臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
ハイパーサーミア(温熱療法)は腫瘍組織をおおむね42℃以上(多くは42~45℃)に加熱し、腫瘍の熱感受性を利用して治療効果を得る。腫瘍は未熟な血管網で放熱が不十分なため熱がこもりやすく、正常組織よりも選択的に障害されやすい。連日の加温は細胞の熱ショックタンパク誘導などにより熱耐性(thermotolerance)を生じさせるため、一般に数日(48~72時間程度)間隔を空けて治療計画を組む。また、加温は抗がん剤に対する細胞内取り込みの増加やDNA修復阻害などを介して化学療法の作用を増強しうる。周波数帯としては、いわゆるRF加温は医療用では数MHz~数十MHz(例: 8、13.56、27.12、40.68 MHzなど)を用いるのが一般的で、300 MHz以上の帯域(例: 433 MHz、915 MHz、2.45 GHz)はマイクロ波加温に分類される。マイクロ波は組織内減衰が比較的大きく、単純適用では深部到達性に限界があり、浅在~中等度深さの加温に適することが多い。したがって、本設問では1、2、3が正しく、4と5は不正確である。
選択肢別解説
正しい。ハイパーサーミアは腫瘍組織を概ね42℃以上(多くは42~45℃)に加温して治療効果を得る。タンパク変性や膜機能障害、血流動態の差などにより腫瘍細胞が選択的に障害されやすい。
正しい。連日の加温は熱ショックタンパク誘導などにより熱耐性(thermotolerance)を生じ、治療効果が減弱する。一般にこの熱耐性は数日持続するため、治療間隔は48~72時間程度空ける計画が推奨されることが多い。
正しい。加温は細胞膜透過性の変化や腫瘍局所血流の変化、DNA修復阻害などを介して抗がん剤の効果を相乗的に高めうる(例: シスプラチン、ドキソルビシンなど)。化学療法との併用で作用増強が期待される。
誤り。RF加温法(容量結合・誘導結合など)では医療用に一般に数MHz~数十MHz帯(例: 8、13.56、27.12、40.68 MHzなど)を用いる。300 MHz~30 GHzはマイクロ波帯に相当し、RF加温ではなくマイクロ波加温の領域である。
誤り。マイクロ波は組織内での減衰が比較的大きく、単純適用では深部病巣への到達性は高くない。通常は浅在~中等度深さの加温に適し、深部加温にはRF容量結合法など他手法が用いられることが多い。
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解説
ハイパーサーミアは腫瘍やその周囲を概ね42〜43℃程度に一定時間加温し、腫瘍の熱感受性や血流差を利用して治療効果を得る方法である。外部電極・アンテナを用いる装置では、体表の熱傷や疼痛を避けるため、水を循環させるボーラスで体表を冷却しつつエネルギー結合を安定させる。RF容量結合型ではジュール熱の発生が脂肪層で大きくなりやすく、筋肉より脂肪が過熱されやすい点に注意する。マイクロ波加温は透過深度が浅く主に浅在性病変に適する。放射線療法や化学療法との併用は相乗効果が期待でき、禁忌ではない。以上より、体表冷却にボーラスを用いるという記述のみが正しい。
選択肢別解説
誤り。臨床的ハイパーサーミアの目標は腫瘍部をおおむね42〜43℃程度に維持することであり、65℃以上は組織の焼灼・壊死(アブレーション)の温度域でハイパーサーミアの目標ではない。
誤り。ハイパーサーミアは放射線療法や化学療法と併用されることが多く、温熱により放射線感受性・薬剤感受性の増強が期待できる。禁忌ではない。
正しい。外部加温では皮膚の過熱を防ぐために水ボーラス(水袋)を電極・アンテナと体表の間に介在させ、水を循環させて体表を冷却しながら加温する。ボーラスは皮膚保護とエネルギー結合の安定化(整合)に寄与する。
誤り。RF容量結合型加温では電界が体表側の脂肪層に集中しやすく、電気的性質の違いから脂肪の方が筋肉より過熱されやすい。したがって『筋肉は脂肪よりも加温されやすい』は誤り。
誤り。外部照射によるマイクロ波加温は透過深度が浅く、主に浅在性腫瘍に適する。深部腫瘍にはRF容量結合型や深部用アレイシステムなどが用いられる。
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解説
心電図用テレメータ送信機は、国内では特定小電力無線の医療用テレメータに分類され、使用周波数はUHFの約420〜450 MHz帯で運用される。2 GHz帯は心電図用テレメータには用いられない。チャネル方式はA〜E型があり、A型はチャネル間隔が12.5 kHz、B型はA型2チャネル分(25 kHz)を占有する。チャネル識別には病院内の運用で4桁のチャネル番号が用いられることが多い。空中線電力は法規の技術基準によりA〜D型で1 mW以下、E型で10 mW以下に制限される。したがって『2 GHz帯の周波数が用いられる』は誤りである。
選択肢別解説
誤り。医療用(心電図用)テレメータは国内ではUHFの420〜450 MHz帯が割り当てられており、2 GHz帯は用いられない。よって本記述は不適切。
