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臨床工学技士国家試験
解説
電磁波の生体内での侵入深さ(スキンデプス)は周波数が高くなるほど浅くなり、吸収が表面近傍に集中する傾向が強まる(概念的には $\delta \propto 1/\sqrt{f}$)。低周波(Hz〜kHz)は体内まで深く浸透して体全体に電流が流れやすいのに対し、マイクロ波帯(GHz)では侵入深さが数cm程度以下となり、皮膚や皮下組織の近くで主に吸収される。提示された選択肢の中では最も高周波の2 GHzが生体表面で最も吸収されやすい周波数であり、正答となる。
選択肢別解説
20 Hzは極低周波で波長が非常に長く、導電電流が主で体内深部まで電界が行き渡る。表面での吸収が卓越する周波数帯ではなく、「生体表面で最も吸収されやすい」には該当しない。
2 kHzは低周波域で浸透が深く、表面近傍に吸収が集中する条件ではない。生体表面で最も吸収されやすい周波数としては不適。
200 kHzは依然として低〜中周波域であり、電磁波は体内へ比較的深く浸透する。表面での吸収が最大になる周波数帯ではない。
20 MHzはRF帯で全身寸法共振に近い帯域でSARが増え得るが、吸収は必ずしも表面だけに限局せず、浸透も一定程度生じる。選択肢中で「最も」表面吸収が顕著なのはこれより高周波のGHz帯であるため不適。
2 GHz(マイクロ波帯)では生体組織中の侵入深さが浅くなり、エネルギーは皮膚・皮下の近傍で主に吸収される。提示選択肢の中で最も表面吸収が強い周波数であり、正答である。
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解説
医療機器は薬機法でリスクに応じて一般(クラスI)、管理(クラスII)、高度管理(クラスIII・IV)に分類される。高度管理医療機器は体内に植込む、生命維持に関わる、あるいは重大な有害事象につながりうる機器が該当する。ペースメーカ、冠動脈ステント、粒子線治療装置、中心静脈カテーテルはいずれも重大リスクのため高度管理に分類される。一方、血液ガス分析装置は体外で検体(血液)を分析する体外診断用の機器であり、一般にクラスI~IIに位置づけられ高度管理には該当しない。したがって「高度管理医療機器に該当しない」は血液ガス分析装置である。
選択肢別解説
ペースメーカは植込み型で心拍動を直接制御する生命維持関連機器であり、重大な不具合が患者の生命に直結するため高度管理医療機器(通常クラスIV)に分類される。よって「該当しない」とは言えない。
冠動脈ステントは血管内に留置する植込み型デバイスで、不具合は急性冠閉塞など重篤な有害事象に直結するため高度管理医療機器(一般にクラスIII~IV、薬剤溶出型はクラスIV)に分類される。したがって高度管理に該当する。
血液ガス分析装置は採取した血液を体外で分析する体外診断用機器で、人体への直接侵襲がなく、一般に管理医療機器(クラスII)または一般医療機器(クラスI)に分類される。高度管理医療機器には該当しないため、設問の正答である。
粒子線治療装置は高エネルギー放射線(陽子線・重粒子線等)を腫瘍に照射する治療用機器で、線量や照射位置の誤りは重大な健康被害に直結する。治療用放射線機器は高度管理医療機器(多くはクラスIII)に分類される。よって高度管理に該当する。
中心静脈カテーテルは血管内に留置し循環器系に直接作用する医療機器で、感染・血栓・誤留置などのリスクが大きい。侵襲性とリスクの観点から高度管理医療機器(一般にクラスIII)に分類されるため、高度管理に該当する。
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解説
植込み型不整脈治療機器の基本として、ICDは致死的不整脈に対する除細動・通電に加え、徐脈時のバックアップペーシングや頻拍停止目的の抗頻拍ペーシング(ATP)を備える機種が一般的であり、ペースメーカ機能を併せ持つ。CRT(CRT-P/CRT-D)は電気的不同期(例:左脚ブロック、QRS延長)を伴う心不全で両心室同期ペーシングにより機械的不同期を是正し、症状・予後の改善を図る治療である。リードレスペースメーカは現在広く用いられるものは右心室内に留置するシングルチャンバー型である。植込み型機器の電源は高エネルギー密度・長寿命・安全性の観点からリチウム系一次電池(例:リチウム‐ヨウ素、銀酸化バナジウム‐リチウムなど)が用いられ、アルカリ電池は用いない。リード留置は通常X線透視下で行い、超音波は静脈穿刺補助などで併用されることはあるが、リード誘導の主手段ではない。
選択肢別解説
