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臨床工学技士国家試験
解説
V-A ECMO(PCPS)は静脈脱血・動脈送血で体循環を補助する装置で、回路内凝固防止のため通常はヘパリンによる全身抗凝固を行い、ACTは施設運用で概ね150〜200秒程度を目安に管理する。末梢(大腿)動脈からの逆行性送血は大動脈圧を上昇させ左室の駆出抵抗(後負荷)を増大させる一方、静脈脱血により前負荷はむしろ低下傾向となるため、「前負荷が増える」は誤りである。V-A ECMOでは左室後負荷増大や左室拡張を抑える目的でIABPを併用することがあり、併用は禁忌ではない。ウェットラングは膜型人工肺のガス側で生じる結露・水膜形成によりガス交換能が低下する現象で、膜の劣化等に伴う血漿リークとは別概念である。高度大動脈弁閉鎖不全では逆行性送血が大動脈弁閉鎖不全を介して左室へ逆流し左室負荷が著明に増すため、V-A ECMOは禁忌とされる。以上より、正しいのは1と5。
選択肢別解説
正しい。V-A ECMO(PCPS)では回路内凝固を防ぐため、標準的に未分画ヘパリンを用いた全身抗凝固を行う。管理指標としてACTをおよそ150〜200秒程度に維持する運用が一般的である(施設差あり)。
誤り。末梢V-A ECMOの逆行性送血は大動脈圧を高め、左室の駆出抵抗すなわち後負荷を増大させる。一方、静脈側からの脱血により心臓への還流が減るため、左心室前負荷は通常は低下傾向となる。
誤り。ウェットラングはガス側の結露・水膜形成でガス交換膜のガス側孔が水で覆われ、酸素加や二酸化炭素除去能が低下した状態を指す。血漿リークは膜材の劣化や親水化などで血漿成分がガス側に漏出する現象であり、ウェットラングとは別の機序である。
誤り。IABP併用は禁忌ではない。V-A ECMOで増大した左室後負荷や左室拡張を抑制し、冠灌流を改善する目的でIABPを併用することが多い。臨床的にも併用は一般的に容認・活用されている。
正しい。高度大動脈弁閉鎖不全では、V-A ECMOの逆行性送血が大動脈弁を介して左室内へ逆流し、左室内圧・左室拡張が増大して重篤化しうるため、使用は禁忌とされる。
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解説
人工心肺ではプライミング液の混入により血液希釈が起こり、ヘマトクリット(Ht)・ヘモグロビン(Hb)が低下する。これにより血液粘稠度が低下して末梢血管抵抗が下がり、微小循環の流れが改善して組織灌流は良好になる。一方で、Hb低下により酸素含量(CaO2)は低下し、酸素運搬能は減少する。膠質浸透圧は血漿蛋白の希釈で低下し、過度の希釈は組織浮腫や低酸素のリスクとなる。溶血は回路・ポンプによる機械的ストレスに依存するが、希釈により粘性や赤血球相互作用が減ることで機械的損傷が相対的に軽減されうる。総合して、「溶血量が軽減する」と「組織灌流(設問の文言は不自然だが意図は灌流)を良好にする」が正しく、酸素運搬能増加・粘稠度増加・膠質浸透圧増加はいずれも誤りである。
選択肢別解説
正しい。血液希釈で血液粘稠度が低下し、回路内のせん断応力や赤血球同士の衝突が減少するため、体外循環に伴う機械的溶血は相対的に軽減されうる。加えて希釈により輸血量を抑制でき、輸血関連の溶血イベントも減らせる。
誤り。血液希釈でHb・Htが低下するため動脈血酸素含量CaO2は低下し、酸素運搬能は減少する。$\mathrm{CaO_2}\approx1.34\times Hb\times SaO_2+0.003\times PaO_2$。粘稠度低下による心拍出量増加で酸素供給$\mathrm{DO_2}=CO\times CaO_2$が部分的に代償されることはあるが、「運搬能が増加」とはいえない。
誤り。希釈によりHtが下がると血液粘稠度は低下する。赤血球濃度とフィブリノーゲン濃度の低下で血液の流動抵抗が減り、微小循環の流れは改善方向に働く。
