臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
臨床工学技士は臨床工学技士法(昭和62年法律第60号)に基づき、医師の指示の下で生命維持管理装置(人工呼吸器、血液浄化装置など)の操作・保守点検を行う。関連する厚生労働省の通知・臨床工学技士基本業務指針(2010)等では、装置操作に不可分に伴う行為(既留置ラインからの採血、人工呼吸管理中の気管吸引、透析時のシャント穿刺など)は、院内手順と医師の包括的・具体的指示に基づき実施可能と整理されている。一方、ペースメーカ植込み術中のジェネレータと電極リードの接続は手術手技であり、医師のみが実施する医療行為に当たるため、臨床工学技士の業務には含まれない。したがって業務に含まれないのは選択肢5である。
選択肢別解説
動脈に既に留置されたカテーテル(Aライン)からの採血は穿刺を伴わず、人工呼吸管理や血液浄化など装置管理に不可分な検査(動脈血ガス分析等)のために、医師の指示および院内手順の下で臨床工学技士が実施可能と整理されている。よって業務に含まれる。
人工呼吸器の設定(運転条件の設定・変更)は生命維持管理装置の操作そのものであり、医師の指示の下で臨床工学技士が行う中核業務である。安全確認や患者状態の評価と合わせて実施する。よって業務に含まれる。
人工呼吸管理中の気管吸引は、装置管理と患者安全確保のために必要時に行われる行為で、医師の包括的指示と院内手順に基づき臨床工学技士が実施可能とされている(適切な教育・訓練、感染対策の下で実施)。よって業務に含まれる。
血液浄化装置の運用に際し、内シャント(AVF/AVG)への穿刺は回路確立のために必要となる。これは医師の指示と施設の手順に基づき臨床工学技士が実施可能と整理されている(適切な訓練・適応評価が前提)。よって業務に含まれる。
ペースメーカ植込み時のジェネレータと電極リードの接続は植込み手術の一部であり、侵襲的な手術手技として医師のみが行う医療行為である。臨床工学技士は術中の機器準備・作動確認やプログラマ操作等で支援はできるが、当該接続手技は業務範囲外である。したがって本問で業務に含まれない選択肢である。
解説
臨床工学技士は、臨床工学技士法および基本業務指針により、医師等の具体的な指示のもとで生命維持管理装置の操作・保守点検およびそれに付随する補助的行為を行う。気管挿管は気道確保のための侵襲的な医行為であり、原則として医師(または法令上の限定要件下の救急救命士など)に限られるため、臨床工学技士は行うことができない。他方、人工心肺運転条件の調整、除細動器の操作条件設定、条件付きMRI対応ペースメーカに関する検査前の機器・条件確認、人工心肺業務における既存の留置カテーテルからの採血などは、医師の具体的指示と院内手順に従って実施可能である。したがって「人工呼吸業務における気管挿管」が行うことができない業務に該当する。
選択肢別解説
人工心肺業務に関連し、既に留置されている動脈・静脈カテーテルや体外循環回路からの採血は、血液ガス分析・電解質測定等のために医師の具体的指示のもとで実施可能と解される。新たな穿刺・留置は行えないが、既存ラインからの採血という補助的行為は業務の範囲内。
人工心肺装置の血液流量、ポンプ回転数、吹送ガス流量、酸素濃度などの運転条件の調整は、医師の具体的指示のもとで臨床工学技士が行う中心的業務であり、実施可能である。
除細動器のエネルギー設定、同期・非同期などの操作条件の設定は、医師の具体的指示のもとで臨床工学技士が行うことができる。除細動の適応判断は医師が行うが、操作条件の設定・変更自体は業務範囲に含まれる。
気管挿管は侵襲的な気道確保手技であり医行為に該当する。臨床工学技士はこれを実施できない。一方で、挿管後の人工呼吸器の設定・接続・監視などは医師の具体的指示のもとで実施可能である。
条件付きMRI対応ペースメーカに関して、機種や適用条件の確認、必要資材・プログラマの準備状況確認などの検査前確認は、医師の具体的指示のもとでの植込み型機器管理業務として実施可能である(最終的な適応判断やデバイス設定変更は施設規定に従い医師等が担う)。
解説
