臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
人工心肺装置は体外循環を担う生命維持管理装置に該当する。臨床工学技士は臨床工学技士法により、医師の指示の下で生命維持管理装置の操作および保守点検を業務として行うことができる。看護師は保健師助産師看護師法に基づき、医師(又は歯科医師)の具体的指示の下に行う「診療の補助」として、施設の手順・研修体制のもとで生命維持管理装置の操作に従事し得る。これに対し、診療放射線技師の業務は放射線の照射に限定され、薬剤師は調剤・医薬品管理が中心、救急救命士は主として病院前での救急救命処置に限られ、いずれも人工心肺装置の操作は含まれない。したがって、操作できるのは看護師と臨床工学技士である。
選択肢別解説
誤り。診療放射線技師法で定める業務の中核は、医師等の指示の下で行う放射線の人体への照射などであり、人工心肺装置を含む生命維持管理装置の操作は業務範囲に含まれない。
誤り。薬剤師法で定める業務は調剤や医薬品の供給・管理等が中心であり、人工心肺装置の操作は薬剤師の業務には位置付けられていない。
正しい。看護師は保健師助産師看護師法に基づき、医師(又は歯科医師)の指示による診療の補助を行うことができ、その範囲で施設の手順・教育のもと、人工心肺装置を含む生命維持管理装置の操作に従事し得る。独自の業務独占ではなく、医師の具体的指示と適切な体制が前提である。
正しい。臨床工学技士は臨床工学技士法により、医師の指示の下で生命維持管理装置の操作および保守点検を行うことが本来的業務であり、人工心肺装置はその代表的対象である。
誤り。救急救命士法に基づく救急救命士の業務は主として病院前での救急救命処置(一定の特定行為を含む)に限定され、人工心肺装置の操作は業務に含まれない。
解説
医薬品医療機器等法(旧薬事法)に基づき、医療機器はリスクに応じて一般医療機器(クラスI)、管理医療機器(クラスII)、高度管理医療機器(クラスIII・IV)に分類される。人工呼吸器、人工心肺装置、輸液ポンプ、除細動器はいずれも重篤な転帰に直結し得るため高度管理医療機器(多くはクラスIIIまたはIV)に位置づけられる。一方、自動電子式血圧計は管理医療機器(クラスII)であり、高度管理医療機器ではない。したがって「高度管理医療機器でない」ものは自動電子式血圧計である。
選択肢別解説
人工呼吸器は生命維持に直結する機器で、重大な危害を招き得るため高度管理医療機器(クラスIIIまたはIV)に分類される。よって設問の「高度管理医療機器でない」には該当しない。
人工心肺装置は循環・呼吸機能を代行する極めて高リスク機器であり、高度管理医療機器(通常クラスIV)に分類される。したがって「高度管理医療機器でない」には該当しない。
自動電子式血圧計は一般に管理医療機器(クラスII)であり、高度管理医療機器ではない。よって本問で問う「高度管理医療機器でない」に該当する。
輸液ポンプは薬液や輸液を一定速度で体内に注入する機器で、過量・過少投与が重篤な転帰につながり得るため、高度管理医療機器(多くはクラスIII)に分類される。したがって「高度管理医療機器でない」には該当しない。
除細動器は致死的不整脈に対し電気ショックを与える高リスク機器で、高度管理医療機器(通常クラスIV)に分類される。よって「高度管理医療機器でない」には該当しない。
解説
ME機器の保守点検は、日常点検・定期点検を通じた清掃、機能・性能確認、校正、消耗品交換など、機器を安全に運用し品質を維持するための予防的・点検的作業を指す。一方、劣化部品の修理や分解を伴う作業、構造や特性に影響し得る部位の交換は「修理(オーバーホールを含む)」に該当し、保守点検の範囲外である。特に医療機器の修理は、製造販売業者や許可を受けた修理業者等の権限で実施すべき領域であり、医療機関の保守点検業務として行うべきではない。したがって、電源プラグの修理は保守点検に含まれない。
選択肢別解説
外装の清拭は清掃に相当し、機器の汚染防止や劣化防止を目的とした典型的な保守点検業務である。よって保守点検に含まれる。
輸液ポンプの流量精度の測定は性能点検・校正に該当し、定期点検項目として保守点検に含まれる。適切な基準器や手順に従って実施する。
人工呼吸器のバクテリアフィルタは消耗品であり、所定の間隔や条件での交換は保守点検に含まれる。機器分解や修理に当たらない。
