臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
陽圧換気(特にPEEP付加)では胸腔内圧が上昇し、上大静脈や右心房への還流が抑制される。その結果、前負荷と心拍出量が低下し、血圧低下を招く。また腎血流が減少して尿量低下・腎機能低下をきたし、実効循環血液量の低下に対する代償として抗利尿ホルモン(ADH)が増加する。頭蓋内では、頸静脈還流が妨げられて脳静脈圧が上がり、頭蓋内圧(ICP)はむしろ上昇傾向となる。よって「頭蓋内圧低下」は誤りである。
選択肢別解説
誤り。陽圧換気は胸腔内圧上昇により頸静脈還流を妨げ、中心静脈圧上昇を介して頭蓋内静脈圧が上がるため、ICPは上昇しやすい。従って「頭蓋内圧低下」は不適切。なお過換気によるPaCO2低下は脳血管収縮でICPを一過性に下げ得るが、設問は陽圧換気そのものの影響を問うている。
正しい。胸腔内圧上昇により静脈還流が減少し前負荷が低下、心拍出量が低下して血圧は下がりやすい。特に高PEEPや循環血液量不足時に顕著。
正しい。陽圧換気は胸腔内圧を上げ、大静脈と右心房への圧勾配を減少させるため静脈還流は減少する。
正しい。心拍出量と腎灌流の低下、交感神経活性化・RAAS/ADH亢進などにより尿量減少と腎機能低下を来し得る。
正しい。実効循環血液量の低下と圧受容体刺激を介し、体液保持のためADH分泌が増加する。陽圧換気・PEEPではANP低下も加わり水・Na保持が進む。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。
解説
ME機器の保守点検は、日常点検・定期点検を通じた清掃、機能・性能確認、校正、消耗品交換など、機器を安全に運用し品質を維持するための予防的・点検的作業を指す。一方、劣化部品の修理や分解を伴う作業、構造や特性に影響し得る部位の交換は「修理(オーバーホールを含む)」に該当し、保守点検の範囲外である。特に医療機器の修理は、製造販売業者や許可を受けた修理業者等の権限で実施すべき領域であり、医療機関の保守点検業務として行うべきではない。したがって、電源プラグの修理は保守点検に含まれない。
選択肢別解説
外装の清拭は清掃に相当し、機器の汚染防止や劣化防止を目的とした典型的な保守点検業務である。よって保守点検に含まれる。
輸液ポンプの流量精度の測定は性能点検・校正に該当し、定期点検項目として保守点検に含まれる。適切な基準器や手順に従って実施する。
人工呼吸器のバクテリアフィルタは消耗品であり、所定の間隔や条件での交換は保守点検に含まれる。機器分解や修理に当たらない。
カプノメータ表示値を標準ガスで校正する作業は性能点検・校正に該当し、保守点検に含まれる。メーカー指定の標準ガス濃度と手順に従う。
人工心肺装置の劣化した電源プラグの修理は、分解・部品交換を伴う修理行為に該当し保守点検の範囲外。医療機器の修理は製造販売業者や許可を受けた修理業者の権限で実施すべきで、臨床現場の保守点検として行うべきではない。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。
解説
体外循環中の溶血は、主に機械的ストレス(過度の陰圧・高せん断・空気と血液の界面曝露・ポンプや回路の条件不良)、熱的ストレス(過度の加温)、免疫学的要因(異型輸血)で直接的に惹起される。具体的には、心腔内・術野の大量吸引の持続は空気混入と高せん断を生み、赤血球膜を機械的に損傷し溶血を直接引き起こす。脱血不良は陰圧補助(VAVD)やポンプ脱血併用時に過度の陰圧・キャビテーション・回路チャタリングを招き、これ自体が赤血球損傷の直接原因となる。異型輸血は免疫反応により血管内溶血を直接生じる。過度の加温は赤血球膜蛋白の熱変性を起こし溶血の直接原因となる。一方、通常の等張プライミングによる血液希釈は酸素運搬能低下などの影響はあるが、赤血球の破壊を直接促進する要因ではないため、設問の正答は「血液希釈」である。
選択肢別解説
大量吸引の持続は、空気と血液の界面曝露増大や高せん断、吸引ラインでの陰圧上昇を介して赤血球膜を機械的に損傷し、直接的に溶血を引き起こす。したがって「直接的原因となる」。
脱血不良は、陰圧補助脱血(VAVD)やポンプ脱血時に所定流量を維持しようとして回路内陰圧が過大となり、キャビテーションや回路チャタリングを生じやすい。これらは赤血球に高い機械的ストレスを与え、直接的に溶血を引き起こすため「直接的原因となる」。
