK濃度は高く、溶血が加わると一層Kが放出される。$
誤り。カルシウム製剤は高カリウム血症に伴う心筋の興奮性増大を抑えて膜安定化を図る対症療法であり、血中K濃度を上昇させない(K濃度自体に有意な低下・上昇作用はない)。
$誤り。インスリンはNa\+/K\+-ATPアーゼ活性化などを介してK\^+を細胞内へ移動させ、血中K濃度を低下させる目的で用いられる(低血糖予防にブドウ糖併用)。$
誤り。フロセミドはヘンレ上行脚のNa–K–2Cl共輸送体を阻害して利尿を促し、腎からのK排泄を増やすため、血中Kは低下方向に働く。
$正しい。代謝性アシドーシスでは細胞外H\^+増加の代償としてK\^+が細胞外へ移動し、血中K濃度が上昇する(一般則として出題される)。$
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解説
膜型人工肺では、炭酸ガス除去(PaCO2の調節)は主として吹送(スイープ)ガス流量に依存し、酸素化(PaO2の調節)は主として吹送酸素濃度(FDO2)に依存するのが基本原則である。吹送ガス流量を増やすとガス側のCO2分圧が低く保たれ拡散勾配が大きくなるためCO2除去が促進し、動脈血二酸化炭素分圧 $\text{PaCO}_2$ は低下する。一方、吹送酸素濃度を下げるとガス側の酸素分圧が低下して酸素拡散勾配が小さくなり、動脈血酸素分圧 $\text{PaO}_2$ は低下する。吹送ガス流量を減らすことは一般にガス交換全体(CO2除去・酸素化)の効率を下げる方向に働くため、$\text{PaO}_2$ を上昇させる操作にはならない。吹送酸素濃度の変更はCO2除去に本質的影響を与えない。酸素化が改善すれば、組織酸素需要が一定であれば混合静脈血酸素分圧 $\text{P}\overline{\text{v}}\text{O}_2$ はむしろ上昇しやすい。
選択肢別解説
誤り。吹送ガス流量を減らすとガス側での交換が停滞し、CO2除去能だけでなく酸素化能も低下する方向に働くため、$\text{PaO}_2$ が上昇するとはいえない(血液流量・膜性能一定の前提)。実臨床では不十分なスイープでは酸素拡散勾配も低下しうるため、$\text{PaO}_2$ は維持もしくは低下しやすい。
正しい。吹送(スイープ)ガス流量を増やすとガス側CO2分圧がゼロ近傍に速やかに保たれ、血液-ガス間のCO2拡散勾配が増大するためCO2除去が促進し、$\text{PaCO}_2$ は低下する。
正しい。吹送酸素濃度(FDO2)を下げるとガス側の酸素分圧が低下し、酸素の拡散駆動力が小さくなるため酸素化が低下し、$\text{PaO}_2$ は低下する。
誤り。$\text{PaCO}_2$ は主に吹送ガス流量に依存する。吹送酸素濃度を上げてもガス側CO2分圧はもともとゼロ近傍であり、CO2の拡散駆動力はほぼ変わらないため、$\text{PaCO}_2$ が上昇することはない(実質的変化はほぼ無し)。
誤り。吹送酸素濃度を上げて酸素化が改善すると、酸素供給が相対的に増え組織酸素需要が一定であれば静脈血側に戻る酸素分圧は上昇し、混合静脈血酸素分圧 $\text{P}\overline{\text{v}}\text{O}_2$ は低下ではなく上昇しやすい。
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