臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
医療現場で用いられるガス・蒸気の代表的な有害作用の組み合わせを問う問題。酸素は未熟児に高濃度で投与すると網膜血管の異常増殖を来し未熟児網膜症の原因となりうる。亜酸化窒素はビタミンB12依存酵素(メチオニン合成酵素)を阻害して造血機能低下(巨赤芽球性貧血)や神経障害を生じうる。揮発性麻酔薬は一般に心筋抑制や血管拡張により心血管系抑制(血圧低下、不整脈傾向など)を起こしうる。酸化エチレンは滅菌用ガスで、吸入曝露により眼・鼻・気道粘膜の強い刺激性(損傷)を示す。一方、二酸化炭素の主な有害作用は高濃度吸入による高二酸化炭素血症(呼吸性アシドーシス、頭痛・意識障害など)であり、肝機能障害は典型的な副作用とはいえないため、選択肢2の組み合わせが誤りである。
選択肢別解説
酸素→未熟児網膜症は妥当。未熟児に高濃度酸素を持続投与すると網膜血管の収縮・閉塞とその後の異常新生血管増殖を介して網膜症を発症しうるため、NICUでは酸素化の厳密管理が行われる。
二酸化炭素→肝機能障害は不適切。CO2の主な有害作用は吸入時の高二酸化炭素血症による中枢神経抑制、頭痛、呼吸性アシドーシス、重篤例では意識障害・呼吸循環不全であり、肝毒性は典型ではない。よってこの組み合わせが誤り。
亜酸化窒素→造血機能低下は妥当。笑気はビタミンB12を不活化しメチオニン合成酵素を阻害するため、長期・高用量曝露で巨赤芽球性貧血などの造血障害や神経障害を来すことがある。
揮発性麻酔薬→心血管系抑制は妥当。ハロタンやイソフルラン等は用量依存的に心筋収縮抑制や末梢血管拡張を起こし、血圧低下や不整脈誘発性などの循環抑制を示す。
酸化エチレン→気道粘膜損傷は妥当。EOGは強い刺激性・感作性を持つ滅菌ガスで、曝露すると眼・上気道を中心に粘膜刺激症状や損傷を来しうる。
解説
ME機器の保守点検は、日常点検・定期点検を通じた清掃、機能・性能確認、校正、消耗品交換など、機器を安全に運用し品質を維持するための予防的・点検的作業を指す。一方、劣化部品の修理や分解を伴う作業、構造や特性に影響し得る部位の交換は「修理(オーバーホールを含む)」に該当し、保守点検の範囲外である。特に医療機器の修理は、製造販売業者や許可を受けた修理業者等の権限で実施すべき領域であり、医療機関の保守点検業務として行うべきではない。したがって、電源プラグの修理は保守点検に含まれない。
選択肢別解説
外装の清拭は清掃に相当し、機器の汚染防止や劣化防止を目的とした典型的な保守点検業務である。よって保守点検に含まれる。
輸液ポンプの流量精度の測定は性能点検・校正に該当し、定期点検項目として保守点検に含まれる。適切な基準器や手順に従って実施する。
人工呼吸器のバクテリアフィルタは消耗品であり、所定の間隔や条件での交換は保守点検に含まれる。機器分解や修理に当たらない。
カプノメータ表示値を標準ガスで校正する作業は性能点検・校正に該当し、保守点検に含まれる。メーカー指定の標準ガス濃度と手順に従う。
人工心肺装置の劣化した電源プラグの修理は、分解・部品交換を伴う修理行為に該当し保守点検の範囲外。医療機器の修理は製造販売業者や許可を受けた修理業者の権限で実施すべきで、臨床現場の保守点検として行うべきではない。
解説
体外循環における主要機器の役割を問う設問。人工肺は静脈血からCO2を除去しO2を付加するガス交換装置で正しい。動脈ラインフィルタ(フィルタ)は微小気泡や微小凝血塊の捕捉・除去に用いられ正しい。ベントポンプは左室など心腔内の血液・気泡を吸引し、心腔内圧を下げて心室過伸展を防ぐ目的で用いられ正しい。一方、冠灌流回路は心筋保護液(カーディオプレジア)を冠動脈へ供給する回路であり、心腔内出血の回収はカーディオトミーサクション(吸引回路)やセルセーバ等が担うため不適切。冷温水槽は人工肺の熱交換器に接続して体温管理を行う装置であり、余剰水分(血漿水分)の除去はヘモコン(限外濾過器)で行うため不適切。以上より1・2・5が正しい組合せ。
選択肢別解説
