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臨床工学技士国家試験
解説
マイクロ波手術器は、医用ISM帯のマイクロ波(代表値 2.45GHz)を発生させ、同軸ケーブルで針状などの電極先端へ伝送し、生体内で誘電加熱(主に水分子の双極子回転)を起こして凝固・止血を行う機器である。生体を貫流させる高周波電流による加熱ではないため対極板は不要であり、鋭利な切開よりも凝固に適する。波長は $\lambda = c/f$ より約0.12mであり、1.2mではない。
選択肢別解説
誤り。医用の代表周波数は約2.45GHzで、$\lambda = c/f$ により波長は約0.12m(12cm)となる。記載の「約1.2m」は一桁大きく不正確。
正しい。マイクロ波手術器は針状などの単一プローブ(モノポーラ電極)からマイクロ波を放射し組織を加熱する。生体全体を経由して回収電極へ電流を流す方式ではない。
正しい。発生器から電極まではマイクロ波伝送に適した同軸ケーブルで伝送する。インピーダンス整合が取られ、損失と反射を抑えて電極先端へエネルギーを供給する。
正しい。マイクロ波は組織内で体積的に熱を生じさせるため凝固・止血に適し、電気メスのような鋭い切開機能は主用途ではない。
誤り。マイクロ波は電磁波として照射され電極周囲で熱に変換・減衰するため、電気メス(高周波電気手術装置)のような対極板による電流回収は不要。
解説
マイクロ波手術装置は、主にISM帯の2.45GHz(2,450MHz)のマイクロ波をマグネトロンで発生させ、電極周囲の組織中の水分子の誘電加熱によって凝固・止血を行う機器である。高周波電気メスのように患者体内を流れる電流回路で熱を発生させる方式ではないため、電流を回収するための大きな対極板は不要である。また切開能より凝固・止血能を重視する設計であり、鋭利な切開には適さない。さらに、凝固による組織の付着対策として、機種により直流電流を用いる組織解離装置を併用し、付着組織を解離させる運用がある。以上より、誤りは「対極板が必要」と「鋭利な切開に適する」の記述である。
選択肢別解説
正しい。医療用マイクロ波手術装置では、家庭用電子レンジと同じISM帯の2.45GHz(2,450MHz)が一般的に用いられる。これは誘電加熱効率と法規制(ISM帯)に適合するためである。
正しい。マイクロ波の発生源としてマグネトロンが広く用いられてきた。近年は半導体発振器の例もあるが、装置としてマグネトロン採用は妥当な記述である。
正しい。強い凝固作用により電極へ組織が付着しやすいため、機種によっては直流電流を利用する組織解離装置を併用して付着組織を解離・剥離する運用があると説明される。記述は適切である(採用の有無は機種差あり)。
誤り。マイクロ波手術装置は電極周囲の組織を誘電加熱する方式で、電気メスのように患者を介して電流を回収する回路を必要としない。そのため大きな面積の対極板(分散電極)は不要である。
誤り。マイクロ波手術装置は凝固・止血作用を主目的としており、鋭利な切開には適さない。切開能を重視するなら電気メスの切開モード等が適する。
解説
マイクロ波メスは2.45 GHz(ISMバンド)のマイクロ波を生体組織に放射し、組織中の水分子の双極子回転による誘電加熱で凝固・止血・切開を行う機器である。原理は高周波電流を体内に流す電気メス(単極)のように体内電流の帰路を必要としないため、対極板は不要である。エネルギーは主に水分に吸収され、含水率が高いほど加熱効率が高い。生体中の有効波長は比誘電率に依存し、近似的に $\lambda = \frac{c}{f\sqrt{\epsilon_r}}$ で表されるため、比誘電率が大きいほど波長は短くなる。さらに、組織へのエネルギー分布はアプリケータ(電極/アンテナ)の形状・大きさ・挿入深さなどで変化するため、凝固範囲は電極形状に依存して変化する。以上より、1・2・3は正しく、4・5は誤りである。
選択肢別解説
正しい。医療用途のマイクロ波メスでは2.45 GHz(ISMバンド)が標準的に用いられる。医療機器の国際的運用と干渉回避の観点から広く採用されている。
正しい。マイクロ波メスは誘電加熱(マイクロ波エネルギーの電界による双極子回転)で組織を加熱するため、電気メス(単極)のような体内電流の帰路(対極板)を必要としない。エネルギーはアンテナ(プローブ)から放射・結合される。
正しい。マイクロ波は極性分子である水に強く吸収され、分子の配向運動を励起して誘電損失として発熱する。結果として出力エネルギーは主として組織の水分に吸収され、凝固・止血に寄与する。
誤り。生体組織中の有効波長は近似的に $\lambda = \frac{c}{f\sqrt{\epsilon_r}}$ で表されるため、比誘電率 $\epsilon_r$ が大きいほど波長は短くなる。「長くなる」は逆の記述で誤り。実際の組織は損失性だが、傾向は同様。
誤り。凝固範囲は電極(アンテナ)形状・サイズ・先端形状(ニードル、ボール、ヘラ、フック等)、挿入深さ、出力・照射時間により電界分布とSARが変わるため大きく影響を受ける。「変化しない」は不適切。