誤り。血漿蛋白(主にアルブミン)が希釈されるため膠質浸透圧は低下する。これにより間質への水移動が促進され、過度の希釈では組織浮腫の一因となる。なお、膠質製剤でプライミングすれば低下を抑制できるが、一般には増加しない。
正しい。血液希釈で粘稠度が低下し末梢血管抵抗が減少するため、微小循環が改善して組織灌流(組織血流)が良好になる。設問文の「組織血液」は用語として不自然で、意図は「組織血流/組織灌流」と解される。
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解説
透析装置(コンソール)が標準でリアルタイム監視・アラーム管理する代表項目には、血液回路の気泡(空気塞栓防止のための気泡検出器)、動脈圧・静脈圧などの回路内圧、治療計画通りに体液量を調整する除水量(UF量)、そして患者安全のための透析液温度などがある。これらは直接的に重篤な事故(空気塞栓、溶血、回路閉塞等)や治療逸脱を防止する目的で搭載される。一方、透析液や血液中の溶存酸素(設問表記:溶解酸素)をコンソールが常時測定・監視する機構は標準装備ではなく、監視項目には含まれない。したがって『溶解(溶存)酸素量』が不適切(監視項目に含まれない)。
選択肢別解説
気泡は透析装置の必須監視項目。静脈側に超音波式の気泡検出器を配置し、空気塞栓を未然に防止するために検出・遮断・アラームを行う。よって監視項目に含まれる。
除水量(UF量)は治療計画の達成と循環動態の安全確保に直結し、設定値と実測値を装置が監視・制御する。過大・過小除水を避けるための基本監視項目である。
回路内圧(動脈圧・静脈圧、必要に応じてTMPなど)は回路閉塞、穿刺不良、血液凝固、漏血などの異常検知に不可欠で、透析装置の主要監視項目に含まれる。
溶解(溶存)酸素量は透析装置の標準的なリアルタイム監視項目ではない。透析液水質管理では電気伝導率、温度、エンドトキシン・細菌管理などが重視されるが、コンソールにDOセンサを常設して監視するのが一般的というわけではない。よって『監視項目に含まれない』に該当する。
透析液温度は通常約35~38℃に制御され、過加熱は溶血や体温上昇のリスクとなるため、温度センサとアラーム・安全遮断機構により監視される。したがって監視項目に含まれる。
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解説
人工呼吸器の吸気側回路(人工呼吸器本体の送気口からYピースまでの経路)には、患者へ供給するガスの安全・清浄・適切な温湿度を確保するための要素が組み込まれる。典型例として、バクテリアフィルタ、加温加湿器とその制御用の温度センサ、結露対策のウォータートラップなどがある。一方、人工鼻(HME)は加温加湿器の代替として患者側(Yピース直後、気道入口)に装着するもので、加温加湿器を用いる吸気側回路には組み込まない。またカプノメータは呼気ガスのCO2測定を目的とし、主に呼気側回路やYピース付近に装着されるため、吸気側回路の構成要素ではない。したがって吸気側回路に組み込まないのは人工鼻とカプノメータである。
選択肢別解説
人工鼻(HME)は患者の呼気中の水分と熱を利用して吸気を加温加湿するデバイスで、Yピース直後の患者側に装着する。加温加湿器を使用する回路では原則併用せず、吸気側回路の構成要素としては組み込まないため、本設問の条件では「組み込まない」に該当する。
カプノメータは主に呼気終末CO2(PETCO2)を測定する装置で、主流方式は気道アダプタ(Yピース直後)、側流方式は呼気側からサンプリングするのが一般的である。目的・配置から吸気側回路の構成要素とはいえず、「組み込まない」に該当する。
温度センサは加温加湿器の制御や患者側での設定温度維持のために吸気側回路(加湿器出口や患者側近傍)に設置される。吸気ガス温度を監視・制御する必須要素であり、吸気側回路に組み込まれる。
