臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
臨床工学技士法では、臨床工学技士の業務は医師等の指示の下で行うとされ、特に患者の生体に直接影響する運転条件の設定・変更や、体外回路への薬剤・補液量の決定や変更といった医療行為に直結する操作は、医師の具体的で検証可能な指示(一般に指示書=書面指示)を要するという運用指針が示されている。したがって、人工心肺装置の条件設定の変更や血液浄化療法における補液投与量の変更は指示書が必要となる。一方、内シャントへの穿刺は医師の指示の下で実施されるが、標準的には口頭や包括的指示の範囲で扱われ、個別の書面指示を必須としない運用が一般的である。体外式ペースメーカの始業点検や高気圧酸素治療における条件設定の確認といった治療前の点検・確認業務は、患者個別の治療条件を新たに決定・変更する行為ではないため、指示書までは要求されない。
選択肢別解説
内シャントへの穿刺は、医師の指示の下で臨床工学技士が実施し得るが、通常は口頭ないし包括的指示で運用され、個別の書面指示(指示書)を必須とはしないとされる。よって「指示書が必要」に該当しない。
人工心肺装置の送血流量・送血圧・ガス流量などの運転条件を設定・変更する行為は、患者の循環やガス交換に直接影響するため、医師の具体的な書面指示(指示書)が必要とされる。よって本設問の正解に該当する。
血液浄化療法での補液(薬液)投与量の決定・変更は、体液バランス・循環動態に直接影響するため、医師の具体的な書面指示(指示書)が必要とされる。よって本設問の正解に該当する。
体外式ペースメーカの始業点検は、治療前の安全性・作動性の確認であり、患者個別の治療条件を新たに設定・変更する行為ではないため、医師の指示書は不要である。
高気圧酸素治療における条件設定の『確認』は、治療前の点検・確認に相当し、個別の条件を新たに決定・変更する行為ではないため、医師の指示書は不要である(実際に条件を設定・変更する場合には医師の具体的指示が前提)。
解説
臨床工学技士法第2条は、臨床工学技士の業務を「医師の指示の下に行う生命維持管理装置の操作」と「医療機器の保守点検」に大別している。患者の生体機能に直接影響する装置操作や、身体からの血液・気体を抜き取る行為は、個々の患者の状態に応じた具体的な医師の指示が必要となる。これに該当するのが、人工呼吸器の酸素濃度設定変更、動脈留置カテーテルからの採血、血液浄化装置の運転条件変更である。一方、装置の消毒や点検項目の設定変更などは保守点検業務であり、医師の具体的な指示は不要である。したがって、具体的指示が必要なのは1、2、3である。
選択肢別解説
正しい(医師の具体的指示が必要)。人工呼吸装置の酸素濃度設定は患者の酸素化に直結する生命維持管理装置の運転条件であり、個々の患者の病態に応じた具体的な医師の指示の下で変更すべき業務である(臨床工学技士法第2条の趣旨および基本業務指針)。
正しい(医師の具体的指示が必要)。動脈留置カテーテルからの採血は「身体からの血液の抜き取り」に該当し、侵襲性を伴う行為であるため、臨床工学技士が行う場合は医師の具体的指示の下で実施する(基本業務指針の趣旨)。
正しい(医師の具体的指示が必要)。血液浄化装置(透析等)の運転条件(血流量、透析液流量、除水量・時間など)の変更は患者の循環動態や溶質・水分除去に直接影響するため、生命維持管理装置の操作として医師の具体的指示が必要である。
誤り(医師の具体的指示は不要)。高気圧治療装置内の消毒は装置の衛生管理・保守に属し、患者個別の治療条件設定ではないため、臨床工学技士が自律的に実施できる保守点検業務である。
誤り(医師の具体的指示は不要)。人工心肺装置の点検項目の設定・変更は装置の保守点検に該当し、治療中の患者に対する運転条件変更ではないため、臨床工学技士が独立して行える業務である。
解説
臨床工学技士の業務は、臨床工学技士法に基づき、医師等の指示の下で診療の補助として生命維持管理装置(人工呼吸器、人工心肺、透析装置、補助循環装置など)の操作を行うこと、ならびにこれら装置の保守点検・安全管理を行うことが中核である。診察は医師の業務(医師法上の医業)であり、臨床検査(生理機能検査)は主として臨床検査技師の業務領域、医薬品・医薬部外品の管理は薬剤部門(薬剤師)を中心とする業務で、いずれも臨床工学技士の法定業務ではない。従って、正答は「生命維持管理装置の操作」と「生命維持管理装置の保守点検」である。
選択肢別解説
誤り。患者の病状診察(診断・治療方針の決定を含む診療行為)は医師法に基づく医師の業務であり、臨床工学技士は行わない。
誤り。生理機能検査は主として臨床検査技師の業務領域であり、臨床工学技士の法定業務ではない。臨床工学技士は機器の操作・保守点検が中心である。
正しい。臨床工学技士は医師等の指示の下、診療の補助として人工呼吸器、人工心肺、血液浄化装置などの生命維持管理装置を操作することが法で定める業務である。
正しい。生命維持管理装置の保守点検・安全管理は臨床工学技士の重要な業務に含まれる。適切な管理により機器の性能を維持し、患者安全を確保する。
誤り。医薬部外品の管理は薬剤部門(薬剤師)を中心とする業務であり、臨床工学技士の法定業務ではない。