正しい。ICDは除細動・通電による致死性頻脈治療に加え、徐脈時のバックアップペーシング機能や抗頻拍ペーシング(ATP)を備える機種が一般的であり、ペースメーカ機能を有する。
正しい。CRT(心臓再同期療法)用ペースメーカ/除細動器は、両心室を同期ペーシングして電気的・機械的不同期を是正し、心不全症例(特にQRS延長や左脚ブロックを伴うHFrEF)で症状・心機能・予後の改善を目的に用いられる。
正しい。現在一般に使用されるリードレスペースメーカ(例:右室内留置のシングルチャンバー型)はカプセル型デバイスを右心室心内膜側に固定して留置する。
誤り。植込み型機器の電源は高エネルギー密度・長寿命・低自己放電などの特性を持つリチウム系一次電池(例:リチウム‐ヨウ素、銀酸化バナジウム‐リチウム)が用いられる。アルカリ電池は植込み機器には用いない。
誤り。ペースメーカ/ICDの経静脈リード留置は原則としてX線透視下に行う。超音波は静脈穿刺(例:鎖骨下・腋窩静脈)の補助に用いられることはあるが、リード誘導の主たる画像誘導法ではない。
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解説
電磁障害(EMI)対策と医用機器の安全運用に関する基礎問題。静電シールドは電界(静電誘導)を遮断するもので、遮へい導体を接地して基準電位に保持し、流入した変位電流を大地へ逃がすことで効果が最大化される。心電計リード線のシールドは商用周波数50/60 Hzの低周波電界ノイズに対しても有効であり、「高周波に限る」は誤り。心電図モニタ中に電気毛布を使う場合は医療用ノイズレス毛布(3極プラグ、シールドヒータ等)やフィルタ・テレメータ等で対策し、患者直下に導電性シーツを敷くのは漏れ電流経路や熱傷リスクを高め不適切。ペースメーカ装着患者のMRIは(MRI条件付き機器を除き)誤作動やリード加熱等の危険から原則禁忌。電気メス併用中はECGが高周波ノイズで汚染されやすいため、IABPのトリガは動脈圧波形を用いるのが安全で確実。
選択肢別解説
正しい。静電シールドは電界遮へいが目的であり、遮へい導体を接地して外郭を基準電位に保つことで、内部の電磁障害源からの静電誘導を効果的に抑える。接地しない浮遊シールドでは遮へい効果が低下する。
誤り。心電計の主要な外来ノイズは商用交流50/60 Hzなどの低周波電界であり、シールド線は低周波電界に対しても有効である。「高周波に限りシールド効果がある」という断定は不適切。磁界成分については別途ツイストや配置・材質対策が必要だが、電界ノイズはシールドで低減できる。
誤り。患者の下に導電性シーツを敷くと、漏れ電流の経路を形成し感電・熱傷リスクを高めるため不適切。適切な対策は、医療用ノイズレス電気毛布(シールドヒータ線・3極プラグ)や機器の接地・アイソレーション、ハムフィルタやテレメータの利用などである。
誤り。ペースメーカ装着患者のMRIは静磁場・勾配磁場・RFにより誤作動やリード加熱を生じ得るため、(MRI条件付きデバイスを除き)原則禁忌である。よって「受けられる」とする一般的記載は不適切。
正しい。電気メス使用時はECGが高周波ノイズで飽和・誤検出しやすい。IABPのトリガにはノイズの影響を受けにくい動脈圧波形(圧波形の立ち上がり等)を用いるのが安全で確実である。
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解説
本問はJIS T 0601(=IEC 60601 系列:医用電気機器)に個別規格が用意されているかを問うのが趣旨である。JIS T 0601-2-xx は機器ごとの個別要求事項を定めており、輸液ポンプ(JIS T 0601-2-24)、電気メス(高周波外科用機器:JIS T 0601-2-2)、心電計(JIS T 0601-2-25)、観血式血圧計(JIS T 0601-2-34)はいずれも対象である。一方、植込み型心臓ペースメーカは医用電気機器(60601 系)ではなく、能動埋込み医療機器として ISO 14708 系(国内ではJIS T 14708-2 など)で規定されるため、JIS T 0601 系には含まれない。よって、JIS T 0601 で規定されていないものとして植込み型心臓ペースメーカを選ぶのが適切である。
選択肢別解説
誤り。輸液ポンプは JIS T 0601-2-24(医用電気機器−第2-24部:輸液ポンプ及び輸液コントローラに関する個別要求事項)で規定されている。従って「JISで規定されていない」には当たらない。
誤り。電気メス(高周波外科用機器)は JIS T 0601-2-2 で規定されている。したがって JIS T 0601 系に個別規格が存在する。