カプノメータ表示値を標準ガスで校正する作業は性能点検・校正に該当し、保守点検に含まれる。メーカー指定の標準ガス濃度と手順に従う。
人工心肺装置の劣化した電源プラグの修理は、分解・部品交換を伴う修理行為に該当し保守点検の範囲外。医療機器の修理は製造販売業者や許可を受けた修理業者の権限で実施すべきで、臨床現場の保守点検として行うべきではない。
解説
保守点検は、日常点検・定期点検・清掃・機能や安全性の確認、校正、消耗部品の交換、記録管理など、機器を良好な状態で使用し続けるための予防的・維持的な活動を指す。一方で、劣化や故障により失われた機能・性能・安全性を回復させるための部品交換や調整は修理(オーバーホール等を含む)に該当し、保守点検には含まれない。よって、劣化した電源プラグの交換のように安全性・絶縁性能の回復を目的とする行為は修理領域であり、保守点検に含まれない。清掃、消耗品(例:バクテリアフィルタ)の交換、精度の測定や校正は保守点検に含まれる。
選択肢別解説
体外式除細動器の外装の清掃は、日常的な清掃・外観点検に該当し、保守点検に含まれる。汚染の除去や外装の損傷確認は安全性確保に直結する。
人工呼吸器のバクテリアフィルタ(呼気側・吸気側等のフィルタ)は消耗部品であり、所定の交換周期や差圧上昇時に交換する。消耗品交換は保守点検に含まれる(取扱説明書に従う予防的交換)。
人工透析装置の劣化した医用プラグ(電源プラグ等)の交換は、安全性(絶縁・接地・漏電防止)や機能の回復を伴う劣化部品交換であり、修理に該当する。修理(性能・安全の回復や調整を行う行為)は保守点検には含まれない。したがって本設問で『保守点検に含まれない』ものに該当する。
輸液ポンプの送液流量精度の測定は、定期点検や校正業務の一部として行う性能確認であり、保守点検に含まれる。なお、測定の結果ずれが大きく、内部調整・部品交換で性能回復を図る行為は修理に該当するが、測定そのものは保守点検である。
心電計の記録器の校正は、計測精度を確認・補正する保守点検の代表的作業である。基準信号に対する感度・記録幅・時間軸などの確認・校正は保守点検に含まれる。
解説
臨床工学技士の免許権者は臨床工学技士法第3条により厚生労働大臣であり、都道府県知事ではないため、この記述が誤りである。臨床工学技士は法第2条で「医師の指示の下に生命維持管理装置の操作を業とする者」と定義され、人工呼吸器・人工心肺装置・血液浄化装置などの操作や関連する保守点検を担う。業務の具体像は昭和63年9月13日付の厚生省健康政策局医事課「臨床工学技士業務指針」に整理されている。また、業務上知り得た秘密については第40条で守秘義務が規定されている。
選択肢別解説
誤り。臨床工学技士の免許は臨床工学技士法第3条に基づき厚生労働大臣が与える。都道府県知事の免許ではない。
正しい。臨床工学技士法第2条により、医師の指示の下に生命維持管理装置の操作を業とする者と定義されている。人工呼吸器、人工心肺、血液浄化装置などの操作が典型である。
正しい。昭和63年9月13日付の厚生省健康政策局医事課「臨床工学技士業務指針」において、法の定義に沿って臨床工学技士の具体的業務内容・範囲が示されている。
正しい。臨床工学技士は医師の指示の下で業務を行うことが法第2条に明記されている。医行為に密接に関連するため、医師の具体的な指示を前提として業務を実施する。
正しい。臨床工学技士法第40条により、業務上知り得た人の秘密を正当な理由なく漏らしてはならないとする守秘義務が課されている。
解説
ICUは重症患者の救命・全身管理を行う部門であり、即時の生命維持・蘇生対応に直結する機器を常時稼働できる状態で備える必要がある。連続心電図監視を含む心電計(心電図モニタ)、人工呼吸器、除細動器、体外式心臓ペースメーカ(経皮・経静脈ペーシング装置を含む)は、心肺蘇生や循環・呼吸管理に不可欠なためICUの常備機器に該当する。一方、脳波計は痙攣評価や鎮静深度の評価などで有用だが、常時全床で使用する機器ではなく、必要時に搬入・共有して運用されることが多いため、ICUに必ずしも常備する必要はない。従って、常備しなくてもよい機器は脳波計である。
選択肢別解説
心電計(心電図モニタを含む)は不整脈や虚血の早期検知に不可欠で、重症患者の連続監視に用いられるためICUの常備機器に該当する。従って「常備しなくてもよい」には当てはまらない。
