臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
人工心肺(体外循環)中の成人管理目標として、平均動脈圧はおおむね60〜80 mmHg、混合静脈血酸素飽和度(SvO2)は70%以上の維持が推奨される。抗凝固管理では回路内血栓形成を確実に防ぐため、ACTは少なくとも400秒(施設によっては480秒)以上を目標にする。復温時は送血温と脱血温の較差は10℃以内に制限し、過大な温度差は溶血や溶存ガスの析出を招くため避ける。ヘパリン拮抗では硫酸プロタミンは通常、初回ヘパリン量に対し等量〜約1.5倍程度を目安に投与する。したがって本設問では、選択肢3(ACT 200〜300秒)、選択肢4(復温時の温度差を10℃以上)、選択肢5(プロタミンをヘパリン初期投与量の3〜5倍)が誤りであり、選択肢1と2は妥当な操作である。
選択肢別解説
正しい。成人体外循環中の平均動脈圧は一般に60〜80 mmHg程度を目標とする。低すぎると脳・腎などの臓器低灌流を招き、高すぎると後負荷増大や出血傾向を助長するため、適正範囲の維持が重要である。
正しい。混合静脈血酸素飽和度(SvO2)は全身の酸素需給バランスの指標で、70%以上の維持が望ましい。低下時は送血流量の増加、FiO2やヘマトクリット(Hb)の是正、温度管理などで対処し、組織酸素化の不足を是正する。
誤り。体外循環中の抗凝固管理では回路内凝固を確実に防ぐ必要があり、ACTは少なくとも400秒以上(施設によっては480秒以上)に維持する。200〜300秒では抗凝固が不十分となり、回路内血栓形成のリスクが高い。
誤り。復温時の送血温と脱血温の温度差は10℃以内に制限するのが一般的である。10℃以上の較差は溶血や溶存ガスの析出(気泡形成)を助長し、合併症リスクが上がるため不適切である。
誤り。硫酸プロタミンはヘパリン中和比としておおむね1 mgがヘパリン100単位を中和する目安で、初回ヘパリン量の等量〜1.5倍程度で投与調整する。3〜5倍は過量であり、急性低血圧や肺高血圧、出血傾向などの副作用・合併症リスクを高め不適切である。
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解説
膜型人工肺では、均質膜(シリコーン)と多孔質膜(主としてポリプロピレン中空糸)が用いられる。シリコーン膜は気体溶解度の差によりCO₂透過性がO₂より高く、一般に約4~5倍とされる。一方、ポリプロピレン中空糸は機械的強度に優れ薄膜化が可能で、現在の主流である。多孔質膜は微細孔を介するため血液とガスが事実上直接接触し(プラズマリークや微小気泡の管理が課題)、均質膜では固体膜を隔てて拡散する。血液の灌流様式では、内部灌流型(血液が中空糸内を流れる)は層流になりやすく圧力損失は大きい。外部灌流型(中空糸外側を血液が流れる)は混合・乱流化しやすい反面、圧力損失は比較的小さい。以上より、設問の正誤は1・2が正しく、3・4・5は誤りとなる。
選択肢別解説
正しい。シリコーン膜は均質膜で、気体透過性は拡散係数と溶解度に依存する。CO₂はO₂より溶解度が高く、総合的な透過性はO₂の約4~5倍とされるため「CO₂の方が高い」は妥当。
正しい。シリコーン膜は機械的強度が低く薄膜化に限界がある。ポリプロピレン中空糸(多孔質膜)は機械的強度に優れ、薄くしても強度を保ち量産性も高いため、シリコーンより強度面で優れている。
誤り。多孔質膜(microporous)は微細孔を介して血液とガスが実質的に直接接触する(界面は孔内で形成)。そのためプラズマリークや微小気泡管理が課題となる。血液とガスが固体膜で完全に隔てられるのは均質膜(シリコーン)である。
誤り。内部灌流型は中空糸内という狭小・均一な流路を血液が通るため層流になりやすい。乱流化しやすいのは中空糸外の広い空間を血液が流れる外部灌流型である。