臨床工学技士の業務は、臨床工学技士法第2条に基づく「医師等の指示の下で行う診療の補助」であり、厚生労働省「臨床工学技士基本的業務指針(2010)」に典型業務が整理されている。人工呼吸器の設定(1回換気量など)、導出電極・対極板の装着、血液浄化におけるバスキュラーアクセス(内シャント)への穿刺・抜針、体外式ペースメーカ関連の心内電位や刺激閾値の測定・記録は、医師の具体的指示の下で実施し得る診療の補助に含まれる。一方、気管切開チューブの挿入は外科的・侵襲的な医行為であり、医師が行うべき手技で臨床工学技士の業務には含まれない。したがって「含まれない」のは気管切開チューブの挿入である。
選択肢別解説
人工呼吸器の1回換気量など運転条件の設定・変更は、医師の具体的指示の下で行う診療の補助として業務に含まれる。基本的業務指針(呼吸療法業務)に合致する。
気管切開チューブの挿入は外科的・侵襲的手技であり、医師が行う医行為である。臨床工学技士の業務(診療の補助)には含まれないため、本設問で問う「含まれない」に該当する。
導出電極(心電図電極等)の皮膚への装着は、機器操作・装着に関する診療の補助として業務に含まれる。医師の指示の下に適切な部位・皮膚処置を行うことが求められる。
血液浄化におけるバスキュラーアクセス(内シャント)への穿刺・抜針は、基本的業務指針(血液浄化業務)で臨床工学技士が医師の具体的指示の下で行い得る手技として明記されており、業務に含まれる。
体外式ペースメーカ業務では、心内電位の測定・記録や刺激閾値評価などを医師の指示の下で行うことが想定され、基本的業務指針(循環器関連業務)に含まれる。
解説
臨床工学技士は、医師の指示の下で生命維持管理装置の操作・保守点検等を行うが、身体への新たな侵襲(気管挿管、血管への直接穿刺、ECMOカニューレ挿入などの医行為)は業務として認められていない。一方、既に確保された気道・血管ルートを前提とした装置関連のケア(人工呼吸中の気道内吸引、動脈留置カテーテルからの採血など)は、厚生労働省通知「臨床工学技士の業務に関する基本的な考え方」(2010年)等により、医師の指示の下で実施が認められている。従って、認められていないのは1(気管挿管)、4(血管への直接穿刺による輸血)、5(ECMO用カニューレの挿入)である。
選択肢別解説
認められていない。気管挿管は新たな気道確保を伴う侵襲的医行為であり、医師が行う。臨床工学技士は人工呼吸器の準備・設定・管理や挿管補助は担うが、挿管そのものは業務外である。
認められている。人工呼吸装置使用時の喀痰吸引(気道内吸引)は、装置管理に付随するケアとして医師の指示の下で実施可能と整理されている(2010年の厚労省通知)。適切な無菌操作・モニタリングを行うことが前提。
認められている。既に留置された動脈カテーテルからの採血は、装置管理や検査のための手技として医師の具体的指示の下で実施可能とされている。新たな動脈穿刺を行うことは含まれない点に留意する。
認められていない。血管への直接穿刺による輸血は新たな穿刺を伴う侵襲的医行為であり、臨床工学技士の業務範囲外である(医師が実施)。既存ルートへの装置接続・管理とは区別される。
認められていない。ECMO用カニューレの体内挿入(血管穿刺・留置)は医師が行う。臨床工学技士は体外循環回路の準備・操作・保守や治療中の管理を担うが、カニュレーションは業務外である。
解説
臨床工学技士(CE)の業務は、臨床工学技士法第2条第2項および施行令(政令)第1条に基づき、生命維持管理装置の操作・保守点検・安全管理、ならびに人工腎臓装置等の体内に設置された血管手術によるシャントや透析カテーテルへの回路先端部(穿刺針等)の接続・除去などの特定の補助行為が含まれる。一方、観血式動脈圧モニタ用の動脈針を新たに穿刺する行為は、侵襲を伴う医行為でありCEの法定業務範囲外である。人工呼吸管理中の気管チューブからの喀痰吸引は、医師の具体的指示の下で、人工呼吸器管理の一環としてCEが行い得ると整理されている。医療機器の選定・導入時のベンチテストは医療機器の安全管理・性能評価業務に含まれる。血液浄化回路先端部のシャントからの除去は、法令で明示された接続・除去に該当する。植込み型ペースメーカのプログラミング用ヘッドの装着も、機器接続・操作に関する業務として位置付けられている。よって、業務でないのは動脈針の穿刺である。