正しい。植込み型心臓ペースメーカは医用電気機器(JIS T 0601 系)の対象外で、能動埋込み医療機器として ISO 14708 系(国内規格では JIS T 14708-2 など)で規定される。よって JIS T 0601 系には規定がないため、本問の趣旨(JIS T 0601 で規定されない機器)に合致する。
誤り。心電計は JIS T 0601-2-25(心電計に関する個別要求事項)により規定されている。
誤り。観血式血圧計(観血式血圧測定装置)は JIS T 0601-2-34 で規定されている。したがって JIS T 0601 系に個別規格がある。
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解説
JIS T 0601-1-2(IEC 60601-1-2 と整合)は、医用電気機器の電磁両立性(EMC)に関する基本規格であり、医療環境で現実的に遭遇する電磁妨害に対するイミュニティ(耐性)試験を規定している。代表的な妨害は、静電気放電(IEC 61000-4-2)、無線周波の放射電磁界(IEC 61000-4-3)、開閉アーク等による電気的ファストトランジェント/バースト(IEC 61000-4-4)、雷や開閉サージに起因するサージ(IEC 61000-4-5)などである。一方、電離放射線(X線・γ線など)は材料劣化やセンサ感度への影響といった放射線耐性の領域であり、EMCイミュニティ試験の想定妨害には含まれない。したがって、想定されていない妨害は電離放射線である。
選択肢別解説
静電気放電(ESD)はIEC 61000-4-2に基づくイミュニティ試験項目としてJIS T 0601-1-2で想定される代表的妨害である。よって「想定されていない妨害」には該当せず不正解。
無線電波による放射電磁界(Radiated RF)はIEC 61000-4-3に基づく試験項目として想定される。したがって本問の「想定されていない妨害」ではなく不正解。
火花放電に代表される開閉アーク等が生む高速過渡現象は、電気的ファストトランジェント/バースト(IEC 61000-4-4)の想定妨害として試験される。よって想定外ではなく不正解。
雷誘導電圧はサージ(IEC 61000-4-5)の想定妨害として規定され、医療機器も該当試験を受ける。よって想定外ではなく不正解。
電離放射線(X線・γ線など)はEMC規格における電磁妨害の想定から外れており、JIS T 0601-1-2のイミュニティ試験項目には含まれない。そのため本問で問う「想定されていない妨害」に該当し正解。
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解説
ハイパーサーミア(温熱療法)は腫瘍組織を主に約42〜43℃に加温して治療効果を得る方法で、薬剤感受性や放射線感受性の増強、腫瘍血流・酸素化の変化による相乗効果が期待できるため、化学療法や放射線療法と併用されるのが標準的である。加温法には、RF容量結合型(数〜数十MHzのRF電流を体表電極で印加)やマイクロ波加温(例: 2.45 GHzの電磁波をアンテナから照射)などがある。加温後には熱ショック蛋白の誘導などにより一過性の熱耐性(サーモトレランス)が生じ、一般に12〜48時間程度持続し、その後おおむね数日(約72時間)で低下・消失する。これらの性質から、本問の正答は「化学療法と併用する」である。
選択肢別解説
誤り。RF容量結合型加温法は数〜数十MHz帯(例: 8.0、13.56、27.12、40.68 MHzなどのISM帯)の高周波を用いて体表の電極から電流を流し加温する。2.45 GHzはマイクロ波帯であり、マイクロ波加温法で用いられる代表的周波数である。
誤り。熱ショック蛋白の誘導などにより生じる細胞の熱耐性(サーモトレランス)は、加温後おおむね12〜48時間持続し、その後数日で低下・消失することが知られている。24時間で消失と断定するのは短すぎる。
誤り。ハイパーサーミアが目標とする温度は通常42〜43℃の範囲であり、60℃以上は焼灼(アブレーション)領域で組織壊死を意図する別の治療概念に相当する。
正しい。ハイパーサーミアは腫瘍細胞膜透過性の変化や腫瘍血流の変動などにより抗がん剤の送達・取り込みが高まり、化学療法との相乗効果が得られるため、併用が一般的である(放射線療法との併用も広く行われる)。
誤り。マイクロ波加温法はアンテナやアプリケータから電磁波を放射して加温するため、2枚の電極で電流を流す方式ではない。2枚の電極を用いて電流を印加するのはRF容量結合型などの電極加温である。
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