臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
体外循環中の溶血は、空気との接触(気泡型肺)、過大なせん断応力(ローラポンプの過度な圧迫や狭小部での高速流)、陰圧過多の吸引回路・脱血、過小径のカニューレ使用などが主因となる。膜型肺は血液とガスを隔てるため一般に溶血が少なく、ポンプは遠心ポンプの方がローラポンプより溶血が少ない傾向がある。高度溶血では赤血球内K$^{+}$が血漿に流出して高カリウム血症を来しやすく、重要な臨床サインとなる。対応は原因除去(陰圧・流量・カニューレ径・回路条件の是正等)と支持療法であり、抗凝固薬ヘパリンの追加は溶血対策にならない。必要に応じて遊離ヘモグロビン対策としてハプトグロビン投与等を検討する。以上より、「血中カリウム濃度上昇で高度溶血を疑う」が正しい。
選択肢別解説
誤り。気泡型肺は血液と酸素ガスが直接接触するため気液界面や微小気泡による障害で溶血しやすい。膜型肺の方が一般に溶血は少ない。
誤り。ローラポンプはチューブ圧迫に伴うせん断・摩擦応力や過度オクルージョンで溶血が増える。一方、遠心ポンプは流体力学的駆動でせん断が比較的低く、溶血が少ない傾向にある。
誤り。ヘパリンは抗凝固薬であり溶血の治療にはならない。高度溶血では原因除去と支持療法に加え、遊離ヘモグロビン対策としてハプトグロビン投与などを検討する。
誤り。送血流量に対して細い送血カニューレを用いると先端流速・せん断応力が上昇し、圧力損失も増えて溶血リスクが高まる。
正しい。溶血により赤血球内のカリウムが血漿へ流出するため血中カリウム濃度は上昇しやすい。高度溶血の指標となり、他に遊離ヘモグロビン上昇、ヘモグロビン尿、LDH高値などを伴うことがある。
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解説
V-A ECMOは体静脈から脱血し、遠心ポンプで膜型人工肺を通して体動脈へ逆行性に送血する心肺補助法である。遠心ポンプは逆止弁機構を持たないため停止時に回路内で逆流が起こり得るので、安全確保のために鉗子で回路(とくに送血側)を遮断する。人工肺に血栓が付着して流路抵抗が増えると、人工肺前(ポンプと人工肺の間)の圧力が上昇し、人工肺前後の圧較差(ΔP)が増大する。逆に、脱血不良時には脱血回路圧はより陰圧化(低下)する。ガス交換膜の結露は掃気流量の一時的増量やガス側の排水・加温で改善可能で、直ちに緊急交換とは限らない。また、V-A ECMOの高流量は大腿動脈からの逆行性送血によって大動脈圧を上げ、左室後負荷を増大させる。以上より、正しいのは4と5である。
選択肢別解説
誤り。V-A ECMOは通常大腿動脈からの逆行性送血で大動脈圧を上昇させるため、灌流量を増やすほど左室後負荷は増大しやすい。高流量では左室拡大や大動脈弁非開放、肺うっ血のリスクが上がる。
誤り。脱血不良(カニュラ先端の吸い付きや静脈還流不足など)が起こると、脱血回路内圧はより陰圧化(低下)する。圧モニタ上は数値が下がり、過度の陰圧は回路のチャンタリングや溶血の原因となる。
誤り。ガス交換膜の結露(ガス側の水滴付着)は、掃気流量の一時的増量やガス側の排水・加温などで多くは改善可能であり、直ちに人工肺の緊急交換を要する所見ではない。酸素化不良の進行や血側へのリーク等の異常を伴う場合に交換を検討する。
正しい。遠心ポンプは逆止弁を持たず、停止時には重力・患者側圧により逆流が起こり得る。安全確保のため、ポンプ回転を下げて停止する前後に回路を鉗子で遮断し、逆流や空気侵入を防止する。
正しい。人工肺に血栓が付着し流路が部分閉塞すると抵抗が増大し、人工肺前(ポンプ出側〜人工肺手前)の回路内圧が上昇する。結果として人工肺前後の圧較差(ΔP/TMP)が増えるのが典型である。
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解説
誤りは1。ペースメーカの出力パルス振幅(電圧)は、500 $\Omega$ 程度の負荷抵抗を介してオシロスコープまたはペースメーカアナライザで測定するのが基本で、周波数カウンタはパルスの周期・周波数(レート)測定用であり振幅測定には不適切である。除細動器の出力波形は瞬時現象のため、50 $\Omega$ 程度のダミー負荷に接続しメモリ型オシロスコープで単発波形を捕捉するのが適切。電気メスの出力電力は高周波で誘導の影響を避ける必要があるため無誘導抵抗器を負荷として用い、流れる電流から $P=I^2R$ で算出する。輸液ポンプの精度(送液量)はメスシリンダで回収量を測って設定値と比較する。人工心肺(に限らず医用機器)の絶縁抵抗は絶縁抵抗計(メガー)で測定する。
選択肢別解説