正しい。A型は狭帯域で運用され、チャネル(中心周波数)の間隔は12.5 kHzとされる。例えば、1バンドあたり0.5 MHz幅に対し $12.5 \\text{kHz} \times 40 = 0.5 \\text{MHz}$ となり、間隔12.5 kHzの設定と整合する。
正しい。B型はA型2チャネル分を1チャネルとして使用するため占有周波数帯域幅は25 kHzとなり、A型(12.5 kHz)より広い。
正しい。チャネル識別には先頭1桁でバンド、後続3桁でチャネル番号を示す等の4桁表記(例: 1001)の運用が行われ、4桁の数字で区別される。
正しい。心電図用テレメータは特定小電力無線局に該当し、空中線電力の上限はA〜D型で1 mW以下、E型で10 mW以下と定められている。設問の趣旨(A〜D型が1 mW以下)は適切。
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解説
体外式除細動器の二相性波形は半導体スイッチ(IGBTやMOSFET)で通電途中に極性を反転させる設計で、より低エネルギで効果的かつ心筋障害が少ない。出力パルス幅(1ショックの通電時間)は $\mathrm{ms}$ オーダー(概ね $2 \sim 5\,\text{ms}$ 程度)で、$\mu\text{s}$ ではない。出力端子は患者保護と漏れ電流防止のためフローティング(非接地)である。点検の通電テストは立ち上がりが急峻な高電圧パルスでも波形を乱さないよう、リアクタンスを極力排した $50\,\Omega$ の無誘導抵抗を用いる。心房細動・粗動の除去(同期カルディオバージョン)は、$T$ 波ショックによるR-on-T現象を避けるため $R$ 波同期で実施する。
選択肢別解説
正しい。二相性除細動は半導体スイッチ(IGBTやMOSFETのHブリッジ等)により通電途中で極性を反転させ、正負2相のパルスを連続して印加する。これにより除細動効率が高まり、必要エネルギを低減できる。
誤り。出力パルス幅は $\mathrm{ms}$ オーダーであり、典型的には $2 \sim 5\,\text{ms}$ 程度(相ごと数 $\mathrm{ms}$)である。$2 \sim 5\,\mu\text{s}$ のようなマイクロ秒オーダーでは心筋の実効脱分極に必要な通電時間を満たさない。
誤り。除細動器の出力端子(パドル/パッド)はフローティング(非接地)であり、どちらか一方を接地すると漏れ電流や予期せぬ電撃の危険が増すため、医用電気機器の個別規格でも絶縁が求められる。
正しい。通電テストでは波形を忠実に評価するため、誘導成分で歪まない $50\,\Omega$ の無誘導抵抗をダミーロードとして用いる。臨床での胸郭インピーダンスの標準的模擬値としても用いられる。
正しい。心房細動や心房粗動の除去(同期カルディオバージョン)は、$T$ 波付近での通電(R-on-T)による心室細動誘発を避けるため $R$ 波同期で施行する。心室細動などには非同期ショックを用いる。
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解説
本設問は心電図テレメータ(小電力医用テレメータ)の無線特性・運用設計に関する基礎知識を問う。日本の医用テレメータは特定小電力無線局としてUHF帯の専用周波数帯(例:420〜450 MHz帯)を用いるため、周波数帯はメーカ間で共通である。混信対策としては病棟・エリアごとに使用チャネルを分けるゾーン配置が用いられ、受信感度不足にはブースタ(中継増幅器/リピータ等)の導入が行われる。一方、アンテナは「長いほど効率がよい」わけではなく、波長との整合(おおむね1/4波長など)や人体近接の影響、整合回路の設計が重要であるため、この断定は誤り。空中線電力の上限は小電力規格で厳しく定められており、A〜D型で1 mW以下、E型で10 mW以下であるため、「15 mW以下」は不適切で誤りとなる。
選択肢別解説
誤り。アンテナ効率は単純に長さが長いほど良いわけではなく、使用周波数の波長に対する物理長(例:おおむね1/4波長)や整合回路、人体近接による detuning の影響で決まる。医用テレメータはUHF帯で波長が短く、携帯機器では短縮アンテナ(ローディング等)で効率を確保するため、「長いほど良い」という断定は成り立たない。
正しい。小電力医用テレメータは電波法で定められた専用の周波数帯(例:UHF帯)を用い、この帯域はメーカに共通である(免許不要の特定小電力無線局の枠組み)。なお、チャネル運用や方式は施設設計・機種で最適化されることがあるが、周波数“帯”自体は共通である。
正しい。混信対策として病棟やフロアなどのゾーンごとに使用可能チャネルを分けるゾーン配置が用いられる。これにより同一または隣接チャネルによる同一施設内での同時使用時の混信リスクを低減できる。
正しい。受信感度不足にはブースタ(中継増幅器/リピータ)や分布アンテナ方式、受信機の増設などでカバレッジを補う。導入時はノイズや不要波の増幅、相互変調・混信のリスクを評価して設計する必要がある。
誤り。小電力医用テレメータの空中線電力上限は規格で厳格に定められ、A〜D型は1 mW以下、E型は10 mW以下である。「15 mW以下」という上限は許容されないため、この記述は不正確である。
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