異型輸血(血液型不適合輸血)は抗原抗体反応により血管内溶血を直接生じる。体外循環中でも同様であり、重篤な溶血の直接的原因となる。
血液希釈はヘマトクリット低下や粘稠度低下などの生理学的影響はあるが、通常の等張性プライミング下では赤血球を直接破壊する機序を持たない。したがって「直接的原因とはならない」(設問の求める選択肢)。
過度の加温は赤血球膜蛋白の熱変性や膜流動性変化を招き、直接的に溶血を起こしうる。体外循環では加温は緩徐に行い、過高温(概ね42℃以上)を避ける必要がある。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。
解説
医療安全におけるインシデントは、患者に実害が生じたか否かに関わらず、手順逸脱や確認不足などにより傷害を招き得た事象(ヒヤリ・ハットを含む)を広く含む。人工心肺(体外循環)では抗凝固管理が最重要であり、ヘパリン投与の実施・確認とACT(活性化凝固時間)の測定は標準的な安全手順である。したがって、ヘパリン投与後にACTを測定しなかった(選択肢1)や、大動脈遮断後になってヘパリン未投与に気づき投与した(選択肢5)は、いずれも重大な手順逸脱であり回路内凝固や塞栓の重大リスクを伴うため、インシデントレポート提出の対象となる。一方、ヘマトクリット低下への赤血球輸血(選択肢2)、血圧低下への流量増加(選択肢3)、離脱困難に対するIABP導入(選択肢4)は、患者状態に応じた適切な臨床対応であり、誤りや手順逸脱が前提とされていない限り、通常はインシデントには該当しない。
選択肢別解説
ヘパリン投与後のACT測定は体外循環中の抗凝固管理における基本的安全手順であり、未測定はプロセス逸脱で回路内凝固や血栓塞栓を招き得る重大リスクとなる。よってインシデントとして報告すべき事象である。
体外循環では希釈や溶血でヘマトクリットが低下し得るため、基準を下回る場合の赤血球輸血は標準的な臨床対応である。手順違反や投与エラーを含意しない限り、インシデントではない。
血圧低下時に体外循環流量を適切に増加して灌流圧を維持するのは、循環動態に対する妥当な対応であり、手順逸脱には当たらない。従ってインシデントではない。
体外循環からの離脱困難に対しIABPを挿入して循環補助を行うのは、病態に応じた適切な治療選択である。手技ミスや機器エラーが前提でないため、通常はインシデントではない。
大動脈遮断後にヘパリン未投与であったことに気づいた事例は、抗凝固の重大な手順逸脱であり、回路内凝固や塞栓の危険が非常に高い。結果的に被害がなくとも、インシデント(ヒヤリ・ハット)として報告すべきである。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。
解説
人工心肺(体外循環)管理における基本操作の是非を問う問題。PaCO2は主として人工肺の吹送ガス流量(スイープガス)で調整し、ACTは血液凝固を防ぐため概ね400秒以上を維持する。復温時は温度較差を大きくしない(一般に10℃以内)ことで溶血・気泡形成・不均一加温のリスクを抑える。大動脈遮断解除時は一時的に送血量を減少させて大動脈内圧や鉗子部のストレス、塞栓リスクを低減するのが原則であり、送血量を増加させるという記載は誤り。離脱開始時は脱血量を先に減らし、生体側へ血液を戻して心臓の前負荷を回復させつつ自発拍出へ移行する。以上より、誤っている操作は選択肢4。
選択肢別解説
正しい。人工肺では二酸化炭素の除去量は吹送ガス流量に強く依存する。スイープガス流量を増やせばCO2除去が進みPaCO2は低下し、減らせば上昇する。PaO2は主に吹送ガス酸素濃度(FiO2)で調整する。
正しい。体外循環中は血液凝固を防ぐためヘパリンで抗凝固を行い、ACTを概ね400秒以上(施設によっては480秒以上など)に維持するのが一般的である。
正しい。復温時の温度管理では送血側と脱血側の血液温の較差を大きくしない(一般に10℃以内)ようにする。過大な較差は溶血、気泡形成、組織の不均一加温などのリスクを高めるため避ける。
誤り。大動脈遮断解除時は一時的に送血量を低下させて大動脈内圧や鉗子部へのストレスを軽減し、塞栓リスクを抑えるのが基本である。送血量を増加させる操作は不適切。