解説
臨床工学技士は、医師の具体的な指示の下で生命維持管理装置(人工心肺を含む)の操作に付随する行為を行える。具体的には、回路への薬剤注入や、患者に接続された回路・留置されたカニューレからの採血は許容される(臨床工学技士法施行規則第32条に規定される「身体への注入」「身体からの採血」に該当)。一方、患者の血管に新たに穿刺して採血する行為は臨床工学技士の業務範囲外である。また、術野(無菌野)でのカニューレと回路の直接接続は手術手技に密接に属し、原則として医師や術野スタッフが行うべきで、臨床工学技士の単独業務とはされない。したがって誤っているのは「術野でカニューレを回路に接続する」(4)と「開始前に患者の静脈から採血を行う」(5)である。
選択肢別解説
回路からの薬剤注入は、医師の具体的な指示の下で生命維持管理装置の操作として実施可能である。人工心肺の充填液や回路内へ薬剤(ヘパリン等)を注入する実務は広く行われており、施行規則第32条の「身体への注入」に準じて認められる。よって誤りではない。
留置カニューレ(医師が挿入・固定した血管内カニューレ)からの採血は、新たな穿刺を伴わず、患者に接続されたライン・回路からの採血として、医師の具体的指示の下で許容される(施行規則第32条「身体からの採血」)。したがって臨床工学技士の業務として妥当であり、誤りではない。
人工心肺回路の充填(プライミング)は臨床工学技士の中核業務であり、適切な溶液や薬剤を用いて気泡除去、回路機能確認を行う。医師の指示の下で実施する通常業務であるため、誤りではない。
術野(無菌野)でカニューレを回路に直接接続する行為は、手術操作に密接に関連する。臨床工学技士は非滅菌側で回路準備・作動管理を担うのが原則であり、術野での直接接続は医師(または術野スタッフ)が行うべき範疇で、臨床工学技士の単独業務としては不適切。よって誤りである。
「患者の静脈から採血を行う」は新たな静脈穿刺を伴う行為であり、臨床工学技士の業務範囲外。臨床工学技士に許容される採血は、医師の具体的指示の下で生命維持管理装置に接続された回路や留置ラインからの採血に限られる。したがって誤りである。
解説
臨床工学技士法における生命維持管理装置は、「人の呼吸、循環または代謝の機能の一部を代替・補助する目的で使用される装置」を指す。人工呼吸器や血液浄化装置(血液吸着装置を含む)、高気圧酸素治療装置、除細動器などはこの定義に合致する。一方、結石破砕装置は結石を破砕して排出を促す治療機器であり、生命維持機能(呼吸・循環・代謝)の代替や補助を直接の目的としないため、生命維持管理装置には含まれない。
選択肢別解説
血液吸着装置は血液中の毒素・サイトカイン・薬物などを選択的に除去する血液浄化療法の装置で、腎・肝などの代謝(解毒・排泄)機能の補助・代替に位置づけられるため、生命維持管理装置に含まれる。
結石破砕装置(ESWL等)は尿路や胆道などの結石を破砕するための治療機器であり、呼吸・循環・代謝機能の代替または補助を目的としない。したがって生命維持管理装置には含まれない(本設問の正答)。
高気圧酸素治療装置は加圧環境下で高濃度酸素を投与し、組織酸素分圧を上げることで低酸素状態の改善を図る。これは広義に呼吸機能(酸素化)の補助に該当し、生命維持管理装置に含まれると整理される。
人工呼吸器は自発呼吸が不十分な患者に対し換気を提供・補助して呼吸機能を代替・補助する装置であり、生命維持管理装置の代表例である。
除細動器は致死性不整脈(心室細動・無脈性心室頻拍)に対し電気ショックで洞調律回復を図り、循環の維持・回復を目的とするため、生命維持管理装置に含まれる。
解説
誤りは選択肢2。臨床工学技士は内閣総理大臣ではなく厚生労働大臣の免許により業務を行う(臨床工学技士法第2条)。選択肢1の守秘義務は同法第40条で規定され、業務上知り得た秘密を漏らしてはならない。選択肢3の「電気的刺激負荷」に関する装置の操作は、医師の具体的指示の下で行う厚生労働省令で定める医療用装置の操作として施行規則で明確化されている。選択肢4は同法第2条に定める業務の定義そのもので、医師の指示下に生命維持管理装置の操作および保守点検を行う。選択肢5は、生命維持管理装置の身体への接続等を具体的に列挙する事項が施行令(例:第1条)に規定されており、記述は正しい。
選択肢別解説
正しい。臨床工学技士には守秘義務が課され、業務上知り得た秘密を漏らしてはならない(臨床工学技士法第40条)。なお、対象は「担当患者」に限定されず、業務上知り得た一切の秘密が含まれるが、本記述の趣旨(守秘義務が課せられること)は正しい。
誤り。臨床工学技士は厚生労働大臣の免許を受けて業務を行う(臨床工学技士法第2条)。内閣総理大臣ではない。
正しい。医師の具体的指示の下で、厚生労働省令で定める医療用装置の操作として、心臓・血管カテーテル治療等における身体への電気的刺激負荷装置の操作が認められている(施行規則の改正により明確化)。
正しい。臨床工学技士の業務は、医師の指示の下に生命維持管理装置の操作および保守点検を行うことと定義されている(臨床工学技士法第2条)。
正しい。生命維持管理装置の身体への接続等の具体的範囲は施行令に規定されている(例:施行令第1条)。したがって記述は妥当である。