臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
人工心肺(体外循環)では、血液が人工材料に接触し、機械的せん断や希釈、低体温管理、虚血再灌流などの影響を受ける。これにより血小板は吸着・活性化・消費・希釈で減少し、白血球活性化を介してIL-6などの炎症性サイトカインが放出される。また低体温やストレスホルモン優位により膵β細胞のインスリン分泌は抑制され高血糖傾向となる。一方、赤血球は回転ポンプや回路内での物理的ストレスにより溶血を生じ、血清遊離ヘモグロビンは増加するため「低下」は誤り。心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は心房伸展で分泌が増すホルモンであり、体外循環全体で一様に低下するとは言えない。特に大動脈遮断解除後や前負荷増大時に上昇がみられる報告があり、「低下する」と断定する記載は不適切である。
選択肢別解説
正しい。体外循環中は血液希釈、回路・酸素atorへの吸着、機械的ストレスによる活性化と消費により血小板数が低下する。術後早期に出血傾向の一因となり得る。
正しい。低体温管理や手術ストレスに伴うカテコラミン・グルカゴン上昇などにより、膵β細胞のインスリン分泌は抑制され相対的不足となり高血糖傾向を示す。よって体外循環中のインスリン分泌は減少する。
正しい。血液が人工材料に接触することで補体系や白血球が活性化し、IL-6、TNF-αなどの炎症性サイトカインが放出され全身炎症反応を惹起する。
誤り。体外循環では回路やポンプによる機械的せん断で赤血球溶血が生じ、血清遊離ヘモグロビンは増加する。したがって「低下する」は不正確。
誤り。ANPは心房壁伸展で分泌が増加する。体外循環中に一律の低下はみられず、特に遮断解除後や前負荷が回復・増加する局面で上昇する報告があるため、「低下する」と断定するのは不適切。
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解説
量規定調節換気(VCV)では一回換気量V_Tと(多くの機種で)吸気流量$\dot{V}$が規定され、気道内圧は気道抵抗RとコンプライアンスCにより決まる。概念式はピーク気道内圧について $P_{peak} = \dot{V} \times R + \frac{V_T}{C} + PEEP$。したがって、Rの低下(気管支攣縮の軽快)やCの上昇(無気肺の改善)はP_{peak}の低下をもたらす。また回路やカフからの漏れは、回路内圧が十分に立ち上がらず気道内圧は低く出やすい。一方、気管チューブ先端が片肺へ移動すると実質的に換気対象容積が減少してCが低下し、必要な弾性圧が増加するため気道内圧は上昇する。よって、気道内圧低下の原因としては誤りである。
選択肢別解説
無気肺の改善により肺胞の開存が増え、肺胸郭コンプライアンスCが上昇する。量規定では $P_{elastic} = \frac{V_T}{C}$ が低下し、ピーク気道内圧も低下する。従って「気道内圧低下の原因」として妥当。
気管支攣縮の軽快で気道抵抗Rが低下する。量規定・一定流量下では抵抗成分 $\dot{V} \times R$ が小さくなり、ピーク気道内圧は低下する(プラトー圧はCが不変なら大きくは変わらない)。よって気道内圧低下の原因で正しい。
$呼吸器回路からのガス漏れがあると、設定V_Tを送気しても回路内で漏れ、圧が十分に立ち上がらず測定される気道内圧は低く出やすい(低V_T \cdot リークアラームを伴うことが多い)。従って気道内圧低下の原因となる。$
気管チューブ先端の片肺への移動(片肺挿管)では有効に換気される肺容量が減り、系のコンプライアンスCが低下する。その結果、同一V_Tでは弾性成分 $\frac{V_T}{C}$ が増加し気道内圧は上昇する。よって『気道内圧低下の原因』としては誤り。
$カフからの空気漏れがあると送気ガスの一部が上気道へ逃げ、回路 \cdot 気道内圧の立ち上がりが不十分となるため気道内圧は低下する。低V_Tやリーク音を伴うことが多い。したがって気道内圧低下の原因で正しい。$
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解説
V-A ECMO(PCPS)は静脈脱血・動脈送血で体循環を補助する装置で、回路内凝固防止のため通常はヘパリンによる全身抗凝固を行い、ACTは施設運用で概ね150〜200秒程度を目安に管理する。末梢(大腿)動脈からの逆行性送血は大動脈圧を上昇させ左室の駆出抵抗(後負荷)を増大させる一方、静脈脱血により前負荷はむしろ低下傾向となるため、「前負荷が増える」は誤りである。V-A ECMOでは左室後負荷増大や左室拡張を抑える目的でIABPを併用することがあり、併用は禁忌ではない。ウェットラングは膜型人工肺のガス側で生じる結露・水膜形成によりガス交換能が低下する現象で、膜の劣化等に伴う血漿リークとは別概念である。高度大動脈弁閉鎖不全では逆行性送血が大動脈弁閉鎖不全を介して左室へ逆流し左室負荷が著明に増すため、V-A ECMOは禁忌とされる。以上より、正しいのは1と5。