人工呼吸器は呼吸不全や術後管理、気道確保後の換気補助に必須であり、ICUでは即時使用可能な状態で複数台を常備するのが一般的である。よって常備は必要である。
脳波計は痙攣の診断や非けいれん性てんかん重積の評価、鎮静深度の把握などで有用だが、全患者に常時必要な装置ではない。多くの施設では必要時に搬入・共有して運用するため、ICUに必須の常備機器とはいえない。したがって本設問における『常備しなくてもよい機器』に該当する。
除細動器は心室細動・無脈性心室頻拍への即時対応に不可欠で、ICUでは常備品として配置する必要がある。従って「常備しなくてもよい」には当たらない。
(ここでいう)心臓ペースメーカは体外式ペースメーカを指すのが一般的で、重度徐脈や伝導障害時の緊急ペーシングに必要である。ICUでは経皮・経静脈ペーシングを即時実施できるよう常備すべき装置であるため、常備不要とはいえない。
解説
喀痰吸引は侵襲を伴う医行為であり、原則は医師が行うが、平成22年厚生労働省通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」により、所定の研修を修了し、医師の指示の下であれば臨床工学技士・作業療法士・言語聴覚士(ほか一部職種)にも実施が認められている。一方、臨床検査技師と薬剤師は同通知の対象職種に含まれておらず、業務として喀痰吸引を行うことは認められていない。したがって、認められていないのは臨床検査技師(3)と薬剤師(4)である。
選択肢別解説
臨床工学技士は、人工呼吸器管理など呼吸療法の場面で、所定の教育・研修を受け、医師の指示の下で喀痰吸引の実施が認められている。よって「認められていない」という設問条件には該当しない。
作業療法士は、摂食・嚥下や食事動作訓練の場面などで、所定の研修を修了し、医師の指示の下で喀痰吸引を行うことが認められている。したがって本設問の該当ではない。
臨床検査技師は、平成22年厚労省のチーム医療通知における喀痰吸引を実施可能な対象職種に含まれていない。職責も主として検体検査・生理検査であり、喀痰吸引は業務として認められていないため、設問の該当(正解)である。
薬剤師は、同通知における喀痰吸引実施の対象職種に含まれていない。薬学的管理・調剤・服薬指導等が主たる業務であり、喀痰吸引は業務として認められていないため、設問の該当(正解)である。
言語聴覚士は、嚥下訓練等の場面で、所定の研修を受け、医師の指示の下で喀痰吸引が認められている。従って本設問の「認められていない」には当たらない。
解説
医療機器は薬機法でリスクに応じて一般(クラスI)、管理(クラスII)、高度管理(クラスIII・IV)に分類される。高度管理医療機器は体内に植込む、生命維持に関わる、あるいは重大な有害事象につながりうる機器が該当する。ペースメーカ、冠動脈ステント、粒子線治療装置、中心静脈カテーテルはいずれも重大リスクのため高度管理に分類される。一方、血液ガス分析装置は体外で検体(血液)を分析する体外診断用の機器であり、一般にクラスI~IIに位置づけられ高度管理には該当しない。したがって「高度管理医療機器に該当しない」は血液ガス分析装置である。
選択肢別解説
ペースメーカは植込み型で心拍動を直接制御する生命維持関連機器であり、重大な不具合が患者の生命に直結するため高度管理医療機器(通常クラスIV)に分類される。よって「該当しない」とは言えない。
冠動脈ステントは血管内に留置する植込み型デバイスで、不具合は急性冠閉塞など重篤な有害事象に直結するため高度管理医療機器(一般にクラスIII~IV、薬剤溶出型はクラスIV)に分類される。したがって高度管理に該当する。
血液ガス分析装置は採取した血液を体外で分析する体外診断用機器で、人体への直接侵襲がなく、一般に管理医療機器(クラスII)または一般医療機器(クラスI)に分類される。高度管理医療機器には該当しないため、設問の正答である。
粒子線治療装置は高エネルギー放射線(陽子線・重粒子線等)を腫瘍に照射する治療用機器で、線量や照射位置の誤りは重大な健康被害に直結する。治療用放射線機器は高度管理医療機器(多くはクラスIII)に分類される。よって高度管理に該当する。
中心静脈カテーテルは血管内に留置し循環器系に直接作用する医療機器で、感染・血栓・誤留置などのリスクが大きい。侵襲性とリスクの観点から高度管理医療機器(一般にクラスIII)に分類されるため、高度管理に該当する。