臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
体外循環中に貯血槽レベルが急激に低下した場合、最優先は貯血槽の空化と空気誤送(空気塞栓)を防ぐことと、脱血不良の原因を直ちに特定・是正することである。代表的原因は、脱血回路の屈曲・クランプの閉め忘れ・接続緩み、静脈カニューレの位置異常や先当たり、体位変化や胸腔内圧変化による静脈還流低下、生体循環血液量の不足(出血・蒸発・第三腔移行など)である。対応は、(1) 脱血回路と静脈カニューレ周辺の物理的トラブルを即時に点検・是正する、(2) 循環血液量不足が疑われる場合はバランス型晶質液(例:乳酸加リンゲル液)で急速補液して貯血槽レベルと脱血量を回復させる、(3) 貯血槽の空化を避けるため一時的に送血流量を下げ、必要に応じて部分体外循環へ移行する、が基本である。左房ベント挿入は左心系うっ血・過伸展対策であり本事象の初期対応ではない。血管収縮薬は血圧調整の手段で、脱血不良や低レベルの直接原因を解決しないため適切な初期対応とはいえない。
選択肢別解説
正しい。脱血回路の屈曲・狭窄、クランプ閉鎖、接続部の陰圧リーク、静脈カニューレの位置異常や先当たりなどは急激な貯血槽レベル低下の主要因であり、最初に機械的・物理的要因を確認して是正する。VAVD使用時は陰圧の過大設定も見直す。
正しい。循環血液量不足(出血・希釈・第三腔移行など)による脱血不良が疑われる場合、乳酸加リンゲル液などの晶質液を貯血槽へ急速補液し、貯血槽レベルと脱血量を回復させる。過度の希釈には留意しつつ、空化防止のための即効的手段として有効。
正しい。貯血槽が空に近づくと空気誤送の危険が高まるため、一時的に送血流量を低減して貯血槽からの引き出し量を抑え、レベル回復までの安全余裕を確保する。部分体外循環への移行や一時停止を含め、術野と連携して空化を回避する。
誤り。左房ベントは左室の過伸展・うっ血対策や大動脈閉鎖不全時の左心系減圧に用いる。貯血槽レベル低下(脱血不良)の直接的・初期的対応ではなく、原因是正(脱血回路確認・補液・送血流量調整)が優先となる。
誤り。血管収縮剤は主に灌流圧(血圧)の調整目的であり、脱血回路トラブルや循環血液量不足といった貯血槽レベル低下の直接原因を解決しない。初期対応としては不適切で、まず機械的確認・補液・送血流量調整を行うべきである。
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解説
$体外循環中の至適灌流量(灌流指数)は、生体の酸素消費量と温度に依存して設定する。一般的な成人では、常温(あるいは軽度低体温上限)ではおおむね2.2〜2.6 L/min/m^2程度、軽度〜中等度低体温ではこれより低めで十分となる。常温の方が代謝率 \cdot 酸素消費量が高いため、低体温時より灌流量を高めに設定するのが基本である。乳幼児は体表面積当たりの酸素消費量が高く、成人より高い灌流指数が必要となる。また至適灌流圧は、平均動脈圧で概ね60〜80 mmHgを目安に維持し、少なくとも50 mmHgを下回らないよう注意する。腎機能低下例など臓器灌流を重視すべき症例では、灌流量や灌流圧をやや高めに維持して臓器保護を図る。$
選択肢別解説
$不正解。正常生体の心拍出量指数は約3.0 L/min/m^2だが、体外循環中は酸素消費量に見合う流量を設定し、常温〜軽度低体温の成人では一般に2.2〜2.6 L/min/m^2程度で管理されることが多い。常に3.0 L/min/m^2を維持する必要がある、という言い方は過大で不適切。$
正解。体温が高いほど代謝率・酸素消費量が増えるため、常温体外循環では低体温時よりも灌流量を高めに設定して酸素供給を確保する。
不正解。腎機能低下例では腎灌流を確保する目的で、灌流量や灌流圧を通常よりやや高めに維持することが臓器保護の観点から推奨される。低めに設定するのは不適切。
