臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
透析装置(コンソール)には患者安全と治療の精度確保のため、血液回路・透析液回路の監視と制御機能が標準で組み込まれている。代表的な内蔵機能は、透析液側への赤血球混入を監視する漏血検出器、静脈側回路の気泡を検知して血液ポンプ停止・クランプ閉鎖を行う気泡検出器、透析液を約35~40℃に維持するための温度測定・加温制御、そして設定した除水速度・総量を達成する除水制御(TMP制御や体積平衡方式など)である。一方、透析液の濃度管理は電導度計(導電率計)と温度補正によってリアルタイムに監視・制御され、浸透圧計は凍結点降下などの原理でオフライン計測が中心で応答性に乏しく連続監視に適さないため、コンソールには組み込まれない。従って、組み込まれていないのは透析液浸透圧計である。
選択肢別解説
漏血検出器はダイアライザ透析液出口側の透析液を光学的に監視し、赤血球混入による透過率低下を捉えてアラーム・回路遮断を行う。患者安全確保のため透析装置コンソールに標準搭載される。よって『組込まれていない』には該当しない。
気泡検出器は静脈側回路に設置される超音波式(現在主流)や光学式で、気泡を検出すると血液ポンプ停止・静脈クランプ閉鎖などの安全動作を行う。コンソールに組み込まれる基本的安全機能であり、『組込まれていない』には該当しない。
透析液温計(温度計)は透析液温を連続測定し、ヒータと連携しておよそ35~40℃に制御する。患者の体温負荷やダイアライザ性能に直結するため、コンソール内蔵の基本機能である。よって『組込まれていない』には該当しない。
除水制御装置は設定した除水速度・総除水量を正確に実施するための機構で、TMP制御方式や、平衡チャンバ(ダイアフラム・ピストン)を用いた体積平衡式が用いられる。透析治療の中核機能としてコンソールに組み込まれているため、『組込まれていない』には該当しない。
透析液浸透圧計は一般にコンソールには内蔵されない。透析液の濃度管理は電解質濃度と相関する電導度の連続監視・制御で行われ、浸透圧計(凍結点降下法など)は応答が遅く連続リアルタイム監視に不向きで安全制御上の一次手段とならないためである。したがって本問の該当肢である。
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解説
透析液管理では、水処理と透析液作製・供給・監視が安全性の要です。軟水化装置は陽イオン交換樹脂で硬度成分(Ca²⁺, Mg²⁺)をNa⁺と交換して除去し、残留塩素・クロラミンの除去は活性炭吸着装置が担います。装置配置は一般に軟水化装置→活性炭→RO(逆浸透)などの順で前処理を行い、RO膜保護と水質確保を両立します。重曹(2液)透析では、酸濃縮液(A)と重炭酸濃縮液(B)はそれぞれ透析用水で所定濃度に希釈した後に混合し、未希釈で混合してのち希釈は沈殿(Ca/Mg炭酸塩)を生むため不適切です。安全監視として、透析液温監視装置は高温時に警報・加熱停止・バイパスでダイアライザ供給を遮断し、高温性溶血を防ぎます。エンドトキシン対策ではRO出口や各透析装置入口(末端)など複数箇所にエンドトキシンカット(UF)フィルタを設置し、配管内由来の汚染リスクを多層防御します。
選択肢別解説
誤り。軟水化装置は陽イオン交換樹脂によりCa²⁺・Mg²⁺などの硬度成分をNa⁺と交換して除去する装置であり、クロラミン(残留塩素)の除去能はない。クロラミン/遊離塩素の除去は活性炭吸着装置の役割で、RO膜や下流装置の保護にも重要である。
誤り。2液(重曹)透析では、酸濃縮液(A)と重炭酸濃縮液(B)をそれぞれ透析用水で所定比率に希釈してから混合する。未希釈のAとBを直接混合するとCa²⁺・Mg²⁺とHCO₃⁻が反応し炭酸塩が沈殿し、配管閉塞や濃度異常の原因となる。
誤り。活性炭吸着装置は一般に軟水化装置の下流(後段)に設置し、硬度除去後の水からクロラミン等を吸着してRO膜を保護する。設計にはバリエーションがあるものの、国試での標準的記述では「軟水化→活性炭→RO」などの流れが採られ、上流設置とする本記載は不適切と判断する。