誤り。圧力損失は内部灌流型の方が大きい(中空糸内腔が狭い)。外部灌流型は比較的圧力損失が小さいため、記述は逆である。
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解説
体外循環(特に低体温併用)では代謝が抑制され、全身酸素消費量が低下するため、至適灌流量は低く設定でき、末梢での酸素摂取が減ることで混合静脈血酸素飽和度(SvO2)は上昇しやすい。また、回路・人工肺など人工物との接触や希釈、せん断応力、補助循環操作(吸引など)により血小板は消費・破壊され、血小板数は減少する。pH管理では、アルファスタット法は体温補正を行わず低体温下で実際のPaCO2が低めとなり脳血管収縮を来すため脳血流は減少しやすい。一方、血糖については低体温・術侵襲・カテコラミンやコルチゾール上昇、インスリン分泌低下・感受性低下などにより高血糖になりやすく、「血糖値が低下する」は不適切で本問の誤りである。
選択肢別解説
誤り。体外循環(低体温・手術侵襲)ではストレスホルモン(カテコラミン、コルチゾール)上昇、膵β細胞からのインスリン分泌低下や末梢でのインスリン抵抗性により高血糖になりやすい。したがって「血糖値が低下する」は不正確。
正しい。希釈体外循環および人工物表面との接触活性化、せん断応力、サクション等により血小板の消費・破壊・機能障害が生じ、血小板数は一般に減少する。
$正しい。低体温では酸素消費量が温度低下に応じて減少するため、必要酸素供給量も低下し、至適灌流量は低めに設定できる(例:常温時の2.2–2.6 L/min/m^2から低体温でさらに低流量へ)。$
正しい。低体温による全身代謝・酸素消費の低下で末梢での酸素取り込みが減少し、同一灌流条件では混合静脈血酸素飽和度(SvO2)は上昇しやすい。
正しい。アルファスタット法は体温補正を行わず、低体温下で実際のPaCO2が低めとなるため脳血管が収縮し、脳血流は減少傾向となる(pHスタットに比べて低い)。
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解説
膜型人工肺では、ガスと血液が膜を介して間接接触するため、気泡型に比べ溶血や蛋白変性が少ない。ガス交換機序は膜構造に依存し、均質膜(非多孔質:シリコーンなど)はガスが膜に溶解し拡散(溶解−拡散機構)で透過する。一方、多孔質膜(ポリプロピレン中空糸など)は微小孔を介した拡散が主体で、長時間使用や加湿条件で膜孔が濡れる“wet lung(膜濡れ)”が起きやすく、ガス交換性能が低下する。中空糸膜型の流路構造は、外部灌流型が「血液:中空糸外側、ガス:中空糸内側」、内部灌流型が「血液:中空糸内側、ガス:中空糸外側」。内部灌流型の中空糸内は細径・低レイノルズ数条件となるため血流は通常層流であり、乱流を前提とする記述は誤りである。
選択肢別解説
正しい。膜型人工肺はガスが血液へ直接気泡として接触しないため、気泡型人工肺に比べて機械的刺激や気液界面による血球・蛋白へのダメージが小さく、溶血は少ない。
正しい。均質膜(非多孔質膜:シリコーン等)は孔を持たず、酸素・二酸化炭素は膜に溶解して濃度勾配に従って拡散する(溶解−拡散機構)。
正しい。多孔質膜では長時間の体外循環や加湿条件で膜孔が濡れる“wet lung(膜濡れ)”が生じ、拡散経路が水で満たされてガス透過が低下し、性能劣化を招く。
正しい。外部灌流型中空糸膜では血液は中空糸外側(外側)を流れ、ガスは中空糸内腔を流れる設計である。
誤り。内部灌流型では血液は中空糸内腔を流れるが、糸径が小さく実運転条件でのレイノルズ数は低いため血流は通常層流となる。乱流を前提とする説明は不適切。
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解説