解説
マイクロ波手術装置は、医療用に割り当てられたISM周波数帯の2.45 GHzを用いて、組織内での誘電損失(主に水分子の双極子回転やイオン伝導)による加熱で凝固・止血・アブレーションを行う。エネルギーは発振器(マグネトロンや固体発振器)から手術電極(アンテナ)まで同軸ケーブルで伝送されるのが一般的である。マイクロ波は電極周囲で局所的に減衰するため、高周波電気メスのような対極板(帰路電極)は不要である。渦電流損は金属など導体中での誘導加熱の損失概念であり、マイクロ波手術装置の主たる加熱機序ではない。
選択肢別解説
正しい。医療用マイクロ波手術装置は、国際的にISM(Industry, Science, Medical)用途に割り当てられた2.45 GHz帯を使用する。国内でもこの帯域が用いられるのが一般的で、他無線への干渉管理の観点でも妥当である。
正しい。発振器から手術電極(アンテナ)までの電力伝送には50 Ω系の同軸ケーブルが一般に用いられる。内部で導波管を用いる機種もあるが、患者側に接続される可撓な伝送路としては同軸ケーブルが標準的である。
誤り。マイクロ波手術装置の発熱は組織の誘電損失(誘電加熱:水分子の双極子回転やイオン伝導によるジュール熱)による。渦電流損は主として金属導体中の磁場変化で生じる誘導加熱の損失概念であり、軟部組織加熱の主機序ではない。
誤り。マイクロ波は電極(アンテナ)近傍で局所的にエネルギーを沈着させるため、単極高周波電気メスのような対極板(帰路電極)は不要である。
正しい。マイクロ波による誘電加熱で組織を凝固・止血し、肝など実質臓器の表在出血の制御やアブレーション(部分切除・焼灼)に用いられる。
解説
マイクロ波手術器は主に2.45 GHz帯(ISMバンド)のマイクロ波を用い、組織中の水分子の配向運動(誘電体損失)による誘電加熱で組織を加熱する。これにより止血・凝固が中心的機能となる。臨床的にはコアキシャルケーブル先端の内導体を突出させた針状のモノポール(モノポーラ型針電極)を用いるのが一般的で、広義にはモノポーラ構成と説明される。使用周波数から求める波長は約12 cmであり、ミリ波帯の1~2 mmではない。また、強い高周波電磁波を用いるため、他医療機器への電磁的影響(EMI)には注意が必要である。
選択肢別解説
誤り。一般的に用いられる周波数は2.45 GHzで、波長は $\lambda = c/f$ より $3.0\times10^8/2.45\times10^9 \approx 0.12\,\text{m}$(約12 cm)となる。1~2 mmは150~300 GHz程度のミリ波帯に相当し、マイクロ波手術器の使用帯域ではない。
$誤り。組織加熱の主因は水分子の配向運動に伴う誘電体損失(誘電加熱)であり、狭義のジュール熱(I^2R による抵抗加熱)とは機序が異なる。したがって表現としては不適切。$
正しい。臨床ではコアキシャルケーブルの内導体を先端で突出させた針状のモノポール(モノポーラ型針電極)が用いられ、周囲組織にマイクロ波を放射して局所的に加熱・凝固させる。
正しい。マイクロ波は組織中の水分に誘電加熱を生じ、主に凝固・止血に用いられる。鋭利な切開を主目的とする高周波電気メスとは機能の中心が異なり、切開よりも凝固が中心である。
誤り。マイクロ波は強い電磁波であり、心電図の雑音混入やペースメーカ・埋込型機器への干渉など、他の医療機器への電磁的影響(EMI)の懸念がある。適切な対策が必要であり、影響は少ないとはいえない。
解説
超音波凝固切開装置(いわゆるハーモニックスカルペル等)は、圧電素子で先端ブレードを超音波域(おおむね45〜55 kHz)で微小振幅(おおむね数十マイクロメートル、典型的には50〜100 µm程度)で往復振動させ、その機械エネルギーにより組織間で摩擦熱を生じさせて切離と凝固を同時に行う。得られる温度は主に蛋白変性・膠原収縮が進む範囲(約60〜100℃)で、レーザメスの高温域(蒸散・炭化で数百℃に達し得る)に比べ低温で熱損傷が少ない。電流を患者体内に通電して切開・凝固する方式ではないため、電気メスのような対極板は不要であり、開腹・開胸のみならず鏡視下(内視鏡外科)手術でも広く用いられる。
選択肢別解説
誤り。超音波凝固切開装置の先端振幅(ストローク)は一般に数十マイクロメートル(例:50〜100 µm)程度であり、5〜10 mmのようなミリメートル単位の大振幅ではない。
正しい。一般的な装置は約45〜55 kHzの機械振動(代表値として約55 kHz前後)を用いてブレードを駆動する。
正しい。超音波装置は摩擦熱で蛋白変性・膠原収縮を惹起する温度帯(約60〜100℃)で凝固・切離を行うことが多く、蒸散・炭化を伴い数百℃に達し得るレーザメスより低温で組織熱損傷が小さい。
誤り。患者に高周波電流を通電する電気メスとは異なり、機械振動と摩擦熱で作用するため対極板は不要である。
誤り。内視鏡外科(鏡視下)手術においても広く用いられており、禁忌ではない。血管封止や組織切離で日常的に使用される。