臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
人工心肺からの離脱では、心機能・循環が自力で維持できることを客観指標で確認する。代表的な目安として、混合静脈血酸素飽和度(SvO2)≧60%、左房圧(またはPCWP)≲15 mmHg(望ましくは10〜12 mmHg)、中心静脈圧(CVP)は過度に高くない(概ね5〜12 mmHg程度)ことが挙げられる。SvO2は全身酸素供給と消費のバランスの指標で、60%以上なら心拍出量が不足していない可能性が高い。左房圧やCVPが高すぎる場合は心不全や容量過剰を示唆し、離脱条件として不適切である。カニューレ抜去は安全性と再立ち上げの容易さから、一般に脱血(静脈)カニューレを先に、送血(動脈)カニューレを最後に抜去する。ベンティング(左室ベント等)は心内脱気が完了し自発駆出が安定した時点で停止し、離脱後まで継続はしないのが原則である。
選択肢別解説
正しい。SvO2は全身の酸素供給と消費のバランスを示す指標で、離脱時の目安としておおむね60%以上が望ましい。60%未満は心拍出不足や酸素供給不足を疑う。
正しい。離脱時の左房圧(あるいはPCWP)は過度に高くないことが重要で、15 mmHg以下(できれば10〜12 mmHg程度)が目安とされる。高値は左心不全や容量過剰を示唆し、離脱条件として不適切。
誤り。CVPが15 mmHg以上は右心負荷や容量過剰を示唆し離脱には不適切。一般にCVPは5〜12 mmHg程度が目安で、少なくとも15 mmHg以下にコントロールされていることが望ましい。
誤り。一般的には脱血(静脈)カニューレを先に抜去し、送血(動脈)カニューレは最後に抜去する。送血を先に抜くと再立ち上げが困難になり、安全性の面でも推奨されない。
誤り。ベンティングは心内の脱気完了と自発駆出の安定を確認した時点で停止する。離脱後まで継続すると左室虚脱や空気混入のリスクがあり不適切。
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解説
透析回路の静脈圧は、主に(1)静脈圧センサより下流(センサ→静脈針→血管)側の抵抗と(2)体外循環血流量QBによって規定される。静脈圧下限警報は、回路抵抗の急低下(静脈針の脱落や回路解放など)やQB低下(脱血不良、動脈側の折れ曲がり・狭窄)で生じやすい。一方、静脈側ドリップチャンバ内の凝固や静脈側回路の閉塞は下流抵抗を増やし静脈圧を上昇させるため、低下の原因にはならない。本問で「原因として考えられない」のは、静脈側ドリップチャンバ内の血液凝固(選択肢3)である。
選択肢別解説
脱血不良では動脈側から十分に血液を引けずQBが低下する。QBが下がると回路内の摩擦損失が減り、静脈圧も低下しやすい。したがって静脈圧下限警報の原因として考えられる。
ダイアライザ内の凝固はダイアライザの圧力損失を増大させ、状況によっては有効QBが低下し静脈圧が低下することがある(ローラポンプのスリップや保護制御の介入、実流量低下など)。よって静脈圧低下の一因となり得る。一方で一般的記述としては静脈側回路の凝固は静脈圧上昇の原因として扱われる点に注意が必要である。
静脈側ドリップチャンバ内の凝固は、静脈圧センサより下流側の流路抵抗を増大させるため、静脈圧を上昇させる典型的原因である。静脈圧低下の原因としては考えられない。
動脈側回路の折れ曲がりは脱血不良を招きQBが低下する。QB低下により回路内圧損が減り静脈圧は低下するため、静脈圧下限警報の原因となり得る。
静脈側回路の穿刺針が血管から脱落すると回路が開放され実効抵抗が急減し、静脈圧は急激に低下する。大量出血の危険が高く、直ちに送血停止・回路遮断などの対応が必要となる。
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解説
人工呼吸器の使用前点検では、呼吸回路のリーク確認(自動自己診断の活用を含む)、トリガ感度の動作確認、警報(回路離脱・高低圧など)の作動確認、そして停電時に備えたバッテリーへの切替確認が基本である。誤っているのは「加温加湿器に適量の生理食塩液を入れる」で、加温加湿器の補給水は精製水または滅菌蒸留水を用いる。生理食塩液は塩分により析出・スケール形成やセンサー不良の原因となり、エアロゾル化した塩が気道刺激となるおそれがあるため不適切である。
選択肢別解説
正しい。多くの人工呼吸器は回路リークやコンプライアンスを評価できる自己診断(セルフテスト)機能を備え、リークテストに活用する。手動点検の場合もYピースを閉鎖し圧の保持低下がないかを確認する。
正しい。テスト肺を接続し、圧トリガであれば陰圧、フロートリガであれば流量変化を与えて、設定感度で補助換気が開始することを確認する。過敏すぎない/鈍すぎない範囲で反応することが重要。
