臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
人工呼吸中のファイティング(患者−人工呼吸器不同調)は、患者の呼吸努力と人工呼吸器の供給する換気が同期せず、互いに競合する状態を指す。主な原因は、換気設定の不適合(モード選択、トリガ感度、吸気流量・吸気時間・サイクル条件など)、気道分泌物やチューブ先端刺激による咳嗽(バッキング)、痛み・不安・鎮静不足による過剰な自発努力などである。一方、血圧低下はファイティングの結果として生じやすい現象で、過度の吸気努力やブレススタッキングで胸腔内圧が上昇し静脈還流が低下、心拍出量低下を介して低血圧となるため、原因としては考えにくい。従って、本問では血圧低下が「原因として考えにくい」選択肢である。
選択肢別解説
不適切な換気パターン(モード不適合、トリガ・サイクル条件や吸気流量の不一致など)は自発呼吸の要求と供給が合わず、吸気の取り合い・遅延・過剰補助を招いてファイティングの典型的原因となる。
気道分泌物の貯留は気道抵抗を上げるとともに気道粘膜を刺激して咳嗽(バッキング)を誘発し、患者−人工呼吸器の同期を崩してファイティングの原因となる。吸引などで改善することが多い。
鎮静薬の投与不足は不安・苦悶・疼痛を増大させ、過剰な自発努力や過換気傾向を通じて不同調を助長するため、ファイティングの原因となり得る。必要に応じて鎮静・鎮痛の是正が有効。
血圧の低下は陽圧換気やファイティングに伴う胸腔内圧上昇により静脈還流が低下し、心拍出量が減少することで生じる「結果」であり、ファイティングの一次的な「原因」としては考えにくい。したがって本問で問う『原因として考えにくい』に該当する。
咳嗽発作は気道刺激による反射であり、吸気相・呼気相の同期を乱してバッキングを起こし、ファイティングの直接的原因となる。原因除去(分泌物吸引、刺激低減)で改善が見込まれる。