臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
医療用レーザは波長と組織吸収特性により適応が異なる。CO₂レーザ(10,600 nm, 遠赤外)は水に強く吸収され浅層でエネルギーが留まるため切開・蒸散に適し、眼底の網膜凝固には用いない。Dye(色素)レーザは波長可変で、光感受性物質(例:フォトフリン)を630 nm付近で励起する光線力学療法(PDT)に用いられる。ArFエキシマレーザ(193 nm, 紫外)は光化学的アブレーションで熱影響が小さく、角膜表面の精密切除(PRK/LASIK)に用いられる。Nd:YAGレーザ(1,064 nm, 近赤外)は深達性が高く凝固・止血に有効で内視鏡治療などで用いられる。Ar(アルゴン)レーザ(488/514 nm, 青緑)はメラニンやヘモグロビンに吸収され、眼科での網膜光凝固が主用途で切開には用いない。ゆえに正しい組合せは2, 3, 4である。
選択肢別解説
誤り。CO₂レーザ(10,600 nm)は水に強く吸収され表層でエネルギーが消費されるため、組織の切開・蒸散に適する。一方、網膜凝固は可視域(緑~青緑)を用いるArレーザなどが適応であり、CO₂レーザは網膜凝固には用いない。
正しい。Dye(色素)レーザは波長可変で、光感受性物質を特定波長で励起して細胞傷害を起こす光線力学療法(PDT)に用いられる。代表例としてフォトフリンを630 nm付近で励起して腫瘍や新生血管を選択的に治療する。
正しい。ArFエキシマレーザ(193 nm)は紫外光による光化学的アブレーションで熱影響が小さく、角膜表面をミクロン単位で整形する角膜切除(PRK/LASIK)に用いられる。
正しい。Nd:YAGレーザ(1,064 nm)は組織深部への透過性が高く、強力な凝固・止血効果を示すため、内視鏡的止血などで広く用いられる(適応は凝固・止血)。
誤り。Arレーザ(488/514 nm)はメラニンやヘモグロビンに吸収され、眼科での網膜光凝固が主用途である。切開用途には一般に適さない。
解説
誤りは「Nd:YAGレーザ ― 除痛治療」。Nd:YAGレーザ(1064 nm)は主に組織凝固・切開・止血、眼科の後嚢切開、内視鏡治療など高出力用途で用いられる。一般に疼痛緩和の低出力レーザ治療(LLLT)ではHe-Neレーザ(632.8 nm)や半導体レーザ(GaAlAsなど、可視〜近赤外の低出力)が標準的に使われ、Nd:YAGとの組合せは不適切である。その他の組合せは、波長と標的色素(メラニン・ヘモグロビン)や光反応機序に適合しており妥当である。ArFエキシマ(193 nm)は角膜実質の光化学的アブレーションにより屈折矯正の角膜切除に用いられ、ルビー(694 nm)はメラニン選択で黒あざ等の色素性病変に、Ar(488/514 nm)はヘモグロビン吸収を利用した網膜光凝固に、アレキサンドライト(755 nm)はメラニン選択により脱毛に用いられる。
選択肢別解説
正しい。ArFエキシマレーザ(193 nm, 深紫外)は角膜実質に対し光化学的アブレーションを起こし、屈折矯正手術(PRK/LASIK等)の角膜切除に用いられる。熱的損傷が少なく高精度な切除が可能。
誤り。Nd:YAGレーザ(1064 nm)は高出力での組織凝固・切開、眼科の後嚢切開、内視鏡的止血などに用いられるのが一般的で、除痛を目的とする低出力レーザ治療の主流ではない。疼痛緩和にはHe-NeレーザやGaAlAs半導体レーザなど低出力機器が標準的に用いられる。
正しい。ルビーレーザ(694 nm)はメラニンに選択的に吸収され、黒あざ(太田母斑など)や刺青などの色素性病変の治療に用いられる。Qスイッチで選択的光熱融解を狙う。
正しい。Ar(アルゴン)ガスレーザ(488/514.5 nm, 青〜緑)はヘモグロビン吸収が強く、網膜血管の凝固・止血に適しており、網膜光凝固に広く用いられてきた(現在は半導体等も使用)。