正しい。テスト肺を外すことで回路離脱を模擬し、低圧(回路離脱)アラームが速やかに発報し、音量・表示が適切であることを確認するのは警報点検の基本である。
正しい。バッテリー内蔵機では商用電源プラグを抜いて自動的にバッテリー駆動へ切り替わること、警報・換気が継続すること、残量表示が適正であることを患者接続前の安全な環境で確認する。
誤り。加温加湿器の補給水に生理食塩液は使用しない。精製水または滅菌蒸留水を用いる。生理食塩液は塩分が加温加湿器や回路内で析出しスケール化して故障やセンサー誤作動を招きやすく、エアロゾル化した塩による気道刺激の懸念もあるため不適切である。
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解説
人工鼻(HME: Heat and Moisture Exchanger)は、呼気に含まれる水分と熱をフィルタ材に一時的に保持し、次の吸気で再放出して加温加湿を行う受動型デバイスである。利点は、ヒータやヒータワイヤ、温度プローブ、ウォータートラップなどを要しないため回路構成が簡素になる点である。一方で、接続部に追加される内部容量の分だけ機器的死腔が増加し、換気条件によってはCO2貯留のリスクがある。分泌物(喀痰・血液)で目詰まりや抵抗上昇を起こしやすく、喀痰が多い症例には不適である。加温加湿器との併用は水蒸気凝縮や目詰まり・抵抗上昇を招くため原則禁忌である。また、能動的に加熱しないため気道熱傷は通常問題とならず、むしろ加湿不足に注意する。以上より、「呼吸回路はシンプルになる」が正しい。
選択肢別解説
不正解。人工鼻はYピースと人工気道の間に装着されるため、その内部容量分だけ機器的死腔が増加する。したがって死腔は減少せず、むしろ増える方向に働き、条件によってはCO2貯留のリスクとなる。
不正解。喀痰や血液などの分泌物が人工鼻の素子に付着すると目詰まりや吸気・呼気抵抗の上昇、換気不良を招く。分泌量が多い症例には適さず、一般に使用は避ける。
正解。人工鼻は受動型で、ヒータ、ヒータワイヤ、温度プローブ、ウォータートラップなどを必要としないため、加温加湿器を用いる場合に比べて呼吸回路の構成がシンプルになる。交換・管理も比較的容易である。
不正解。加温加湿器との併用は、過剰な水分負荷で人工鼻素子の目詰まりや抵抗上昇を招くため禁忌とされる。いずれか一方を選択して用いるのが原則である。
不正解。人工鼻は能動的な加熱を行わず、呼気の熱・水分を再利用する受動加湿のため、ヒータ故障などで起こりうる気道粘膜熱傷は通常問題とならない。むしろ加湿不足や抵抗上昇に注意する。
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解説
吸着型酸素濃縮器(PSA方式)は、ゼオライトに空気中の窒素(および水蒸気)を優先的に吸着させて酸素を相対的に高める装置である。コンプレッサで加圧した空気を吸着筒に導入し、窒素を吸着させたのち、バルブ切替と減圧で吸着材を再生するサイクルを交互に行う。濃縮された酸素はサージ(貯蔵)タンクに一時貯留して脈動を平滑化した後に供給される。吸着過程で水蒸気も除去されるため生成ガスは乾燥しており、臨床では加湿が必要となる。医療用在宅酸素向け機器の酸素濃度は一般に約90~95%を上限とし、50%上限という記述は不適切である(流量を上げると濃度は低下傾向)。
選択肢別解説
正しい。PSA酸素濃縮器はゼオライト(アルミノ珪酸塩)の選択吸着性を利用し、窒素を優先的に吸着して酸素濃度を高める。
正しい。コンプレッサで空気を加圧し、吸着筒に送り込むことで窒素の吸着が進む。圧力変化を利用することがPSA方式の基本。
正しい。ゼオライトは水蒸気も吸着するため、濃縮後のガスは乾燥している。臨床供給時には加湿器の併用が推奨される。
正しい。濃縮酸素はサージ(貯蔵)タンクに一時蓄えられ、濃度や流量の脈動を平滑化してから患者へ供給される。
誤り。医療用吸着型酸素濃縮器の酸素濃度上限は一般に約90~95%であり、50%程度というのは低すぎる。流量増加で濃度は下がるが、上限値として50%は不適切。
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解説
医薬品医療機器等法(旧薬事法)に基づき、医療機器はリスクに応じて一般医療機器(クラスI)、管理医療機器(クラスII)、高度管理医療機器(クラスIII・IV)に分類される。人工呼吸器、人工心肺装置、輸液ポンプ、除細動器はいずれも重篤な転帰に直結し得るため高度管理医療機器(多くはクラスIIIまたはIV)に位置づけられる。一方、自動電子式血圧計は管理医療機器(クラスII)であり、高度管理医療機器ではない。したがって「高度管理医療機器でない」ものは自動電子式血圧計である。
選択肢別解説