ウォータートラップは加湿後の回路内で生じる結露を回収するため、吸気側回路の低い位置に設置される。患者への水滴流入や回路抵抗上昇を防ぐ目的で吸気側にも組み込まれる。
バクテリアフィルタは送気ガスの微生物・粉塵を除去し、患者への汚染を防ぐために人工呼吸器送気口直後の吸気側回路に配置される。よって吸気側回路に組み込まれる。
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解説
体外循環ではプライミングや輸液により血液が希釈され、血漿蛋白(特にアルブミン)濃度が下がるため膠質浸透圧は低下し、浮腫を助長し得る。体表面積あたりの至適灌流量は代謝需要の高い小児・新生児の方が成人より大きく設定される。低体温は交感神経緊張と末梢血管収縮を介して末梢血管抵抗(SVR)を上昇させる。心停止液(心筋保護液)は高K+・低Ca2+が基本で、Ca2+を積極的に用いて停止させるものではない。ヘパリン中和は一般にヘパリン量に対しプロタミン等量〜1.5倍程度(mg/100 U換算)から開始し、ACTなどで効果を確認しながら調整する。よって1と5が正しく、2〜4は不適切。
選択肢別解説
正しい。体外循環の血液希釈によりアルブミンなどの膠質成分が低下し、血漿膠質浸透圧は下がる。これにより血管内から間質への水移動が増え、浮腫や肺水腫のリスクが高まるため、必要に応じてアルブミンや膠質製剤で補正する。
$誤り。体表面積あたりの灌流量(L/min/m^2)は、小児 \cdot 新生児の方が成人より多く設定されるのが一般的である。小児は代謝率 \cdot 酸素需要が高いため、成人より高い指標流量が必要になる。$
誤り。低体温は交感神経優位と血管平滑筋の収縮をもたらし、末梢血管抵抗を増加させる。したがって低体温によりSVRは通常上昇する。
誤り。心停止液は高K+により脱分極性心停止をもたらし、心筋内Ca2+はむしろ低く抑える(低Ca2+または含有しない設計が基本)。Ca2+を用いて心停止させるわけではなく、高Ca2+は心筋障害のリスクとなる。
正しい。ヘパリン中和は一般に投与したヘパリン量に対してプロタミンを等量〜1.5倍程度(目安として1 mgプロタミン/100 Uヘパリン、状況により最大1.5 mg/100 U)で投与し、ACTなどで過不足を調整する。臨床では初期投与量や総投与量を基準にし、患者の反応で微調整する。
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解説
補助循環の代表であるIABPは、バルーン駆動にヘリウムガスを用いるのが標準で、補助効果(心拍出や心仕事量の改善)は概ね10〜15%程度と限定的である。PCPS(経皮的心肺補助:実質はVA-ECMO)は、循環動態が不安定な高リスクPTCA/PCIの補助手段として広く用いられる。補助人工心臓(VAD)は、連続流型(軸流・遠心)は構造が単純で小型化しやすく、拍動流型より小型の機種が多い。VADの脱血部位は高流量確保の観点から左室心尖部(左室脱血)が一般的で、左房脱血は圧較差やカニューレ制約から高流量に不利である。以上より、正しいのは3と4である。
選択肢別解説
誤り。IABPのバルーン駆動ガスは圧縮空気ではなくヘリウムガスが標準である。ヘリウムは低密度で出し入れが速く、血液への溶解度が低いため、バルーン破損時の塞栓リスクも比較的低い。
誤り。IABPの補助効果は正常心機能の50〜60%に達することはなく、一般に10〜15%程度にとどまる。IABPは後負荷低減と冠灌流増加を目的とした補助であり、PCPSやVADのような大きな拍出補助は期待できない。
正しい。PCPS(経皮的心肺補助、実質はVA-ECMO)は、循環破綻の予防・救済目的でカテーテル治療(PTCA/PCI)時の補助手段として用いられる。高リスクPCIや心原性ショック症例でのバックアップとして一般的である。