正しい。アレキサンドライトレーザ(755 nm)はメラニン選択性が高く、毛包のメラニンに吸収させて選択的に障害を与えるため、医療脱毛に広く用いられる。
解説
レーザは発振媒体で分類され、代表的には気体レーザ(Arレーザ、エキシマレーザなど)、固体レーザ(Nd:YAG、Ho:YAG など)、半導体レーザ(Ga-Al-As など)、液体レーザ(色素レーザなど)がある。本問では、Arレーザは気体レーザ、Ga-Al-Asレーザは半導体レーザが正しい組合せ。Ho:YAGおよびNd:YAGはいずれもYAG結晶を母材とする固体レーザであり、ArFエキシマレーザは希ガスとハロゲンの混合ガスを用いる気体レーザである。典型的な特性として、Nd:YAGは波長1.064 µmで深達性が高く凝固・止血に適し、Ho:YAGは約2.1 µmで水に強く吸収され結石破砕や軟組織切開に用いられる。Arレーザは488/514.5 nm帯で眼科の網膜凝固など、ArFエキシマは193 nmで角膜表面の精密蒸散に用いられる。
選択肢別解説
誤り。Ho:YAG(ホルミウム添加YAG)はYAG結晶を母材とする固体レーザである。波長は約2.1 µmで水に強く吸収され、尿路結石破砕や前立腺・軟組織の切開に用いられる。液体レーザではない。
正しい。Ar(アルゴン)レーザはアルゴンイオンを発振媒体とする気体レーザで、代表的な発振線は488 nmと514.5 nm。眼科の網膜光凝固などに用いられる。
正しい。Ga-Al-As(ガリウム・アルミニウム・ヒ素)は半導体(ダイオード)レーザで、近赤外域(おおむね0.78~0.85 µm付近)で発振する。医療では低出力治療やガイド光源・照射用途などで用いられる。
誤り。Nd:YAG(ネオジム添加YAG)は固体レーザであり、気体レーザではない。基本波は1.064 µmで組織深部まで到達し、凝固・止血や蒸散に広く使用される。
誤り。ArFエキシマレーザはアルゴンとフッ素などの混合ガスを用いる気体レーザで、固体レーザではない。193 nmの紫外線で角膜の精密蒸散(屈折矯正手術など)に利用される。
解説
CO2レーザは気体レーザで、一般に放電(直流・高周波・パルス放電)励起で発振する。医用の代表波長は $10.6\mu\text{m}$(遠赤外)で、水に極めて強く吸収されるため、組織表面でエネルギーが急峻に減衰し、切開・蒸散に優れる一方、深部への凝固は弱い。シリカ系光ファイバはこの波長をほぼ透過できないため、導光は多関節ミラーアーム(マニピュレータ)が基本である。従って波長・吸収特性・伝送方式に関する選択肢は正しいが、太い動脈(内径2 mm)レベルの出血制御は困難であり不適切である。
選択肢別解説
誤り。CO2レーザは気体レーザで、一般に放電励起(直流・高周波・パルス放電)を用いる。フラッシュランプ励起は主として固体レーザ(例:Nd:YAG)で用いられる方式であり、CO2レーザの標準的励起法ではない。
正しい。医用CO2レーザの主発振線は $10.6\mu\text{m}$(遠赤外)である(他に $9.6\mu\text{m}$ 付近の遷移もあるが、一般的臨床機は $10.6\mu\text{m}$ を用いる)。
正しい。CO2レーザ光は水分(液体水・組織内水分)に強く吸収され、吸収係数が大きいため表層で急速に減衰する。その結果、表面選択的に加熱・蒸散・切開作用が得られる。
正しい。 $10.6\mu\text{m}$ はシリカガラスや水で強く吸収されるため一般的な光ファイバ伝送はできず、手術装置では多関節ミラーアーム(マニピュレータ)で導光するのが基本である(特殊な中空導波路等もあるが標準ではない)。
誤り。CO2レーザは切開・蒸散に優れるが深部凝固は弱く、太い動脈(内径2 mm)の拍動性出血を確実に止血するのは困難である。一般にこのレベルの動脈出血には結紮・クリップや凝固作用の強い他レーザ(Nd:YAG 等)・電気メスなどが適する。