臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
血液透析の目的は、腎臓の「排泄・調節機能」の代行である。具体的には、(1)限外濾過による体液過剰(浮腫・高血圧の原因となる余剰水分)の除去、(2)透析液と血液の濃度勾配を利用した拡散によりカリウムやナトリウムなど電解質の異常を是正、(3)重炭酸を含む透析液からの拡散により代謝性アシドーシスを補正する、の三点が中心である。これに加えて尿素・クレアチニンなどの尿毒素の除去も主要目的に含まれる。一方、腎の産生機能(例:エリスロポエチンや活性型ビタミンDの産生)は透析では代行できず、活性酸素種の除去も透析の直接目的ではない。
選択肢別解説
正しい。血液透析では限外濾過(Ultrafiltration)により余剰水分を除去し、体液量と血圧の是正を図る。透析中の除水は膜間圧(TMP)や除水プロファイルで制御され、ドライウエイト達成を目標に行う。
$正しい。透析膜を介した拡散により、血清K\^+、Na\^+、Ca\^{2+}、Cl\^- などの電解質濃度を透析液組成に近づけて調節する。透析液の設定(例:Na、K、Ca 濃度)により高カリウム血症や低ナトリウム \cdot 高ナトリウムなどの異常を是正できる。$
誤り。活性酸素種(ROS)は反応性が高く寿命が短い分子群で、血液透析の直接の目的・標的ではない。透析は主に低分子尿毒素の除去と水分・電解質・酸塩基の調整を目的とする。むしろ透析過程自体が酸化ストレスを惹起しうることも知られており、「活性酸素の除去」を目的とする治療とは位置付けられない。
誤り。エリスロポエチンは腎の産生機能に属し、血液透析では産生を促進できない。腎性貧血の治療にはエリスロポエチン製剤など造血刺激薬の投与や鉄補充が必要で、透析はその代替にはならない。
正しい。腎不全では酸の蓄積により代謝性アシドーシスとなる。重炭酸透析液を用い、血液側へ $\mathrm{HCO_3^-}$ を拡散供給することで重炭酸濃度と血液pHを是正する(従来の酢酸透析液に比べ、重炭酸透析液が主流)。
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解説
血液透析は腎臓の排泄・調節機能(尿毒素の除去、水・電解質・酸塩基バランスの調整)を拡散・限外濾過で代行する。したがって高カリウム血症は、血液より低いカリウム濃度の透析液への拡散で是正される。代謝性アシドーシスは、重炭酸(バイカーボネート)を主とするアルカリ化剤が透析液から血液側へ移行することで是正される。一方、エリスロポエチン分泌や活性型ビタミンD産生といった腎の内分泌機能は血液透析では代行できないため是正されない。リンは通常、透析で除去される(高リン血症の是正)ため、低リン血症は透析で改善する対象ではなく、むしろ悪化しうる。よって是正されるのは「高カリウム血症」と「代謝性アシドーシス」である。
選択肢別解説
正しい。透析液のカリウム濃度は血清より低く設定されるため、拡散により血清カリウムが透析液側へ移動し、血中カリウムは低下して高カリウム血症が是正される。
正しい。重炭酸(バイカーボネート)を含む透析液から血液側へアルカリ基が拡散し、血中重炭酸濃度が上昇して代謝性アシドーシスが是正される。
誤り。エリスロポエチンの分泌は腎の内分泌機能であり、血液透析では代行できない。腎性貧血にはエリスロポエシス刺激薬(ESA)などの薬物療法が必要となる。
誤り。活性型ビタミンDの産生は腎の内分泌機能であり、血液透析では代行できない。活性型ビタミンD製剤の投与などで補う。
誤り。通常の透析液はリンを含まず、拡散により血清リンは低下方向となるため、透析は高リン血症の是正に有効である。低リン血症は透析では是正されず、むしろ悪化しうる。
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解説
透析患者ではNa・水の貯留による容量負荷が多く、これが高血圧や心不全を引き起こす主要因となる。したがって体液過剰が続けば心不全の発生頻度は高まる。抗凝固に用いるヘパリンは出血傾向(例: 消化管出血)の際は避け、無抗凝固透析やナファモスタットなど代替法を選ぶ。死亡原因では一般に心不全が最上位で、感染症はそれに次ぐ。酸塩基平衡とカルシウムの関係では、アルカローシスはアルブミンへのCa結合を増やしてイオン化Caを低下させるため、高カルシウム血症の頻度を高めるとは言えない。高血圧の機序も大部分は容量依存性であり、レニン依存性は一部に限られる。
選択肢別解説
誤り。消化管出血など出血傾向がある場合、全身ヘパリンは原則避ける。代替として無抗凝固透析(生食フラッシュ)、ナファモスタットメシル酸塩、区域クエン酸抗凝固などを用いる。
誤り。透析患者の主要な死亡原因は一般に心不全が第1位で、感染症は第2位程度に位置することが多い。したがって本記載は不適切。
誤り。アルカローシスではアルブミン陰性荷電が増しCaの蛋白結合が増加するため、イオン化Caは低下しやすい。高カルシウム血症を生じやすくなるという説明は誤りである。
誤り。透析患者の高血圧の主因はNa・水の貯留による容量負荷であり、レニン依存性は一部に限られる。乾燥体重の適正化や食塩・水分制限、除水が基本対策となる。
正しい。体液過剰は前負荷・後負荷を増大させ、左室肥大や肺うっ血を介して心不全の発生リスクを高める。透析では適正乾燥体重の設定と適切な除水が重要である。
