臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
レーザの生体作用と治療適応の組合せを問う問題。網膜光凝固では網膜色素上皮に吸収されやすく角膜・水晶体を通過できる可視域の緑系波長が有効で、歴史的にAr(アルゴン)イオンレーザ(488/514.5 nm)やNd:YAGの第二高調波(532 nm)が用いられる。光線力学的治療(PDT)は光感受性物質の吸収波長に合わせて発振波長を可変にできる色素(Dye)レーザや半導体レーザが用いられ、光化学作用で活性酸素を発生させ腫瘍選択的に障害する。ArFエキシマレーザ(193 nm)は角膜実質の分子結合を切断する光解離作用(フォトアブレーション)により角膜屈折矯正術に用いられ、内視鏡的癌治療(PDT)とは整合しない。尿路結石破砕は水中で石に対して有効なHo:YAG(2.1 µm)などが主流で、CO2レーザは水への強吸収により蒸散・切開向きで結石破砕には不適。以上より、正しい組合せは「3」と「4」である。
選択肢別解説
不正解。内視鏡的癌治療は光線力学的治療(PDT)を指し、光感受性物質の吸収に合わせた可視光(色素レーザや半導体レーザ)が用いられる。ArFエキシマレーザ(193 nm)は紫外で角膜実質を光解離(フォトアブレーション)する屈折矯正術(PRK/LASIK等)に使用され、PDTとは作用機序・適応が異なる。
不正解。角膜形成術(屈折矯正)は角膜の分子結合を切断する光解離作用を利用し、ArFエキシマレーザ(193 nm)が標準である。Nd:YAG(1064 nm)は主に後発白内障の後嚢切開などで用いられ、角膜形成には適さない(熱・衝撃作用主体)。
正解。網膜光凝固は光熱作用で網膜色素上皮を凝固させる治療で、角膜・水晶体での吸収が少ない可視域の緑系波長が有効。Ar(アルゴン)イオンレーザ(主に514.5 nm)やNd:YAGのSHG(532 nm)などが広く用いられてきた。
正解。光線力学的治療(PDT)は光化学作用を利用し、光感受性物質(例:ポルフィマーナトリウム等)の吸収に合わせて波長可変な色素(Dye)レーザが適する。近年は半導体レーザも用いられるが、提示の組合せとしては適切。
不正解。尿路結石破砕は水中伝送が可能で石に対して有効なHo:YAGレーザ(2.1 µm)などを用いる。CO2レーザ(10.6 µm)は水への吸収が極めて高く、生体表面の蒸散・切開向けであり結石破砕には不適。
解説
医用レーザの適応は波長と生体組織(特に水・ヘモグロビン・メラニン)の吸収特性で決まる。Arレーザ(青488 nm・緑514 nm)は可視光で眼内を透過し網膜で吸収されるため網膜光凝固に用いる。一方、ArFエキシマレーザ(193 nm)は角膜の水・タンパクで強く吸収され、熱影響の少ない光アブレーションにより角膜形成術(PRK/LASIK等)に用いる。CO2レーザ(10.6 µm)は水吸収が極めて大きく表層でエネルギーが減衰し、切開・蒸散・凝固が主用途であり鎮痛治療は一般的適応ではない。Dyeレーザは光感受性薬剤を励起して活性酸素を発生させる光線力学的療法(PDT)に用いられる。Nd:YAGレーザ(1,064 nm)は組織深達性が高く凝固・止血・腫瘍蒸散の内視鏡的治療に適する。したがって、1(Arレーザ―角膜形成術)、2(ArFエキシマレーザー―網膜光凝固)、3(CO2レーザー―鎮痛治療)が誤りで、4と5は正しい組合せである。
選択肢別解説
誤り。Arレーザ(488/514 nm)は網膜光凝固が適応で、角膜形成術には用いない。角膜形成術(PRK/LASIK等)にはArFエキシマレーザ(193 nm)が用いられる。
誤り。ArFエキシマレーザ(193 nm)は角膜表層で強く吸収されるため角膜形成術に用いられる。網膜光凝固には可視域のArレーザが適応。
誤り。CO2レーザ(10.6 µm)は水吸収が非常に大きく表層で熱的作用を示し、切開・蒸散・凝固が主用途である。鎮痛治療は一般的適応ではない(鎮痛目的は主に低出力の可視~近赤外ダイオード等)。
正しい。Dyeレーザ(約590~630 nmなど)で光感受性薬剤を励起し活性酸素を発生させる光線力学的療法(PDT)に用いられる。
正しい。Nd:YAGレーザ(1,064 nm)は深達性が高く凝固・止血・腫瘍蒸散に有用で、内視鏡的癌治療に用いられる。
a. Ar レーザ ―― 網膜凝固