選択肢別解説
人工呼吸器管理の一環として、医師の具体的な指示の下で気管内チューブからの喀痰吸引をCEが実施することは、基本業務指針等で整理されており妥当である。したがって「業務でない」には当たらない。
IABP装置の購入・導入時に性能評価や比較のために実施するベンチテストは、医療機器の安全管理・受入点検・選定支援に関わるCEの業務に含まれる。よって業務に該当する。
観血式動脈圧モニタ用の動脈針を新たに穿刺する行為は、侵襲を伴う医行為であり、臨床工学技士法の業務範囲に含まれない。したがって、CEの業務ではない(本問の該当肢)。
臨床工学技士法施行令第1条に基づき、人工腎臓装置の穿刺針その他の回路先端部を体内のシャントや透析カテーテルに接続し、またはこれらから除去する行為はCEの業務に含まれる。従って、回路先端部の内シャントからの抜去は業務である。
植込み型ペースメーカのプログラミングに用いるヘッド(プログラミング用ヘッド)の装着・除去や接続機器の操作は、CEの機器操作・接続に関する業務として認められている。よって業務に含まれる。
解説
臨床工学技士は医師の指示の下で生命維持管理装置の操作および身体への接続等の一部侵襲的手技を行えるが、気道確保そのもの(気管内挿管や気管カニューレ挿入)は医師が行う医行為に該当し、臨床工学技士は行えない。具体的には、鼻カニューレの口・鼻への接続、血液浄化装置の穿刺針の内シャントへの穿刺・抜去、導出電極の装着、心電計の監視などは業務範囲内(医師の指示の下で可)と整理されている。一方、気管チューブの気管内への挿入は不可であり、本問の正答はこれである。
選択肢別解説
酸素吸入用鼻カニューレの先端部を口・鼻へ接続する行為は、生命維持管理装置(人工呼吸関連機器)の体表への接続に該当し、医師の指示の下で臨床工学技士が行える。したがって「行えない業務」ではない。
血液浄化装置の先端部(穿刺針)を内シャントへ穿刺・抜去する行為は、血液浄化業務における体内への接続として臨床工学技士の業務に含められており、医師の指示の下で実施可能と整理されている。よって「行えない業務」ではない。
気管チューブの気管内への挿入(気管内挿管)は、気道確保のための医行為であり医師が行うべき手技で、臨床工学技士は実施できない。したがって本選択肢が「行えない業務」に該当する。
生命維持管理装置の導出電極(例:心電図電極)の患者皮膚への接続は、装置の体表への接続として医師の指示の下で臨床工学技士が行える。したがって「行えない業務」ではない。
生命維持管理装置に組み込まれた心電計の監視は、装置の操作・監視に該当し、医師の指示の下で臨床工学技士が行える。よって「行えない業務」ではない。
解説
臨床工学技士法第2条は、臨床工学技士の業務を「医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作および保守点検」と規定している。厚生労働省の業務指針でも、患者の身体に直接侵襲する医行為は原則行わず、装置の管理・安全な運用に必要な範囲での行為(回路先端部での接続・除去、装置側のサンプリングポート等からの採血)は認められると整理されている。したがって、人工心肺装置の操作に必要な情報を得るための装置からの採血、血液浄化装置回路先端部と外シャントの接続、人工呼吸器回路先端部と気管チューブの接続は実施可能である。一方、気管内吸引のような看護業務や、装置を介さない血管カテーテルからの採血は臨床工学技士の業務範囲外である。
選択肢別解説
不可。気管内および気管挿管内の吸引は、患者の気道に直接介入する看護・医療行為であり、臨床工学技士の「生命維持管理装置の操作・保守点検」の範囲を逸脱する。業務指針でも直接侵襲的処置は原則行わないとされる。
可。人工心肺装置の安全運転管理に必要な情報(例:血液ガス、ACT 等)を得る目的で、装置(回路・リザーバ・サンプリングポート等)から採血する行為は、生命維持管理装置の操作に付随する行為として認められている。
可。血液浄化装置の回路先端部と外シャント(既設バスキュラーアクセス)との接続は、装置先端部での接続・除去として業務指針で認められる範囲に該当する。穿刺の是非とは別概念であり、既設アクセスへの接続は実施可能。
