臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
血液透析中の血圧低下(intradialytic hypotension, IDH)は、主として除水速度が血漿補充(plasma refilling)を上回ることや、透析に伴う血漿浸透圧低下・末梢血管拡張により、循環血液量と血管緊張が低下することで生じる。対応の基本は、1) 除水負荷を下げる(時間除水量の減少、体液管理の是正)、2) 血漿浸透圧の維持(高Na透析やNaプロファイリング)、3) 末梢血管抵抗の維持(低温透析)である。ECUM(体外限外濾過:IUF/ECUM)を透析と組み合わせる・分割することで透析中の除水負荷を平準化でき、IDH予防に有用である。一方、時間除水量を増加させるのは循環血液量の急速な低下を招き、IDHを悪化させるため誤りである。
選択肢別解説
適切。ECUM(IUF)は拡散を伴わない限外濾過で、透析と分けて実施・併用することで透析中の除水負荷を平準化しやすい。透析時の浸透圧低下や急速な体液移動を避け、plasma refilling を保ちつつ段階的に除水できるため、血圧低下対策として有用。
適切。透析液Na濃度の上昇(高Na透析/Naプロファイル)は血漿浸透圧低下を抑え、間質から血管内へのrefillingを促進して循環血液量を維持し、IDHを予防する。ただし口渇・体重増加をきたしうるため個別調整が必要。
不適切(設問の誤り)。時間除水量を増やすとplasma refillingを上回る速さで血管内容量が減少し、循環血液量低下を助長してIDHを悪化させる。IDH対策ではむしろ除水速度の低減や総除水量・配分の見直しが基本。
適切。透析液温度を低下(低温透析)させると交感神経緊張・末梢血管抵抗が上がり、血圧維持に寄与する。臨床的にもIDHの頻度低減が知られる。
適切。食塩(Na)摂取制限により口渇と間質貯留を抑え、透析間体重増加を減少させる。結果として必要除水量・除水速度を下げられ、IDHの予防につながる。
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解説
誤っているのは5。透析用水の標準的な水処理フローは、原水→(前処理フィルタ)→硬水軟化装置→活性炭濾過→カートリッジフィルタ→逆浸透(RO)→供給系/循環ループである。ROを最上流に置くことはなく、ROを保護するために前段で硬度成分(Ca²⁺・Mg²⁺)や残留塩素・クロラミンを除去する。1は透析液側のカプラが汚染リスクの高い接続部位であり定期的な消毒が必要という点で正しい。2は透析液Na⁺濃度をやや高めに設定すると浸透圧低下が緩和され、除水時の血圧低下が抑えられ血圧が安定しやすい。3は透析液作製に用いる原水は水道法の水質基準を満たす安全な水を用い、その上で水処理により透析用水基準(細菌・エンドトキシンなど)に適合させるという趣旨で正しい。4はエンドトキシン捕捉フィルタが細菌およびエンドトキシンを除去して透析液の清浄化に寄与する点で正しい。
選択肢別解説
正しい。ダイアライザと装置を接続する透析液側のカプラは接触機会が多く汚染されやすい部位であり、透析液清浄化の観点から定期的な薬液消毒や熱消毒が求められる。施設手順やメーカー手順に沿った定期的な管理が標準である。
正しい。透析液Na⁺濃度を高めに設定(例: 通常より数mEq/L高値)すると血漿浸透圧の低下が緩和され、除水に伴う循環不安定(低血圧、筋痙攣など)が抑えられ血圧が安定しやすい。一方で口渇や間欠期体重増加、血圧上昇のリスクがあるため個別調整が必要。
正しい。透析液の作製に用いる原水(一般に上水)は水道法の水質基準を満たす安全な水であることが前提であり、井戸水等を使用する場合も同等の水質が求められる。そのうえで水処理装置を通して透析用水基準(細菌・エンドトキシンなど)に適合させる。
正しい。エンドトキシン捕捉フィルタ(透析液用超ろ過フィルタ)はサイズ排除や吸着によりエンドトキシンだけでなく細菌も除去し、透析液の清浄度を高めるために供給ライン下流側に設置される。
誤り。正しい順序は『硬水軟化装置→活性炭濾過→逆浸透(RO)』である。前段で硬度成分(Ca²⁺・Mg²⁺)や残留塩素・クロラミンを除去してRO膜のスケーリングや劣化を防いだ後、ROで溶解性不純物を大幅に低減する。設問の順序(RO→活性炭→軟化)は逆で不適切。
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解説
体外循環中は希釈や酸塩基・温度変化、薬剤投与により電解質が大きく変動する。インスリンはNa⁺/K⁺-ATPアーゼを介してK⁺を細胞内へ取り込み、血清K⁺を低下させるため低カリウム血症に傾く。低体温やアルカローシスもK⁺を細胞内へ移動させ、血清K⁺を低下させる方向に働く。保存血の大量使用では、抗凝固剤クエン酸がイオン化Ca²⁺をキレートして低カルシウム血症を来しやすい。さらに、回路充填液や心筋保護液の影響を含む希釈により、体外循環の早期には低ナトリウム血症が生じやすい。これらの典型的変動を踏まえたモニタリングと補正が重要である。
選択肢別解説
正しい。インスリンはNa⁺/K⁺-ATPアーゼ活性を高め、K⁺を細胞内へ移動させるため血清K⁺が低下し、低カリウム血症になりやすい。体外循環中の高血糖是正や高K⁺是正でインスリンを用いる際は特に注意する。
誤り。低体温ではK⁺が細胞内へシフトしやすく、血清K⁺は低下する方向(低カリウム化)に向かう。高カリウムになりやすいのは復温時に細胞外へK⁺が戻る局面でみられうるが、「低体温時」そのものは高カリウム化の方向ではない。
誤り。アルカローシスではH⁺の細胞外移動に伴いK⁺が細胞内へ移動するため、血清K⁺は低下しやすい(低カリウム化)。高カリウム化はアシドーシスで問題となる。
正しい。保存血の抗凝固剤クエン酸がイオン化Ca²⁺をキレートして低下させ、低カルシウム血症を生じやすい。大量輸血や回路充填に保存血を用いる際はイオン化Ca²⁺のモニタとカルシウム投与が必要。
正しい。回路充填液や心筋保護液の影響による希釈で体外循環初期に血清Na⁺が低下(希釈性低ナトリウム血症)しやすい。なお、その後の補液・薬剤(例:NaHCO₃)や除水の有無でNa⁺は変動しうるため連続的評価が重要。
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