正しい。体外循環からの離脱開始時は、まず脱血量を減少させて生体側へ血液を戻し(心腔の充満を回復)、動脈圧・CVP・心機能を確認しながら段階的に送血を減らしていく。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。
解説
透析回路の静脈圧は、主に(1)静脈圧センサより下流(センサ→静脈針→血管)側の抵抗と(2)体外循環血流量QBによって規定される。静脈圧下限警報は、回路抵抗の急低下(静脈針の脱落や回路解放など)やQB低下(脱血不良、動脈側の折れ曲がり・狭窄)で生じやすい。一方、静脈側ドリップチャンバ内の凝固や静脈側回路の閉塞は下流抵抗を増やし静脈圧を上昇させるため、低下の原因にはならない。本問で「原因として考えられない」のは、静脈側ドリップチャンバ内の血液凝固(選択肢3)である。
選択肢別解説
脱血不良では動脈側から十分に血液を引けずQBが低下する。QBが下がると回路内の摩擦損失が減り、静脈圧も低下しやすい。したがって静脈圧下限警報の原因として考えられる。
ダイアライザ内の凝固はダイアライザの圧力損失を増大させ、状況によっては有効QBが低下し静脈圧が低下することがある(ローラポンプのスリップや保護制御の介入、実流量低下など)。よって静脈圧低下の一因となり得る。一方で一般的記述としては静脈側回路の凝固は静脈圧上昇の原因として扱われる点に注意が必要である。
静脈側ドリップチャンバ内の凝固は、静脈圧センサより下流側の流路抵抗を増大させるため、静脈圧を上昇させる典型的原因である。静脈圧低下の原因としては考えられない。
動脈側回路の折れ曲がりは脱血不良を招きQBが低下する。QB低下により回路内圧損が減り静脈圧は低下するため、静脈圧下限警報の原因となり得る。
静脈側回路の穿刺針が血管から脱落すると回路が開放され実効抵抗が急減し、静脈圧は急激に低下する。大量出血の危険が高く、直ちに送血停止・回路遮断などの対応が必要となる。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。
解説
人工心肺(CPB)中の溶血は、主に機械的ストレス(高いずり応力、過度の陰圧、キャビテーション、強い乱流、強い吸引)によって赤血球膜が損傷することで生じる。カニューレ径が細いほど同一流量を得るために流速が上がり、先端・側孔付近で高ずり応力や圧力低下(キャビテーション)を招きやすく溶血リスクが上がる。特に脱血側は十分な還流を得るために陰圧(重力脱血でも過度の吸引、あるいはVAVDでの陰圧付加)がかかりやすく、細径カニューレでは溶血が増える。一方、低体温は血液粘度や凝固に影響するが、通常のCPB操作範囲では溶血の直接原因とはされない。ベント回路は過度の回転・吸引で溶血を助長しうるが、「回転不足」は溶血の要因ではない。無血充填(等張電解質溶液でのプライミング)は赤血球を浸透圧的に破壊せず、溶血の原因とはならない。
選択肢別解説
正しい。細い送血カニューレでは同一灌流量でも流速が上がり、先端・側孔で高ずり応力や圧力低下が生じ、局所の乱流やキャビテーションを介して赤血球膜が機械的に損傷し溶血につながる。過大流量を細径で通す設定は特に危険であり、適切な内径選択が重要である。
正しい。細い脱血カニューレは所要の静脈還流を得るために高い陰圧を必要とし、過度の陰圧や乱流により赤血球損傷が増える。重力脱血でも狭窄・屈曲や細径で陰圧が大きくなり、VAVD(陰圧補助脱血)ではさらに溶血リスクが上がるため、十分な内径と適切な陰圧管理が必要である。
誤り。低体温は血液粘度や凝固系に影響を与えるものの、CPBの一般的な温度管理範囲では低体温そのものが溶血の直接原因とはならない。溶血は主として機械的因子(過度の陰圧、ずり応力、キャビテーション、強い吸引)によって生じる。
誤り。ベント用ポンプの回転不足は吸引が不十分となり心腔の減圧不良や心臓過伸展の原因にはなりうるが、溶血を助長する要因はむしろ過度の回転(強い吸引)である。よって「回転不足」自体は溶血とは関連しない。
誤り。無血充填(等張電解質溶液でのプライミング)は赤血球を浸透圧的に破壊せず、溶血の原因とはならない。血液混入後も等張であれば溶血は起こらない。溶血は主として機械的外力による赤血球損傷で生じる。
解説を表示するにはログインが必要です。ログインすると無料枠(1日5問)をご利用いただけます。
無料プランでは解説を1日5問まで表示できます。解説を表示すると残り回数が消費されます。
今日: 回 | 残り 回
本日の無料枠を使い切りました。プレミアム登録で無制限にご利用いただけます。