臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
放射線は大きく電磁放射線(X線・γ線)と粒子放射線(α線・β線・陽子線・中性子線など)に分類される。電磁放射線は光子で電荷をもたず、粒子放射線は実体粒子であり、荷電粒子(陽子線・α線など)と中性子のような中性粒子に分かれる。荷電粒子は物質中の電子との電磁相互作用で連続的にエネルギーを失い止まりやすい一方、中性子は電荷をもたないため電子との相互作用が弱く、主に原子核との散乱・反応で減速される。このため一般に中性子線の方が陽子線より組織透過力が大きい。α線は重く二重正電荷を持つため飛程は極めて短く、X線やγ線は光子で透過性が高い。組織の放射線感受性は生殖腺が高く、心筋のような分裂能の低い成熟組織は低い。したがって「中性子線は陽子線より組織透過力が大きい」が正しい。
選択肢別解説
誤り。陽子線は陽子(水素原子核)からなる粒子放射線で、荷電粒子線に分類される。電磁放射線(X線・γ線)は光子であり、陽子線はこれに該当しない。
誤り。一般に「γ線」は電磁放射線で電荷をもたない(中性)。設問の「c 線」は放射線の標準表記としては用いられず、γ線の誤記の可能性が高いが、いずれにせよ電磁放射線に電荷はない。
誤り。α線は質量が大きく二重正電荷を持つため物質中で強い電離作用を起こし、空気中で数cm、組織内では数十µm程度と到達深度は非常に浅い。X線は光子で透過性が高く、α線より到達深度が大きい。
誤り。放射線感受性は一般に細胞分裂が盛んで分化度の低い組織で高い。心筋は分裂能の低い成熟組織で感受性が低く、生殖腺は高感受性である。したがって心筋の方が高いという記述は不適切。
正しい。中性子は電荷をもたないため、組織内で電子との電磁相互作用による連続的エネルギー損失が少なく、主に原子核との散乱や反応で減速される。このため同程度のエネルギー条件では、荷電粒子である陽子線より一般に組織透過力が大きい。
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解説
X線画像計測は、物質中を通過するX線の強度減衰を測り、減衰度合い(線減弱係数 $\mu$)の空間分布を画像化する。減衰はビール・ランバートの法則に従い、$I=I_0 \\exp(-\\int \\mu(x)\\,dx)$で表される。CTでは物質ごとの相対的な減弱をHUで定義し、$HU=1000 \\frac{\\mu-\\mu_{water}}{\\mu_{water}-\\mu_{air}}$(実用上は \\mu_{air}\\approx0 なので $HU\\approx1000 \\frac{\\mu-\\mu_{water}}{\\mu_{water}}$)を用いる。骨は水よりも強くX線を減弱するため一般にHUは正の高値(しばしば+1000 HU前後)となり、\\mu_{bone}は水の約2倍程度以上である。よって「骨のエックス線吸収係数は水の約0.5倍」は逆の関係を述べており誤り。一方、造影剤(ヨード系など)は光電効果を強めて血管を描出し、空気の減弱はきわめて小さく(ほぼゼロとみなせる)、被写体の体動はモーションアーチファクトを生じるため、これらは正しい記述である。
選択肢別解説
正しい。X線は物質中で指数関数的に減弱し、透過後の線量(強度)を検出器で計測して画像化する。投影像(単純X線)でも、投影データを再構成するCTでも、この透過線量の計測が基盤である。
正しい。ヨード系などのX線不透過性造影剤は原子番号が高く、診断エネルギー域で光電効果が増大するため減弱が増し、血管腔のコントラストが上がって血管が描出される。
誤り。骨の線減弱係数は水より大きく、典型的には水の約2倍程度以上である。CT値でも水は0 HU、骨は概ね+1000 HU前後となるため、水の0.5倍という記述は関係を取り違えている。比は管電圧や骨の組成で変動するが、少なくとも0.5倍ではない。
正しい。空気の線減弱係数は診断エネルギー域で極めて小さく、実用上ほぼゼロとみなされる(CTスケールでは空気は約-1000 HU)。
