臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
人工腎臓装置(血液透析/血液濾過/血液透析濾過)で血液浄化に直接用いられる主要原理は、半透膜を介した濃度勾配による拡散(小分子の除去)と、膜をまたぐ圧力差(TMP)による限外濾過(除水・対流)である。膜素材によっては中分子量物質などを膜表面・内部に吸着して除去に寄与する場合もある。一方、電気分解や沈殿はダイアライザ内の浄化機序としては用いられない。電気分解は電流で物質を化学分解する操作であり血液浄化の原理ではない(電気透析と混同しないこと)。沈殿は試薬添加などで溶質を不溶化して分離する操作で、体外循環中の血液処理としては不適切であり採用されていない。したがって誤っている原理は「電気分解」と「沈殿」である。
選択肢別解説
誤りの選択肢。電気分解は電流により化学種を酸化・還元して分解する操作であり、ダイアライザ内での溶質除去・除水の原理には用いられない。血液に電流を通して分解を行うことは安全上も不適切で、人工腎臓装置の原理ではない(電気透析とは別概念)。
正しい原理。限外濾過は半透膜に圧力差(TMP)を与えて溶媒(水)と一部溶質を対流的に移動させる機序で、除水や血液濾過(HF)、透析濾過(HDF)で不可欠である。人工腎臓装置で広く用いられており、誤りではない。
正しい原理。膜素材(例: PMMA、AN69 など)には吸着特性を持つものがあり、中分子量尿毒素(例: $\beta_2$MG など)の除去に寄与する。吸着はダイアライザで利用される補助的機序であり、誤りではない。
正しい原理。拡散は半透膜を介して濃度勾配に従い溶質が移動する自然現象で、尿素やカリウムなど小分子の除去に利用される。人工腎臓装置の基本原理の一つであり、誤りではない。
誤りの選択肢。沈殿は溶質を不溶化して析出・分離する操作で、ダイアライザにおける血液浄化の原理ではない。体外循環中に沈殿を起こすことは望ましくなく、人工腎臓装置では採用されていない。
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解説
成人の代表的な血清基準範囲として、Na+は約135〜145 mEq/L、K+は約3.5〜5.0 mEq/L、総Caは約8.5〜10.5(教科書によっては9〜11)mg/dL、無機リン(P)は約2.5〜4.5 mg/dL、重炭酸(HCO3−)は約22〜26 mEq/Lが広く用いられる。したがって、提示肢のうち基準範囲に入るのはHCO3−の24 mEq/Lのみであり、他は低値または高値を示す。単位は、Na+やK+、HCO3−などの電解質はmEq/L、CaやPなどはmg/dLで示されることが多い。
選択肢別解説
誤り。Na+の基準範囲はおおむね135〜145 mEq/Lであり、1 mEq/Lは極端な低Na血症で生理的に成立しない。
誤り。K+の基準範囲は約3.5〜5.0 mEq/Lで、3.0 mEq/Lは低K血症を示す。心電図異常や不整脈のリスクとなる。
誤り。記載が総Caと解釈される場合、基準範囲は約8.5〜10.5(9〜11)mg/dLであり、5.0 mg/dLは低Ca血症で痙攣やテタニーの原因となりうる。なお、イオン化Caの基準は別(およそ4.5〜5.6 mg/dL)であるが、通常「Ca」は総Caを指すため本肢は基準外。
誤り。無機リン(P)の基準範囲は約2.5〜4.5 mg/dLで、5.0 mg/dLは高リン血症を示す。
正しい。重炭酸(HCO3−)の基準範囲は約22〜26 mEq/Lで、24 mEq/Lはこの範囲内である。酸塩基平衡の評価指標として用いられる。
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解説