正しい。補助人工心臓では、連続流型(軸流・遠心)は駆動部が小型・単純で拍動流型よりも小型化しやすく、移植待機などで広く用いられている。
誤り。高流量を安定して得やすいのは左室心尖部からの脱血(左室脱血)である。左房脱血は圧較差が小さくカニューレ径や位置の制約から脱血効率が劣り、高流量確保に不利となることが多い。
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解説
補助人工心臓(VAD)は重症心不全で自己心だけでは循環維持が困難な際に用いる機械的循環補助で、主な用途は心臓移植までの橋渡し(Bridge to Transplant: BTT)や回復待機(Bridge to Recovery)である。臨床的には左心補助(LVAD)が標準で、両心不全では右心補助を追加する。拍動流型VADは血液の逆流を防いで拍動を作るために一方向性の弁を備える。一方、連続流型(軸流・遠心)は弁や拍動機構を要さず、構造が簡素なため小型化しやすい。脱血部位では、左房は低圧で拍動や壁吸着の影響を受けやすく流量が不安定になりやすいのに対し、左室(心尖部など)からの脱血は安定した高流量を得やすい。以上より、正しいのは1・4・5である。
選択肢別解説
正しい。VADは心臓移植待機患者の循環維持に広く用いられ、典型的な適応の一つがBridge to Transplant(BTT)である。
誤り。左房は低圧で拍動や壁吸着の影響を受けやすく脱血が不安定になりやすい。一般に安定した高流量は左室(心尖部など)からの脱血の方が得やすい。
誤り。VADの主目的は左心補助(LVAD)であり、右心補助は必要時に追加される(RVADやBiVAD)。したがって「右心補助を主目的とする」は不適切。
正しい。拍動流型VADは拍動とともに血液の一方向流を作る必要があるため、逆流防止のための一方向性弁(人工弁)を用いる。
正しい。連続流型(軸流・遠心)は弁や拍動機構が不要で構造が簡素なため、小型・軽量化が進み、拍動流型より小型のものが多い。
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解説
人工心肺(体外循環)では、回路の充填液が体内の循環血液と混ざるため初期に血液希釈が生じる。希釈率は概ね「希釈率=充填液量/(患者循環血液量+充填液量)」で表せ、回路の充填量が患者の循環血液量に対して大きいほど高くなる。血液希釈により血液粘度は低下して末梢循環抵抗が減少する一方、酸素運搬を担う赤血球(ヘモグロビン)が減るため酸素運搬能は低下する。安全側の管理目安としてヘマトクリットはおおむね20%程度(Hb約7 g/dL)を下回らないように運用されることが多い(体温・灌流量・臓器リスクで最適値は変動)。小児では体重あたり循環血液量は大きいものの、回路の相対的充填量が成人より大きくなりやすく、結果として希釈率は高くなる。
選択肢別解説
正しい。希釈率はおおむね「充填液量/(患者循環血液量+充填液量)」で規定されるため、同じ患者で比較すれば充填量の大きい人工心肺ほど希釈率は高くなる。
誤り。小児は体外循環回路の充填量が循環血液量に対して相対的に大きくなるため、成人よりも希釈率は高くなる傾向にある。
誤り。血液希釈の安全側の管理目安は一般にヘマトクリット約20%(Hb約7 g/dL)程度とされることが多く、10%は低すぎて酸素運搬能の著しい低下や臓器虚血のリスクが増す。
誤り。希釈率が高いほど赤血球(ヘモグロビン)濃度が下がるため、酸素運搬能(DO2)は低下する。粘度低下で流れは良くなっても、酸素キャリアの減少が優位となる。
正しい。希釈率上昇により血液粘度が低下し、粘性抵抗が減るため末梢循環抵抗(全身血管抵抗)は減少する。
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