正しい。撮影中の被写体(患者)体動はモーションアーチファクトを生じ、ぼけや重なり像などの画質低下を招く。
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解説
陽子線は荷電粒子線で、物質中を進むにつれてエネルギー付与(線エネルギー付与、LET)が徐々に増え、停止直前で線量が最大となるブラッグピークを示す。加速器でエネルギーを調整すると、このピークの位置(深さ)を任意に設定でき、入口・途中の線量を相対的に低く抑えつつ、目的の深部で最大線量を与えられるため「深部のみに線量を集中」できる。臨床では複数エネルギーを重ねてSOBP(広がりブラッグピーク)を形成し病巣体積を覆う。これに対し、電子線は数cm程度の浅部で線量が最大となり深部集中はできない。ガンマ線やエックス線などの光子線は体内で光電効果・コンプトン散乱・対生成などにより指数的に減衰し、入射側から深部に向けて徐々に線量が下がるため深部のみへの集中は困難。中性子も明瞭なブラッグピークは示さず、散乱・核反応で広く線量が分布する。以上より最適解は陽子である。
選択肢別解説
正しい。陽子線はブラッグピークを有し、停止直前の特定の深さで線量が最大となる。ビームエネルギーを設定することで病巣の深さにピークを一致させ、入口・通過部の線量を相対的に低く抑えて深部に集中的に線量を与えられる。臨床ではSOBPを用いて体積をカバーする。
誤り。中性子は無電荷で、主に弾性散乱・非弾性散乱・捕獲反応などでエネルギーを失うため、陽子線のような鋭いブラッグピークは形成しない。線量は空間的に比較的広く分布し、深部のみに集中させることは困難である。
誤り。電子線は表在性の線量分布を示し、最大線量は皮膚から約数cmの浅部で生じ、その後急速に減弱する。深部に線量ピークを置くことはできず、深部集中には不向きである。
誤り。ガンマ線は光子線で、体内で相互作用により減衰していくため、入射側から深部に向けて線量が減少する(高エネルギーでは浅いビルドアップ後に減衰)。特定の深部のみに線量を集中させる物理特性は持たない。
誤り。エックス線(光子線)は生体内で指数的に減衰し、深部に向けて線量が徐々に低下する。照射法の工夫で分布を整形できても、物理的性質としてブラッグピークのように深部のみに集中させることはできない。
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解説
MRI装置は、(1)強い静磁場を発生させスピンを整列させる静磁場発生磁石(B0)、(2)空間的に磁場をわずかに変化させ位置情報を与える傾斜磁場コイル、(3)Larmor周波数のRFパルスで励起しNMR信号を受信するRF送受信コイル、を中核構成とする。これらは画像形成に不可欠の要素である。一方、コリメータはX線やγ線の進行方向を制限するためX線装置・CT・核医学機器で用いられる部材であり、MRIでは不要である。サイクロトロンは荷電粒子を加速する装置で、PET用核種の製造や粒子線治療に用いられるがMRIの構成要素ではない。したがって、RF送受信コイル、傾斜磁場コイル、静磁場発生磁石が正しい。
選択肢別解説
誤り。コリメータはX線やγ線の束を制限・整形するための部材で、X線撮影装置、CT、γカメラ(SPECT)などで用いられる。MRIは電離放射線を用いないためコリメータは不要で、装置の構成要素ではない。
正しい。RF送受信コイルはLarmor周波数のRF磁場(B1)を印加して体内の核スピンを励起し、発生するNMR信号を受信する。画像信号の励起・検出に不可欠なMRIの基本構成要素である。
正しい。傾斜磁場コイルは主磁場に対してx・y・z方向の線形勾配を重畳し、周波数エンコードや位相エンコードにより位置情報を付与する。画像化に必須のMRI構成要素である。
正しい。静磁場発生磁石は強い均一な静磁場(B0)を発生し、核スピンの整列と共鳴条件を規定する。現在は超電導磁石が主流で、MRIの中核構成要素である。