可。人工呼吸装置回路の先端部を気管チューブ(または気管切開カニューレ)に接続・除去する行為は、装置の安全な運用に不可欠であり、回路先端部での接続として認められている。
不可。血圧測定用に単独で留置された血管カテーテルからの採血は、装置を介さない直接の人体への侵襲行為であり、臨床工学技士の業務範囲には含まれない。
解説
臨床工学技士は、医師の指示の下で生命維持管理装置の操作・保守点検に加え、これに密接に関連する診療の補助(法令・施行規則で列挙された行為)を行うことができる。具体例として、人工呼吸器管理に伴う気道内吸引や、既に体内に留置された動脈ライン(動脈留置カテーテル)からの採血は実施可能と整理されている。一方、血管に直接穿刺しての採血や、気管挿管のような高度侵襲手技、また診断目的の検査補助は臨床工学技士の業務範囲外である。以上より、正答は4と5である。
選択肢別解説
誤り。臨床工学技士は血管に直接穿刺して採血する行為(静脈・動脈いずれも)を業として行うことは認められていない。採血が許容されるのは、既に医師等により留置されたカテーテル等からの採血に限られる。
誤り。気管挿管は高度な侵襲手技であり、医師が行うべき手技で臨床工学技士の業務には含まれない。臨床工学技士は人工呼吸器の操作・管理は行えるが、挿管そのものは実施しない。
誤り。臨床工学技士の診療の補助は、生命維持管理装置の操作・管理に密接に関連する治療的行為に限定される。診断のための検査を目的とした補助は業務範囲に含まれない。
正しい。動脈留置カテーテル(Aライン)からの採血は、医師の具体的指示の下で行う診療の補助として許容される。新たに穿刺して採血するのではなく、既に留置されたラインから採血する点が業務範囲内とされる根拠である。感染対策・空気混入防止・ライン閉塞防止などの安全管理を徹底して実施する。
正しい。人工呼吸器使用時の気道内吸引による喀痰除去は、人工呼吸器管理に密接に関連する診療の補助として医師の指示下に実施可能である。閉鎖式吸引の使用、事前酸素化、バイタル監視、無菌操作などの手順を遵守する。
解説
臨床工学技士の業務は、臨床工学技士法および施行令、並びに厚生労働省通知(医政発0430第1号、平成22年4月30日)等で整理されている。医師の指示の下で、生命維持管理装置の操作だけでなく、一定の侵襲的手技が診療の補助として実施可能と明確化されており、代表例が「人工呼吸器使用時の喀痰吸引」「留置カテーテルからの採血(動脈ラインを含む)」「血液浄化に関わるバスキュラーアクセス(内シャント)への穿刺・抜針」である。一方、気管挿管や(新規の)直接動脈穿刺は医行為として医師等に限られ、臨床工学技士は行わない。
選択肢別解説
誤り。気管挿管は侵襲性・リスクが高い医行為であり、原則として医師(救急救命士は一定条件下で限定的に実施可)に限られる。臨床工学技士に認められていない。
正しい。厚労省通知(医政発0430第1号、2010年)で、医師の指示の下、適切な教育・手順に基づく人工呼吸器使用中の患者に対する喀痰吸引(気管内チューブや気管カニューレから)が診療の補助として実施可能と整理されている。
正しい。医師の指示の下で留置カテーテルからの採血は実施可能と整理されている(医政発0430第1号)。動脈留置カテーテル(動脈ライン)からの採血も含まれるが、新規に動脈を穿刺して採血することは含まれない。
正しい。臨床工学技士施行令により、血液浄化等に関連してバスキュラーアクセス(内シャント等)への穿刺・抜針は医師の指示の下で実施可能とされている。透析関連業務として広く行われている。
誤り。新規の動脈穿刺(直接動脈を穿刺してカニュレーションや採血を行うこと)は医行為であり、臨床工学技士には認められていない。動脈ラインが既に留置されている場合の採血とは区別される。
解説
臨床工学技士は医師の指示の下で生命維持管理装置の操作等を行うが、このうち患者の身体状態に直接影響を及ぼす行為(例:血液・気体の抜き取り・注入、生命維持管理装置の運転条件の設定・変更、電気的刺激の付与など)は「医師の具体的な指示」が必要と整理されている(臨床工学技士法の趣旨および厚生労働省『臨床工学技士基本業務指針(2010)』)。よって、動脈留置カテーテルからの採血、血液浄化装置の運転条件の変更、人工呼吸装置の運転条件の設定は具体的指示を要する。一方、回路の組み立てや装置の消毒などの保守・準備業務は、手順書や包括的指示のもとで実施される範囲であり、通常は「医師の具体的な指示」を要しない。