人工心肺(CPB)後の復温時間は、熱交換器による熱伝達量と患者側の熱容量のバランスで決まる。熱交換側はおおむね $Q=U A \\Delta T$(装置の総合伝熱係数U・伝熱面積A・温度差)の枠組み、循環側は $Q=\\dot{m} c_p \\Delta T$(流量・比熱・温度差)で評価できる。したがって、熱交換器の性能(UやA)、血液側の送血流量(\\dot{m})、水側の送水流量と温度設定、そして患者体重に代表される体全体の熱容量は復温速度・所要時間に直接影響する。一方で、血液ガス分圧(PaO2・PaCO2など)は酸素化や酸塩基平衡の指標であり、熱伝達そのものの物理量には含まれないため、復温時間には直接影響しない。よって「影響しない」は血液ガス分圧である。
選択肢別解説
熱交換器の性能は総合伝熱係数Uや有効伝熱面積A、内部構造により熱交換効率を規定し、単位時間あたりの熱移動量 $Q$ を左右するため、復温時間に影響する。
$送血流量は血液側の質量流量 \\dot{m} を増減させ、同じ温度勾配でも単位時間あたりに運べる熱量を変える。流量が大きいほど復温が速くなり得るため、復温時間に影響する。$
血液ガス分圧(PaO2・PaCO2)は酸素化・換気や酸塩基平衡の指標であり、熱交換器での伝熱や患者の熱容量といった熱移動の主要因には直接関与しない。従って復温時間に直接の影響はない(本問の該当肢)。
患者体重は体内総熱容量(おおむね体重と比熱の積)に関係し、同じ熱供給量でも体重が大きいほど目標温までの温度上昇に時間を要する。よって復温時間に影響する。
送水ポンプ流量は水側の熱搬送能力を規定し、熱交換器で達成できる温度差やUの実効値に影響する。水流量が不足すれば熱交換能が低下するため、復温時間に影響する。
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解説
人工呼吸器関連の装置異常が生じると、気道内圧・換気量・加湿・酸素濃度などの生理学的パラメータが大きく変動し、有害事象を引き起こす。呼気弁の開放不全は呼出障害から肺内圧の上昇(オートPEEP、肺過膨張)を介して圧損傷のリスクを高める。呼吸流路(一般に呼吸回路)の屈曲は流路抵抗や閉塞を増やし、換気量低下やピーク圧上昇などの換気異常を招く。加温加湿器の停止は乾燥ガス送気により気道粘膜障害・線毛運動低下を来し、喀痰硬化や閉塞を生じやすい。吸入気酸素濃度の異常上昇は長時間で肺の酸素中毒(吸収性無気肺、びまん性肺障害など)の危険を増す。一方、呼吸回路のリークは設定量が患者に届かず低換気となり、二酸化炭素排出が不十分となって高二酸化炭素血症を来しやすい。よって「低二酸化炭素血症」とする選択肢3の組合せが誤りである。
選択肢別解説
呼気弁の開放不全では呼気が十分に排出できず、気道内圧が上昇し、オートPEEPや肺過膨張を介して圧損傷(気腫性変化や気胸など)を来しうる。組合せは妥当である。
呼吸流路(呼吸回路)の屈曲や折れはガスの流れを物理的に阻害し、吸気流量・一回換気量の低下、ピーク気道内圧上昇、呼出遅延などの換気異常を引き起こす。したがって組合せは妥当である。
呼吸回路のリークがあると設定換気量が患者に届かず低換気となり、二酸化炭素の排出不足で高二酸化炭素血症になりやすい。低二酸化炭素血症とする本選択肢の組合せは誤りである。
加温加湿器の停止により乾燥・低温のガスが送気されると、気道粘膜乾燥と線毛機能低下を来し、喀痰が粘稠化・硬化して喀出困難や閉塞の原因となる。組合せは妥当である。
吸入気酸素濃度(FiO2)の異常上昇を長時間継続すると、活性酸素増加などにより肺酸素中毒(吸収性無気肺、びまん性肺障害など)を招くリスクが高まる。組合せは妥当である。
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