臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
カプノメータの波形消失は、呼気CO2が全く検出されていないことを示し、最優先で「患者−人工呼吸器間の気路が断たれた」事態(事故抜管や呼吸回路の外れ)を疑う所見である。今回、SpO2は86%と低下している一方で、心拍数は110回/分、収縮期血圧は170mmHgと循環は直後には保たれている。心停止や重度ショックではカプノメータが低下・消失し得るが、この循環所見とは整合しない。片肺挿管やファイティングでは換気自体は継続するため、カプノメータ波形は乱れたり振幅低下はあっても通常は消失しない。緊張性気胸では典型的に血圧低下(ショック)を伴い、本症例の高血圧所見と矛盾する。したがって、最初に考えるべき原因は事故抜管と呼吸回路の外れである。
選択肢別解説
正しい。事故抜管では患者の気道と呼吸回路が断たれ、呼気CO2がサンプルされないためカプノメータ波形は消失する。換気停止によりSpO2は速やかに低下するが、発症直後は循環が比較的保たれていることが多く、今回の頻脈・高血圧所見(低酸素・苦悶反応)とも整合する。最優先で疑い、直ちに気道再確保と回路再接続の評価・対応が必要。
誤り。片肺挿管では一側肺への換気となるため低酸素血症や気道内圧上昇を来しうるが、換気自体は継続しており呼気CO2は検出されるのが通常で、カプノメータ波形は消失しない(振幅低下や形状変化にとどまることが多い)。したがって本症例の「波形消失」とは合致しない。
誤り。ファイティング(患者−人工呼吸器不同調)では換気は継続しているため、カプノメータ波形は乱れたり不規則になるが消失はしない。波形の完全消失は、気道断裂(抜管・回路外れ)やサンプリングライン脱落などをまず疑うべき所見である。
誤り。緊張性気胸では胸腔内圧上昇により静脈還流低下をきたし、しばしば血圧低下・ショックとなる。設問では収縮期血圧170mmHgと高値であり典型像と矛盾する。カプノメータは振幅低下や換気不良を示し得るが、波形が完全に消失するのは通常、気道が断たれた場合である。
正しい。呼吸回路の外れ(回路断裂・コネクタ抜け)は患者と人工呼吸器の接続が断たれるため、呼気CO2のサンプリングができずカプノメータ波形が消失する。SpO2低下は説明可能で、発症直後に循環が保たれる点も所見と一致する。最初に確認・是正すべき重大トラブルである。
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解説
PSVは患者の自発吸気努力をトリガとして、設定した圧サポートで吸気を補助し、吸気流量が一定割合まで低下すると呼気へ移行する流量サイクルのモードである。分時換気量はおおむね $\dot{V}_E=V_T\times f$ に依存し、PSVでは患者の呼吸ドライブと気道力学(抵抗・コンプライアンス)に大きく左右される。過鎮静は中枢呼吸ドライブを低下させて自発努力・呼吸回数が減少し、トリガ不能や低換気を招いて分時換気量を低下させる。気管チューブ閉塞は気道抵抗を上げてトリガ不全や1回換気量低下を生じ、結果として分時換気量が低下する。一方、代謝性アシドーシスは呼吸性代償で換気亢進を来し、胸郭肺コンプライアンス増大は同じ圧補助でより大きい1回換気量となるため、いずれも分時換気量は低下しにくい。カフ圧上昇はリーク抑制や気道粘膜障害のリスクに関与するが、通常は分時換気量低下の直接原因とはならない。
選択肢別解説
過鎮静は中枢性の呼吸ドライブを抑制し、自発努力が減少または消失する。PSVでは患者努力が小さいとトリガ回数が減り、1回換気量も小さくなりやすいため分時換気量は低下する。正答。
カフ圧上昇は気管内チューブ周囲のシールを強めてエアリークを抑える方向に働く。通常は分時換気量低下の直接原因にはならず、むしろリークが減れば測定上の換気量は保たれる。過度なカフ圧は気道粘膜障害の懸念はあるが、本設問の原因としては不適。
代謝性アシドーシスでは呼吸性代償として換気亢進(呼吸回数増加と努力増大)が起こる。PSVでは患者の努力増大によりトリガ回数や1回換気量が増え、分時換気量はむしろ増加方向となるため、低下の原因にはなりにくい。
胸郭肺コンプライアンスが増大すると同じ圧サポートでも肺が膨らみやすく、1回換気量が増加しやすい。したがって分時換気量は低下ではなく維持・増加が見込まれるため、原因とはいえない。
気管チューブ閉塞は気道抵抗を著明に増加させ、トリガ不全や早期の吸気停止、1回換気量低下を招く。結果として分時換気量が低下する典型的原因である。正答。
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解説
酸素療法の主な合併症としては、(1)慢性呼吸不全患者でのCO2ナルコーシス、(2)高濃度酸素による窒素洗い出しに伴う吸収性無気肺、(3)高濃度酸素の長期投与で生じる酸素中毒が代表的である。CO2ナルコーシスは高濃度酸素投与により低酸素刺激が弱まり換気が低下すること、さらに低酸素性肺血管収縮の解除によるV/Qミスマッチ増悪やHaldane効果により動脈CO2分圧が上昇して意識障害に至る機序が知られている。吸収性無気肺は高FiO2下で肺胞内窒素が洗い出され、酸素が血中へ速やかに吸収されることで肺胞虚脱が生じる現象である。酸素中毒はFiO2が高い状態を持続すると肺障害(胸痛、咳嗽、びまん性肺傷害様変化)や中枢神経毒性(特に高圧酸素環境での痙攣)を来す。一方、空気塞栓症や皮下気腫は酸素療法そのものの直接的合併症ではなく、主に外傷、血管内への空気侵入、陽圧換気や気胸・縦隔気腫など他の要因に関連して発生する。
選択肢別解説
正しい。慢性高二酸化炭素血症のあるCOPDなどの患者に高濃度酸素を与えると、低酸素刺激が弱まり換気が低下し、さらに低酸素性肺血管収縮の解除によるV/Qミスマッチ増悪とHaldane効果によりPaCO2が上昇して意識障害(CO2ナルコーシス)を生じうる。
正しい。高FiO2では肺胞内の窒素が洗い出され、酸素が血液へ速やかに拡散・吸収されるため、末梢気道閉塞部位などで肺胞が虚脱し吸収性無気肺となる。長時間の高濃度酸素投与でリスクが高まる。
誤り。空気塞栓症は静脈・動脈内への空気流入や手技関連、外傷、陽圧換気によるバロトラウマ等が主因であり、酸素療法自体の直接的合併症ではない。むしろ高濃度酸素投与は気泡内窒素分圧を低下させて縮小を促す治療補助として用いられる。
誤り。皮下気腫は外傷や気胸・縦隔気腫、陽圧換気のバロトラウマなどで生じることが多く、酸素療法(単純な酸素投与)自体の直接の合併症ではない。
正しい。高濃度酸素の長期投与により活性酸素種の増加などを介して肺毒性(気道刺激、肺コンプライアンス低下、びまん性肺障害様変化)や中枢神経毒性(高圧酸素での痙攣など)を来す。FiO2の必要最小化と曝露時間の短縮が予防に重要。
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