選択肢別解説
人工呼吸装置の回路の組み立ては、患者の運転条件設定や薬剤投与に当たらない準備・保守の業務であり、通常は手順書や包括的指示の範囲で実施されるため、医師の具体的な指示を要する行為とはいえない。
動脈留置カテーテルからの採血は「身体からの血液の抜き取り」に該当し、患者安全に直結する侵襲的行為であるため、医師の具体的な指示が必要とされる。採血量・目的・実施時期等について明確な指示のもとで行う。
血液浄化装置の運転条件(例:血流量、透析液流量、限外濾過量等)の変更は除水量や電解質バランスに直接影響し、患者の全身状態に直結するため、医師の具体的な指示が必要である。
人工呼吸装置の運転条件(例:一回換気量、呼吸回数、PEEP、FiO2 等)の設定はガス交換や循環動態に直接影響するため、医師の具体的な指示が必要である。
高気圧酸素治療装置の消毒は機器の保守・感染対策の一環であり、患者の生理に直接影響を与える操作ではないため、一般に医師の具体的な指示は不要と解される(施設の手順書や包括的指示に従う)。
解説
臨床工学技士法第2条は、臨床工学技士の業務を「医師の指示の下に行う生命維持管理装置の操作」と「医療機器の保守点検」に大別している。患者の生体機能に直接影響する装置操作や、身体からの血液・気体を抜き取る行為は、個々の患者の状態に応じた具体的な医師の指示が必要となる。これに該当するのが、人工呼吸器の酸素濃度設定変更、動脈留置カテーテルからの採血、血液浄化装置の運転条件変更である。一方、装置の消毒や点検項目の設定変更などは保守点検業務であり、医師の具体的な指示は不要である。したがって、具体的指示が必要なのは1、2、3である。
選択肢別解説
正しい(医師の具体的指示が必要)。人工呼吸装置の酸素濃度設定は患者の酸素化に直結する生命維持管理装置の運転条件であり、個々の患者の病態に応じた具体的な医師の指示の下で変更すべき業務である(臨床工学技士法第2条の趣旨および基本業務指針)。
正しい(医師の具体的指示が必要)。動脈留置カテーテルからの採血は「身体からの血液の抜き取り」に該当し、侵襲性を伴う行為であるため、臨床工学技士が行う場合は医師の具体的指示の下で実施する(基本業務指針の趣旨)。
正しい(医師の具体的指示が必要)。血液浄化装置(透析等)の運転条件(血流量、透析液流量、除水量・時間など)の変更は患者の循環動態や溶質・水分除去に直接影響するため、生命維持管理装置の操作として医師の具体的指示が必要である。
誤り(医師の具体的指示は不要)。高気圧治療装置内の消毒は装置の衛生管理・保守に属し、患者個別の治療条件設定ではないため、臨床工学技士が自律的に実施できる保守点検業務である。
誤り(医師の具体的指示は不要)。人工心肺装置の点検項目の設定・変更は装置の保守点検に該当し、治療中の患者に対する運転条件変更ではないため、臨床工学技士が独立して行える業務である。
解説
臨床工学技士の業務は、臨床工学技士法に基づき、医師等の指示の下で診療の補助として生命維持管理装置(人工呼吸器、人工心肺、透析装置、補助循環装置など)の操作を行うこと、ならびにこれら装置の保守点検・安全管理を行うことが中核である。診察は医師の業務(医師法上の医業)であり、臨床検査(生理機能検査)は主として臨床検査技師の業務領域、医薬品・医薬部外品の管理は薬剤部門(薬剤師)を中心とする業務で、いずれも臨床工学技士の法定業務ではない。従って、正答は「生命維持管理装置の操作」と「生命維持管理装置の保守点検」である。
選択肢別解説
誤り。患者の病状診察(診断・治療方針の決定を含む診療行為)は医師法に基づく医師の業務であり、臨床工学技士は行わない。
誤り。生理機能検査は主として臨床検査技師の業務領域であり、臨床工学技士の法定業務ではない。臨床工学技士は機器の操作・保守点検が中心である。
正しい。臨床工学技士は医師等の指示の下、診療の補助として人工呼吸器、人工心肺、血液浄化装置などの生命維持管理装置を操作することが法で定める業務である。