誤り。サイクロトロンは荷電粒子加速器で、PET用放射性核種の製造や粒子線治療に用いられる。MRIの構成要素ではない。
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解説
超音波画像計測では、組織間の音響インピーダンス差により反射が生じ画像化される。音響インピーダンスは $Z=\rho c$(密度と音速の積)で表され、一般に脂肪より実質臓器(例:肝臓)の方が大きい。高周波は体内での減衰が大きく到達深度が浅くなるため深部観察には不利で、深部にはより低い周波数を用いる。断層像(二次元画像)はBモードで得られ、Aモードはエコーの振幅を深さ方向に一次元表示する。ドプラ計測では、連続波ドプラは距離分解能がなく位置を特定した速度分布は得られない。一方、超音波造影ではマイクロバブル造影剤が広く用いられている。以上より、1と5が正しい。
選択肢別解説
正しい。音響インピーダンスは $Z=\rho c$ で、肝臓は脂肪より密度・音速ともに大きく、結果として音響インピーダンスも大きい。したがって脂肪—肝境界では反射が生じやすく、画像コントラストの源となる。
誤り。超音波の減衰は周波数に概ね比例して増大するため、高い周波数ほど到達深度が浅くなり深部観察には不向きである。深部臓器の観察には一般により低い周波数プローブを用いる。
誤り。Aモードは反射エコーの振幅を深さ方向に一次元で表示する方式で、断層像(二次元像)は得られない。断層像を得るのはBモードである。
誤り。連続波ドプラは送受信を連続して行うためレンジゲーティングができず、どの深さからの信号かを分離できない。したがって位置を特定した血流の速度分布は得られない(空間分解能なし)。
正しい。超音波造影剤としてマイクロバブル(微小気泡)が用いられる。強い散乱・非線形応答を示し、造影ハーモニック法などで肝腫瘍などの血流評価に用いられる。
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解説
血管内視鏡は極細径・高屈曲追従性が必要なため、像伝送にイメージガイドファイバ束を用いるファイバスコープ型が一般的である。内視鏡光源は高輝度・広帯域で演色性の良いキセノンランプが長く標準的に用いられてきた(近年は高出力LEDも普及)。一方、電子内視鏡の撮像素子はシリコン系のCCD/CMOSであり、CdSe(セレン化カドミウム)は用いない。高フレームレートはCMOSの並列読み出し等のアーキテクチャで実現され、フォトトランジスタ単体を用いるわけではない。血管強調観察の狭帯域光(NBI)はヘモグロビンの吸収が大きい青・緑帯(約415 nm, 540 nm)を用いるため、赤色狭帯域光は一般的ではない。以上より、1と5が正しい。
選択肢別解説
正しい。血管内視鏡(冠動脈など)は細径・可撓性と先端の小型化が重要で、像伝送にイメージガイドファイバ束を用いるファイバスコープ型が広く用いられてきた。これにより狭小血管内でも観察が可能となる。
誤り。電子内視鏡の撮像素子はCCDまたはCMOSなどのシリコン半導体デバイスであり、CdSeは一般的に用いられない。CdSeは光導電セル等で用いられる材料だが、内視鏡のイメージセンサ材料としては主流ではない。
誤り。高速撮影(高フレームレート)は、画素毎に並列読み出し可能なCMOSセンサなどの撮像素子アーキテクチャで実現される。フォトトランジスタは受光素子として存在するが、内視鏡の高速撮影をそれ単体で担うわけではない。
誤り。血管コントラストを高める狭帯域光イメージング(NBI)は、ヘモグロビン吸収の大きい青(約415 nm)と緑(約540 nm)を用いる。赤色光は組織透過性は高いがヘモグロビン吸収が小さく、血管強調には不向きであるため、一般的に赤色狭帯域光は用いない。
正しい。キセノンランプは可視域で連続スペクトルに近く高輝度・高い演色性を有し、従来から内視鏡の標準的光源として広く使用されている(現在は高出力LEDも普及しているが、本記述自体は正しい)。
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