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解説
血液透析では半透膜を介した拡散により、血中に過剰な小分子老廃物や電解質は透析液側へ除去し、逆に不足している物質は透析液側を高濃度にして血中へ供給する。腎不全では代謝性アシドーシスにより重炭酸($\text{HCO}_3^{-}$)が不足するため、重炭酸透析液から$\text{HCO}_3^{-}$が血中へ拡散して補給され、酸塩基平衡が是正される。一方、尿素やカリウムは血中から除去され、ビタミンDやレニンは透析液から供給する対象ではない。したがって補給されるのは重炭酸である。
選択肢別解説
尿素は腎不全で蓄積する代表的な尿毒素で、透析液中濃度は低く設定されるため拡散により血中から除去される。補給される物質ではない。
透析患者は高カリウム血症になりやすく、透析液のカリウム濃度を低めに設定して濃度勾配により血中から除去(低下是正)する。補給の対象ではない。
活性型ビタミンDは腎で産生されるが、腎不全では薬剤(経口・注射)で補充するのが原則であり、透析液から供給することはない。
重炭酸($\text{HCO}_3^{-}$)は腎不全で欠乏し代謝性アシドーシスを来すため、透析液中の重炭酸濃度を高く設定し、拡散で血中へ移行・補給させて酸塩基平衡を是正する。よって正しい。
レニンは腎の傍糸球体装置から分泌される酵素であり、透析液に含めて補給する性質のものではない。
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解説
透析用水処理は、原水の懸濁物を除去するプレフィルタ(沈殿フィルタ)、硬度成分(Ca2+・Mg2+)をNa+と交換してスケールを防ぐ軟水装置(陽イオン交換樹脂)、遊離塩素やクロラミン等を除去する活性炭吸着装置を経て、逆浸透膜(RO)でイオン・有機物・微生物・エンドトキシンを高度に除去するのが標準的構成である。軟水化に用いるのは陽イオン交換樹脂であり、陰イオン交換樹脂は透析用水処理の工程には通常組み込まれないため、『用いない』に該当する。
選択肢別解説
$陰イオン交換樹脂は陰イオン(Cl-、SO4^2- 等)を交換除去するが、透析の水処理工程では標準的に採用されない。軟水化には陽イオン交換樹脂を用い、全溶解塩の除去はROで行うため、陰イオン交換樹脂は不要であり『用いない』が正しい。$
沈殿フィルタ(プレフィルタ)は原水中の懸濁物・粒子状物質を捕捉し、後段の活性炭やRO膜の負荷を低減する目的で使用されるため、用いる。
逆浸透膜(RO)は水処理システムの中核で、溶解性イオン・有機物・細菌・エンドトキシンなどを高度に除去するため必須であり、用いる。
軟水装置は陽イオン交換樹脂でCa2+・Mg2+をNa+に置換し、RO膜へのスケール付着を防ぐために用いる。
活性炭吸着装置は遊離塩素・クロラミン等の酸化性物質や有機物を除去してRO膜や下流装置を保護するために用いる。
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解説
正答は2。透析液温が異常に高いと、ダイアライザで加温された血液が赤血球膜を熱損傷し溶血を起こす。臨床では概ね43℃以上の高温で危険性が高まるとされ、発熱感、悪寒、背部痛、血圧低下、血清K上昇などを伴い得るため、透析液温の監視は必須である。1のような抑制帯の常時使用は身体拘束の乱用に当たり倫理的に不適切で、必要最小限・代替策優先が原則。3は穿刺の安全最優先であり、誤穿刺後の交代や上級者の介入が妥当。4の空気誤入(静脈回路空気混入)時はポンプ停止・回路遮断のうえ左側臥位+トレンデレンブルグ体位(Durant体位)が基本で、右側臥位は不適切。5は多人数用透析液供給では単一故障が多数患者に波及するため、濃度(電気伝導度)監視は二重化などの冗長化が標準であり「1個以上」では不十分。
選択肢別解説
誤り。抑制帯(身体拘束)は患者の安全確保のためにやむを得ない場合に限り、最小限・短時間で行うのが原則であり、「いかなる場合も」常用するのは倫理に反する。抜針事故の予防は、適切な固定・観察強化・環境整備・患者教育など非拘束的手段を優先すべきである。
正しい。透析液温が異常上昇(概ね43℃以上)すると、ダイアライザを介して血液が過加温され赤血球膜が熱損傷し溶血を起こす。臨床的には発熱感、背部痛、赤色血漿、血圧低下、高カリウム血症などを呈し得るため、透析液温の連続監視・上限アラームが重要である。
誤り。誤穿刺後に同一術者が固執すると皮下血腫や痛みの増悪、シャント損傷、患者不安の増大につながる。安全と患者利益を最優先し、状況に応じて術者交代やより熟練したスタッフの介入を速やかに行うのが適切である。
誤り。静脈回路の空気誤入(空気塞栓疑い)では、直ちに血液ポンプ停止・静脈側クランプ・酸素投与などに加え、左側臥位+トレンデレンブルグ体位(頭低位)とし、右心系に入った空気を心尖側に閉じ込め肺動脈流入を抑える。右側臥位は推奨されない。
誤り。多人数用透析液供給装置は多数患者に同一透析液を供給するため、単一故障が重大事故に直結する。濃度(電気伝導度)監視は通常二重化など冗長化され、相互監視で異常を確実に検知する設計が標準である。「1個以上」では安全性が不足する。
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