b. Nd:YAG レーザ ―― 光線力学療法
c. CO₂ レーザ ―― 疼痛治療
d. Dye レーザ ―― 凝固止血
e. ArF エキシマレーザ ―― 角膜切除
解説
医用レーザは波長ごとの生体吸収特性により適応が決まる。Arレーザ(488/514 nm, 可視光)は角膜・水晶体での吸収が少なく、網膜のメラニンやヘモグロビンに吸収されて熱凝固を生じるため網膜光凝固に用いられる。Nd:YAGレーザ(1064 nm, 近赤外)は深部まで到達し凝固・止血や後嚢切開などに適するが、光線力学療法(PDT)は通常フォトフィリン等の感作薬に吸収の合う630〜690 nm帯(ダイレーザや半導体レーザ)を用いる。CO2レーザ(10.6 µm, 遠赤外)は水に強く吸収され表層で切開・蒸散(アブレーション)に優れるため疼痛治療のような低出力治療には適さない。DyeレーザはPDTや血管病変治療に用いられるが、一般的な外科的凝固止血はNd:YAGや半導体レーザが適する。ArFエキシマレーザ(193 nm, 紫外)は光化学的アブレーションにより角膜をサブミクロン精度で切除でき、PRK/LASIKなど視力矯正に用いられる。したがって正しい組合せは「Arレーザ―網膜凝固」と「ArFエキシマレーザ―角膜切除」である。
選択肢別解説
正しい。Arレーザ(約488/514 nm)は可視光で角膜・水晶体での吸収が少なく網膜に到達し、網膜色素上皮やヘモグロビンに吸収されて熱凝固を起こすため、糖尿病網膜症などの網膜光凝固に用いられる。
誤り。表記はNd:YAGレーザ(1064 nm)が正しく、これは深部凝固・止血や後嚢切開に適する。PDTは感作薬(例:フォトフィリン)の吸収に合わせた630〜690 nm帯の光を要し、ダイレーザや半導体レーザが一般的であるため「光線力学療法」との組合せは不適切。
誤り。CO2レーザ(10.6 µm)は水に強く吸収され表層での切開・蒸散に用いられる。疼痛治療は低出力レーザ(He-Neや半導体レーザなど)が用いられるのが一般的で、CO2レーザとの組合せは不適切。
誤り。ダイレーザはPDT(感作薬に合わせた波長発振)や血管性皮膚病変の選択的光熱融解に用いられる。一方、外科的な凝固・止血に優れるのはNd:YAGレーザや半導体レーザであり、一般的な「凝固止血」との組合せは適切でない。
正しい。ArFエキシマレーザ(193 nm)は光化学的アブレーションにより熱影響が少なく角膜を高精度に蒸散し、PRK/LASIKなどの角膜切除・屈折矯正手術に用いられる(1パルスあたり約0.2 µm程度の切除)。
解説
レーザは媒質の種類で大きく気体レーザ、固体レーザ、半導体レーザ、(一部で用いられる)液体レーザに分類される。YAG(Yttrium Aluminum Garnet)は結晶(固体)を母体とし、NdやHoといった希土類イオンを添加して発振するため固体レーザである。Ar(アルゴン)レーザは放電管内のアルゴンガスを用いる典型的な気体レーザで、可視青緑域(例: 488 nm, 514.5 nm)を発振する。Ga-Al-As(GaAlAs)は化合物半導体によるダイオードレーザで半導体レーザに分類される。エキシマレーザ(例: ArF 193 nm)は希ガスとハロゲンの混合気体を励起して得られる準安定分子(エキシマ)を利用するため気体レーザである。以上より、正しい組合せは Arレーザ—気体レーザ と Ga-Al-As—半導体レーザ。
選択肢別解説
誤り。Ho:YAGレーザはYAG結晶にHo3+を添加した固体レーザであり、液体レーザではない。主な発振波長は約2.1 µmで、泌尿器科などで用いられる。
正しい。Ar(アルゴン)レーザはアルゴン気体を放電励起して発振する気体レーザで、代表波長は488 nmや514.5 nm。
正しい。Ga-Al-As(GaAlAs)は化合物半導体を用いたダイオードレーザで、半導体レーザに分類される(近赤外域での発振が一般的)。
誤り。Nd:YAGレーザはYAG結晶にNd3+を添加した固体レーザで、基本波は1064 nm。気体レーザではない。
誤り。ArFエキシマレーザは希ガス(Ar)とハロゲン(F)の混合気体を用いる気体レーザであり、固体レーザではない(代表波長は193 nm)。
解説