正しい。生命維持管理装置の保守点検・安全管理は臨床工学技士の重要な業務に含まれる。適切な管理により機器の性能を維持し、患者安全を確保する。
誤り。医薬部外品の管理は薬剤部門(薬剤師)を中心とする業務であり、臨床工学技士の法定業務ではない。
解説
臨床工学技士は臨床工学技士法に基づき医師の指示の下で業務を行う。2010年策定の臨床工学技士基本業務指針では、患者の安全に直結する装置の運転条件の設定・変更などは「書面等」による医師の具体的指示が必要と整理されている。一方で、反復的・日常的に必要となる行為や包括的指示の範囲で行える行為は、個別の具体的指示を逐一書面で受けることを要しない。これに照らすと、人工心肺装置の血液流量条件の変更や高気圧酸素治療の加圧条件設定は具体的指示(書面等)が必要であるのに対し、人工呼吸中の喀痰吸引、血液浄化での穿刺針抜去後の止血、ペースメーカのプログラミングヘッド設置は包括的指示や監視行為として実施可能である(ただし設定変更は別途具体的指示が必要)。
選択肢別解説
人工呼吸中の喀痰吸引は、呼吸療法の安全確保のため反復的に必要となる処置であり、基本業務指針で包括的指示の範囲で適時実施可能と整理されている。したがって「書面等による具体的指示」を毎回要する行為ではない。
人工心肺装置の運転条件(例:血液流量、送血圧、酸素化条件など)の変更は循環動態に直接影響し患者の生命に直結するため、基本業務指針上、医師の具体的な指示を要し、書面等による明示が求められる。よって該当する。
高気圧酸素治療の運転条件(加圧時間、到達圧、減圧プロファイル等)の設定は安全性に重大な影響を及ぼすため、医師の具体的指示(書面等)が必要とされる。よって該当する。
血液浄化における穿刺針抜去後の止血は、当該療法の終了時に通常必要となる処置であり、医師の包括的指示の範囲で実施できると整理されている。従って、個別の書面等による具体的指示を要する行為には当たらない。
植込み型心臓ペースメーカのプログラミングヘッドの設置は、データ読出し・監視のための準備行為であり、設置自体は具体的指示を要しない。なお、パラメータの設定・変更を行う場合は医師の具体的指示が必要である。
解説
臨床工学技士は、医師の具体的な指示の下で生命維持管理装置(人工心肺を含む)の操作に付随する行為を行える。具体的には、回路への薬剤注入や、患者に接続された回路・留置されたカニューレからの採血は許容される(臨床工学技士法施行規則第32条に規定される「身体への注入」「身体からの採血」に該当)。一方、患者の血管に新たに穿刺して採血する行為は臨床工学技士の業務範囲外である。また、術野(無菌野)でのカニューレと回路の直接接続は手術手技に密接に属し、原則として医師や術野スタッフが行うべきで、臨床工学技士の単独業務とはされない。したがって誤っているのは「術野でカニューレを回路に接続する」(4)と「開始前に患者の静脈から採血を行う」(5)である。
選択肢別解説
回路からの薬剤注入は、医師の具体的な指示の下で生命維持管理装置の操作として実施可能である。人工心肺の充填液や回路内へ薬剤(ヘパリン等)を注入する実務は広く行われており、施行規則第32条の「身体への注入」に準じて認められる。よって誤りではない。
留置カニューレ(医師が挿入・固定した血管内カニューレ)からの採血は、新たな穿刺を伴わず、患者に接続されたライン・回路からの採血として、医師の具体的指示の下で許容される(施行規則第32条「身体からの採血」)。したがって臨床工学技士の業務として妥当であり、誤りではない。
人工心肺回路の充填(プライミング)は臨床工学技士の中核業務であり、適切な溶液や薬剤を用いて気泡除去、回路機能確認を行う。医師の指示の下で実施する通常業務であるため、誤りではない。
術野(無菌野)でカニューレを回路に直接接続する行為は、手術操作に密接に関連する。臨床工学技士は非滅菌側で回路準備・作動管理を担うのが原則であり、術野での直接接続は医師(または術野スタッフ)が行うべき範疇で、臨床工学技士の単独業務としては不適切。よって誤りである。
「患者の静脈から採血を行う」は新たな静脈穿刺を伴う行為であり、臨床工学技士の業務範囲外。臨床工学技士に許容される採血は、医師の具体的指示の下で生命維持管理装置に接続された回路や留置ラインからの採血に限られる。したがって誤りである。