正しい。透析液温監視装置は設定温(通常36〜37℃)からの逸脱を監視し、高温(例:41℃超)で警報を発しヒータ停止・自動バイパスによりダイアライザへの供給を遮断する。高温透析液は赤血球膜を障害して溶血を招くため、その防止に必須である。
正しい。エンドトキシンは配管内で再増殖する可能性があるため、RO出口側に加え、各透析装置入口など末端にもエンドトキシンカット(UF)フィルタを設ける多段配置が推奨される。複数箇所でのバリアにより超純水準の透析液維持に寄与する。
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解説
人工心肺(CPB)開始時は充填液による希釈、低体温、酸塩基平衡の変化、ホルモン反応(ストレス反応)などにより電解質・内分泌が系統的に変動する。ナトリウムは希釈により低下しやすい。カリウムは希釈に加え、低体温やアルカローシス、カテコラミンやインスリン投与の影響で細胞内移行が促進され低下傾向となる(ただし状況により一過性上昇をみる場面もある)。保存血や赤血球液には抗凝固剤のクエン酸が含まれ、イオン化カルシウムをキレートして低カルシウム血症を招きうるため、赤血球液使用でカルシウムが上昇するという記載は不適切である。内分泌では、体外循環の侵襲と循環動態の変化により抗利尿ホルモン(バソプレシン)が上昇する一方、インスリン分泌は低下・抵抗性が増し高血糖に傾くため「過剰分泌で低血糖」は誤りである。
選択肢別解説
正しい。回路充填液(結晶液)による血液希釈で血清ナトリウムは初期に低下しやすく、希釈性低ナトリウム血症の傾向を示す。
正しい。希釈に加え、低体温・アルカローシス・カテコラミンやインスリン投与などでカリウムが細胞内へ移行し、血中カリウムは低下しやすい。利尿による喪失も加わる。
誤り。保存血・赤血球液の抗凝固剤であるクエン酸がイオン化カルシウムをキレートするため、投与により血中カルシウムは低下方向(低カルシウム血症)となりやすい。「上昇する」は不適切。
誤り。CPB中はストレス反応や低体温の影響でインスリン分泌は低下し、インスリン抵抗性も増すため高血糖になりやすい。よって「過剰分泌により低血糖」は逆である。
正しい。体外循環に伴う循環動態の変化やストレスにより抗利尿ホルモン(バソプレシン)が上昇する。水再吸収促進・血管収縮で循環を保とうとする反応である。
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解説
血液透析は半透膜を介した拡散と、陰圧や膜間圧差を用いた限外濾過により、体液の量と組成を腎臓の代謝・排泄機能に近づける治療である。具体的には、過剰水分は限外濾過で除去し、尿素などの低分子尿毒素やカリウムは透析液との濃度勾配による拡散で除去する。また、重炭酸を含む透析液により体内にHCO3−が補給され、代謝性アシドーシスが是正される。一方、免疫グロブリンは高分子タンパク(例:IgG約150 kDa)であり、通常の血液透析膜の孔径では透過せず、目的にも含まれない。免疫グロブリンの除去には血漿交換や免疫吸着などの血漿療法が適応となる。したがって、本問で誤り(目的ではない)は「免疫グロブリンの除去」である。
選択肢別解説
適切。体液過剰(浮腫や高血圧、心不全増悪の一因)に対して、透析器膜に生じさせた透膜圧(TMP)で限外濾過を行い水分を除去するのが血液透析の重要な目的である。
適切。腎不全では酸の排泄や重炭酸再吸収が障害され代謝性アシドーシスとなる。重炭酸を含む透析液を用いることでHCO3−が血中に補給され、酸塩基平衡が是正される。
適切。高カリウム血症の是正は血液透析の主要目的の一つで、血液と低カリウム濃度の透析液との濃度勾配を利用した拡散により血清カリウムを低下させる。
適切。尿素(約60 Da)をはじめとするクレアチニン、尿酸などの低分子尿毒素は拡散で効率よく除去され、尿毒症症状の改善に寄与する。
不適切(本問の正答)。免疫グロブリンは高分子タンパク質で通常の血液透析膜では透過しないため、血液透析の目的には含まれない。これらを除去する必要がある病態では、血漿交換(PE)、二重濾過血漿交換(DFPP)や免疫吸着などの血漿療法を用いる。
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