医用レーザの適応は主に波長と生体側の主吸収体(水・ヘモグロビン・メラニンなど)の吸収特性で決まる。ArFエキシマレーザ(193 nm)は角膜のアブレーション(PRK/LASIK)に用いられ、冠動脈形成術(ELCA)に用いられるエキシマはXeCl(308 nm)である。Ar(アルゴン)レーザ(488/514 nm)は網膜光凝固に用いられ、Ruby(694 nm)はメラニン吸収が強く、しみ・あざ・刺青など色素性病変治療が主。Nd:YAG(1,064 nm)は近赤外で深達性が比較的大きく、内視鏡下での腫瘍の凝固・蒸散・止血などが可能でがん治療に用いられる。CO2レーザ(10.6 µm, 遠赤外)は水への吸収が極めて高く、ごく浅層にエネルギーが集中するため、切開・蒸散に適する。以上より、正しい組合せは「Nd:YAGレーザ—がん治療」「CO2レーザ—切開」である。
選択肢別解説
誤り。ArFエキシマレーザ(193 nm)は角膜切除術(PRK/LASIK)に用いられる。冠動脈形成術(ELCA)で主に使われるのはXeClエキシマレーザ(308 nm)であり、ArFではない。
誤り。Ar(アルゴン)レーザは主に網膜光凝固(糖尿病網膜症など)に用いられる。あざ(色素性病変)の治療にはメラニン吸収の強いRubyレーザやアレキサンドライトレーザなどが適する。
誤り。Rubyレーザ(694 nm)はメラニンに強く吸収され、しみ・あざ・刺青除去などの色素性病変治療に用いられる。一方、網膜凝固はアルゴンレーザ(緑〜青緑)などが適応となる。
正しい。Nd:YAGレーザ(1,064 nm)は近赤外で生体深部まで比較的到達し、凝固・止血・蒸散に優れることから、内視鏡的腫瘍治療(気道・消化管など)や出血制御などのがん治療に用いられる。
正しい。CO2レーザ(10.6 µm, 遠赤外)は水への吸収が非常に高く、表層に作用が集中して熱拡散が浅いため、外科での切開・蒸散に広く用いられる。
a. 光線力学的治療 — 半導体レーザ
b. 角膜形成術 — ArF エキシマレーザ
c. 網膜光凝固 — CO₂レーザ
d. 内視鏡的癌治療 — Arレーザ
e. 尿路結石破砕 — Ho:YAGレーザ
解説
医用レーザは作用機序と組織光学特性に応じて使い分ける。光線力学的治療(PDT)は光化学作用をねらい、赤色域(約630〜665 nm)の半導体レーザを用いるのが標準で適切。角膜形成術(PRK/LASIKの角膜表面蒸散)には、極浅い侵達で精密に角膜をアブレーションできるArFエキシマレーザ(193 nm)が適切。網膜光凝固は主に可視域のアルゴンレーザ(488/514 nm)や周波数変換Nd:YAG(532 nm)などを用い、強い水吸収で眼内伝播しないCO2レーザ(10.6 µm)は不適切。内視鏡的癌治療はPDT(半導体/色素)や凝固・蒸散目的のNd:YAG/半導体レーザが主流で、Arレーザの使用は一般的ではない。尿路結石破砕にはHo:YAGレーザ(2.1 µm)が標準で、パルス照射により結石を微細破砕できる。したがって誤った組合せは「網膜光凝固—CO2レーザ」と「内視鏡的癌治療—Arレーザ」。
選択肢別解説
正しい組合せ。光線力学的治療(PDT)は腫瘍親和性の光感受性物質を投与し、赤色域(約630〜665 nm)の半導体レーザで励起して活性酸素を発生させ腫瘍を障害する。臨床では半導体レーザ(例: 630–664 nm)が広く用いられる。
正しい組合せ。角膜形成術(PRK/LASIK)ではArFエキシマレーザ(193 nm)の光解離(フォトアブレーション)作用で角膜実質をサブミクロン精度で蒸散し屈折矯正する。水への強い吸収と極浅い侵達が利点で、角膜表層のみを精密加工できる。
誤った組合せ。網膜光凝固は主にアルゴンレーザ(488/514 nm)やKTP/SHG Nd:YAG(532 nm)など可視域のレーザを用いて網膜色素・血色素で吸収させ熱凝固する。CO2レーザ(10.6 µm)は水吸収が極めて強く眼内へ到達せず、切開・蒸散向けで網膜光凝固には不適。
誤った組合せ。内視鏡的癌治療はPDT(半導体/色素レーザ)や熱凝固・蒸散目的のNd:YAG(1064 nm)・半導体レーザが標準である。Arレーザ(アルゴンイオン: 488/514 nm)は主に眼科の網膜光凝固に用いられ、内視鏡的腫瘍治療としては一般的でない。
正しい組合せ。Ho:YAGレーザ(2.1 µm)は水・組織での吸収が強いパルスレーザで、光音響・熱的作用により尿路結石を効率的に破砕する。現在の内視鏡的砕石の標準機種である。