臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
人工心肺(完全体外循環)中の安全管理では、空気誤送、動脈解離、脱血不良、人工肺血栓などの重大事象に対し、原因に即した初期対応が求められる。空気は貯血槽の液面低下だけでなく、脱血側の陰圧(VAVD)による吸気、回路接続部の緩み、ベントや心筋保護系からの逆流・逆転、人工肺内の脱ガスなど多経路で発生し得るため、貯血槽が空でなくても誤送は起こり得る。動脈解離が疑われる場合は解離腔の拡大を避けるため送血流量を直ちに低下または停止し、送血部位の変更準備や低体温化、圧モニタ・TEE等での確認を行う。脱血不良では原因(カニューレ先端の壁貼り付き、屈曲・閉塞、陰圧過大、循環血液量不足など)を同定し、カニューレの前後位置調整(しばしば浅く引き戻す)、回路確認、陰圧・ポンプ流量の整合、容量補充等で対処する。人工肺内血栓は圧力差上昇やガス交換不全を伴い致命的になり得るため、抗凝固状態の確認(ACT 等)を行いつつも基本対応は人工肺の速やかな交換であり、ヘパリン追加のみでは既存血栓は解決しない。脱血回路に持続的な微小気泡が見られる場合は陰圧過大や接続部吸気が疑われるため、陰圧やポンプ流量の調整、接続部の増し締め、容量補充、カニューレ位置調整など脱血側の是正を優先する。動脈側に空気が到達した場合に初めて送血停止が適応となる。
選択肢別解説
正しい。空気誤送は貯血槽の液面低下以外にも、脱血側の陰圧(VAVD)による吸気、回路接続部の微小リーク、ベント・心筋保護回路からの逆流やポンプ逆転、人工肺での脱ガスなど多経路で発生し得る。したがって貯血槽が完全に空でなくても空気が動脈側へ移行する危険はある。常にエアトラップ・フィルタ・監視を併用し、流量と陰圧の整合、接続部の点検を行う。
誤り。動脈解離が発生・疑われる場面で送血流量を増やせば解離腔へ灌流が集中し解離が進展する危険が高い。適切な対応は送血流量を低下または停止し、動脈圧を下げた上で送血部位変更(例:腋窩・大腿)、低体温化や循環停止の準備、TEEや圧ラインでの評価を行うことである。
誤り。脱血不良に対してカニューレをむやみに深く挿入すると、血管壁への貼り付きや狭小部への迷入でさらに流入が悪化することがある。まずはカニューレの前後位置を微調整(多くはやや引き戻す)、屈曲や陰圧過大の是正、循環血液量の補充、VAVD設定やポンプ流量の整合、必要に応じ二本目カニューレの追加などで対処する。
誤り。人工肺内血栓形成が疑われる場合、最優先は人工肺(必要により回路)の速やかな交換である。ACT低下など抗凝固不足があれば是正(ヘパリン追加)するが、追加投与のみでは既に形成された血栓は解消せず、塞栓やガス交換・圧損悪化の危険が続く。
誤り。脱血回路の持続的微小気泡は陰圧過大や接続部の吸気を示唆するため、まず脱血側の原因是正(陰圧や送血流量の調整、接続部の締結確認、容量補充、カニューレ位置調整等)を行う。動脈側への空気到達が確認・疑われる場合に送血停止を行うのであって、微小気泡が脱血側に限局する段階で直ちに送血を停止するのは一般的対応ではない。
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解説
遠心ポンプは非閉塞性の回転流ポンプで、流量は回転数だけでなく回路抵抗や血液粘度などの後負荷に依存する。したがって同じ回転数でも後負荷が変われば流量は変動する。非閉塞性ゆえにポンプ停止や低回転、または患者側圧がポンプ発生圧を上回る条件では逆流が起こり得るため、運用上は逆流防止弁やクランプで安全対策を行う。ローラポンプに比べ、圧閉による強い機械的ストレスがないため血液損傷(溶血)は一般に軽度とされる。一方、空気を巻き込むと脱プライミング(de-prime)を起こして送血が低下・停止するため、空気混入が多い吸引回路用途には適さず、またチューブ圧閉度の調整は不要である。以上より、正しいのは3、4、5である。
選択肢別解説
誤り。遠心ポンプは空気混入に弱く、空気を吸引すると脱プライミング(de-prime)で送血が低下・停止する。吸引回路は気泡混入が避けられないため、通常はローラポンプが用いられ、遠心ポンプは適さない。
誤り。チューブ圧閉度の調節が必要なのはローラポンプである。遠心ポンプは非閉塞性で、チューブを圧閉して送液する機構ではないため圧閉度調整は不要。
正しい。遠心ポンプは非閉塞性で、ポンプ発生圧が患者側の後負荷より低い場合や低回転・停止時には血液が逆流し得る。実臨床では逆流防止弁やラインクランプで対策する。
正しい。遠心ポンプはローラポンプのような圧閉による強い機械的ストレスが少なく、一般に血液損傷(溶血)はローラポンプより軽度とされる。高回転・高せん断での過度運転は別だが、通常運用での比較では遠心ポンプが有利。
正しい。遠心ポンプは後負荷依存性の流量特性を示し、同じ回転数でも回路抵抗や末梢血管抵抗、血液粘度が変わると流量が変化する。後負荷増大で流量は低下する。
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解説