誤り。周波数カウンタはパルスの周波数(レート)や周期の測定器であり、振幅(電圧)を測定できない。ペースメーカの出力パルス振幅は、500 $\Omega$ 程度の負荷抵抗を介してオシロスコープまたはペースメーカアナライザで電圧波形を観測して求めるのが適切。
正しい。除細動器の出力は瞬時に発生する単発波形であるため、50 $\Omega$ 程度のダミー負荷(模擬胸部インピーダンス)に接続し、メモリ型オシロスコープで波形を保持・確認する。エネルギーチェッカの波形出力端子を用いる方法もある。
正しい。電気メス(ESU)の出力電力測定では、高周波での誤差を避けるため無誘導抵抗器を負荷として用い、負荷に流れる電流から $P=I^2R$ で電力を算出する。実務上は無誘導抵抗器に加えて高周波対応の電流計等も併用するが、必要な機材として無誘導抵抗器の選定は妥当。
正しい。輸液ポンプの精度(送液量・流量)は、メスシリンダで一定時間に送られた液量を回収・計量し、設定値と比較して評価する。専用の輸液ポンプチェッカを用いる方法もある。
正しい。人工心肺装置の絶縁抵抗測定には、絶縁抵抗計(メガー)を用いて、電源回路と筐体(外装)間など所定箇所の絶縁を測るのが標準的手順である。
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解説
体外循環中の高カリウム血症の主因として、溶血と心筋保護液(多くは高K+含有)が代表的である。溶血では赤血球内に高濃度(おおむね100–140 mmol/L程度)のK+が含まれているため、膜破綻で血漿側へ流出し血中K+が上昇する。心筋保護液は心停止目的で高K+(例:20–30 mmol/L程度)を含むため、注入により血中K+が上昇する。逆に、代謝性アルカローシス、インスリン投与、低体温はいずれもK+を細胞内へシフトさせる方向に働き、血中K+は低下しやすい(低体温では復温時にK+再上昇が起こり得る点に留意)。
選択肢別解説
正しい。溶血により赤血球内の高濃度K+が血漿中へ漏出し、血中カリウム値は上昇する。体外循環では機械的損傷などで溶血が生じ得るため、K+上昇の原因となる。
誤り。代謝性アルカローシスではH+が細胞外へ移動し、その代償でK+は細胞内へシフトするため、血中カリウム値は低下する方向に働く(上昇はしない)。
誤り。インスリンはNa+/K+-ATPアーゼ活性化を介してK+の細胞内取り込みを促進し、血中カリウム値を低下させる(高K血症治療にも用いられる)。
誤り。低体温は一般にK+の細胞内シフトを促し、体外循環中の血中カリウム値は低下しやすい。なお復温時にはK+が再び血中へ移行し上昇し得るが、「低体温」そのものは上昇要因ではない。
正しい。心筋保護液は心停止を得る目的で高濃度K+を含むため、注入により血中カリウム値は上昇する。持続注入や還流条件によっては上昇が顕著となる。
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解説
フェイルセーフは、故障や異常が発生した際に機器が自動的に安全側へ移行し、患者へのリスクを最小化する設計思想である。具体例として、酸素供給が止まったときに亜酸化窒素の供給を遮断する麻酔器の装置や、電気メスの対極板系の異常(断線・高インピーダンス)を検知すると出力を停止する機構は、いずれも「異常時に危険な出力を止める」ためフェイルセーフに該当する。一方、医療ガスのピン方式は誤接続を未然に防ぐフールプルーフ、心電図モニタの不整脈アラームは警報であり自動で安全側に移行しないためフェイルセーフとは異なる。IABPのバッテリ搭載は電源喪失時の継続稼働を目的とした冗長化であり、フェイルセーフではない。
選択肢別解説
正しい。酸素供給停止時に亜酸化窒素(N2O)を遮断し、低酸素ガスの投与を防ぐ。異常が起きたときに危険側(低酸素)へ向かわないよう自動的に安全側へ移行する典型的なフェイルセーフ。
正しい。対極板コード断線や貼付不良でリターンパスが失われると熱傷リスクが高まる。断線検知機構は異常を検知すると出力を停止(または強制抑制)して危険を回避するため、フェイルセーフに該当する。
誤り。医療ガスのピン方式はガス種ごとに機械的キーを変えて誤接続を物理的に不可能にする仕組みで、これはフールプルーフ(誤操作の未然防止)。故障発生後に安全側へ移行するフェイルセーフとは目的が異なる。
誤り。不整脈アラームは異常を通知する警報機能であり、装置自体が危険動作を自動的に停止・安全化するわけではない。ゆえにフェイルセーフではない。
誤り。IABP装置のバッテリ搭載は、商用電源喪失時でも動作を継続させる冗長化(多重系)であり、故障発生時に安全側へ停止・遮断するフェイルセーフとは区別される。
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