血液透析中の溶血は、赤血球膜が化学的あるいは物理的に損傷してヘモグロビンが血漿中へ逸脱する現象である。代表的原因は、(1) 透析液への塩素化合物(遊離塩素・クロラミンなど)の混入による酸化障害、(2) 低浸透圧(低ナトリウムなど)透析液による水分流入と赤血球膨化、(3) 透析液の過加熱(おおむね40℃超)による熱障害である。設問の選択肢のうち「塩素化合物の透析液への混入」は典型的な化学的溶血の原因であり正しい。他方、透析液の高浸透圧(高濃度)は赤血球を収縮させる方向で溶血を起こしにくく、膜破損は漏血(赤血球がそのまま透析液側へ流出)であって溶血とは機序が異なる。透析液温度の低下は冷感・悪寒などを招くが溶血の原因ではなく、空気誤入は空気塞栓などの危険であって溶血の主因ではない。なお、塩素化合物混入は活性炭・RO等の水処理不全や洗浄・消毒薬の残留で生じ得るため、原水管理と水処理装置の維持管理が重要である。
選択肢別解説
高濃度(高浸透圧)の透析液では、赤血球から水が出て収縮(皺形成)しやすく、溶血は起こりにくい。溶血はむしろ低浸透圧(低ナトリウムなど)の場合に赤血球が膨化して膜が破綻することで生じるため、本肢は溶血の原因とは言い難い。
ダイアライザ膜が破損すると、赤血球はそのまま透析液側へ漏出(漏血)する。これは赤血球が壊れる溶血とは機序が異なるため、溶血の原因とはいえない。
水道水由来の遊離塩素やクロラミン、あるいは配管・装置内に残留した塩素系薬剤が透析液に混入すると、赤血球膜を酸化的に障害して溶血を起こす。活性炭やROによる除去不全・管理不良で発生しうるため、典型的な透析関連溶血の原因である。
透析液温度の低下は患者に冷感・悪寒を生じうるが、溶血の原因ではない。溶血はむしろ透析液温度が高すぎる(おおよそ40℃超)ときに熱的障害で発生する。
透析回路への空気誤入は空気塞栓の危険が主で、回路の不均一流や凝固リスクを高めることはあっても、赤血球膜を化学的・物理的に破壊する典型的原因ではない。したがって溶血の原因とはいえない。
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解説
CAPD(持続携行式腹膜透析)は腹膜を半透膜として用い、体外循環を伴わずに緩徐かつ持続的に溶質・水分を移動させる治療である。したがって急激な血圧変動が起こりにくく循環動態への影響は小さい。透析不均衡症候群のような急速な溶質除去に起因する合併症はPDでは非常に稀で、注意を要するのはむしろHDである。腹膜透析液の浸透圧は主としてブドウ糖濃度やイコデキストリンで調整し、カリウムは通常含まれず浸透圧調整の目的にも用いない。小分子(尿素・クレアチニンなど)の瞬時の除去効率はHDが高く、CAPDは拡散速度が遅いため単位時間当たりの除去効率はHDに劣る。従来の酸性腹膜透析液は低pHや糖分解産物により生体適合性の面で不利とされ、近年は中性pH・低GDP液が用いられる。
選択肢別解説
正しい。CAPDは体外循環を用いず、緩徐に溶質・水分が移動するため急激な血圧低下が起こりにくく、循環動態への影響は小さい。心血管不安定例でも施行しやすい。
誤り。透析不均衡症候群は急速な溶質除去に伴い脳内外の浸透圧差が生じて発症するが、CAPDは緩徐な除去のため通常起こりにくい。注意が必要なのは主にHDである。
誤り。従来の酸性腹膜透析液(低pH・乳酸緩衝・糖分解産物多い)は腹膜中皮細胞等への影響が懸念され、生体適合性は不利とされる。現在は中性pH・低GDP液が生体適合性の改善目的で用いられる。
誤り。腹膜透析の浸透圧勾配はブドウ糖濃度(例: 1.5%、2.5%、4.25%)やイコデキストリンで調整する。腹膜透析液には通常カリウムは含まれず、カリウム濃度で浸透圧を調整することはない。
誤り。小分子量物質の除去の瞬時効率はHDが高い。CAPDは拡散速度が遅く単位時間あたりの小分子除去効率はHDに劣る(連続性により週単位での十分な浄化は得られるが、HDより高いとは言えない)。
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