「外部灌流」は血液が多数の細管(多管構造)の外側(シェル側)を流れる方式を指す。体外循環用の熱交換器では、温水が金属製の細管内部を流れ、血液はその外側(細管の外表面を洗うように)を灌流して熱を伝達するため、血液は多管構造の“外部”を流れる。一方、血漿分離用フィルタ、限外ろ過装置、血液濃縮器(ヘモコンセントレータ)、血液透析用ダイアライザはいずれも中空糸(多数の細管)の“内腔”に血液を通す内部灌流であり、膜を介して血漿・ろ過液・透析液側へ物質や水分を移動させる構造である。したがって該当するのは熱交換器である。
選択肢別解説
血漿分離用フィルタは中空糸の内腔に血液を通し、膜を介して外側へ血漿成分を分離する内部灌流構造である。したがって設問の「多管構造の外部を灌流」には該当しない。
体外循環で用いる熱交換器は、多数の細管内を温水(または冷水)が流れ、血液はその細管の外側(シェル側)を灌流して熱交換を行う外部灌流構造である。よって設問に合致する。
限外ろ過装置は中空糸の内腔に血液を流し、膜外側へ溶質・水分をろ過として移動させる内部灌流である。外部灌流ではない。
血液濃縮器(ヘモコンセントレータ)は限外ろ過型の濃縮器で、中空糸内腔に血液を通し、膜外に除水する内部灌流である。外部灌流には該当しない。
血液透析用ダイアライザは多数の中空糸の内腔を血液が流れ、外側を透析液が流れる内部灌流構造である。よって「多管構造の外部を血液が灌流」には当たらない。
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解説
外部灌流型膜型人工肺は、中空糸の内側をガス、外側(シェル側)を血液が流れる構造で、血液流路断面が広くとれるため酸素ator自体の圧力損失が小さい。これにより落差脱血のように限られた駆動圧で回す場面に適する。さらに、血液側の境界層を破り物質移動を高めるため、スペーサや流路形状で擬似乱流・二次流を生じるよう設計されており、層流とするのは不利である。臨床では外部灌流型が広く用いられている。したがって「血液の流れは層流になる」は誤り。
選択肢別解説
正しい。外部灌流型ではガスは中空糸の内腔、血液は中空糸の外側(シェル側)を流れる設計である。これにより血液が多数の中空糸束の外表面を洗い、ガス交換が行われる。
正しい。外部灌流型は酸素ator内部の流路断面が広く、圧力損失が小さいため、重力差を用いる落差脱血の限られた駆動圧を温存しやすく、適している(ただし回路全体ではカニューレ抵抗など他要素も影響する)。
正しい。内部灌流型は血液が細い中空糸内を通過するため流路抵抗が大きく圧力損失が増えやすい。一方、外部灌流型はシェル側を血液が流れるため流路抵抗が小さく、一般に内部灌流型より圧力損失が小さい。
正しい。体外循環用の膜型人工肺では、低圧損かつ高いガス交換能・操作性を背景に、外部灌流型が広く臨床で用いられている。設問の一般的記述として妥当である。
誤り。ガス交換効率を高めるため、血液側はスペーサや流路形状で境界層を破り、擬似乱流・二次流が生じるように設計される。層流(滑らかな流れ)では物質移動が低下し不利となる。
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解説
$人工心肺では、動脈血酸素分圧(PaO2)は人工肺への吹送ガス中の酸素濃度(FiO2)で調整し、二酸化炭素分圧(PaCO2)は吹送ガス流量(スウィープ流量)で調整するのが基本である。体外循環の開始は、脱血が安定していることと血圧 \cdot 回路内圧 \cdot 気泡の有無を確認しながら低流量で立ち上げ、部分体外循環を経て目標灌流量(成人では灌流指数およそ2.2〜2.4 L/min/m^2を目安)に段階的に到達する。したがって「至適灌流量で体外循環を開始する」は不適切で誤り。上行大動脈遮断時は、一時的に送血流量(ひいては灌流圧)を下げることで遮断鉗子の適用を安全にし、大動脈壁への負荷や塞栓リスクを抑える。心停止中の左心腔の過伸展防止にはベント吸引で減圧する。離脱時はまず脱血(静脈側)を絞って生体側へ容量を戻し、自己拍出 \cdot 血圧を確認しながらポンプ流量を段階的に下げる。$
選択肢別解説
正しい。PaO2は人工肺に送る吹送ガス中の酸素濃度(FiO2)の増減で調整する。なおPaCO2は主に吹送ガス流量(スウィープ流量)で調整する点を併せて理解する。
$誤り。体外循環は低流量で立ち上げ、脱血の安定 \cdot 圧モニタ \cdot 回路内の安全を確認しつつ、部分体外循環を経て目標灌流量(成人での目安は灌流指数2.2〜2.4 L/min/m^2程度)へ段階的に増加させる。開始直後から至適灌流量とするのは急激な循環変動や回路トラブル時の危険を高めるため不適切。$
正しい。上行大動脈遮断時には一時的に送血流量を下げ、灌流圧を低めにして遮断鉗子の挿入・適用を容易かつ安全にする。高圧のまま遮断すると大動脈損傷や塞栓のリスクが増す。
正しい。心停止中に左心系へ還流する血液や気泡で過伸展・肺うっ血を来さないよう、左房や左室のベント吸引で心腔内を減圧する。吸引過多による空気誤吸引や組織損傷に注意する。
正しい。離脱開始時はまず脱血量(静脈側)を減らして心臓へ容量を戻し、自己拍出・血圧・充満圧を確認しながら送血流量を段階的に下げていく。これにより循環をスムーズに生体側へ移行できる。
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