人工肺は静脈血から二酸化炭素を除去し酸素を付加するガス交換を担う。体外循環中に静脈血は人工肺を通過して動脈化されるため、組合せは正しい。
フィルタ(主に動脈ラインフィルタ)は微小気泡や微小凝血塊を捕捉して下流への塞栓を予防する。微小気泡の除去という目的に合致しており正しい。
冠灌流回路は心筋保護液(カーディオプレジア)を冠動脈へ送るための回路である。心腔内出血の回収はカーディオトミーサクション(吸引回路)やベント等で行うため、この組合せは不正解。
冷温水槽は熱交換器に温水・冷水を供給して体温管理を行う装置であり、余剰水分(血漿水分)の除去はヘモコン(限外濾過器)によって行う。したがって不正解。
ベントポンプは左心室や心腔内に貯留する血液・気泡を吸引し、心内圧を低下させて心室過伸展を防ぎ、左室負荷を軽減する。目的に合致し正しい。
解説
医薬品医療機器等法(旧薬事法)に基づき、医療機器はリスクに応じて一般医療機器(クラスI)、管理医療機器(クラスII)、高度管理医療機器(クラスIII・IV)に分類される。人工呼吸器、人工心肺装置、輸液ポンプ、除細動器はいずれも重篤な転帰に直結し得るため高度管理医療機器(多くはクラスIIIまたはIV)に位置づけられる。一方、自動電子式血圧計は管理医療機器(クラスII)であり、高度管理医療機器ではない。したがって「高度管理医療機器でない」ものは自動電子式血圧計である。
選択肢別解説
人工呼吸器は生命維持に直結する機器で、重大な危害を招き得るため高度管理医療機器(クラスIIIまたはIV)に分類される。よって設問の「高度管理医療機器でない」には該当しない。
人工心肺装置は循環・呼吸機能を代行する極めて高リスク機器であり、高度管理医療機器(通常クラスIV)に分類される。したがって「高度管理医療機器でない」には該当しない。
自動電子式血圧計は一般に管理医療機器(クラスII)であり、高度管理医療機器ではない。よって本問で問う「高度管理医療機器でない」に該当する。
輸液ポンプは薬液や輸液を一定速度で体内に注入する機器で、過量・過少投与が重篤な転帰につながり得るため、高度管理医療機器(多くはクラスIII)に分類される。したがって「高度管理医療機器でない」には該当しない。
除細動器は致死的不整脈に対し電気ショックを与える高リスク機器で、高度管理医療機器(通常クラスIV)に分類される。よって「高度管理医療機器でない」には該当しない。
解説
人工心肺(体外循環)管理における基本操作の是非を問う問題。PaCO2は主として人工肺の吹送ガス流量(スイープガス)で調整し、ACTは血液凝固を防ぐため概ね400秒以上を維持する。復温時は温度較差を大きくしない(一般に10℃以内)ことで溶血・気泡形成・不均一加温のリスクを抑える。大動脈遮断解除時は一時的に送血量を減少させて大動脈内圧や鉗子部のストレス、塞栓リスクを低減するのが原則であり、送血量を増加させるという記載は誤り。離脱開始時は脱血量を先に減らし、生体側へ血液を戻して心臓の前負荷を回復させつつ自発拍出へ移行する。以上より、誤っている操作は選択肢4。
選択肢別解説
正しい。人工肺では二酸化炭素の除去量は吹送ガス流量に強く依存する。スイープガス流量を増やせばCO2除去が進みPaCO2は低下し、減らせば上昇する。PaO2は主に吹送ガス酸素濃度(FiO2)で調整する。
正しい。体外循環中は血液凝固を防ぐためヘパリンで抗凝固を行い、ACTを概ね400秒以上(施設によっては480秒以上など)に維持するのが一般的である。
正しい。復温時の温度管理では送血側と脱血側の血液温の較差を大きくしない(一般に10℃以内)ようにする。過大な較差は溶血、気泡形成、組織の不均一加温などのリスクを高めるため避ける。
誤り。大動脈遮断解除時は一時的に送血量を低下させて大動脈内圧や鉗子部へのストレスを軽減し、塞栓リスクを抑えるのが基本である。送血量を増加させる操作は不適切。
正しい。体外循環からの離脱開始時は、まず脱血量を減少させて生体側へ血液を戻し(心腔の充満を回復)、動脈圧・CVP・心機能を確認しながら段階的に送血を減らしていく。