不正解。乳幼児は体表面積当たりの酸素消費量が高く、必要な灌流指数は成人より大きい。したがって『成人の方が大きくなる』という記載は誤り。
不正解。体外循環中の至適灌流圧は平均動脈圧で概ね60〜80 mmHgが目安で、少なくとも50 mmHgを下回らないようにする。100 mmHgを下回らないことを必須とするのは高すぎる基準で一般的でない。特別な高リスク例を除き、過度な高圧は不要である。
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解説
PCPS(経皮的心肺補助:V-A ECMO)は、遠心ポンプと膜型人工肺を用いて体循環とガス交換を一時的に代行・補助する体外循環装置であり、主目的は流量(循環血流と酸素化)の補助である。多くは大腿静脈脱血―大腿動脈送血の逆行性送血で運用される。カニュレーションは経皮的に行うため通常は局所麻酔で施行可能で、全身麻酔は必須ではない。体外循環である以上、血栓形成防止のためヘパリン等を用いた抗凝固療法が必要で、ACTは一般に延長域(例:180~220秒程度)で管理される。ポンプは通常、非拍動流の遠心ポンプを用いる。大腿動脈からの逆行性送血は左心系の後負荷をむしろ増大させ得るため、状況によりIABP併用や左心系の減負荷対策が検討される。
選択肢別解説
誤り。PCPSの主目的は流量補助(循環維持と酸素化の代行)であり、圧補助を主目的とする装置ではない。圧補助はむしろIABPの概念に近い。PCPSは遠心ポンプと人工肺で体外循環を構成し、必要流量を供給する。
正しい。PCPSのカニュレーションは経皮的に行えるため、通常は局所麻酔と鎮静で対応可能であり、全身麻酔は必須ではない(緊急時や状況により全麻となる場合はあるが、要件ではない)。
正しい。PCPSは体外循環であり血栓形成のリスクが高いため、ヘパリン等による抗凝固療法が必要となる。ACTは一般に延長域(例:180~220秒程度)で管理する運用が行われる。
誤り。PCPSでは通常、非拍動流の遠心ポンプを使用する。拍動流ポンプは一般的ではない。
誤り。大腿動脈からの逆行性送血は左心室に対する後負荷を増大させ得るため、左心系の後負荷を軽減する装置ではない。必要に応じてIABP併用や左心系の減負荷手段を検討する。
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解説
透析用水処理は、原水の懸濁物を除去するプレフィルタ(沈殿フィルタ)、硬度成分(Ca2+・Mg2+)をNa+と交換してスケールを防ぐ軟水装置(陽イオン交換樹脂)、遊離塩素やクロラミン等を除去する活性炭吸着装置を経て、逆浸透膜(RO)でイオン・有機物・微生物・エンドトキシンを高度に除去するのが標準的構成である。軟水化に用いるのは陽イオン交換樹脂であり、陰イオン交換樹脂は透析用水処理の工程には通常組み込まれないため、『用いない』に該当する。
選択肢別解説
$陰イオン交換樹脂は陰イオン(Cl-、SO4^2- 等)を交換除去するが、透析の水処理工程では標準的に採用されない。軟水化には陽イオン交換樹脂を用い、全溶解塩の除去はROで行うため、陰イオン交換樹脂は不要であり『用いない』が正しい。$
沈殿フィルタ(プレフィルタ)は原水中の懸濁物・粒子状物質を捕捉し、後段の活性炭やRO膜の負荷を低減する目的で使用されるため、用いる。
逆浸透膜(RO)は水処理システムの中核で、溶解性イオン・有機物・細菌・エンドトキシンなどを高度に除去するため必須であり、用いる。
軟水装置は陽イオン交換樹脂でCa2+・Mg2+をNa+に置換し、RO膜へのスケール付着を防ぐために用いる。
活性炭吸着装置は遊離塩素・クロラミン等の酸化性物質や有機物を除去してRO膜や下流装置を保護するために用いる。
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