選択肢別解説
正しい。V-A ECMO(PCPS)では回路内凝固を防ぐため、標準的に未分画ヘパリンを用いた全身抗凝固を行う。管理指標としてACTをおよそ150〜200秒程度に維持する運用が一般的である(施設差あり)。
誤り。末梢V-A ECMOの逆行性送血は大動脈圧を高め、左室の駆出抵抗すなわち後負荷を増大させる。一方、静脈側からの脱血により心臓への還流が減るため、左心室前負荷は通常は低下傾向となる。
誤り。ウェットラングはガス側の結露・水膜形成でガス交換膜のガス側孔が水で覆われ、酸素加や二酸化炭素除去能が低下した状態を指す。血漿リークは膜材の劣化や親水化などで血漿成分がガス側に漏出する現象であり、ウェットラングとは別の機序である。
誤り。IABP併用は禁忌ではない。V-A ECMOで増大した左室後負荷や左室拡張を抑制し、冠灌流を改善する目的でIABPを併用することが多い。臨床的にも併用は一般的に容認・活用されている。
正しい。高度大動脈弁閉鎖不全では、V-A ECMOの逆行性送血が大動脈弁を介して左室内へ逆流し、左室内圧・左室拡張が増大して重篤化しうるため、使用は禁忌とされる。
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解説
体外循環中に大動脈解離が発生した際の原則は、解離の進展を抑えつつ真腔灌流を速やかに確保し、臓器保護を図ることである。具体的には、送血流量を減量または一時停止して灌流圧を下げ、上行大動脈の色調・膨隆・拍動の変化を観察する。経食道心エコー(TEE)で真偽腔、エントリー、カニューレ先端位置を評価し、偽腔送血が疑われる場合は真腔へカニューレを入れ直すか、送血部位(大腿・腋窩など)を変更する。循環停止や追加修復に備えて送血温を下げ低体温化し、代謝と酸素消費を低減して安全域を確保する。一方、送血圧を上げる対応は偽腔への灌流を助長し解離拡大、破裂、臓器虚血を悪化させ得るため不適切である。
選択肢別解説
適切。低体温化は代謝率と酸素消費量を低下させ、循環停止や低流量灌流への移行時の臓器保護に有利である。解離の追加修復(人工血管置換など)を見据えて送血温を下げる判断は妥当。
不適切(誤り)。送血圧を上げると偽腔への灌流が増え、解離が進展・拡大し破裂や臓器虚血を助長する危険がある。対応は送血流量の減量/停止で灌流圧を低下させ、カニューレ位置の再評価と真腔送血の確立である。
適切。偽腔送血は解離を悪化させるため、送血カニューレが真腔に位置するよう再挿入する。必要に応じて送血部位を大腿動脈や腋窩動脈などへ変更し、確実な真腔灌流を確保する。
適切。上行大動脈の色調(赤黒い変化など)、膨隆、拍動性の変化は偽腔灌流や解離進展の重要な手掛かりであり、直視下の確認は早期発見に有用である。
適切。TEEは術中に迅速に実施でき、真偽腔の判別、エントリー部位、カニューレ先端位置、心機能・弁機能評価に有用で、対応方針の決定に不可欠である。
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解説
体外循環では、体温管理と熱交換器の構成が患者の安全に直結する。体温が低下すると代謝は抑制され、酸素消費量はおおむね1℃あたり数%(約5%前後)低下するため、「体温低下で酸素消費量が増加」は誤り。臓器の温度変化は血流分布・熱容量・灌流条件に依存し、脳や心など重要臓器は灌流が優先され温度変化の程度が他部位と異なるため「臓器差がある」は正しい。人工肺の熱交換器は多くの現行機種でステンレス(例:316L)の細管が用いられ、耐食性・熱伝導性・滅菌適合性の点で一般的である。また配置は人工肺(ガス交換器)の上流側に置くのが標準で、血液を所望温度に調整してからガス交換を行う。復温時は熱交換器の温水と血液との温度差を10℃以内に制限するのが原則で、10℃以上の大きな温度差は溶血やタンパク変性等のリスクを高めるため不適切である。
選択肢別解説
誤り。体温が低下すると代謝率が下がり酸素消費量(VO2)は減少する。指標としては1℃低下あたり約5%前後の低下が知られており、低体温法の目的も代謝抑制である。したがって「増加する」は逆。
正しい。各臓器の温度は血流量・熱容量・熱伝導・灌流の優先度に左右されるため、冷却・復温の速度や程度は臓器ごとに異なる。脳・心などは灌流が維持されやすく、末梢や大筋群は温度変化が遅れやすい。
正しい。体外循環用人工肺の熱交換器には、耐食性と熱伝導性、加工性に優れたステンレス細管が広く用いられている(多管式)。一部材料の違いはあるが、ステンレス管の採用は一般的である。
正しい。回路構成は通常、ポンプ→熱交換器→ガス交換器(人工肺)→動脈フィルタ→患者となる。血液を所望温度に調整してからガス交換を行うため、熱交換器はガス交換器の上流側に設置するのが標準である。
誤り。復温時の温水(サイド)と血液との温度差は10℃以内が安全基準とされる。10℃を超える大きな温度差は溶血や血漿タンパク変性、微小気泡発生などのリスクを高めるため避ける。
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