人工呼吸器は生命維持に直結する機器で、重大な危害を招き得るため高度管理医療機器(クラスIIIまたはIV)に分類される。よって設問の「高度管理医療機器でない」には該当しない。
人工心肺装置は循環・呼吸機能を代行する極めて高リスク機器であり、高度管理医療機器(通常クラスIV)に分類される。したがって「高度管理医療機器でない」には該当しない。
自動電子式血圧計は一般に管理医療機器(クラスII)であり、高度管理医療機器ではない。よって本問で問う「高度管理医療機器でない」に該当する。
輸液ポンプは薬液や輸液を一定速度で体内に注入する機器で、過量・過少投与が重篤な転帰につながり得るため、高度管理医療機器(多くはクラスIII)に分類される。したがって「高度管理医療機器でない」には該当しない。
除細動器は致死的不整脈に対し電気ショックを与える高リスク機器で、高度管理医療機器(通常クラスIV)に分類される。よって「高度管理医療機器でない」には該当しない。
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解説
用手換気器具の代表は自己膨張式のバッグバルブマスク(BVM)と、非自動膨張式のジャクソンリース回路(Mapleson F)である。BVMは酸素供給がなくても大気を取り込んでバッグが膨張し換気できるが、バッグの弾性や一方向弁の介在により、加圧時の感触から患者の肺コンプライアンスを正確に把握するのは難しい。ジャクソンリース回路は新鮮ガス流(一般に分時換気量の2〜3倍程度)が必要で、弁機構がないため流量が不足すると患者呼気がバッグに混入し再呼吸が増える。一方でバッグ越しの抵抗感から肺の硬さを把握しやすい。感染対策としては、いずれの回路でも患者側にバクテリアフィルタを装着することが推奨される。以上より、正しい記述は「ジャクソンリース回路は患者呼気がバッグに混入する」である。
選択肢別解説
誤り。バッグバルブマスク(BVM)は自己膨張式であり、酸素供給がなくても大気を取り込んでバッグは膨張し換気が可能である。酸素を併用すれば高いFiO2が得られるが、膨張自体に酸素供給は必須ではない。
誤り。BVMはバッグの弾性と一方向弁の影響が大きく、加圧時の感触から患者の肺コンプライアンス(硬さ)を評価することは一般に困難である。肺の硬さを触知しやすいのは非自動膨張式のジャクソンリース回路である。
誤り。ジャクソンリース回路でも感染予防のため、気管チューブ(またはマスク)と回路の間にバクテリアフィルタ(HMEF等)を装着することが推奨される。不要とはいえない。
正しい。ジャクソンリース回路は弁機構をもたないため、新鮮ガス流が不足すると患者の呼気がバッグに混入しやすく、再呼吸が生じる。再呼吸防止には分時換気量の2〜3倍程度の新鮮ガス流が必要とされる。
誤り。ジャクソンリース回路は非自動膨張式であり、バッグを膨らませ換気を維持するには酸素などの新鮮ガス供給が不可欠である。新鮮ガス源がなければ使用できない。
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解説
血液透析回路に空気が混入した場合は、まず患者への空気流入を直ちに止めることが最優先であり、返血(静脈側)回路を遮断し血液ポンプを停止する。そのうえで、右心系に入った空気が肺動脈流出路へ移動しないよう左側臥位+頭低位(トレンデレンブルグ体位、Durant体位)をとらせて右心室前壁側に空気をトラップさせる。呼吸管理として高濃度酸素投与を行い、低酸素血症の改善と窒素洗い出しによる気泡縮小を図る。抗凝固薬の増量や血液回路の冷却は空気塞栓対策としては無効・不適切であり推奨されない。重症例では専門的判断の下で高圧酸素療法等が検討されるが、本設問の対応としては前述の遮断・体位管理・酸素投与が基本である。
選択肢別解説
正しい。空気塞栓が疑われる場面では高濃度酸素投与により低酸素血症を是正し、体内窒素分圧を低下させることで気泡から窒素を拡散させ、気泡の縮小・再吸収を促す(窒素洗い出し効果)。
正しい。左側臥位かつ頭低位(トレンデレンブルグ体位、Durant体位)は、右心室前壁側に空気をトラップさせて肺動脈流出路への移動を抑制し、致死的不整脈や肺循環障害を防ぐ目的で用いられる。
誤り。抗凝固薬を増量しても空気塞栓の除去・進展防止には寄与しない。むしろ出血リスクを高め得るため不適切であり、空気混入時の初期対応には含まれない。
誤り。血液回路の冷却は空気塞栓の本質的対処にならず、患者低体温や血液への有害影響の懸念がある。優先すべきは空気の流入遮断、体位管理、酸素投与である。
正しい。患者への空気流入を直ちに止めるため、返血(静脈)側回路を遮断し、血液ポンプも停止する。これにより患者体内への追加空気侵入を防ぐ。
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